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【880 カエストゥス 対 帝国 ⑭ 炎の呪詛】
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握りつぶされるような圧迫感。その次に襲ってきた凄まじい激痛。
右腕の肘から先が砕け、折れた骨が皮膚を突き破った。
「ぐっ・・・うぐあ、あ・・・ぐうぅ・・・・!」
立っている事ができず、左手で右腕を押さえながら片膝を着いた。
視界が回り、気が遠くなりそうになる。
脳に響く激しい痛みに歯を食いしばり耐えるが、全身から吹き出す汗は止まらない。
しかし、痛みを気にかけている余裕などなかった。
「な、なにを・・・した?」
いったい俺はなにをされた?攻撃は全く見えなかった。だが、魔力の流れは感じ取れた。
この攻撃は魔力を使ったものだ。俺に向けて魔力が発せられたと感じた瞬間、右腕が砕けた。
顔を上げる事はできなかった。だが、俺の問いかけにアンソニーは答えを口にした。
「・・・貴様が私に与えたダメージ・・・それら全てを返したまでだ」
「な・・・んだと?」
予想もしなかった答えに、思わず顔を上げそうになるが、無理やり押さえて耐える。
目を合わせたらそれでお終いだ。絶対に顔を上げるわけにはいかない。
俺はアンソニーの足元を見つめたまま、頭上からかけられる言葉を聞くしかなかった。
「私の魔道具・・・復讐の衣、と言うのだがね。自分が受けたダメージをまとめて返す事ができるのだよ。貴様の右腕に返してやったのだが・・・感想を聞かせてもらるか?」
さっきまで無表情で、感情が全く見えない能面野郎だったくせに、ずいぶんおしゃべりになったもんだ。
「へっ・・・感想、ね・・・・・」
なるほど・・・さっき右腕を掴まれたが、おそらくあれが発動条件だ。
危なかった。もし、首や胸を触られていたら、死んでいたかもしれない。
距離をとったのは正解だったな・・・・・
こいつの着ているローブ・・・こいつは間違いなく幹部だが、深紅のローブは着ていない。
白い生地に金色の刺繍をあしらった、まるで神父のようなローブを着ている事が気になっていた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・聖職者、みたいな・・・立派なローブのくせに、復讐の衣、か・・・ひねくれてやがる」
吐き捨てるように嗤ってやった。
すると目に映るアンソニーの足に力が入り、グッと雪を踏みしめた。
一瞬の沈黙の後に・・・静かで、だがゾッとするような冷たい声が耳に届いた。
「・・・その通りだ。これは私が復讐のために作った衣だ。ひねくれているか・・・・・否定はせんよ」
差し伸べるように、右手の平を向けられる。
「ッ!」
その手首が上に向けて返されると、俺の足元から天をも焦がす程に、激しく巨大な火柱が立ち上がった!
「うッ、ぐぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!」
「私の瞳の力を知っていたようだが、目を合わせないのなら、外から焼くだけだ」
足が地面から離れ、体が浮く程の激しい炎の勢い。
全身を焼かれながら、俺はその声を聞いた。
耳に入ってきたのではない。
頭で、肌で、体でその声に触れたと言った方が正しいかもしれない。
焼け
焼くんだ
全てを焼き滅ぼせ
人も街も国も山も森も川も焼いて焼いて焼き尽くせ
焼けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それはまるで呪詛のような、火の精霊の声だった
右腕の肘から先が砕け、折れた骨が皮膚を突き破った。
「ぐっ・・・うぐあ、あ・・・ぐうぅ・・・・!」
立っている事ができず、左手で右腕を押さえながら片膝を着いた。
視界が回り、気が遠くなりそうになる。
脳に響く激しい痛みに歯を食いしばり耐えるが、全身から吹き出す汗は止まらない。
しかし、痛みを気にかけている余裕などなかった。
「な、なにを・・・した?」
いったい俺はなにをされた?攻撃は全く見えなかった。だが、魔力の流れは感じ取れた。
この攻撃は魔力を使ったものだ。俺に向けて魔力が発せられたと感じた瞬間、右腕が砕けた。
顔を上げる事はできなかった。だが、俺の問いかけにアンソニーは答えを口にした。
「・・・貴様が私に与えたダメージ・・・それら全てを返したまでだ」
「な・・・んだと?」
予想もしなかった答えに、思わず顔を上げそうになるが、無理やり押さえて耐える。
目を合わせたらそれでお終いだ。絶対に顔を上げるわけにはいかない。
俺はアンソニーの足元を見つめたまま、頭上からかけられる言葉を聞くしかなかった。
「私の魔道具・・・復讐の衣、と言うのだがね。自分が受けたダメージをまとめて返す事ができるのだよ。貴様の右腕に返してやったのだが・・・感想を聞かせてもらるか?」
さっきまで無表情で、感情が全く見えない能面野郎だったくせに、ずいぶんおしゃべりになったもんだ。
「へっ・・・感想、ね・・・・・」
なるほど・・・さっき右腕を掴まれたが、おそらくあれが発動条件だ。
危なかった。もし、首や胸を触られていたら、死んでいたかもしれない。
距離をとったのは正解だったな・・・・・
こいつの着ているローブ・・・こいつは間違いなく幹部だが、深紅のローブは着ていない。
白い生地に金色の刺繍をあしらった、まるで神父のようなローブを着ている事が気になっていた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・聖職者、みたいな・・・立派なローブのくせに、復讐の衣、か・・・ひねくれてやがる」
吐き捨てるように嗤ってやった。
すると目に映るアンソニーの足に力が入り、グッと雪を踏みしめた。
一瞬の沈黙の後に・・・静かで、だがゾッとするような冷たい声が耳に届いた。
「・・・その通りだ。これは私が復讐のために作った衣だ。ひねくれているか・・・・・否定はせんよ」
差し伸べるように、右手の平を向けられる。
「ッ!」
その手首が上に向けて返されると、俺の足元から天をも焦がす程に、激しく巨大な火柱が立ち上がった!
「うッ、ぐぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!」
「私の瞳の力を知っていたようだが、目を合わせないのなら、外から焼くだけだ」
足が地面から離れ、体が浮く程の激しい炎の勢い。
全身を焼かれながら、俺はその声を聞いた。
耳に入ってきたのではない。
頭で、肌で、体でその声に触れたと言った方が正しいかもしれない。
焼け
焼くんだ
全てを焼き滅ぼせ
人も街も国も山も森も川も焼いて焼いて焼き尽くせ
焼けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それはまるで呪詛のような、火の精霊の声だった
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