950 / 1,126
【939 その剣に全てを乗せて】
しおりを挟む
咄嗟だった。
片手では不可能と理解するよりも先に、顔の前に両手を出し、風の盾でペトラの大剣を受け止めた。
「ぐぅッッッ!」
「オォォォォォォォォーーーーーーッツ!」
最初の突きとは比べ物にならない威力だった。
両手で出した風の盾でも吸収しきれない衝撃に、皇帝は眉を寄せ、歯を食いしばり、表情を険しくさせた。
「チィィィッ!これ程の威力とはッッツ!」
皇帝の風魔法による防御とは、ただ手に纏わせた風の盾で受けるだけではない。
力負けして倒されないようにするため、足に、腰に、肩に、体を支えるようにして、風を当てていた。
初撃の突きは、それで十分に対応できた。
確かに鋭く重い突きだったが、風の盾で威力を吸収し、バランスを崩す事なく反撃に転じる事もできた。だがこの一撃はまるで別物だった。
風の盾を越えて、全身にズシンと響く程の重さ。
ペトラが剣を振り抜くと、踏ん張りが効かずに足が浮かされ、皇帝はその体を弾き飛ばされた。
「ぐぬっ!」
背中から地面に落ちそうになるが、風魔法を使って体を回し、両足で着地をする。
「この、女ァ・・・ッ!?」
「ハァァァァァァーーーーーーッツ!」
皇帝が顔を上げた時には、すでにペトラは目の前に迫っていた。
左の肩口を目掛けて、その背丈程もある大剣が振り下ろされる!
「ぐおぉぉぉぉッツ!」
本来魔法使いが間に合うはずはない。だが皇帝は驚異的な戦いの勘で、見るよりも考えるよりも早く体を動かし、ペトラの大剣を風魔法で受けた!
両手で風の盾を作り出し、足腰に風を当てて踏ん張り耐えるが、ペトラの剣は皇帝の防御を力で叩き潰した!
「ガハァッツ!」
かろうじて直撃はまぬがれたが、風の盾を破られた皇帝は、衝撃で足がもつれ大きくバランスを崩された。
「ハァッツ!」
振り抜いた大剣をそのまま地面に突き刺すと、柄を軸に体を回して飛び上がり、皇帝の胸を貫くように右の足を叩き込んだ!!
「ごっ・・・・・ッツ!」
背中にまで突き抜ける衝撃に、呼吸が止まり意識が途切れそうになる。
数メートル程後方に蹴り飛ばされ、背中から地面に落とされる。
「うっ、ゴホッ・・・ぐぅ・・・!」
脳を痺れさせる程に強烈な蹴りだったが、このまま寝ているわけにはいかない。
すぐに立ち上がれと皇帝の勘がうったえていた。
なぜなら・・・
「皇帝ィィィィーーーーーーッツ!」
竜巻を思わせる程に激しく大剣を振り回した金髪の剣士が、目の前に迫っていたからだ。
超スピードと言っても過言ではないペトラの瞬発力は、数メートル程度の距離は一瞬でゼロにできる。
「ダラァァァーーーーーッツ!」
右足を軸に上半身を左へと回し、皇帝の胴体を目掛けて大剣を振り切る!
「ぐぬぅッ!なめるなァァァァァーーーーーッツ!」
「むっ!?」
魔力開放!
怒声を上げると皇帝の全身からドス黒い魔力が放出され、強烈な魔力の圧はペトラを吹き飛ばした。
「くッ!やっかいな技だ」
空中に飛ばされたペトラだが、ダメージ自体は少ない。体を縦に回転させると、大剣を握っているとは思えない身軽さで着地した。
「生意気な女め!死ねいッ!」
右手に破壊の魔力を込めると、皇帝はペトラに向かって撃ち放った!
「フンッ!そんなもの・・・ッ!?」
大剣の腹を盾にして受け切る。爆裂弾の衝撃と爆風に体が揺さぶられるが、いかに皇帝の魔力が強大でも、単発ならば耐えられる。
右足に力を込めて前に飛び出そうとしたが、迫り来る無数の破壊のエネルギー弾に、ペトラは足を止めて腰を落とし、剣の腹を前にして防御の体勢をとった。
「チィッツ!」
「フハハハハハハハハハ!この距離ではなにもできまい!」
矢継ぎ早に撃ち放たれる皇帝の爆裂弾は、ペトラをその場に釘付けにして完全に動きを封じていた。
初級魔法の爆裂弾だが、皇帝のソレは中級魔法に遜色のない破壊力を持つ。
大剣を盾にして受け止めているが、盾を通して体に響いて来る衝撃に、ペトラはその場に踏みとどまる事が精いっぱいだった。
このクソ野郎、やっぱり手ごわい!
反射神経も魔法使いのレベルを超えているし、魔力そのものが尋常じゃない強さだ。
大陸を総べる者だと言うだけの事はある。
けれど、私の剣も通用する・・・・・
直撃させる事はできていないが、皇帝の風を突破できた。私の剣は皇帝に届く!
師団長のコバレフに後れを取ってから、私は自己研鑽を積み上げた。
二度と負けないように、二度と大切なもの奪われないように・・・だから皇帝・・・お前は・・・
「お前はここで私が倒すッッッツ!」
右足を一歩前に踏み出す。
腰を落としたまま両手で大剣を握り、一気に振り抜くと、迫り来る爆裂弾を全て撃ち落とした!
「なにぃぃぃぃーーーーーッツ!?」
「我が剣の奥義!受けてみろォォォォォーーーーーッツ!」
右足を軸に鋭く体を回転させる、高速で振り回される剣の切っ先からは、風を切り裂く鋭い音が鳴り響く。竜巻の如き荒々しさ、しかし軸はぶれる事なく力を確実に剣に伝える。そして桁外れの柔軟性に遠心力が加わって繰り出される連撃は、相手が倒れるまで止む事のない刃の嵐となる。
乱殺風陣!
ペトラの渾身の一撃が、皇帝の喉元目掛けて繰り出される!
「女・・・貴様、皇帝をなめるなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
全身から発する魔力がより強く、より大きく膨れ上がる!
ペトラの剣を風の盾で受け切る事は不可能。そもそも一撃ならばともかく、二撃、三撃までは捉える事ができても体がついていかない。そう理解した皇帝が選んだ対抗手段が、手を使う必要がなく、全身から発する事のできる攻防一体の技、魔力開放!
「ハァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッツ!」
「ヌオォッォォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
剣士としての誇り、散っていった仲間達の想い、そして護るべき故郷・・・・・
全てを背負ったペトラの剣が、皇帝の魔力とぶつかった!
片手では不可能と理解するよりも先に、顔の前に両手を出し、風の盾でペトラの大剣を受け止めた。
「ぐぅッッッ!」
「オォォォォォォォォーーーーーーッツ!」
最初の突きとは比べ物にならない威力だった。
両手で出した風の盾でも吸収しきれない衝撃に、皇帝は眉を寄せ、歯を食いしばり、表情を険しくさせた。
「チィィィッ!これ程の威力とはッッツ!」
皇帝の風魔法による防御とは、ただ手に纏わせた風の盾で受けるだけではない。
力負けして倒されないようにするため、足に、腰に、肩に、体を支えるようにして、風を当てていた。
初撃の突きは、それで十分に対応できた。
確かに鋭く重い突きだったが、風の盾で威力を吸収し、バランスを崩す事なく反撃に転じる事もできた。だがこの一撃はまるで別物だった。
風の盾を越えて、全身にズシンと響く程の重さ。
ペトラが剣を振り抜くと、踏ん張りが効かずに足が浮かされ、皇帝はその体を弾き飛ばされた。
「ぐぬっ!」
背中から地面に落ちそうになるが、風魔法を使って体を回し、両足で着地をする。
「この、女ァ・・・ッ!?」
「ハァァァァァァーーーーーーッツ!」
皇帝が顔を上げた時には、すでにペトラは目の前に迫っていた。
左の肩口を目掛けて、その背丈程もある大剣が振り下ろされる!
「ぐおぉぉぉぉッツ!」
本来魔法使いが間に合うはずはない。だが皇帝は驚異的な戦いの勘で、見るよりも考えるよりも早く体を動かし、ペトラの大剣を風魔法で受けた!
両手で風の盾を作り出し、足腰に風を当てて踏ん張り耐えるが、ペトラの剣は皇帝の防御を力で叩き潰した!
「ガハァッツ!」
かろうじて直撃はまぬがれたが、風の盾を破られた皇帝は、衝撃で足がもつれ大きくバランスを崩された。
「ハァッツ!」
振り抜いた大剣をそのまま地面に突き刺すと、柄を軸に体を回して飛び上がり、皇帝の胸を貫くように右の足を叩き込んだ!!
「ごっ・・・・・ッツ!」
背中にまで突き抜ける衝撃に、呼吸が止まり意識が途切れそうになる。
数メートル程後方に蹴り飛ばされ、背中から地面に落とされる。
「うっ、ゴホッ・・・ぐぅ・・・!」
脳を痺れさせる程に強烈な蹴りだったが、このまま寝ているわけにはいかない。
すぐに立ち上がれと皇帝の勘がうったえていた。
なぜなら・・・
「皇帝ィィィィーーーーーーッツ!」
竜巻を思わせる程に激しく大剣を振り回した金髪の剣士が、目の前に迫っていたからだ。
超スピードと言っても過言ではないペトラの瞬発力は、数メートル程度の距離は一瞬でゼロにできる。
「ダラァァァーーーーーッツ!」
右足を軸に上半身を左へと回し、皇帝の胴体を目掛けて大剣を振り切る!
「ぐぬぅッ!なめるなァァァァァーーーーーッツ!」
「むっ!?」
魔力開放!
怒声を上げると皇帝の全身からドス黒い魔力が放出され、強烈な魔力の圧はペトラを吹き飛ばした。
「くッ!やっかいな技だ」
空中に飛ばされたペトラだが、ダメージ自体は少ない。体を縦に回転させると、大剣を握っているとは思えない身軽さで着地した。
「生意気な女め!死ねいッ!」
右手に破壊の魔力を込めると、皇帝はペトラに向かって撃ち放った!
「フンッ!そんなもの・・・ッ!?」
大剣の腹を盾にして受け切る。爆裂弾の衝撃と爆風に体が揺さぶられるが、いかに皇帝の魔力が強大でも、単発ならば耐えられる。
右足に力を込めて前に飛び出そうとしたが、迫り来る無数の破壊のエネルギー弾に、ペトラは足を止めて腰を落とし、剣の腹を前にして防御の体勢をとった。
「チィッツ!」
「フハハハハハハハハハ!この距離ではなにもできまい!」
矢継ぎ早に撃ち放たれる皇帝の爆裂弾は、ペトラをその場に釘付けにして完全に動きを封じていた。
初級魔法の爆裂弾だが、皇帝のソレは中級魔法に遜色のない破壊力を持つ。
大剣を盾にして受け止めているが、盾を通して体に響いて来る衝撃に、ペトラはその場に踏みとどまる事が精いっぱいだった。
このクソ野郎、やっぱり手ごわい!
反射神経も魔法使いのレベルを超えているし、魔力そのものが尋常じゃない強さだ。
大陸を総べる者だと言うだけの事はある。
けれど、私の剣も通用する・・・・・
直撃させる事はできていないが、皇帝の風を突破できた。私の剣は皇帝に届く!
師団長のコバレフに後れを取ってから、私は自己研鑽を積み上げた。
二度と負けないように、二度と大切なもの奪われないように・・・だから皇帝・・・お前は・・・
「お前はここで私が倒すッッッツ!」
右足を一歩前に踏み出す。
腰を落としたまま両手で大剣を握り、一気に振り抜くと、迫り来る爆裂弾を全て撃ち落とした!
「なにぃぃぃぃーーーーーッツ!?」
「我が剣の奥義!受けてみろォォォォォーーーーーッツ!」
右足を軸に鋭く体を回転させる、高速で振り回される剣の切っ先からは、風を切り裂く鋭い音が鳴り響く。竜巻の如き荒々しさ、しかし軸はぶれる事なく力を確実に剣に伝える。そして桁外れの柔軟性に遠心力が加わって繰り出される連撃は、相手が倒れるまで止む事のない刃の嵐となる。
乱殺風陣!
ペトラの渾身の一撃が、皇帝の喉元目掛けて繰り出される!
「女・・・貴様、皇帝をなめるなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
全身から発する魔力がより強く、より大きく膨れ上がる!
ペトラの剣を風の盾で受け切る事は不可能。そもそも一撃ならばともかく、二撃、三撃までは捉える事ができても体がついていかない。そう理解した皇帝が選んだ対抗手段が、手を使う必要がなく、全身から発する事のできる攻防一体の技、魔力開放!
「ハァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッツ!」
「ヌオォッォォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
剣士としての誇り、散っていった仲間達の想い、そして護るべき故郷・・・・・
全てを背負ったペトラの剣が、皇帝の魔力とぶつかった!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
119
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる