異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
831 / 1,370

830 復帰

しおりを挟む
8月に入って十日が過ぎた日の午後、俺はメインレジに立って防具のメンテをしていた。

各部門で専用のレジはあるけど、出入り口の横には買い取りカウンターと会計レジを設置している。
店内を全部見回って、買う物が全て決まってから会計をする人が多いから、このレジを利用するお客が一番多い。そのためメインレジと呼んでいる。


「おいおいおい!アラやん!レイチーが帰ってきたぞ!」

興奮した様子のジャレットさんが、急ぎ足でメインレジに入って来た。

「え?レイチェルが目を覚ましたって、この前聞きましたけど?」

なんだかちょっと前にもこんな事があったなと思い、作業の手を止めて言葉を返す。
レイチェルが目を覚ましたって話しはこの前聞いたけど、なんでまた同じ話しをするんだ?


「・・・・・はぁ!?なに寝ぼけてんだよ!帰ってきたんだよ!レイチェルが帰ってきたの!今事務所にいんぞ!さっさと行ってこい!」

思い切り眉間にシワを寄せて俺を睨んでくる。
一瞬遅れて、俺はようやくジャレットさんの言葉を理解した。


「・・・・・え!?・・・・・えぇぇぇーーーーーっつ!?」


耳の穴かっぽじっておけ!と軽く頭をはたかれながらも、俺はレジ当番を代わってくれたジャレットさんにお礼を言って、事務所に急いだ。





事務所のドアを開けると、沢山の笑い声が耳に飛び込んで来た。
その原因は部屋の真ん中でみんなに囲まれた、赤い髪の女性、レイチェルだ。

本当に戻って来たんだ。カチュアもシルヴィアさんも、みんなが笑顔でレイチェルと話している。

リカルドもレイチェルに何か話しかけているが、右手に袋入りのクッキーを持っているのがどうしても目につく。テーブルに置けばいいのに、誰かにとられるとでも思っているのだろうか?
いや、ユーリが冷たく睨んでいるのを見ると、あのクッキーは元々ユーリの物の可能性が高い。
一つくれと言って、全部自分で食う気か?こいつは本当にブレない。


「・・・お!?アラタ!久しぶりだな。この前はお見舞いありがとう。おかげさまでこの通り回復したよ」

俺に気付いたレイチェルが、右手を挙げて声をかけてくれる。
いつも通りのさっぱりとした話し方に、レイチェルらしさを感じる。

「・・・レイチェル、良かった・・・元気になったんだな!」

エルウィンから話しを聞いた翌日、みんなでシフトを調整して、レイチェルのお見舞いに行って来た。
その時はしばらく寝ていたからか、少し痩せたようにも見えたし、レイチェルも少しダルいとは言っていた。けれど今は顔色も良く見えるし、みんなと笑って話しているところを見ると、ちゃんと回復できたようだ。


「・・・少し、髪伸びた?」

「おや?キミもそういうところに気が付くんだな?」

レイチェルは前髪を摘まんで、そろそろ切るか、と呟いた。

「そう言えば、俺もぼちぼちかな」

ふと、自分もだいぶ髪が伸びてきたなと思い、手櫛を入れて見た。

「アラタもだいぶ伸びてきたな?よし、また私が切って・・・あ、カチュア、アラタの髪だが、私が切ってもいいかい?前に言ったと思うけど、最初にアラタがこっちに来た時、私が髪を切ったんだよ。いやいや、あの時のアラタはもっさりしてたなぁ~」

「あははは!そう言えばそんな事言ってたね。アラタ君、目が隠れるくらい前髪長かったって!今じゃ全然想像できないよ」

レイチェルとカチュアが意気投合して笑っている。
思い返すと日本にいた頃は、髪を切りにいくのも面倒くさくて、伸ばしっぱなしにしていたんだった。

「レイチェル、じゃあお願いしていいかな?私よりレイチェルの方が上手だし」

「うん、じゃあアラタ、そういう事だから明日にでも切らせてもらうよ。前と同じく短くスッキリでいいね?」

俺の意見を聞かずに髪型まで決まっていくが、なんだかこの感じ、いつものレイジェスだなって感じがする。

「おや?アラタ、ニヤニヤしてどうした?気持ち悪いぞ」

「え!?い、いや、気持ち悪いってひどいな!こ、これはその・・・店がいつもの雰囲気になったから・・・ちょっとその・・・」

いつの間にか表情が緩んでいたようで、レイチェルは俺を訝し気に見る。

「・・・私が復帰した事を喜んでくれている・・・って事かい?」

「あ~・・・面と向かってだと照れる・・・けど、うん、そりゃそうだよ。レイチェルがいないと、なんかレイジェスって感じがしない」

さすがに目を見て言うのは恥ずかしいので、少し視線を逸らすと、レイチェルはそんな俺を見て優しく笑った。

「ふっ・・・まったくキミッてヤツは・・・嬉しい事言ってくれるじゃないか。アラタ、またよろしくな」

「ん、ああ、また今日からよろしくな、レイチェル」


レイチェルが右手を顔の高さに挙げる。
俺はその手に合わせるように、パシッと軽く打ち合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...