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【846 ぶつかり合う瞳】
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「エリン、あんたのソレは天性のものだね。もちろんエリンの努力があってこそだけど、持って生まれたエリンだけの武器だよ。その上段からの降り下ろしは、私も受け太刀できないかもしれない」
以前ペトラ隊長と稽古をしていた時、私の上段からの降り下ろしを見た隊長は、驚きながらも感心したように褒めてくれたのだ。
「あ、ありがとうございます。でも、隊長が受け太刀できないなんて言い過ぎですよ」
嬉しかった。ペトラ隊長は誰かの技を褒めるなんてめったにない。
それは部下に求める技量の高さゆえだ。ペトラ隊長は、前隊長のドミニク様が命を失ったのは、自分に力が無かったからだと思っている。だからこそ訓練は厳しい。
音を上げる隊員もいるけど、私は隊長が自分自身に一番厳しく、そして厳しさの理由は誰にも死んでほしくないからだと知っているから、何があっても付いていくと決めている。
「いや、エリンのソレは、エリンが思ってる以上にすごいよ。そう言えば、エリンって素振りの時も上段が多かったよね?」
上段からの降り下ろしは、確かに一番やりやすい。
だから私は素振りの時も、自然と上段が多くなっていた。
「あ、はい。これが一番やりやすくて・・・すみません、もっと色々やって、攻撃の幅を増やさないといけないんですが・・・」
「いや、エリンはそれでいいよ。なるほど・・・きっと一番体に合うんだな。だから自然と上段ばかりやってしまうんだ。いいかいエリン。誰にも負けないものが一つあるのは大きな強みだ。その絶対の武器を磨いていきなよ。少なくとも私は、あんたの上段は絶対に受けたくないと思ったよ」
隊長の言葉は私に自信をくれた。
私はなんでもできる方がいいと思っていた。弱点を無くして、幅広い戦い方を身に着ける。
それでこそ色々な場面に対応できると。
けれど違った。
隊長の言う通り、得意な物を唯一無二の武器にするんだ。
相手に合わせる事はない。私の戦い方をすればいいんだ。
「うぐぅ・・・よ、よくもやってくれたなァァァァァー---ーッツ!」
キャシーを斬りつけたエリンは、そのまま重力に従い落下していく。
地上に落ちていくエリンを睨みつけると、キャシーは両手に集めた魔力を、氷の刃へと作り替えた。
「串刺しになるがいい!」
氷の初級魔法 刺氷弾!
落下するエリンを狙い、強い憎しみを込めた鋭く尖った氷が撃ち放たれた!
エリンは地上にぶつかる寸前で体を縦に回転させると、左手と両足で着地を決める。
そしてすかさず前方に跳ぶと同時に、一瞬前に立った場所に、いくつもの大きな氷柱が突き刺さった!
「手応えはあったが、やはりあの炎の防御の上からでは浅かったか・・・」
エリンは冷静だった。剣先で感じたものは、確かに肉を切り裂いた感触。
だが骨までは届いていない。
ダメージは与えても、キャシーから戦う力を奪うまでには至らないだろう。そう予想はしていた。
しかし、それでも体を斬られたのだ。すぐに反撃に転じられるわけはない。
「この女・・・とんでもない執念だ。仇と言っていたが、恋人か家族か・・・」
休む間もない。エリンの背中を追うように、間髪入れずに氷柱が次々と迫り来る。
足を動かし体を捻り、エリンは降り注ぐ氷柱を躱していく。
頬をかすめた氷柱に、一筋の赤い血が付く。
切れた青い髪が数本、風に乗り空へと消えていく。
「・・・気持ちは分かるよ。私もヤヨイさんとルチルさん、尊敬する二人の先輩を亡くしたから。だからこそ言わせてもらう!」
ルチルはそこで足を止めて振り返ると、両手で握り締めた剣を頭上高く掲げて降り下ろした!
その一太刀で、迫る無数の刺氷弾を粉砕してみせた。
「くっ、この女・・・なんだその剣の威力は!?」
またしても見えなかった。
そして何発も放った刺氷弾が、ただの一太刀で粉々に砕かれた事に、キャシーの顔色が変わる。
警戒からか攻撃の手が止まると、エリンは上空に立つ赤紫色の髪の女に剣を突きつけた。
キャシーの憎悪に満ちた金色の瞳と、エリンの碧い瞳がぶつかり合う。
大切な人を失う気持ちが分かるのなら、どうしてこんな戦争をしかけた?
自分だけが被害者だと思ってるのか!?
「あんたなんかに絶対負けない!私の剣でその歪んだ心を叩き斬ってやる!」
強い怒りを瞳に宿し、エリンは声を張り上げた!
以前ペトラ隊長と稽古をしていた時、私の上段からの降り下ろしを見た隊長は、驚きながらも感心したように褒めてくれたのだ。
「あ、ありがとうございます。でも、隊長が受け太刀できないなんて言い過ぎですよ」
嬉しかった。ペトラ隊長は誰かの技を褒めるなんてめったにない。
それは部下に求める技量の高さゆえだ。ペトラ隊長は、前隊長のドミニク様が命を失ったのは、自分に力が無かったからだと思っている。だからこそ訓練は厳しい。
音を上げる隊員もいるけど、私は隊長が自分自身に一番厳しく、そして厳しさの理由は誰にも死んでほしくないからだと知っているから、何があっても付いていくと決めている。
「いや、エリンのソレは、エリンが思ってる以上にすごいよ。そう言えば、エリンって素振りの時も上段が多かったよね?」
上段からの降り下ろしは、確かに一番やりやすい。
だから私は素振りの時も、自然と上段が多くなっていた。
「あ、はい。これが一番やりやすくて・・・すみません、もっと色々やって、攻撃の幅を増やさないといけないんですが・・・」
「いや、エリンはそれでいいよ。なるほど・・・きっと一番体に合うんだな。だから自然と上段ばかりやってしまうんだ。いいかいエリン。誰にも負けないものが一つあるのは大きな強みだ。その絶対の武器を磨いていきなよ。少なくとも私は、あんたの上段は絶対に受けたくないと思ったよ」
隊長の言葉は私に自信をくれた。
私はなんでもできる方がいいと思っていた。弱点を無くして、幅広い戦い方を身に着ける。
それでこそ色々な場面に対応できると。
けれど違った。
隊長の言う通り、得意な物を唯一無二の武器にするんだ。
相手に合わせる事はない。私の戦い方をすればいいんだ。
「うぐぅ・・・よ、よくもやってくれたなァァァァァー---ーッツ!」
キャシーを斬りつけたエリンは、そのまま重力に従い落下していく。
地上に落ちていくエリンを睨みつけると、キャシーは両手に集めた魔力を、氷の刃へと作り替えた。
「串刺しになるがいい!」
氷の初級魔法 刺氷弾!
落下するエリンを狙い、強い憎しみを込めた鋭く尖った氷が撃ち放たれた!
エリンは地上にぶつかる寸前で体を縦に回転させると、左手と両足で着地を決める。
そしてすかさず前方に跳ぶと同時に、一瞬前に立った場所に、いくつもの大きな氷柱が突き刺さった!
「手応えはあったが、やはりあの炎の防御の上からでは浅かったか・・・」
エリンは冷静だった。剣先で感じたものは、確かに肉を切り裂いた感触。
だが骨までは届いていない。
ダメージは与えても、キャシーから戦う力を奪うまでには至らないだろう。そう予想はしていた。
しかし、それでも体を斬られたのだ。すぐに反撃に転じられるわけはない。
「この女・・・とんでもない執念だ。仇と言っていたが、恋人か家族か・・・」
休む間もない。エリンの背中を追うように、間髪入れずに氷柱が次々と迫り来る。
足を動かし体を捻り、エリンは降り注ぐ氷柱を躱していく。
頬をかすめた氷柱に、一筋の赤い血が付く。
切れた青い髪が数本、風に乗り空へと消えていく。
「・・・気持ちは分かるよ。私もヤヨイさんとルチルさん、尊敬する二人の先輩を亡くしたから。だからこそ言わせてもらう!」
ルチルはそこで足を止めて振り返ると、両手で握り締めた剣を頭上高く掲げて降り下ろした!
その一太刀で、迫る無数の刺氷弾を粉砕してみせた。
「くっ、この女・・・なんだその剣の威力は!?」
またしても見えなかった。
そして何発も放った刺氷弾が、ただの一太刀で粉々に砕かれた事に、キャシーの顔色が変わる。
警戒からか攻撃の手が止まると、エリンは上空に立つ赤紫色の髪の女に剣を突きつけた。
キャシーの憎悪に満ちた金色の瞳と、エリンの碧い瞳がぶつかり合う。
大切な人を失う気持ちが分かるのなら、どうしてこんな戦争をしかけた?
自分だけが被害者だと思ってるのか!?
「あんたなんかに絶対負けない!私の剣でその歪んだ心を叩き斬ってやる!」
強い怒りを瞳に宿し、エリンは声を張り上げた!
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