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【915 ウィッカーの覚悟】
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「ジャニス・・・無事、だったのか」
駆け寄って来たジャニスが、俺の脇に手を入れて体を支えてくれた。
「ウィッカー・・・お父さんは?」
「・・・師匠は・・・・・」
ジャニスの声は硬かった。この場に師匠がいない事で、想像はできているのかもしれない。
俺は師匠の最期を見届けたが、それを口にする事は躊躇われて、言葉を続けられなかった。
「・・・そう・・・・・」
口ごもる俺を見て、ジャニスは小さな声でそれだけを呟くと、俺の腹に手を当てた。
淡く白い光が俺を包み、爆発魔法で受けた傷を癒していく。
「・・・・・ジャニス、ごめん・・・俺・・・・・」
俺は、師匠を助けられなかった。
師匠は俺のために力を残してくれたのに、俺は・・・無力だ・・・・・
俯き謝る俺を見て、ジャニスは小さく首を振った。
「謝らないで・・・お父さんは、幸せだったって言ってた。だから・・・お父さんは何も後悔してないんだよ。ウィッカー、自分を責めないで・・・」
「・・・ジャニス・・・」
ジャニスにとって、赤ん坊の時から育ててくれた師匠は父親だ。
俺よりずっと辛いはずなのに、涙をこらえて俺の事まで労わってくれている。
そんなジャニスに、俺はどう言葉を返せばいいのか分からなくて、口をつぐんでしまった。
ごめんな、ジャニス。俺がもっと強ければ、お前に悲しい想いをさせる事もなかった。
自分を責めるなって言ってくれたけど、やっぱり俺は自分の弱さが許せない。
でもジャニス・・・これだけは約束しよう。
「俺が皇帝を倒す」
立ち上がった俺を見て、ジャニスは少しだけ目を瞬かせた。
けれど、すぐに言葉を返してくれた。
「うん・・・任せたよ、ウィッカー!」
この時、振り返って見たジャニスの顔を、俺は生涯忘れる事はないだろう。
最愛の夫と父を亡くしたんだ、心は張り裂けそうしまいそうなくらい辛いだろう。
でも、前を向いていた。俺を見つめるその瞳には、どんなに辛くても逃げないで立ち向かう強さが見えた。ジャニスは絶望していない。その強さがいつだって俺を引っ張ってくれるんだ。
ジャニス・・・俺、お前と幼馴染で本当に良かったと思ってる。
「おしゃべりは終わったかね?」
ジャニスと言葉を交わし前を向くと、皇帝が薄い笑みを浮かべていた。
「・・・攻撃はできたはずだ。余裕か?」
「余は皇帝だ。貴様ごとき、いつでも殺せるという事だよ」
ジャニスがヒールをかけているのを黙って見ていたのは、頂点に立つ者としての余裕。
皇帝はその自尊心の高さから、格下と見ている者を相手に、余裕の無い行動をとる事はしなかった。
もっとも、最初にウィッカーからマウントをとられ、拳の集中砲火を受けた時は、皇帝としての顔から、暴力的な素顔をさらす事になったのだが、それはあくまで裏の顔である。
表向きは黒い本性を隠し、優雅で余裕がなければならない。
「俺は負けない・・・お前だけは絶対に倒す」
魔空の枝を握り締める。魔力と霊力を合わせて力、霊魔力を体から放出する。
師匠・・・俺に力を・・・力を貸してください!
溢れ出る霊魔力が大気を震わせる。
ヒビ割れた地面からは亀裂が伸び、皇帝の足元まで砕いた。
「霊魔力だったかな?素晴らしい力だ。なんせ余の灼炎竜まで打ち破ったのだからな。誇っていい。だが勝敗は別だ。その力で余に勝てるのかね?」
俺を見据える皇帝の金色の瞳には、自分が絶対的な強者だという確固たる自信がありありと浮かんで見えた。己の灼炎竜が敗れたにも関わらず、この揺るぎない自信。
皇帝を絶対なる存在として支えているものは、やはりあの能力なのだろう。
魔空の枝を差し向ける。
皇帝の能力が予想通りだったとしても、俺は俺にできる戦いをするしかない。
この霊魔力は皇帝の魔力を上回っているんだ。だったらこれで戦うだけだ。
強いプレッシャーをぶつけたつもりだが、皇帝は笑みを崩す事はなかった。
ニヤリと口の端を持ち上げたまま、ゆっくりと深紅のローブから両手を出すと、バチバチと爆ぜる爆発の魔力を漲らせた。
「ウィッカーよ、なかなか楽しい時間だったぞ。貴様は余が思っていたよりもずっと強い男だった・・・だがな」
そこまで口にして、皇帝の目がスッと細められた。
ッ・・・来る!
「魔空の枝よッ!」
皇帝に向けた魔空の枝から霊魔力の粒子を発する。視認する事のできない極小の粒子で皇帝を囲み、一斉に爆発させる!師匠の使っていた技だ。
だが、粒子で囲んだはずの皇帝の姿は忽然と消えていた。
「ッ!またか!」
どこだ!?俺は間違いなく、絶対に瞬きさえもしていなかった!
皇帝はどこに消えた!?
「クックック、どこを見ているんだね?ここだよウィッカー」
頭上から聞こえる声に顔を上げると、崩れ落ちた天井のはるか上で、皇帝は風を纏い立っていた。
「皇帝ッ!」
やはりそうだ!間違いない!
時間でも止めない限り、一切の気配も出さず空に移動するなどできるはずがない!
皇帝は両手の平を向けて笑った。
まるで太陽と見紛う程の巨大な光。
その魔力の余波だけで大地は割れ、雲が吹き飛ばされる。
俺の霊魔力を突き破って、体の芯にまで響かせてくる圧倒的な破壊の魔力。
「皇帝・・・こ、これは、まさか!?」
俺の脳裏によぎったのは、あの日カエストゥスに放たれた極大の爆発魔法。
「余はもう飽きた。これで終わりにしよう」
あの日カエストゥスを焼いた極大の破壊のエネルギー弾。光源爆裂弾が上空から撃ち放たれた。
駆け寄って来たジャニスが、俺の脇に手を入れて体を支えてくれた。
「ウィッカー・・・お父さんは?」
「・・・師匠は・・・・・」
ジャニスの声は硬かった。この場に師匠がいない事で、想像はできているのかもしれない。
俺は師匠の最期を見届けたが、それを口にする事は躊躇われて、言葉を続けられなかった。
「・・・そう・・・・・」
口ごもる俺を見て、ジャニスは小さな声でそれだけを呟くと、俺の腹に手を当てた。
淡く白い光が俺を包み、爆発魔法で受けた傷を癒していく。
「・・・・・ジャニス、ごめん・・・俺・・・・・」
俺は、師匠を助けられなかった。
師匠は俺のために力を残してくれたのに、俺は・・・無力だ・・・・・
俯き謝る俺を見て、ジャニスは小さく首を振った。
「謝らないで・・・お父さんは、幸せだったって言ってた。だから・・・お父さんは何も後悔してないんだよ。ウィッカー、自分を責めないで・・・」
「・・・ジャニス・・・」
ジャニスにとって、赤ん坊の時から育ててくれた師匠は父親だ。
俺よりずっと辛いはずなのに、涙をこらえて俺の事まで労わってくれている。
そんなジャニスに、俺はどう言葉を返せばいいのか分からなくて、口をつぐんでしまった。
ごめんな、ジャニス。俺がもっと強ければ、お前に悲しい想いをさせる事もなかった。
自分を責めるなって言ってくれたけど、やっぱり俺は自分の弱さが許せない。
でもジャニス・・・これだけは約束しよう。
「俺が皇帝を倒す」
立ち上がった俺を見て、ジャニスは少しだけ目を瞬かせた。
けれど、すぐに言葉を返してくれた。
「うん・・・任せたよ、ウィッカー!」
この時、振り返って見たジャニスの顔を、俺は生涯忘れる事はないだろう。
最愛の夫と父を亡くしたんだ、心は張り裂けそうしまいそうなくらい辛いだろう。
でも、前を向いていた。俺を見つめるその瞳には、どんなに辛くても逃げないで立ち向かう強さが見えた。ジャニスは絶望していない。その強さがいつだって俺を引っ張ってくれるんだ。
ジャニス・・・俺、お前と幼馴染で本当に良かったと思ってる。
「おしゃべりは終わったかね?」
ジャニスと言葉を交わし前を向くと、皇帝が薄い笑みを浮かべていた。
「・・・攻撃はできたはずだ。余裕か?」
「余は皇帝だ。貴様ごとき、いつでも殺せるという事だよ」
ジャニスがヒールをかけているのを黙って見ていたのは、頂点に立つ者としての余裕。
皇帝はその自尊心の高さから、格下と見ている者を相手に、余裕の無い行動をとる事はしなかった。
もっとも、最初にウィッカーからマウントをとられ、拳の集中砲火を受けた時は、皇帝としての顔から、暴力的な素顔をさらす事になったのだが、それはあくまで裏の顔である。
表向きは黒い本性を隠し、優雅で余裕がなければならない。
「俺は負けない・・・お前だけは絶対に倒す」
魔空の枝を握り締める。魔力と霊力を合わせて力、霊魔力を体から放出する。
師匠・・・俺に力を・・・力を貸してください!
溢れ出る霊魔力が大気を震わせる。
ヒビ割れた地面からは亀裂が伸び、皇帝の足元まで砕いた。
「霊魔力だったかな?素晴らしい力だ。なんせ余の灼炎竜まで打ち破ったのだからな。誇っていい。だが勝敗は別だ。その力で余に勝てるのかね?」
俺を見据える皇帝の金色の瞳には、自分が絶対的な強者だという確固たる自信がありありと浮かんで見えた。己の灼炎竜が敗れたにも関わらず、この揺るぎない自信。
皇帝を絶対なる存在として支えているものは、やはりあの能力なのだろう。
魔空の枝を差し向ける。
皇帝の能力が予想通りだったとしても、俺は俺にできる戦いをするしかない。
この霊魔力は皇帝の魔力を上回っているんだ。だったらこれで戦うだけだ。
強いプレッシャーをぶつけたつもりだが、皇帝は笑みを崩す事はなかった。
ニヤリと口の端を持ち上げたまま、ゆっくりと深紅のローブから両手を出すと、バチバチと爆ぜる爆発の魔力を漲らせた。
「ウィッカーよ、なかなか楽しい時間だったぞ。貴様は余が思っていたよりもずっと強い男だった・・・だがな」
そこまで口にして、皇帝の目がスッと細められた。
ッ・・・来る!
「魔空の枝よッ!」
皇帝に向けた魔空の枝から霊魔力の粒子を発する。視認する事のできない極小の粒子で皇帝を囲み、一斉に爆発させる!師匠の使っていた技だ。
だが、粒子で囲んだはずの皇帝の姿は忽然と消えていた。
「ッ!またか!」
どこだ!?俺は間違いなく、絶対に瞬きさえもしていなかった!
皇帝はどこに消えた!?
「クックック、どこを見ているんだね?ここだよウィッカー」
頭上から聞こえる声に顔を上げると、崩れ落ちた天井のはるか上で、皇帝は風を纏い立っていた。
「皇帝ッ!」
やはりそうだ!間違いない!
時間でも止めない限り、一切の気配も出さず空に移動するなどできるはずがない!
皇帝は両手の平を向けて笑った。
まるで太陽と見紛う程の巨大な光。
その魔力の余波だけで大地は割れ、雲が吹き飛ばされる。
俺の霊魔力を突き破って、体の芯にまで響かせてくる圧倒的な破壊の魔力。
「皇帝・・・こ、これは、まさか!?」
俺の脳裏によぎったのは、あの日カエストゥスに放たれた極大の爆発魔法。
「余はもう飽きた。これで終わりにしよう」
あの日カエストゥスを焼いた極大の破壊のエネルギー弾。光源爆裂弾が上空から撃ち放たれた。
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