異世界でリサイクルショップ！俺の高価買取り！

【906 致命的な一撃】

「・・・ぐ、うぅ・・・」

なんだ・・・？いったい、なにが？

冷たい地面の感触を全身に感じながら、俺は指先に力を入れて地面を掴む。
体を起こそうとすると背中に激痛が走り、思わずうめき声が出る。

おそらく爆裂弾だ、爆発魔法の直撃を浴びせられたんだ。
背中は皮膚が引き裂かれ、筋肉もズタズタなのだろう。ぬるりとしたなにかが背中から腹に流れてきて、それが自分の血液だと気づいた。


・・・いったい皇帝はなにをした？

俺のトルネード・バーストは確実に皇帝を捉えていた。あのタイミングで躱せるはずがない。
どうやって俺の背後に回った？動きがまったく見えなかった。

肘をついてなんとか上半身を起こすと、視界に赤いローブの裾が入って来た。

「クックック、どうした？寝るにはまだ早いのでは・・・・・ないのかねぇぇぇッ！？」

「ぐぁぁぁぁぁーーーッッッ！」

起き上がろうとしたウィッカーの背に向けて、皇帝は再び爆裂弾を撃ちこんだ。
地面に体を叩きつけられ、背中からは真っ赤な血飛沫を上げるウィッカーを見下ろし、皇帝は邪悪に歪んだ笑みを浮かべた。


「クックック！良いぞ！良い声で鳴くじゃあないかウィッカァァァァァーーーーーッ！」

右手を叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！
左手に叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！
右手を叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！
左手に叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！
右手を叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！
左手に叩きつけるように振り下ろす！爆裂弾がウィッカーの背中で弾ける！


「アガァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッツ！」

「フハハハハハハハハハハハハハハ！まだだ！まだ死ぬなよウィッカーーーッ！もっと余を楽しませてみせろぉぉぉォォォーーーッ！」

息を付く間をなく繰り返し撃ち放たれる爆裂弾！
皇帝の身に纏う深紅のローブは、ウィッカーの返り血を浴びて、赤をより赤く染めていた。
そして爆発に伴う煙が、血の色を帯びて来たその時・・・・・


「皇帝ィィィィィーーーーーーッツ！」

怒りの形相のブレンダンが、皇帝に向けて魔空の枝を振り下ろした！

「ブレンダン、こりずにまた霊魔力とやら・・・なにッ！？」

魔空の枝の攻撃とは、冷気と魔力を融合させた霊魔力による爆発。これが皇帝の認識だった。
だが、突如皇帝の全身に物凄い重圧がかかる！それはまるで超高密度の空気が、重しとなって圧し掛かり、皇帝の体を押し潰そうとしているようだった。

「貴様の骨まですり潰してくれるわァァァァァァーーーーーーーッツ！」

「ぐ、お、おぉぉぉッ！？こ、これは！？」

膝が折れる。体を支えきれず、その場に倒れ込みそうになる。

魔空の枝のこの技は、かつて孤児院で戦ったミック・メリンドを圧殺した技だった。
一度この状態に持ち込めば、何人たりとも逃れる事などできない。
皇帝も身動きがとれず、重圧に耐えるために気を張っている状態では、魔力を練る余裕もない。
このまま押し潰せばブレンダンの勝ちである。そしてそれはほぼ確定していた。


「とどめじゃァァァァァーーーーーッ！死ねいッ！皇帝ぇぇぇぇぇッ！」

ブレンダンが最後の一押しを魔空の枝に込めたその時・・・・・



「残念だったな、ブレンダン。あと少し、もうあとほんのちょっぴりだったぞ」

背後から囁かれたその声に、ブレンダンは体を動かし方を忘れたかのように硬直した。

なぜ？どうやって？

冷や水を浴びせられたどころではない。背筋に氷でも埋め込まれたような、血も凍る程の戦慄。


それゆえに結界を張る事さえできず、致命的な一撃を許してしまう事となった。


「ッ！うぐッ・・・ご、ブバァッ！」


突如呼吸が止まる程の衝撃が全身を駆け巡り、次の瞬間胸に突き刺さった耐え難い痛み、そしてせり上がって来るものを押さえきれず、ブレンダンはそれを吐き出した。

「クックック、ブレンダンよ、正直貴様を早めに葬れて安心したぞ」

血反吐を吐き散らすブレンダンの耳元で、皇帝は口の端を持ち上げて嗤った。


「ご、ごう、で、ぃ・・・・・ッ！？」

飛びそうな意識を歯を食いしばり、なんとか押し留める。

胸に感じる違和感と激痛にかろうじて視線を落とすと、皇帝の右手がブレンダンの胸を、背後から刺し貫いていた。