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810 アゲハの見立て
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「へぇー、ここがクインズベリーの城かぁ・・・」
城に着くと、アゲハが眩しそうに目を細め、日差しを防ぐように眉の上に手を当てた。
時刻は午前9時30分、だんだんと陽が高くなってきた頃だ。
「ふふ、アゲハは帝国から来たから、見るのは初めてなのね?帝国と比べてどうかしら?」
クインズベリーと帝国を比べる事は、アゲハにしかできない。
シルヴィアは何気ない軽い調子で聞いているが、この問いかけは両国が交戦状態に入った今、軽い質問ではなかった。
「そうだなぁ~・・・この四隅の塔が、四勇士のいるって言う護りの塔?」
アゲハは城壁の四つ角にそびえ立つ、四つの塔を眺めて指差した。
中心の城を護るように配置された石造りの塔の最上階には、クインズベリーの守護神と呼ばれる、四勇士が座している。
「ええ、そうよ。私達は偽国王との戦いで、この四つの塔を上って四勇士と戦ったの。四勇士はそれぞれ大障壁っていう結界の魔道具を持っているんだけど、四人が同時に大障壁を使用すると、この城を包み込める程大きな結界を張る事ができるのよ」
シルヴィアの説明を聞いたアゲハは、一度頷くと口を閉じて城を見回した。
大障壁の有用性を考えに入れて、帝国との戦力を推し量っているのだろう。
その真剣な表情を見て、アラタとシルヴィアは、アゲハの考えがまとまるまで、一言も話さずに待った。
「・・・クインズベリーは、意外と粒ぞろいって印象なんだよね。レイチェルがカシレロを倒したのも本当に驚いた。そのレイチェルとあんた達レイジェスのメンバー、そしてゴールド騎士に四勇士・・・多分、幹部クラスとの戦いでは引けを取らないだろうね・・・」
アゲハはそこで言葉を切ると、振り返ってアラタとシルヴィアに目を向けた。
「けど、闇の力にどれだけ対抗できるかな?アラタの光の力と、店長の光魔法ってのは聞いたけど、それだけでしょ?今の帝国には、闇の力を自在に使うヤツがどんどん増えている。それに兵力が違うよね。帝国の兵士はクインズベリーの数倍もいるから、この差を埋められない限り、クインズベリーが勝てる可能性は薄いだろうね」
「・・・そう、難しいとは思ってたけど、両国を知っているアゲハから聞くと、やっぱり厳しく感じるわね」
アゲハの分析を聞いて、シルヴィアは眉を潜めた。
勝算が無いわけではないが、やはり大陸一の軍事国家は圧倒的な兵力を備えているようだ。
「アゲハ、クインズベリーはロンズデールと同盟を結んだ。二国で協力すれば帝国とも戦えるんじゃないのか?」
そう、クインズベリーだけなら勝算は低い。
だが今はロンズデールという同盟国ができたのだ。二国で力を合わせれば、いかにブロートン帝国といえども、五分に渡り合えるはずだ。
「・・・ロンズデールねぇ、同盟の話しはちょっと聞いてたけど、正直心配だね。私が帝国にいた時のロンズデールは、国王が日和見主義だったし、自慢の魔道剣士は信用ならなかったしね。アラタ、その同盟本当に大丈夫なの?」
実際にロンズデールに行って戦ってきたアラタやレイチェルと違い、帝国にいたアゲハは、以前の帝国の言いなりになっていたロンズデールのイメージが強い。
「アゲハ、言ってる事は分かるけど、アンリエール様もロンズデール国王と話して、本当に変わったとおっしゃてたわ。信用していいと思うわよ」
「う~ん・・・この国の女王陛下がそう言うんなら・・・まぁ、ロンズデールが味方に付くんなら、けっこう頼れるんじゃない?魔道剣士隊はあんたらが主力を倒したみたいだけど、それだけじゃないだろうしね。二つの国が力を合わせて帝国と戦うんなら、数の差も埋めれると思うよ。ただ・・・」
「・・・ただ?」
腕を組んで視線を空に向けるアゲハに、アラタは言葉尻を繰り返した。
「・・・最終的にあの闇をどうにかできなきゃ、帝国には勝てないと思う。それがアタシの見立てだね。命をかけても、勝てる手段がなけりゃ勝てない・・・」
・・・そろそろ行かない?
小さく息を付いて、左手の親指を城に向ける。帝国を知るアゲハだからこそ、この戦いがどれだけ厳しいものかを感じ取っているのだろう。
口元に笑みを浮かべているが、ある種の覚悟を決めた表情をしていた。
「・・・そうね、いつまでもここに立っていてもね」
「はい・・・アンリエール様をお待たせするわけにもいかないし・・・」
先頭を進むアゲハの背中を見て、アラタとシルヴィアも城内へと足を進めた。
城に着くと、アゲハが眩しそうに目を細め、日差しを防ぐように眉の上に手を当てた。
時刻は午前9時30分、だんだんと陽が高くなってきた頃だ。
「ふふ、アゲハは帝国から来たから、見るのは初めてなのね?帝国と比べてどうかしら?」
クインズベリーと帝国を比べる事は、アゲハにしかできない。
シルヴィアは何気ない軽い調子で聞いているが、この問いかけは両国が交戦状態に入った今、軽い質問ではなかった。
「そうだなぁ~・・・この四隅の塔が、四勇士のいるって言う護りの塔?」
アゲハは城壁の四つ角にそびえ立つ、四つの塔を眺めて指差した。
中心の城を護るように配置された石造りの塔の最上階には、クインズベリーの守護神と呼ばれる、四勇士が座している。
「ええ、そうよ。私達は偽国王との戦いで、この四つの塔を上って四勇士と戦ったの。四勇士はそれぞれ大障壁っていう結界の魔道具を持っているんだけど、四人が同時に大障壁を使用すると、この城を包み込める程大きな結界を張る事ができるのよ」
シルヴィアの説明を聞いたアゲハは、一度頷くと口を閉じて城を見回した。
大障壁の有用性を考えに入れて、帝国との戦力を推し量っているのだろう。
その真剣な表情を見て、アラタとシルヴィアは、アゲハの考えがまとまるまで、一言も話さずに待った。
「・・・クインズベリーは、意外と粒ぞろいって印象なんだよね。レイチェルがカシレロを倒したのも本当に驚いた。そのレイチェルとあんた達レイジェスのメンバー、そしてゴールド騎士に四勇士・・・多分、幹部クラスとの戦いでは引けを取らないだろうね・・・」
アゲハはそこで言葉を切ると、振り返ってアラタとシルヴィアに目を向けた。
「けど、闇の力にどれだけ対抗できるかな?アラタの光の力と、店長の光魔法ってのは聞いたけど、それだけでしょ?今の帝国には、闇の力を自在に使うヤツがどんどん増えている。それに兵力が違うよね。帝国の兵士はクインズベリーの数倍もいるから、この差を埋められない限り、クインズベリーが勝てる可能性は薄いだろうね」
「・・・そう、難しいとは思ってたけど、両国を知っているアゲハから聞くと、やっぱり厳しく感じるわね」
アゲハの分析を聞いて、シルヴィアは眉を潜めた。
勝算が無いわけではないが、やはり大陸一の軍事国家は圧倒的な兵力を備えているようだ。
「アゲハ、クインズベリーはロンズデールと同盟を結んだ。二国で協力すれば帝国とも戦えるんじゃないのか?」
そう、クインズベリーだけなら勝算は低い。
だが今はロンズデールという同盟国ができたのだ。二国で力を合わせれば、いかにブロートン帝国といえども、五分に渡り合えるはずだ。
「・・・ロンズデールねぇ、同盟の話しはちょっと聞いてたけど、正直心配だね。私が帝国にいた時のロンズデールは、国王が日和見主義だったし、自慢の魔道剣士は信用ならなかったしね。アラタ、その同盟本当に大丈夫なの?」
実際にロンズデールに行って戦ってきたアラタやレイチェルと違い、帝国にいたアゲハは、以前の帝国の言いなりになっていたロンズデールのイメージが強い。
「アゲハ、言ってる事は分かるけど、アンリエール様もロンズデール国王と話して、本当に変わったとおっしゃてたわ。信用していいと思うわよ」
「う~ん・・・この国の女王陛下がそう言うんなら・・・まぁ、ロンズデールが味方に付くんなら、けっこう頼れるんじゃない?魔道剣士隊はあんたらが主力を倒したみたいだけど、それだけじゃないだろうしね。二つの国が力を合わせて帝国と戦うんなら、数の差も埋めれると思うよ。ただ・・・」
「・・・ただ?」
腕を組んで視線を空に向けるアゲハに、アラタは言葉尻を繰り返した。
「・・・最終的にあの闇をどうにかできなきゃ、帝国には勝てないと思う。それがアタシの見立てだね。命をかけても、勝てる手段がなけりゃ勝てない・・・」
・・・そろそろ行かない?
小さく息を付いて、左手の親指を城に向ける。帝国を知るアゲハだからこそ、この戦いがどれだけ厳しいものかを感じ取っているのだろう。
口元に笑みを浮かべているが、ある種の覚悟を決めた表情をしていた。
「・・・そうね、いつまでもここに立っていてもね」
「はい・・・アンリエール様をお待たせするわけにもいかないし・・・」
先頭を進むアゲハの背中を見て、アラタとシルヴィアも城内へと足を進めた。
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