907 / 1,253
【896 カエストゥス 対 帝国 ㉚ 侵略の理由】
しおりを挟む
ウィッカーの爆裂弾は皇帝に直撃した。
ただの爆裂弾でもウィッカーの放つそれは、並の魔法使いの中級魔法さえ上回る威力である。
皇帝の玉座を吹き飛ばす。
その爆風は階段下で構えていた大臣ジャフ・アラムが、堪えきれず柱に叩きつけられる程だった。
「・・・チッ、やっぱりな」
予想通りの結果に、思わず舌を打った。悪い方の予想があたったのだ。
吹き寄せる風に、黒いローブが大きくはためかせられる。
濛々と立ち込める煙の中から、ゆっくりとその姿を現したのは、無傷の皇帝だった。
「やるではないか。爆裂弾でこの破壊力を出せる者はそういないぞ」
涼しい顔で肩の埃を払い、皇帝は段上からウィッカーを見下ろした。
「ふん、余裕をかましていられるのは、今のうちだぜ」
分かってはいた。皇帝の桁違いの魔力なら、この程度でダメージを通せるとは思っていない。
皇帝の身に纏っている深紅のローブに、埃を付ける程度がせいぜいだ。
その深紅のローブも、さすが皇帝とでも言うべきか?
師団長が着ていた物よりもより深い赤色で、火の精霊の加護も数段強く感じる。
この防御力は並みの魔法では突破できないだろう。
今の爆裂弾で無傷なら、中級魔法以上でなければ通用しないとみるべきだ。
「余の前に立った男は久しぶりだ。そしてそれが貴様とは、実に嬉しく思うぞ」
皇帝は階段の前で足を止めると、俺を見下ろしながら言葉を続けた。
「あの日、王位継承の儀で、貴様とジョルジュの戦いを見た。師団長を相手に魔法使いの貴様が、体術まで繰り広げるのだから正直感服したものだ。よくぞそこまで鍛えたものだな」
「いつまで見下ろしてんだ?かかって来いよ」
数段上に立つ皇帝に指を突きつける。
しかし皇帝は腕を組むと、首を傾げて俺を見据えてきた。
「フッ・・・クックック、おかしな事を言う男だ。この立ち位置こそが余と貴様の力の差ではないか?ウィッカー、貴様は余の下だ。かかってこいだと?余はここから一歩も動く必要がない。それが分からんのか?」
自らを大陸の支配者と称する圧倒的な自信。そしてその自信を裏付ける比類なき魔力。
それが皇帝ローランド・ライアン。
ウィッカーを見下ろす金色の目には、その目に映る男に対する嘲笑さえあった。
自分が負ける事など毛ほども考えていない。
勝つ事が当然であり、格下を相手には足を動かす事さえあり得ないのだ。
「・・・皇帝、一つ聞きたい」
ウィッカーは自分を見下ろす皇帝の目を、真正面から受け止め、そして睨み返した。
「なにかな?余の元へたどり着いた褒美だ、答えてやろう」
「なぜ侵略戦争をしかけた?この戦争でどれだけの血が流れたと思っている?そこまでしてお前は何を望むんだ?」
ウィッカーの問いに、皇帝の顔から笑みが消えた。
驚いたように眉を上げ、かけられた言葉の意味を考えるように一瞬の間を空けたあと、軽く息をついて言葉を返した。
「フゥー・・・何を聞いてくるかと思えばそんな事か。決まっているだろう?ブロートン帝国とは、大陸一の軍事国家であり、大陸を統べる国なのだ。ならば貴様らカエストゥスも、帝国の下につくべきであろう?それだけだ」
呆れたように、まるで子供に説明するように、皇帝はゆっくりと細かく説明をし終えた。
そして皇帝がウィッカーの顔に再び視線を戻したその時、皇帝は言葉を失い、目を見開いた。
「クズが、死ね」
「なっ!?」
一瞬で間合いを詰めたウィッカーが、皇帝の顔面に拳を叩きつけた。
ただの爆裂弾でもウィッカーの放つそれは、並の魔法使いの中級魔法さえ上回る威力である。
皇帝の玉座を吹き飛ばす。
その爆風は階段下で構えていた大臣ジャフ・アラムが、堪えきれず柱に叩きつけられる程だった。
「・・・チッ、やっぱりな」
予想通りの結果に、思わず舌を打った。悪い方の予想があたったのだ。
吹き寄せる風に、黒いローブが大きくはためかせられる。
濛々と立ち込める煙の中から、ゆっくりとその姿を現したのは、無傷の皇帝だった。
「やるではないか。爆裂弾でこの破壊力を出せる者はそういないぞ」
涼しい顔で肩の埃を払い、皇帝は段上からウィッカーを見下ろした。
「ふん、余裕をかましていられるのは、今のうちだぜ」
分かってはいた。皇帝の桁違いの魔力なら、この程度でダメージを通せるとは思っていない。
皇帝の身に纏っている深紅のローブに、埃を付ける程度がせいぜいだ。
その深紅のローブも、さすが皇帝とでも言うべきか?
師団長が着ていた物よりもより深い赤色で、火の精霊の加護も数段強く感じる。
この防御力は並みの魔法では突破できないだろう。
今の爆裂弾で無傷なら、中級魔法以上でなければ通用しないとみるべきだ。
「余の前に立った男は久しぶりだ。そしてそれが貴様とは、実に嬉しく思うぞ」
皇帝は階段の前で足を止めると、俺を見下ろしながら言葉を続けた。
「あの日、王位継承の儀で、貴様とジョルジュの戦いを見た。師団長を相手に魔法使いの貴様が、体術まで繰り広げるのだから正直感服したものだ。よくぞそこまで鍛えたものだな」
「いつまで見下ろしてんだ?かかって来いよ」
数段上に立つ皇帝に指を突きつける。
しかし皇帝は腕を組むと、首を傾げて俺を見据えてきた。
「フッ・・・クックック、おかしな事を言う男だ。この立ち位置こそが余と貴様の力の差ではないか?ウィッカー、貴様は余の下だ。かかってこいだと?余はここから一歩も動く必要がない。それが分からんのか?」
自らを大陸の支配者と称する圧倒的な自信。そしてその自信を裏付ける比類なき魔力。
それが皇帝ローランド・ライアン。
ウィッカーを見下ろす金色の目には、その目に映る男に対する嘲笑さえあった。
自分が負ける事など毛ほども考えていない。
勝つ事が当然であり、格下を相手には足を動かす事さえあり得ないのだ。
「・・・皇帝、一つ聞きたい」
ウィッカーは自分を見下ろす皇帝の目を、真正面から受け止め、そして睨み返した。
「なにかな?余の元へたどり着いた褒美だ、答えてやろう」
「なぜ侵略戦争をしかけた?この戦争でどれだけの血が流れたと思っている?そこまでしてお前は何を望むんだ?」
ウィッカーの問いに、皇帝の顔から笑みが消えた。
驚いたように眉を上げ、かけられた言葉の意味を考えるように一瞬の間を空けたあと、軽く息をついて言葉を返した。
「フゥー・・・何を聞いてくるかと思えばそんな事か。決まっているだろう?ブロートン帝国とは、大陸一の軍事国家であり、大陸を統べる国なのだ。ならば貴様らカエストゥスも、帝国の下につくべきであろう?それだけだ」
呆れたように、まるで子供に説明するように、皇帝はゆっくりと細かく説明をし終えた。
そして皇帝がウィッカーの顔に再び視線を戻したその時、皇帝は言葉を失い、目を見開いた。
「クズが、死ね」
「なっ!?」
一瞬で間合いを詰めたウィッカーが、皇帝の顔面に拳を叩きつけた。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる