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【929 ウィッカーと七人】
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「ちょ、ちょっとリッキー、ウィッカー様はまだ起きたばかりで、満足に動けないのよ!」
帝国を追いかけるかとたずねるリッキーを、リースが非難するようにリッキーを睨む。
だがリッキーは正面から見返して、リースに強く言葉を返した。
「帝国はカエストゥスに向かってんだぞ!お前、ここでじっとしてられんのかよ!?」
「な、なによ!私だって・・・私だって心配だし、みんなの後を追いたいわよ!でも、ウィッカー様は三日も寝てて今起きたばかりなのよ!無理させちゃ駄目よ!」
威嚇するように大きな声を出すリッキーだが、リースも負けじと応酬する。
すると七人の中で最年長、クセの強い赤茶色の髪をした25歳のカイルが、二人を制するように手を前に出した。
「待て待て、そこまでだ。リッキーの気持ちも、リースの気持ちも分かる。けど今は喧嘩してる場合じゃないだろ?落ち着けよ」
リッキーとリースの顔を見て、カイルが笑顔で穏やかに話しかけると、二人はバツが悪そうに口をつぐんで顔を見合わせた。
「・・・そうね。ごめんなさい」
「ああ、いや俺こそ悪い・・・ちょっと、イライラしてて・・・」
リースが謝ると、リッキーも謝罪の言葉を口にした。
リッキーは乱暴な言い方をしてしまったが、気持ちは理解できる。
故郷の危機に、じっとしている事が歯がゆいのだ。
お互いに頭を下げると、間にたったカイルが笑顔で二人の肩を叩いた。
「良かった良かった。これで仲直りだな。はい、喧嘩はお終い。これからの事はみんなで話そうな」
険悪な雰囲気になった二人を、あっという間に落ち着かせたカイルに感心して目を向けていると、隣にエニルが腰を下ろして俺に笑いかけて来た。
「フフフ、すごいでしょ?いつもアニーが仕切っているんだけど、こういう時はカイルが一番なんです。カイルに説得されると、怒ってる自分が恥ずかしくなるって言うのかな、そういう気持ちになっちゃうんですよ」
透明感のある紫色の長い髪を指で巻きながら、エニルは楽しそうに話した。
七人の中で一番社交性があるのはこのエニルだろう。他のみんなとは違い、上下関係をあまり気にしないようだ。エニルだけは俺に軽い調子で話しかけて来る。
「ああ、一種の才能だな。普段はアニーが中心になってチームを引っ張り、もし意見がぶつかった時にはカイルがなだめて調整するのか」
「はい、その通りです。あの二人が中心になって、このチームはバランスをとってるんです。アタシ達、あんまり魔力は高い方じゃないんです。だから個人ではあまり戦闘の役には立てません。でも、チームワークには自信があるんですよね。だからこの戦争でも、ずっと七人で固まって戦ってました」
黒魔法使い七人で固まって戦うと聞くと、回復や結界は大丈夫なのか?そう思いもしたが、そこを補える魔道具でも持っているのかもしれない。
「そうか、結束が固いんだな。良いチームだ」
「はい、あ!そろそろアタシの出番かな。行ってきますね」
エニルはお尻についた砂を払って立ち上がると、リースとリッキー、そしてカイルの三人の元に駆け寄って行った。そこにアニーとトムとジョニーが加わり、七人で会議でも開いているように話しあっている。見たところ進行役はエニルのようだ。どうやら彼女はそういう役割らしい。
何を話し合っているのか分からないが、しばらく様子を見ていると、アニーが先頭に立ち、七人が揃って俺のところに近づいて来た。迷いの無い目を見ると、話しはまとまったようだ。
「・・・ウィッカー様、私達は覚悟を決めました。カエストゥスに行って帝国と戦います。ウィッカー様のお気持ちをお聞かせください」
じっと俺の目を見て話すアニー。一歩下がって立つ六人も、覚悟を決めた目をしている。
「・・・俺の気持ちか・・・そんなもの、今更確認する必要もないだろ?」
そう答えて俺は立ち上がった。
真っすぐに俺を見るアニーの目を、俺も真っすぐに見て言葉を返す。
「行こう、カエストゥスに。帝国を倒すぞ」
休んでいる暇など無い。俺達はすぐに廃屋を出て、カエストゥスへと向かった。
帝国を追いかけるかとたずねるリッキーを、リースが非難するようにリッキーを睨む。
だがリッキーは正面から見返して、リースに強く言葉を返した。
「帝国はカエストゥスに向かってんだぞ!お前、ここでじっとしてられんのかよ!?」
「な、なによ!私だって・・・私だって心配だし、みんなの後を追いたいわよ!でも、ウィッカー様は三日も寝てて今起きたばかりなのよ!無理させちゃ駄目よ!」
威嚇するように大きな声を出すリッキーだが、リースも負けじと応酬する。
すると七人の中で最年長、クセの強い赤茶色の髪をした25歳のカイルが、二人を制するように手を前に出した。
「待て待て、そこまでだ。リッキーの気持ちも、リースの気持ちも分かる。けど今は喧嘩してる場合じゃないだろ?落ち着けよ」
リッキーとリースの顔を見て、カイルが笑顔で穏やかに話しかけると、二人はバツが悪そうに口をつぐんで顔を見合わせた。
「・・・そうね。ごめんなさい」
「ああ、いや俺こそ悪い・・・ちょっと、イライラしてて・・・」
リースが謝ると、リッキーも謝罪の言葉を口にした。
リッキーは乱暴な言い方をしてしまったが、気持ちは理解できる。
故郷の危機に、じっとしている事が歯がゆいのだ。
お互いに頭を下げると、間にたったカイルが笑顔で二人の肩を叩いた。
「良かった良かった。これで仲直りだな。はい、喧嘩はお終い。これからの事はみんなで話そうな」
険悪な雰囲気になった二人を、あっという間に落ち着かせたカイルに感心して目を向けていると、隣にエニルが腰を下ろして俺に笑いかけて来た。
「フフフ、すごいでしょ?いつもアニーが仕切っているんだけど、こういう時はカイルが一番なんです。カイルに説得されると、怒ってる自分が恥ずかしくなるって言うのかな、そういう気持ちになっちゃうんですよ」
透明感のある紫色の長い髪を指で巻きながら、エニルは楽しそうに話した。
七人の中で一番社交性があるのはこのエニルだろう。他のみんなとは違い、上下関係をあまり気にしないようだ。エニルだけは俺に軽い調子で話しかけて来る。
「ああ、一種の才能だな。普段はアニーが中心になってチームを引っ張り、もし意見がぶつかった時にはカイルがなだめて調整するのか」
「はい、その通りです。あの二人が中心になって、このチームはバランスをとってるんです。アタシ達、あんまり魔力は高い方じゃないんです。だから個人ではあまり戦闘の役には立てません。でも、チームワークには自信があるんですよね。だからこの戦争でも、ずっと七人で固まって戦ってました」
黒魔法使い七人で固まって戦うと聞くと、回復や結界は大丈夫なのか?そう思いもしたが、そこを補える魔道具でも持っているのかもしれない。
「そうか、結束が固いんだな。良いチームだ」
「はい、あ!そろそろアタシの出番かな。行ってきますね」
エニルはお尻についた砂を払って立ち上がると、リースとリッキー、そしてカイルの三人の元に駆け寄って行った。そこにアニーとトムとジョニーが加わり、七人で会議でも開いているように話しあっている。見たところ進行役はエニルのようだ。どうやら彼女はそういう役割らしい。
何を話し合っているのか分からないが、しばらく様子を見ていると、アニーが先頭に立ち、七人が揃って俺のところに近づいて来た。迷いの無い目を見ると、話しはまとまったようだ。
「・・・ウィッカー様、私達は覚悟を決めました。カエストゥスに行って帝国と戦います。ウィッカー様のお気持ちをお聞かせください」
じっと俺の目を見て話すアニー。一歩下がって立つ六人も、覚悟を決めた目をしている。
「・・・俺の気持ちか・・・そんなもの、今更確認する必要もないだろ?」
そう答えて俺は立ち上がった。
真っすぐに俺を見るアニーの目を、俺も真っすぐに見て言葉を返す。
「行こう、カエストゥスに。帝国を倒すぞ」
休んでいる暇など無い。俺達はすぐに廃屋を出て、カエストゥスへと向かった。
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