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【879 カエストゥス 対 帝国 ⑬ 不気味な力】
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この力・・・この男と目を合わせて、こいつの目が赤く光った瞬間、俺の体は内側から焼かれるような熱さに襲われた。
この力・・・・・くらうのは初めてだが、間違いない。
以前聞いたあの瞳の力だ。
目を合わせた相手に熱を送り、体の内側から焼く。
火の精霊から特に強い加護を受けていたあの女、セシリア・シールズが使っていた瞳の力だ。
こいつの精霊の力はセシリアより強い。なんせ加護どころじゃない。
火の精霊そのものを操れる。精霊使いなのだから、セシリアと同じ技を使えて当然だ。
俺が攻撃の正体に考え至ったその時、アンソニーの目が再び赤く燃え上がった!
「なにッ!?」
アンソニーは驚きの言葉を発した。
俺が瞬時に視線を下げて、アンソニーの攻撃を回避したからだ。
まさか二度目で瞳の攻撃を躱されるとは思いもしなかったのだろう。
当然と言えば当然だろう。初見でこの攻撃の正体に気づけるはずもない。
普通は二度目で躱せるなんてできるはずがない。
俺が躱せたのは、セシリア・シールズを知っていて、セシリアと戦うための対策を積んでいたからだ。視線を下げて、首から下を見て戦う。難しいが訓練次第でできない事ではない。
そしてその訓練の成果が今、最高の形で生きた!
「ハァッ!」
右足を軸に腰を右に回し、アンソニーの右脇腹に左の蹴りを叩き込んだ!
「ぐふ・・・ッ!」
「ダラァッ!」
左の蹴りがまともに入り、アンソニーの体が前のめり崩れてくる。
俺はそのまま右の拳を真っすぐに出し、アンソニーのがら空きの顔面を撃ち抜いた!
この男、やはり魔法使いと変わらない、肉弾戦はまったくの素人だ!
右の拳がまともに入り倒れそうになったが、アンソニーは踏みとどまった。
しかし膝が震えていて、ダメージがはっきりと見て取れる。
いける!
「ハァッ!」
一歩で距離を詰めて、真っすぐに突き出した左拳が、アンソニーの左頬に入る。
左拳を引くと同時に、右拳で左の側頭部を殴り抜く!
ヨロヨロと後ずさりをするが、アンソニーはこれでも倒れなかった。
だが、ダメージは大きい。ここで決める!
俺はさらに追いすがり懐に入り込むと、右膝を立ててアンソニーの腹にめり込ませた!
上半身が折れて頭が下がってきたところへ、右拳を振り上げて顎を撃ち抜いた。
顎が跳ね上がったところへ、駄目押しの右の蹴りを腹部へ叩き込む!
よし!決まっ・・・・・!?
「・・・な、に?」
十分な手ごたえだった。
魔法使いの俺は決して力がある方ではない。
だが、ジョルジュとリン姉に鍛えられて、体術を学び、そこらの体力型よりもずっと筋力をつけた自信はある。
こいつの体付きは、普通の魔法使いと変わらない。
だが、なぜだ?
「な、なんで・・・倒れない?」
腰を折って頭が下がり、膝が折れて今にも倒れそうだった。
顔は見えないが血が滴り落ちて、雪の上に赤く色を付けている事からも、確かなダメージを与えている事は間違いない。
だが、アンソニーは倒れなかった。
体力型でないこいつが耐えられるほど、俺の攻撃は軽くない。
これだけまともに入れているのに、まだ立っている事が信じられない。
「くっ、しぶといヤツだ!」
更に踏み込んで、アンソニーの腹に右の拳を突き刺す!
「カッ・・・ア・・・・・」
深々と刺さった拳がめり込むと、アンソニーは声にならない呻きをもらした。
どうだ!?これでもまだ倒れな・・・ッ!
腹に入れた右拳を、アンソニーが両手で掴んできた!
「くっ!」
直感でまずいと感じた。精霊使いの力は未知のものが多い。掴まれた事でなにをされると分からない。
俺は力まかせにアンソニーの両手を振り払うと、大きく後ろに飛んで距離を取った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が切れる・・・
俺自身、まだ瞳の力で受けたダメージが残っている。正直かなり苦しい。
だが、こいつもまだ反撃の態勢を整える事ができていない。
追撃をする好機であり、ここでたたみかけて仕留めるべきだ。
だがこの男の不気味なまでのタフさ、そして右手を掴まれた時の、言い表せない異質な恐怖が、俺の足を止めていた。
「ごふっ・・・ぶっ・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アンソニーは咳込みながら、口に溜まった血を吐き出した。
息も大きく切られしている。やはりダメージは大きい。
どうする?ここで行くべきか?
この好機を逃す事が、どれだけ大きな事かは分かっている。
だが肌で感じる危うさ、全身が警告を発していた。
瞳の力を受けたから、慎重になり過ぎているのかもしれない。
だが、それでも今行く事は危険だ。こいつの力を、精霊使いの力を俺はほとんど知らない。
こいつの異常なタフさが、精霊の力に関係あるのか?
その謎が分からない限り、異質なものにうかつに近づくことはできない。
「・・・・・貴様、魔法使いのくせに、その技と動きはなんだ?」
やがてアンソニーは呼吸を整えると、ゆっくりと顔を上げて俺を見た。
俺は再び視線を下げた。
こいつの顔、目を見てはいけない。
目を合わせれば、再び体内に熱を送られてしまう。
一度は耐えられた。鍛えた体と精神の賜物としか言えないが、なんとか耐えぬいた。
だがもう一度あれを受ければ、どうなるか分からない。
こいつとは目を合わせずに戦うしかない。
「・・・魔法使いでも、訓練を積めば体術は取得できる」
「ほぅ・・・だったら、今がチャンスだぞ。この通り、私のダメージは大きい。かかって来ないのか?」
視線を下げているので顔は見れないが、息遣いで分かる。間違いなくアンソニーのダメージは深い。
足を見れば震えているのも分かる。ギリギリで立っているんだ。
だが、この誘いはなんだ?
まるでわざと攻撃を受けたがっているようだ。
「・・・魔法使いの戦い方で倒してやるよ」
俺は両手に風を魔力を集め、鋭い風の刃をつくりだした。
直感で判断した。こいつに接近戦は危険だ。離れて魔法で倒す!
「・・・勘が良いんだな。だが、もう遅い」
「なっ・・・ぐ、あぁぁぁぁー--ッ!」
アンソニーの声が耳に届いたその瞬間、俺の右腕が砕けた。
この力・・・・・くらうのは初めてだが、間違いない。
以前聞いたあの瞳の力だ。
目を合わせた相手に熱を送り、体の内側から焼く。
火の精霊から特に強い加護を受けていたあの女、セシリア・シールズが使っていた瞳の力だ。
こいつの精霊の力はセシリアより強い。なんせ加護どころじゃない。
火の精霊そのものを操れる。精霊使いなのだから、セシリアと同じ技を使えて当然だ。
俺が攻撃の正体に考え至ったその時、アンソニーの目が再び赤く燃え上がった!
「なにッ!?」
アンソニーは驚きの言葉を発した。
俺が瞬時に視線を下げて、アンソニーの攻撃を回避したからだ。
まさか二度目で瞳の攻撃を躱されるとは思いもしなかったのだろう。
当然と言えば当然だろう。初見でこの攻撃の正体に気づけるはずもない。
普通は二度目で躱せるなんてできるはずがない。
俺が躱せたのは、セシリア・シールズを知っていて、セシリアと戦うための対策を積んでいたからだ。視線を下げて、首から下を見て戦う。難しいが訓練次第でできない事ではない。
そしてその訓練の成果が今、最高の形で生きた!
「ハァッ!」
右足を軸に腰を右に回し、アンソニーの右脇腹に左の蹴りを叩き込んだ!
「ぐふ・・・ッ!」
「ダラァッ!」
左の蹴りがまともに入り、アンソニーの体が前のめり崩れてくる。
俺はそのまま右の拳を真っすぐに出し、アンソニーのがら空きの顔面を撃ち抜いた!
この男、やはり魔法使いと変わらない、肉弾戦はまったくの素人だ!
右の拳がまともに入り倒れそうになったが、アンソニーは踏みとどまった。
しかし膝が震えていて、ダメージがはっきりと見て取れる。
いける!
「ハァッ!」
一歩で距離を詰めて、真っすぐに突き出した左拳が、アンソニーの左頬に入る。
左拳を引くと同時に、右拳で左の側頭部を殴り抜く!
ヨロヨロと後ずさりをするが、アンソニーはこれでも倒れなかった。
だが、ダメージは大きい。ここで決める!
俺はさらに追いすがり懐に入り込むと、右膝を立ててアンソニーの腹にめり込ませた!
上半身が折れて頭が下がってきたところへ、右拳を振り上げて顎を撃ち抜いた。
顎が跳ね上がったところへ、駄目押しの右の蹴りを腹部へ叩き込む!
よし!決まっ・・・・・!?
「・・・な、に?」
十分な手ごたえだった。
魔法使いの俺は決して力がある方ではない。
だが、ジョルジュとリン姉に鍛えられて、体術を学び、そこらの体力型よりもずっと筋力をつけた自信はある。
こいつの体付きは、普通の魔法使いと変わらない。
だが、なぜだ?
「な、なんで・・・倒れない?」
腰を折って頭が下がり、膝が折れて今にも倒れそうだった。
顔は見えないが血が滴り落ちて、雪の上に赤く色を付けている事からも、確かなダメージを与えている事は間違いない。
だが、アンソニーは倒れなかった。
体力型でないこいつが耐えられるほど、俺の攻撃は軽くない。
これだけまともに入れているのに、まだ立っている事が信じられない。
「くっ、しぶといヤツだ!」
更に踏み込んで、アンソニーの腹に右の拳を突き刺す!
「カッ・・・ア・・・・・」
深々と刺さった拳がめり込むと、アンソニーは声にならない呻きをもらした。
どうだ!?これでもまだ倒れな・・・ッ!
腹に入れた右拳を、アンソニーが両手で掴んできた!
「くっ!」
直感でまずいと感じた。精霊使いの力は未知のものが多い。掴まれた事でなにをされると分からない。
俺は力まかせにアンソニーの両手を振り払うと、大きく後ろに飛んで距離を取った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が切れる・・・
俺自身、まだ瞳の力で受けたダメージが残っている。正直かなり苦しい。
だが、こいつもまだ反撃の態勢を整える事ができていない。
追撃をする好機であり、ここでたたみかけて仕留めるべきだ。
だがこの男の不気味なまでのタフさ、そして右手を掴まれた時の、言い表せない異質な恐怖が、俺の足を止めていた。
「ごふっ・・・ぶっ・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アンソニーは咳込みながら、口に溜まった血を吐き出した。
息も大きく切られしている。やはりダメージは大きい。
どうする?ここで行くべきか?
この好機を逃す事が、どれだけ大きな事かは分かっている。
だが肌で感じる危うさ、全身が警告を発していた。
瞳の力を受けたから、慎重になり過ぎているのかもしれない。
だが、それでも今行く事は危険だ。こいつの力を、精霊使いの力を俺はほとんど知らない。
こいつの異常なタフさが、精霊の力に関係あるのか?
その謎が分からない限り、異質なものにうかつに近づくことはできない。
「・・・・・貴様、魔法使いのくせに、その技と動きはなんだ?」
やがてアンソニーは呼吸を整えると、ゆっくりと顔を上げて俺を見た。
俺は再び視線を下げた。
こいつの顔、目を見てはいけない。
目を合わせれば、再び体内に熱を送られてしまう。
一度は耐えられた。鍛えた体と精神の賜物としか言えないが、なんとか耐えぬいた。
だがもう一度あれを受ければ、どうなるか分からない。
こいつとは目を合わせずに戦うしかない。
「・・・魔法使いでも、訓練を積めば体術は取得できる」
「ほぅ・・・だったら、今がチャンスだぞ。この通り、私のダメージは大きい。かかって来ないのか?」
視線を下げているので顔は見れないが、息遣いで分かる。間違いなくアンソニーのダメージは深い。
足を見れば震えているのも分かる。ギリギリで立っているんだ。
だが、この誘いはなんだ?
まるでわざと攻撃を受けたがっているようだ。
「・・・魔法使いの戦い方で倒してやるよ」
俺は両手に風を魔力を集め、鋭い風の刃をつくりだした。
直感で判断した。こいつに接近戦は危険だ。離れて魔法で倒す!
「・・・勘が良いんだな。だが、もう遅い」
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