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【912 青い炎の灼炎竜】

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「オォォォォォー--ッ!」

使い方はこの体に流れる魔力が教えてくれる。
俺はただ感覚に身を委ねて、魔空の枝を振るえばいい。

皇帝に枝の先を突きつける。

標的を見つけた竜の青い炎が激しく燃え上がり、唸りを上げて皇帝にぶつかっていく!

「ぐぉぉぉっ!そ、そんなバカな!」

皇帝も灼炎竜を操りぶつけてくるが、竜を通して感じる衝撃に、俺は眉を潜めた。

・・・こんなに軽かったか?

青い炎の竜は、皇帝の灼炎竜を弾き飛ばし、その喉に噛みついた。

大きさだけを見れば、皇帝の竜は俺の灼炎竜を一回りも二回りも上回っている。
だが喉に噛みつかれた皇帝の竜は、俺の竜を振りほどく事はおろか、完全に力負けして引きずられている。

いける・・・このまま皇帝の灼炎竜を潰す!


「ハァァァァー---ーッ!」

魔空の枝を振り上げる。俺の竜は皇帝の灼炎竜に噛みついたまま、何度も顎を大きく振り回し、皇帝の竜にその牙を深くめり込ませていく。

皇帝の灼炎竜も抵抗をするが、まったく振りほどく事ができない。
大きさで勝っていても力の差は明白だった。

徐々に皇帝の竜の炎は弱まっていった。
そして、まるでその力が失われるかのように、火の粉を撒き散らしながら小さくしぼんでいった。

「な、なぜだ!?余の魔力は貴様より上なんだぞ!負けるはずがないィィィィィッツ!」

「終わりだ」

皇帝の絶叫が響き渡る。それと同時に魔空の枝を振り下ろすと、俺の竜が皇帝の灼炎竜の首を嚙みちぎった。




「皇帝、お前の負けだ」

30メートル以上あった炎の竜は、風に吹き散らされるようにして、その姿を消失していった。

俺はゆっくりと皇帝に向かって足を進めた。
皇帝にとって、魔法の勝負で敗れる事などあってはならない、ありえるはずもない事だったのだろう。
己の灼炎竜が、僅かな火の粉を残して消滅していく様を呆然と見ている。

灼炎竜は魔力で作られた竜であるが、その姿を形作る魔力の流れを破壊すれば、消えて無くなってしまう。

俺の青い炎の竜に、首を嚙み千切られた皇帝の竜は、竜としての姿を保つ事ができずに消滅してしまったのだ。
しかし、あくまで魔力で発現するものである以上、消されてももう一度灼炎竜を出す事は可能である。
だが結果が見えている以上、皇帝がもう一度灼炎竜を出す事はないだろう。


俺のこの力は、黒の魔力ではない。いや、正確には黒の魔力だけではなく、そこに霊力が合わさっている。今ハッキリと分かった・・・これは霊魔力だ。

師匠は青の魔力に霊力を合わせた力だったが、俺は黒の魔力に霊力を合わせた力を使ったんだ。


「これが俺の霊魔力だ。皇帝、お前の魔力も、俺と師匠の二人の力には及ばない」

皇帝との距離、およそ5メートル程で足を止めて、魔空の枝を突きつけた。
この距離が俺と皇帝の制空権だ。ここまでなら、ふいの攻撃にも対応できる。


「・・・・・」

皇帝は何も答えなかった。
よほどショックだったのだろう。目を大きく開き、顔にあたる火の粉を瞬きもせずに見つめている。
その様子に不気味なものを感じたが、俺は魔空の枝に魔力を込めて振り上げた。

青い炎の竜が、枝の動きに合わせて主首を上げると、轟々と燃え盛る炎の目が皇帝を見据えた。

この一撃で全てが終わる・・・・・
この右手を振り下ろせば全てが終わる・・・・・

長かった帝国との戦いも・・・これで終わりだ・・・・・


「オォォォォォォー---ー-----ッツ!」

最後になにか言ってやろうと思ったが、怒りや悲しみ、様々な感情で胸が締め付けられて、形のある言葉が何も出て来なかった。

ただ感情が爆発して、俺は声の限りを叫びながら右手を振り下ろした。





「余に勝ったと・・・本気で思ったのか?」




・・・俺は一瞬たりとも皇帝から目を離さなかった。

魔空の枝を振り下ろし、青い炎の竜が皇帝に喰らいついたはずだった・・・・・

だが、その皇帝はいつの間にか俺の背後に立ち、耳元で語りかけてきた。


「いいか、貴様がどれだけ強い魔力を持とうとも、余に勝つ事は・・・絶対にできんのだ!」


振り返ったその時、凄まじい爆発が俺の体を吹き飛ばした。
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