異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
895 / 1,370

【894 カエストゥス 対 帝国 ㉘ 玉座の間の皇帝】

しおりを挟む
「ここから先はへ行かせんぞぉー--ッ!」

城内に突入すると、剣を握った帝国兵達が斬りかかってきた。

頭に振り下ろされる剣を、身を捻り躱す。
そのまま帝国兵の懐に入り込み、胸に手を当て氷魔法の刺氷弾でその体を貫き倒す。

「カエストゥスー----ッッツ!」

後ろから斬りかかってきた兵士の剣を、振り返らずに腰を落として低い体勢で躱す。振り向きざまに左足を回して帝国兵の足を払い飛ばす。それと同時に左手に風の魔力を集める。
前のめりに倒れてきた兵士の首にウインドカッターを飛ばし、兵士の首を刎ね飛ばした。

「魔法兵よ!狙い撃てー----ッ!」

指揮官らしい男が、後方から黒魔法使いに支持を飛ばす。
すると前に出ていた体力型の兵士が左右に分かれ、黒魔法使い達が一斉に魔法を撃ち放った!

「ウインドカッター!」
「刺氷弾!」
「地氷走り!」

俺一人を体力型の兵士と、魔法使い達が取り囲んでいるんだ。巻き添えにしないために、風魔法と氷魔法のみを使うのは正しい判断だ。
そしてよく訓練されている。隙の無いスムーズな連携だ。

けどな・・・

「ハァァァーーーッッ!」

胸の前で交差させた両手を、勢いよく外へ広げて爆発魔法を撃ち放つ!

一斉に放たれた何十発もの爆裂弾は、ウインドカッターも刺氷弾も吹き飛ばし、地面を走りながら迫って来る氷の刃も粉砕した!

「ぐぁぁぁぁぁーーーーっ!」

爆裂弾を受けた兵士達が、壁に飛ばされその背中を叩きつけられる。

「ぐ、ひ、怯むな!体勢を立て直せ!」

指揮官が倒れた兵士達に激を飛ばす。

俺は指揮官を睨み付けると、爆発の魔力を込めて右手を向けた。

「俺はこの国の人間じゃねぇから、遠慮しねぇぜ」


爆発の中級魔法 爆裂空破弾


光輝く高密度の巨大な破壊の弾が、指揮官もろとも残りの帝国兵をまとめて吹き飛ばした。





「こ、皇帝、ウィッカーが攻め込んできました。城内の兵達を向かわせましたが、ほぼ一方的に倒されております・・・」

これまで帝国の勝利を信じて疑わなかったジャフ・アラムだったが、カエストゥスは難攻不落のワイルダー、そして精霊使いのアンソニーまでも倒してみせた。
そして今しがた、爆音とともに立っていられない程の衝撃に、城が揺さぶられた。これはおそらく、下の階で戦っているウィッカーの爆発魔法だ。

帝国の兵士が、城内で爆発魔法を使うなどありえない。しかしウィッカーは違う。
敵地がどうなろうと知った事ではないのだから。
ヤツらはとうとうここまできた。

ジャフの動揺を見抜いた皇帝が、口の端を上げて笑った。

「フッ・・・ジャフよ、臆したか?」

皇帝の金色の目がジャフを捉える。その目には大陸を統べる支配者としての、ゆるぎない絶対の自信が漲っていた。ここで自分が敗れるなど毛ほども考えていない。たとえ自分一人になったとしても、カエストゥスを皆殺しにしてみせる。その金色の目がそう語っていた。

皇帝の体から滲み出て来た魔力を感じ取り、ジャフは慌てて弁明を発した。

「い、いえ、とんでもございません!帝国の大臣たる私が、カエストゥス如きに臆するなど・・・」


この玉座の間のすぐ下では、自分を狙う敵国の男が迫って来ているというのに、皇帝は玉座に腰を掛けたまま、まったく動こうともしない。それは動く必要もないという自分自身への絶対の自信。


「ジャフよ、数をいくら集めようと、ウィッカーは止められんだろう。ヤツはもうすぐここに来る。貴様はそこで見ていればいい。ブロートン帝国の皇帝とは、大陸の支配者。唯一無二の存在である事を見せてやろう」

これからここへやって来る己への挑戦者を歓迎するかのように、皇帝の体から魔力が滲み出てきた。


この時、皇帝ローランド・ライアンは43歳。
知識、経験共に、魔法使いとしては熟練の域、強さのピークに達していた。

皇帝の自信は決してうぬぼれでは無い。
精霊使いの実弟アンソニー・ライアン。その忠臣にして黒き破壊王とまで呼ばれたデズモンデイ・ワイルダー。この二人を力でねじ伏せ、皇帝の座を確たるものにした事は事実。

かつて、カエストゥスの元大臣ベン・フィングは、皇帝と戦えるのはカエストゥスの王子、タジーム・ハメイドだけだと言っていた。

それはベン・フィングが失脚した事への負け惜しみでも、虚勢でもない。

皇帝の魔力を目の当たりにすれば、誰もがそれを認めるだろう。いや、認めるしかない。
それほどの魔力だった。


「お・・・おお、こ、皇帝陛下・・・こ、これほどとは!」

皇帝の魔力を肌で感じたジャフは歓喜した!

今、皇帝が発している魔力は、皇帝の力の一端に過ぎない。
だが帝国の大臣として、セシリア・シールズや、テレンス・アリームを見て来たジャフには、皇帝の底の見えない魔力に震える程の高揚感を覚え、自然と笑いが浮かんでいた。


・・・勝てる!・・・勝てる!勝てる!勝てる!勝てる!勝てる!勝てる!絶対に勝てる!


狂気じみた笑みで自分を見るジャフに、皇帝は指先を向けた。

「・・・クックック・・・ジャフよ、どうやら客人のお越しのようだ」

ニヤリと笑う皇帝の指先が差すのは、ジャフを通り越してその後ろ・・・玉座の間の扉だった。


爆音と共に扉が吹き飛ばされる。

濛々とした煙の中、破壊した扉の破片を踏みつけながら、黒いローブ姿のその男は姿を現した。


「・・・皇帝、やっと会えたな」

大陸一の黒魔法使い、カエストゥスのウィッカーは、射殺す程の鋭い視線を皇帝にぶつけた。


「待ちわびたぞ、ウィッカー」


己に向けられる強烈な殺気を受け止め、皇帝は嗤った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...