799 / 1,253
798 黒く塗りつぶされた感情
しおりを挟む
「ダラァァァー--ッツ!」
左ボディをめり込ませる。
デービスの体が前に折れて来たところを、右のアッパーで撃ち上げる。
顎が撥ね上がり、体が開いたところへ、左右の拳を連打したたみかける。
胸に腹に顔面に、まさにメッタ撃ちの状態だった。
こいつが!こいつが!こいつが全て悪いんだ!
俺を殺し、弥生さんを殺し、村戸さんを殺した!
何もかも全てこいつが悪いんだ!
だからコイツは殺してもいいんだ
胸の中に渦巻いていた黒い感情に、頭の中を塗りたくられているような感覚だった。
殴りつける拳の一発一発に殺意を込め、憎いこの男を叩きのめしたい。
骨を砕き、血を吐かせ、ぐしゃぐしゃに潰してやりたい。
「ガァァァァァー----ッツ!」
それはもはや、ボクシングのパンチと呼べるか分からない、ただ叩きつけるだけのパンチだった。
右を大きく振るって、デービスの顔面に撃ちこむ・・・・・
「ぐはぁッツ!」
「ふ~・・・すげぇ攻撃だなぁ、けどよ熱くなりすぎだぜ」
撃たれるままだったデービスだが、アラタの大振りを見逃さず、カウンターで腹にケリを叩き込んだ。
超重量級のデービスの一蹴りで、アラタは軽々と後方に飛ばされ背中から地面に落ちると、二回三回と地面を転がされた。
「ぺっ・・・ふ~、てめぇよぉ、けっこうやるけど、そんな軽いパンチじゃ、何発撃っても俺は倒せねぇぞ」
血の混じった唾を吐き出す。
鼻から流れ出る血は顎の下まで垂れ落ち、頬や目の周りは赤い痣が出来ている。
着ていたシャツは破れ、何発もの拳を撃けた跡がハッキリと残っている。
だが外傷はあっても、ダメージらしいものはまるで見えなかった。
首を左右に動かして鳴らすと、拳を握り締めて、倒れているアラタへと近づいて行く。
「ぐ、うぁぁぁぁーーーッツ!」
「あ?こりねぇな、そのツラまるで獣だな。まぁいい、てめぇみたいな野郎は・・・こうだ!」
アラタは起き上がるなり、声を張り上げながら再びデービスへと突っ込んでいった。
がむしゃらに、ただ怒りの感情をそのままに拳を振り上げる姿は、我を忘れ憎しみに支配されてしまっているようにしか見えなかった。
そしてデービスにとって、これほど簡単な相手はいなかった。
怒りとはその気迫で勢いを生み出すが、動きは単調になり、結果相手に読まれやすくなる。
脇ががら空きだぜ!
デービスは姿勢を低く突進して前方から組み付くと、流れるような動きで素早く背後に回りこむ。
そのまま腰に両手を回すと、自分の体をのけ反らせてアラタを後方に投げつけた!
バックドロップ!
受け身をとる事さえできず、アラタは硬い石畳に、肩と後頭部を叩きつけられる。
凄まじい衝撃に言葉を発する事もできず、目の前が真っ暗に染まる。
「へぇ~い、どうだ?こっちの世界じゃ誰も知らねぇ技だったが、日本人のお前なら分かるよな?バックドロップだ」
確かな手ごたえに、デービスはニヤリと笑う。
そして地面に叩きつけたアラタの腰から腕を離すと、余裕を見せるようにゆっくりと体を起こした。
デービスが腰から腕を離すと、支えを失ったアラタの下半身は力なく地面に落ちる。
「誰でも名前くらいは知ってる有名な技だけどよぉ、実際に食らった事のあるヤツは意外と少ないんじゃねぇのかな?素人がとっさに対応できるものじゃねぇんだよ・・・て言っても、頭勝ち割ったわけだし、もう聞こえてねぇ・・・あ?」
倒れているアラタを見下ろして、デービス異変に気付いた。
ヘビー級の自分が、手加減なく食らわせたバックドロップ。しかもリングではなく、堅い石畳みの上に頭から叩きつけた。死んでもおかしくない。いや、むしろ死んで当然、頭を割ったはずなのだ。
「・・・血が出てねぇ・・・だと?」
意識を失っているのは間違いない。
バックドロップを後頭部にまともに受けて、アラタの意識はそこで途切れた。
しかし、堅い石畳に頭を叩きつけられたのに、ほんの一滴の出血も無かった。
その疑問がデービスの周囲への注意を散漫にした。
「なんで・・・ぐぁッ!」
突然顔の右側面に受けた強烈な衝撃に、デービスは頭を弾かれて足をもつれさせる。
「なんだッうばぁッツ!」
なんとか足を踏みとどまらせ、攻撃を受けた右側に体を受けた瞬間、再び同じ衝撃を真正面から受けて、頭を後ろへ弾かれた。
右足を後ろに引いて倒れないように踏みとどまるが、第三、第四の衝撃波が続けて放たれ、デービスの体を撃ちつけた!
「ぐぉぉぉぉぉー--ッツ!」
立て続けに全身を撃たれ、とうとうデービスは立っている事ができずに、その巨体を地面に転がされた。
「ぐぅ、な、なんだ今のは・・・!?」
肘を着いて体を起こしたデービスの目の前には、黒い鍔付きのキャップを被り、左手の人差し指を突きつける、明るいベージュの髪の女が立っていた。
「・・・てめぇ誰だ?何しやがった?そこの男を助けたのもてめぇか?答えろや!」
「バーン!」
デービスが凄みを効かせながら立ち上がろうと腰を上げると、ケイトの引斥の爪がデービスの顔面を撃ち飛ばした。
淡々としていたが、その目は氷のように冷たかった。
左ボディをめり込ませる。
デービスの体が前に折れて来たところを、右のアッパーで撃ち上げる。
顎が撥ね上がり、体が開いたところへ、左右の拳を連打したたみかける。
胸に腹に顔面に、まさにメッタ撃ちの状態だった。
こいつが!こいつが!こいつが全て悪いんだ!
俺を殺し、弥生さんを殺し、村戸さんを殺した!
何もかも全てこいつが悪いんだ!
だからコイツは殺してもいいんだ
胸の中に渦巻いていた黒い感情に、頭の中を塗りたくられているような感覚だった。
殴りつける拳の一発一発に殺意を込め、憎いこの男を叩きのめしたい。
骨を砕き、血を吐かせ、ぐしゃぐしゃに潰してやりたい。
「ガァァァァァー----ッツ!」
それはもはや、ボクシングのパンチと呼べるか分からない、ただ叩きつけるだけのパンチだった。
右を大きく振るって、デービスの顔面に撃ちこむ・・・・・
「ぐはぁッツ!」
「ふ~・・・すげぇ攻撃だなぁ、けどよ熱くなりすぎだぜ」
撃たれるままだったデービスだが、アラタの大振りを見逃さず、カウンターで腹にケリを叩き込んだ。
超重量級のデービスの一蹴りで、アラタは軽々と後方に飛ばされ背中から地面に落ちると、二回三回と地面を転がされた。
「ぺっ・・・ふ~、てめぇよぉ、けっこうやるけど、そんな軽いパンチじゃ、何発撃っても俺は倒せねぇぞ」
血の混じった唾を吐き出す。
鼻から流れ出る血は顎の下まで垂れ落ち、頬や目の周りは赤い痣が出来ている。
着ていたシャツは破れ、何発もの拳を撃けた跡がハッキリと残っている。
だが外傷はあっても、ダメージらしいものはまるで見えなかった。
首を左右に動かして鳴らすと、拳を握り締めて、倒れているアラタへと近づいて行く。
「ぐ、うぁぁぁぁーーーッツ!」
「あ?こりねぇな、そのツラまるで獣だな。まぁいい、てめぇみたいな野郎は・・・こうだ!」
アラタは起き上がるなり、声を張り上げながら再びデービスへと突っ込んでいった。
がむしゃらに、ただ怒りの感情をそのままに拳を振り上げる姿は、我を忘れ憎しみに支配されてしまっているようにしか見えなかった。
そしてデービスにとって、これほど簡単な相手はいなかった。
怒りとはその気迫で勢いを生み出すが、動きは単調になり、結果相手に読まれやすくなる。
脇ががら空きだぜ!
デービスは姿勢を低く突進して前方から組み付くと、流れるような動きで素早く背後に回りこむ。
そのまま腰に両手を回すと、自分の体をのけ反らせてアラタを後方に投げつけた!
バックドロップ!
受け身をとる事さえできず、アラタは硬い石畳に、肩と後頭部を叩きつけられる。
凄まじい衝撃に言葉を発する事もできず、目の前が真っ暗に染まる。
「へぇ~い、どうだ?こっちの世界じゃ誰も知らねぇ技だったが、日本人のお前なら分かるよな?バックドロップだ」
確かな手ごたえに、デービスはニヤリと笑う。
そして地面に叩きつけたアラタの腰から腕を離すと、余裕を見せるようにゆっくりと体を起こした。
デービスが腰から腕を離すと、支えを失ったアラタの下半身は力なく地面に落ちる。
「誰でも名前くらいは知ってる有名な技だけどよぉ、実際に食らった事のあるヤツは意外と少ないんじゃねぇのかな?素人がとっさに対応できるものじゃねぇんだよ・・・て言っても、頭勝ち割ったわけだし、もう聞こえてねぇ・・・あ?」
倒れているアラタを見下ろして、デービス異変に気付いた。
ヘビー級の自分が、手加減なく食らわせたバックドロップ。しかもリングではなく、堅い石畳みの上に頭から叩きつけた。死んでもおかしくない。いや、むしろ死んで当然、頭を割ったはずなのだ。
「・・・血が出てねぇ・・・だと?」
意識を失っているのは間違いない。
バックドロップを後頭部にまともに受けて、アラタの意識はそこで途切れた。
しかし、堅い石畳に頭を叩きつけられたのに、ほんの一滴の出血も無かった。
その疑問がデービスの周囲への注意を散漫にした。
「なんで・・・ぐぁッ!」
突然顔の右側面に受けた強烈な衝撃に、デービスは頭を弾かれて足をもつれさせる。
「なんだッうばぁッツ!」
なんとか足を踏みとどまらせ、攻撃を受けた右側に体を受けた瞬間、再び同じ衝撃を真正面から受けて、頭を後ろへ弾かれた。
右足を後ろに引いて倒れないように踏みとどまるが、第三、第四の衝撃波が続けて放たれ、デービスの体を撃ちつけた!
「ぐぉぉぉぉぉー--ッツ!」
立て続けに全身を撃たれ、とうとうデービスは立っている事ができずに、その巨体を地面に転がされた。
「ぐぅ、な、なんだ今のは・・・!?」
肘を着いて体を起こしたデービスの目の前には、黒い鍔付きのキャップを被り、左手の人差し指を突きつける、明るいベージュの髪の女が立っていた。
「・・・てめぇ誰だ?何しやがった?そこの男を助けたのもてめぇか?答えろや!」
「バーン!」
デービスが凄みを効かせながら立ち上がろうと腰を上げると、ケイトの引斥の爪がデービスの顔面を撃ち飛ばした。
淡々としていたが、その目は氷のように冷たかった。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる