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【844 最も恐ろしい相手】
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「ジョルジュ様、敵陣から一人、深紅のローブを纏った女が出てきました!」
「・・・深紅ならば幹部クラスだな。一人か?」
「いえ、追うようにして黒魔法使いも出てきました。数は・・・ざっと、50人程です」
深紅のローブを纏った、赤紫色の髪の女が一人飛び出すと、少し遅れて黒いローブの集団が風を纏い空へと走り出した。
自分達との距離はおよそ2キロ程度だが、互いの移動速度を考えればほんの数分で激突する事になるだろう。
「っ、ジョルジュ様、投げられました!今度はやや左、ジョルジュ様の正面です!」
「この敵、狙いが正確だな。俺達の姿が視認できているとは思えんが、魔道具?あるいは・・・勘か?」
投擲が始まってから感じていた。
この敵は、確実に俺達に狙いを定めて投げている。
エリンの話しでは、誰かが口添えをしているわけではなさそうだから、一人でやっているわけだ。
この敵がエリンと同じタイプの魔道具を持っていれば、それも可能だろう。
常識外れの腕力、そしてこの狙いを付ける能力。
魔道具かどうか分からんが、相当やっかいな相手だという事は間違いない。
「見えた!エリン飛べ!」
槍の先端が見えた。凄まじいスピードに最初は驚かされたが、これだけ何度も見せられればいい加減に着弾までの感覚も慣れる。
エリンが右に跳び、同時に俺も左へ跳ぶ。
一瞬後に鋼鉄の巨槍が俺達の間を通過していく。槍が走り過ぎた後には、体が吹き飛ばされるような暴風が体を打ち付ける。姿勢を低く、足腰に力を入れて衝撃に耐える。
「・・・距離が近づいたからか・・・ずいぶんと勢いがあるな」
地面から巻き上げられた雪も相まって、全身に冷たい飛沫がぶつかる。
「・・・ジョルジュ様、敵の陣営まであと一キロ程ですが・・・」
上空を見上げて話すエリンに、俺も顔を上げる。
「ああ・・・ここでやるぞ」
陽の遮られた灰色の空からは、少し湿った雪がとめどなく降り注いでくる。
俺もエリンも雪を被った頭は濡れ、両肩も背中も雪が付着して白く染まっている。
しかし空に浮かび、俺達を見下ろす赤紫色の髪の女は、一切の雪を被っていなかった。
猛々しく燃え盛る炎の竜は、女の気迫そのものと言っていいだろう。
その金色の目は、尋常ならざぬ殺意を漲らせていた。
「・・・カエストゥス・・・」
その一言に込められた憎しみは、女の復讐心がどれほど根深いかを物語っていた。
爆発寸前の炎、天高く登り空をも焼き尽くさんとする竜が、ジョルジュとエリンに大きな顎を開き襲い掛かる!
キャシー・タンデルズの灼炎竜が、戦いの火ぶたを切って落とした。
「ほう、なかなかでかいな」
頭から一飲みにされそうな顎を後方に跳んで躱し、間髪入れずに弓を構える。
上空に浮かぶ女は一か所に留まっていない。竜を操りながら空を旋回し、的を絞らせないように動いている。
「・・・・・そこだ」
風の精霊は使えない。だが精霊の力がなくとも、風を読む事はできる。
経験から敵の動きを予測もできる。
俺の放った鉄の矢は、吸い込まれるように女の心臓に突き刺さった・・・かに見えた。
「なめるなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッツ!」
キャシーの身に纏う炎が、その力を爆発させた。
一気に膨れ上がった炎が、ジョルジュの鉄の矢を弾き返す。
「カエストゥス!フルトン様の仇は私が討つ!ここが貴様達の墓場だァァァーーーッ!」
その気迫は大気を震わせ、炎の竜はより大きく唸りを上げていく。
「・・・死を覚悟している・・・いや、最初から相打ち狙い、生きて帰るつもりがないのか」
こういうヤツは実力差なんて関係ない。
命を護る考えがある者と、命さえ武器に使う者では、勝負の際で差が出る。
最も厄介で、最も恐ろしい。
ジョルジュ・ワーリントンと睨み合う深紅のローブの復讐者は、これまでで最恐の相手として立ちはだかった。
「・・・深紅ならば幹部クラスだな。一人か?」
「いえ、追うようにして黒魔法使いも出てきました。数は・・・ざっと、50人程です」
深紅のローブを纏った、赤紫色の髪の女が一人飛び出すと、少し遅れて黒いローブの集団が風を纏い空へと走り出した。
自分達との距離はおよそ2キロ程度だが、互いの移動速度を考えればほんの数分で激突する事になるだろう。
「っ、ジョルジュ様、投げられました!今度はやや左、ジョルジュ様の正面です!」
「この敵、狙いが正確だな。俺達の姿が視認できているとは思えんが、魔道具?あるいは・・・勘か?」
投擲が始まってから感じていた。
この敵は、確実に俺達に狙いを定めて投げている。
エリンの話しでは、誰かが口添えをしているわけではなさそうだから、一人でやっているわけだ。
この敵がエリンと同じタイプの魔道具を持っていれば、それも可能だろう。
常識外れの腕力、そしてこの狙いを付ける能力。
魔道具かどうか分からんが、相当やっかいな相手だという事は間違いない。
「見えた!エリン飛べ!」
槍の先端が見えた。凄まじいスピードに最初は驚かされたが、これだけ何度も見せられればいい加減に着弾までの感覚も慣れる。
エリンが右に跳び、同時に俺も左へ跳ぶ。
一瞬後に鋼鉄の巨槍が俺達の間を通過していく。槍が走り過ぎた後には、体が吹き飛ばされるような暴風が体を打ち付ける。姿勢を低く、足腰に力を入れて衝撃に耐える。
「・・・距離が近づいたからか・・・ずいぶんと勢いがあるな」
地面から巻き上げられた雪も相まって、全身に冷たい飛沫がぶつかる。
「・・・ジョルジュ様、敵の陣営まであと一キロ程ですが・・・」
上空を見上げて話すエリンに、俺も顔を上げる。
「ああ・・・ここでやるぞ」
陽の遮られた灰色の空からは、少し湿った雪がとめどなく降り注いでくる。
俺もエリンも雪を被った頭は濡れ、両肩も背中も雪が付着して白く染まっている。
しかし空に浮かび、俺達を見下ろす赤紫色の髪の女は、一切の雪を被っていなかった。
猛々しく燃え盛る炎の竜は、女の気迫そのものと言っていいだろう。
その金色の目は、尋常ならざぬ殺意を漲らせていた。
「・・・カエストゥス・・・」
その一言に込められた憎しみは、女の復讐心がどれほど根深いかを物語っていた。
爆発寸前の炎、天高く登り空をも焼き尽くさんとする竜が、ジョルジュとエリンに大きな顎を開き襲い掛かる!
キャシー・タンデルズの灼炎竜が、戦いの火ぶたを切って落とした。
「ほう、なかなかでかいな」
頭から一飲みにされそうな顎を後方に跳んで躱し、間髪入れずに弓を構える。
上空に浮かぶ女は一か所に留まっていない。竜を操りながら空を旋回し、的を絞らせないように動いている。
「・・・・・そこだ」
風の精霊は使えない。だが精霊の力がなくとも、風を読む事はできる。
経験から敵の動きを予測もできる。
俺の放った鉄の矢は、吸い込まれるように女の心臓に突き刺さった・・・かに見えた。
「なめるなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッツ!」
キャシーの身に纏う炎が、その力を爆発させた。
一気に膨れ上がった炎が、ジョルジュの鉄の矢を弾き返す。
「カエストゥス!フルトン様の仇は私が討つ!ここが貴様達の墓場だァァァーーーッ!」
その気迫は大気を震わせ、炎の竜はより大きく唸りを上げていく。
「・・・死を覚悟している・・・いや、最初から相打ち狙い、生きて帰るつもりがないのか」
こういうヤツは実力差なんて関係ない。
命を護る考えがある者と、命さえ武器に使う者では、勝負の際で差が出る。
最も厄介で、最も恐ろしい。
ジョルジュ・ワーリントンと睨み合う深紅のローブの復讐者は、これまでで最恐の相手として立ちはだかった。
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