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【902 師の秘めた力】
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濛々と立ち込める爆煙が視界を覆い隠す。
皇帝の爆裂空破弾は、凄まじい破壊力だった。
天井は吹き飛び、崩れ落ちて穴の開いた床、城の上階のほぼ2/3は消し飛び、もはや足場がわずかに残る程度になっている。
術者の皇帝の背後でさえ、爆裂空破弾の衝撃の余波で崩壊しかけていた。
「フッ・・・余の爆裂空破弾を受け切るとはな。流石と言うべきか?噂以上じゃないか」
皇帝は爆発魔法を放った右手を下ろした。
そして正面を見据えながら、まだ煙に隠れて姿の見えない相手に向かって、まるで友人に話しかけるような気安さで声をかけた。
、
「・・・ほっほっほ、流石にちぃとばかりズシンと来たがな」
皇帝の呼びかけに答えるように、辺りを覆っていた煙が吹き飛ばされると、一本の枝を握った白髪の老人が立っていた。
「ブレンダン・ランデル・・・余の爆裂空破弾を正面から受け止めたのは、貴様が初めてだぞ。生ける伝説とまで言われるだけはあるな」
ウィッカーを圧倒し、留飲が下がったからだろう。
皇帝は落ち着きを取り戻し、話し方も元に戻っていた。爆裂空破弾を防がれたにも関わらず、ブレンダンを見る目には余裕が浮かんで見える。
「皇帝ローランド・ライアン・・・王位継承の儀、以来じゃな?貴様の置き土産に対する礼がまだじゃったな?利子を付けて返してやろう」
後ろに立つウィッカーとジャニスを護るように、ブレンダンは一歩前に出た。
両足を開き重心を落とす。右手に持つ30cm程度の枝、魔空の枝を顔の前で構える。
皇帝を見据えるその目は、激しい怒りの炎で満ちていた。
「ハァァァ・・・フゥゥゥ・・・・・コォォォォォォォォーーーーーーーッッッ!」
ブレンダンは深く息を吸って吐きだすと、精神を集中し己の気を高め始めた。
「し、師匠・・・!?」
「す、すごい・・・」
ブレンダンの体から発せられる強烈な気に、ウィッカーとジャニスは戸惑いを隠せずに息を飲んだ。それは目の前の皇帝と比べても、遜色のない程に強く大きなものだったからだ。
幼少の頃からブレンダンに稽古を付けてもらってきた。
特に黒魔法使いのウィッカーは、組手だって数えきれない程やってきた。
だが今ブレンダンから発せられる気は、二人が知っているブレンダンの気を、はるかに大きく上回っていたからだ。
「・・・ほう・・・霊力か?そう言えば貴様は、クラレッサと同じ力が使えるんだったな?」
「ちぃと違うな皇帝よ、確かに根本は同じじゃろうが、クラレッサの霊力は悪霊に取り憑かれた危険なものじゃった。ワシの力はこの魔空の枝の霊力、そしてワシ自身の魔力を合わせた力、霊魔力じゃ」
皇帝は圧倒的強者である。ブレンダン・ランデルを持ってしても、その実力には大きな開きがあった。
だが、このブレンダンの気の高まりは、決して皇帝に劣るものではなかった。
態度には見せなかったが皇帝自身、ブレンダンのこの力には驚きを感じていた。
王位継承の儀で見たブレンダンの印象からは、ここまでの力を隠し持っているとは思わなかったからだ。
「たぬき爺め、余と戦うこの時まで、真の実力を隠していたというわけか?」
ニヤリと口の端を持ち上げ、不敵に笑う皇帝。
「別に隠していたわけではない。貴様に天誅下すためには、出し惜しみできんというだけじゃ」
ブレンダンもまた目を細めて皇帝を見返す。
その目には自信があった。自分の力は皇帝にも届くという確かな自信が。
気の高まりは足元から突風を発生させ、ブレンダンのローブを巻き上げた。
「師匠・・・」
師の発する気、ビリビリとした衝撃を肌で感じながら、ウィッカーは背中越しにブレンダンに呼びかけた。
魔空の枝は知っている。
霊気と魔力を合わせた霊魔力も知っている。
師匠の強さはよく知っている。
よく知っているからこそ、この師ブレンダンの、皇帝にも迫る力の高まりが理解できなかった。
力を隠していたで納得できる話しではない。一体どうやって?
「・・・ウィッカー、ジャニス・・・・・」
自分の背中を見つめる弟子の視線に応えるように、ブレンダンは振り返った。
「し、師匠・・・」
「お、とう、さん・・・」
なぜだろう・・・
毎日見て来た顔なのに、今まで見た事がない寂し気な顔に見えた。
「ワシは、幸せ者じゃったぞ」
皇帝の爆裂空破弾は、凄まじい破壊力だった。
天井は吹き飛び、崩れ落ちて穴の開いた床、城の上階のほぼ2/3は消し飛び、もはや足場がわずかに残る程度になっている。
術者の皇帝の背後でさえ、爆裂空破弾の衝撃の余波で崩壊しかけていた。
「フッ・・・余の爆裂空破弾を受け切るとはな。流石と言うべきか?噂以上じゃないか」
皇帝は爆発魔法を放った右手を下ろした。
そして正面を見据えながら、まだ煙に隠れて姿の見えない相手に向かって、まるで友人に話しかけるような気安さで声をかけた。
、
「・・・ほっほっほ、流石にちぃとばかりズシンと来たがな」
皇帝の呼びかけに答えるように、辺りを覆っていた煙が吹き飛ばされると、一本の枝を握った白髪の老人が立っていた。
「ブレンダン・ランデル・・・余の爆裂空破弾を正面から受け止めたのは、貴様が初めてだぞ。生ける伝説とまで言われるだけはあるな」
ウィッカーを圧倒し、留飲が下がったからだろう。
皇帝は落ち着きを取り戻し、話し方も元に戻っていた。爆裂空破弾を防がれたにも関わらず、ブレンダンを見る目には余裕が浮かんで見える。
「皇帝ローランド・ライアン・・・王位継承の儀、以来じゃな?貴様の置き土産に対する礼がまだじゃったな?利子を付けて返してやろう」
後ろに立つウィッカーとジャニスを護るように、ブレンダンは一歩前に出た。
両足を開き重心を落とす。右手に持つ30cm程度の枝、魔空の枝を顔の前で構える。
皇帝を見据えるその目は、激しい怒りの炎で満ちていた。
「ハァァァ・・・フゥゥゥ・・・・・コォォォォォォォォーーーーーーーッッッ!」
ブレンダンは深く息を吸って吐きだすと、精神を集中し己の気を高め始めた。
「し、師匠・・・!?」
「す、すごい・・・」
ブレンダンの体から発せられる強烈な気に、ウィッカーとジャニスは戸惑いを隠せずに息を飲んだ。それは目の前の皇帝と比べても、遜色のない程に強く大きなものだったからだ。
幼少の頃からブレンダンに稽古を付けてもらってきた。
特に黒魔法使いのウィッカーは、組手だって数えきれない程やってきた。
だが今ブレンダンから発せられる気は、二人が知っているブレンダンの気を、はるかに大きく上回っていたからだ。
「・・・ほう・・・霊力か?そう言えば貴様は、クラレッサと同じ力が使えるんだったな?」
「ちぃと違うな皇帝よ、確かに根本は同じじゃろうが、クラレッサの霊力は悪霊に取り憑かれた危険なものじゃった。ワシの力はこの魔空の枝の霊力、そしてワシ自身の魔力を合わせた力、霊魔力じゃ」
皇帝は圧倒的強者である。ブレンダン・ランデルを持ってしても、その実力には大きな開きがあった。
だが、このブレンダンの気の高まりは、決して皇帝に劣るものではなかった。
態度には見せなかったが皇帝自身、ブレンダンのこの力には驚きを感じていた。
王位継承の儀で見たブレンダンの印象からは、ここまでの力を隠し持っているとは思わなかったからだ。
「たぬき爺め、余と戦うこの時まで、真の実力を隠していたというわけか?」
ニヤリと口の端を持ち上げ、不敵に笑う皇帝。
「別に隠していたわけではない。貴様に天誅下すためには、出し惜しみできんというだけじゃ」
ブレンダンもまた目を細めて皇帝を見返す。
その目には自信があった。自分の力は皇帝にも届くという確かな自信が。
気の高まりは足元から突風を発生させ、ブレンダンのローブを巻き上げた。
「師匠・・・」
師の発する気、ビリビリとした衝撃を肌で感じながら、ウィッカーは背中越しにブレンダンに呼びかけた。
魔空の枝は知っている。
霊気と魔力を合わせた霊魔力も知っている。
師匠の強さはよく知っている。
よく知っているからこそ、この師ブレンダンの、皇帝にも迫る力の高まりが理解できなかった。
力を隠していたで納得できる話しではない。一体どうやって?
「・・・ウィッカー、ジャニス・・・・・」
自分の背中を見つめる弟子の視線に応えるように、ブレンダンは振り返った。
「し、師匠・・・」
「お、とう、さん・・・」
なぜだろう・・・
毎日見て来た顔なのに、今まで見た事がない寂し気な顔に見えた。
「ワシは、幸せ者じゃったぞ」
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