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【896 カエストゥス 対 帝国 ㉚ 侵略の理由】
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ウィッカーの爆裂弾は皇帝に直撃した。
ただの爆裂弾でもウィッカーの放つそれは、並の魔法使いの中級魔法さえ上回る威力である。
皇帝の玉座を吹き飛ばす。
その爆風は階段下で構えていた大臣ジャフ・アラムが、堪えきれず柱に叩きつけられる程だった。
「・・・チッ、やっぱりな」
予想通りの結果に、思わず舌を打った。悪い方の予想があたったのだ。
吹き寄せる風に、黒いローブが大きくはためかせられる。
濛々と立ち込める煙の中から、ゆっくりとその姿を現したのは、無傷の皇帝だった。
「やるではないか。爆裂弾でこの破壊力を出せる者はそういないぞ」
涼しい顔で肩の埃を払い、皇帝は段上からウィッカーを見下ろした。
「ふん、余裕をかましていられるのは、今のうちだぜ」
分かってはいた。皇帝の桁違いの魔力なら、この程度でダメージを通せるとは思っていない。
皇帝の身に纏っている深紅のローブに、埃を付ける程度がせいぜいだ。
その深紅のローブも、さすが皇帝とでも言うべきか?
師団長が着ていた物よりもより深い赤色で、火の精霊の加護も数段強く感じる。
この防御力は並みの魔法では突破できないだろう。
今の爆裂弾で無傷なら、中級魔法以上でなければ通用しないとみるべきだ。
「余の前に立った男は久しぶりだ。そしてそれが貴様とは、実に嬉しく思うぞ」
皇帝は階段の前で足を止めると、俺を見下ろしながら言葉を続けた。
「あの日、王位継承の儀で、貴様とジョルジュの戦いを見た。師団長を相手に魔法使いの貴様が、体術まで繰り広げるのだから正直感服したものだ。よくぞそこまで鍛えたものだな」
「いつまで見下ろしてんだ?かかって来いよ」
数段上に立つ皇帝に指を突きつける。
しかし皇帝は腕を組むと、首を傾げて俺を見据えてきた。
「フッ・・・クックック、おかしな事を言う男だ。この立ち位置こそが余と貴様の力の差ではないか?ウィッカー、貴様は余の下だ。かかってこいだと?余はここから一歩も動く必要がない。それが分からんのか?」
自らを大陸の支配者と称する圧倒的な自信。そしてその自信を裏付ける比類なき魔力。
それが皇帝ローランド・ライアン。
ウィッカーを見下ろす金色の目には、その目に映る男に対する嘲笑さえあった。
自分が負ける事など毛ほども考えていない。
勝つ事が当然であり、格下を相手には足を動かす事さえあり得ないのだ。
「・・・皇帝、一つ聞きたい」
ウィッカーは自分を見下ろす皇帝の目を、真正面から受け止め、そして睨み返した。
「なにかな?余の元へたどり着いた褒美だ、答えてやろう」
「なぜ侵略戦争をしかけた?この戦争でどれだけの血が流れたと思っている?そこまでしてお前は何を望むんだ?」
ウィッカーの問いに、皇帝の顔から笑みが消えた。
驚いたように眉を上げ、かけられた言葉の意味を考えるように一瞬の間を空けたあと、軽く息をついて言葉を返した。
「フゥー・・・何を聞いてくるかと思えばそんな事か。決まっているだろう?ブロートン帝国とは、大陸一の軍事国家であり、大陸を統べる国なのだ。ならば貴様らカエストゥスも、帝国の下につくべきであろう?それだけだ」
呆れたように、まるで子供に説明するように、皇帝はゆっくりと細かく説明をし終えた。
そして皇帝がウィッカーの顔に再び視線を戻したその時、皇帝は言葉を失い、目を見開いた。
「クズが、死ね」
「なっ!?」
一瞬で間合いを詰めたウィッカーが、皇帝の顔面に拳を叩きつけた。
ただの爆裂弾でもウィッカーの放つそれは、並の魔法使いの中級魔法さえ上回る威力である。
皇帝の玉座を吹き飛ばす。
その爆風は階段下で構えていた大臣ジャフ・アラムが、堪えきれず柱に叩きつけられる程だった。
「・・・チッ、やっぱりな」
予想通りの結果に、思わず舌を打った。悪い方の予想があたったのだ。
吹き寄せる風に、黒いローブが大きくはためかせられる。
濛々と立ち込める煙の中から、ゆっくりとその姿を現したのは、無傷の皇帝だった。
「やるではないか。爆裂弾でこの破壊力を出せる者はそういないぞ」
涼しい顔で肩の埃を払い、皇帝は段上からウィッカーを見下ろした。
「ふん、余裕をかましていられるのは、今のうちだぜ」
分かってはいた。皇帝の桁違いの魔力なら、この程度でダメージを通せるとは思っていない。
皇帝の身に纏っている深紅のローブに、埃を付ける程度がせいぜいだ。
その深紅のローブも、さすが皇帝とでも言うべきか?
師団長が着ていた物よりもより深い赤色で、火の精霊の加護も数段強く感じる。
この防御力は並みの魔法では突破できないだろう。
今の爆裂弾で無傷なら、中級魔法以上でなければ通用しないとみるべきだ。
「余の前に立った男は久しぶりだ。そしてそれが貴様とは、実に嬉しく思うぞ」
皇帝は階段の前で足を止めると、俺を見下ろしながら言葉を続けた。
「あの日、王位継承の儀で、貴様とジョルジュの戦いを見た。師団長を相手に魔法使いの貴様が、体術まで繰り広げるのだから正直感服したものだ。よくぞそこまで鍛えたものだな」
「いつまで見下ろしてんだ?かかって来いよ」
数段上に立つ皇帝に指を突きつける。
しかし皇帝は腕を組むと、首を傾げて俺を見据えてきた。
「フッ・・・クックック、おかしな事を言う男だ。この立ち位置こそが余と貴様の力の差ではないか?ウィッカー、貴様は余の下だ。かかってこいだと?余はここから一歩も動く必要がない。それが分からんのか?」
自らを大陸の支配者と称する圧倒的な自信。そしてその自信を裏付ける比類なき魔力。
それが皇帝ローランド・ライアン。
ウィッカーを見下ろす金色の目には、その目に映る男に対する嘲笑さえあった。
自分が負ける事など毛ほども考えていない。
勝つ事が当然であり、格下を相手には足を動かす事さえあり得ないのだ。
「・・・皇帝、一つ聞きたい」
ウィッカーは自分を見下ろす皇帝の目を、真正面から受け止め、そして睨み返した。
「なにかな?余の元へたどり着いた褒美だ、答えてやろう」
「なぜ侵略戦争をしかけた?この戦争でどれだけの血が流れたと思っている?そこまでしてお前は何を望むんだ?」
ウィッカーの問いに、皇帝の顔から笑みが消えた。
驚いたように眉を上げ、かけられた言葉の意味を考えるように一瞬の間を空けたあと、軽く息をついて言葉を返した。
「フゥー・・・何を聞いてくるかと思えばそんな事か。決まっているだろう?ブロートン帝国とは、大陸一の軍事国家であり、大陸を統べる国なのだ。ならば貴様らカエストゥスも、帝国の下につくべきであろう?それだけだ」
呆れたように、まるで子供に説明するように、皇帝はゆっくりと細かく説明をし終えた。
そして皇帝がウィッカーの顔に再び視線を戻したその時、皇帝は言葉を失い、目を見開いた。
「クズが、死ね」
「なっ!?」
一瞬で間合いを詰めたウィッカーが、皇帝の顔面に拳を叩きつけた。
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