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【867 カエストゥス 対 帝国 ①】

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なにかこだわりがあって大剣を選んだわけではない。
ただ、元々腕力には自信があったし、他の体力型が代わり映えのしない普通の鉄の剣を選ぶので、他人と違う物を使ってみたかったという気持ちはあった。

ルチルが小回りが効いて、スピードも生かせるシャムシールを選んだから、私は腕力を生かして、一撃必殺というものがいい。それなら二人で足りないものを補える。

それが私が大剣を選んだ理由だ。




甲冑を身に着けた大柄な男が、振りかぶった剣を私の頭に振り下ろす。
胴ががら空きだぞ?女の細腕ではその甲冑を貫けないと思ったか?

フッ!と息を吐き出す。右足を一歩深く踏み込んで、男の剣をかいくぐると、両手で握った剣を左から右へと一線する!
剣が甲冑にぶつかり、その侵入を防ごうと甲冑が抵抗をするが、一瞬の後に鉄は砕かれ、刃が肉にめりこむ感触が腕に伝わって来た。

「はぁッ!」

そのまま大剣を振り抜くと、男の胸から上が腰から離れて宙を舞い、血をまき散らしながら回転し、重く大きな音を立てて地面に落ちた。


・・・いい感触だ。体も温まってきた。

程良い高揚感、そして緊張感に私の集中力が高められていく。

ヤヨイさんと手合わせをしていた時、たまにこういう状態になる時があった。
結局一度も勝てなかったけど、こういう精神状態の時はいつもより食らいつけたし、ヤヨイさんを本気にさせる事ができた。


「カエストゥスーーーーーッ!」

背中から斬りかかってきた兵士の剣を、前方に跳んで回転して躱す。

「なにィッツ!?」
「見え見えだ」

着地と同時に後ろに跳んで、そのまま剣を右から左へと一線させる!
兵士の首を刎ね飛ばすと、私はそのまま敵陣につっこんだ。

「あの女だ!金髪のあの女をやれ!」

私の動きに警戒したようだ。まっすぐに向かって来る私に、部隊長らしい男が剣を向けて声を張り上げる。

「ふん、今の私を斬れるかな?」

全てが遅い。正面から斬りかかってくる兵士の剣を身を翻して躱し、繰り出される槍を剣で斬り払う。撃ち出される爆裂弾、火球を飛んで躱すと、そのまま剣を振り上げて帝国兵達の頭上から斬りつけた!

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!」


ヤヨイさん、ルチル、見てて!私の剣でカエストゥスを勝利に導いてみせる!





「ぬるいなぁ、帝国は大陸最強の軍事国家っつぅけどよ、師団長以外は雑魚ばっかなんじゃねぇか?」

首に巻いた水色のマフラーは、俺の魔道具、反作用の糸だ。
俺自身は白魔法使いだが、この魔道具は俺の魔力を、別系統の魔力に変換して使う事ができる。

「ば、バカな!お、俺の剣を、そんな布切れでッ!?」

「マフラーだよ。マフラー知らねぇのか?」

左手に握ったマフラーの先端で、帝国兵の剣を受け止める。
マフラーの先端は青い光を放っている。これは青魔法の結界だ。

そして動揺する帝国兵に対してぶつけるのは、マフラーのもう片方の先端。
バチバチと弾けてる魔力は、破壊のエネルギー!

「オラァーーーッ!」

爆発魔法の力を込めたマフラーが、帝国兵の胸を撃ち砕いた。
砕け散った鎧の破片を撒き散らしながら、空中へと打ち上げられる帝国兵。この一発で絶命したらしく、頭から真っ逆さまに落下し、そのまま動く事はなかった。

そして俺は自分を囲む帝国兵達に、右手に持った水色のマフラーをプラプラと振って見せた。


「次、どいつがやんだよ?それともまとめてかかってくるか?」


こいつら全員、吹っ飛ばしてやるぜ!
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