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【962 メアリー】

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出会いを大切にできるかが全てだと私は思う


私の人生は、あの日孤児院でウィッカー様をお見掛けした時に、全てが決まっていた


子供ながらに、これが恋なのだろうか?そう感じた事を覚えている
ただ、その時の私は王宮仕えになったばかりだったし、慣れない土地に不安を感じていた事もあって、自分の事でいっぱいいっぱいだった

それに・・・ウィッカー様へお声をかける勇気もでなかった
家と仕事の往復で時間だけが過ぎていく中、私はウィッカー様への想いを、大切に胸の中にしまっておく事にした


17歳になったある夏の日、私は大臣からある任務を言い渡された
なんでも東の地で、毒を持つ大量のバッタが発生し、この首都バンテージを目指して来るらしい

そのバッタに対処せよ、という命令だったけれど、私を含め100人程度の魔法使いで、なにかができるはずもない

この時は魔法兵団も長期任務で不在だったため、タイミングが悪かった
残った魔法使いでなんとかしなければならないのは分かるけど、現実的には不可能と言っていい任務だ

私達は絶望した・・・
王族や大臣、それに有力貴族は、城内に立てこもってバッタをやり過ごすようだけど、私達は完全に捨て石だった

きっと何も対応しなければ、国民から不満が出ると思ってのパフォーマンスなのだろう
私達は死ぬ運命なんだ・・・そう諦めかけた時、僅かな希望が見えた

王子タジーム・ハメイド様と、その師ブレンダン・ランデル様、そしてブレンダン様のお弟子の二人が、バッタの討伐に名乗りを上げたというのだ


その話しを聞いた時、私はあの日の事を思い出した
孤児院で王子と魔法の修行をしていた、金色の髪の少年の事を・・・


ウィッカー様に会える・・・・・

こんな時に不謹慎かもしれないけれど、ウィッカー様に会えると思うと、私は胸の高鳴りを抑える事ができなかった。



そしてその日が来た

情けないけれど、空を覆い尽くす黒いバッタの大軍を目にした時、私は恐怖で体が固まってしまった。
ウィッカー様達の三種合成魔法、灼炎竜結界陣で護られていると分かっていても、目の前で歯を鳴らす毒のバッタの恐怖は、私から戦う力を奪ってしまった

ウィッカー様達が懸命に戦っているのに、私は何もできない
私は何の役にも立たない

無力感に打ちのめされそうになったその時だった・・・・・
燃え盛る紅蓮の竜が、私の目の前のバッタを焼き払ったのだ」

ウィッカー様は命懸けで結界を維持している中で、こんな私さえ気にかけてくれた
嬉しかった・・・・・



バッタを殲滅した後、倒れたウィッカー様達を孤児院に運んだ
それから私はウィッカー様が回復されるまで、住み込みでお世話をした
大好きなウィッカー様のお世話ができる事に、私は幸せを感じていた


王宮のお仕事を辞めて、孤児院で働けるようになり、ウィッカー様とお付き合いできるようになった時は、嬉し過ぎてしばらく涙が止まらなかった


素敵なお友達も沢山できた

ヤヨイさんがリサイクルショップを開いて、私もそのお手伝いをさせてもらった時は、毎日が本当に楽しくてしかたなかった
私の作ったぬいぐるみのポーさんはとても人気があって、町でポーさんを持った子供を見かけた時は、嬉しくてウィッカー様に抱き着いちゃったりもした



結婚もできた

子供の頃から憧れていて、大好きだったウィッカー様との結婚・・・
一生分の幸せを使ってしまったような気持ちだった

そしてティナが産まれた
私とウィッカー様の可愛いティナ・・・

ティナが産まれて、私とウィッカー様は親になり、夫婦から家族という形に変わった


幸せだった・・・


本当に幸せだった・・・・・・


家族で暮らしたこの五年間は、私の人生で一番幸せな時間だった


私に幸せをくれたウィッカー様とティナ・・・・・ありがとう・・・・・





強烈な光が私達を吞み込もうとしたその時、私はティナを抱きしめた
せめて怖い思いはしてほしくない

何も見えないように、力いっぱいこの胸に抱きしめた





ウィッカー様・・・・・

あなたと出会えた事で、私の人生はとても輝かしく、沢山の喜びに満ち溢れたものになりました

ありがとうウィッカー様
私を愛してくれて

私もあなたを愛せて幸せでした

ただ・・・最後にもう一度だけお顔を見たかった
もう一度抱きしめて欲しかった

あなたの温もりを感じたかった・・・・・・・




どうか私を忘れないでください
あなたの心に私がいる限り、メアリーはいつだってお傍にいるのですから


ウィッカー様・・・愛しています


ずっと・・・・・一緒にいますからね・・・・・・・・・・・・・






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