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798 黒く塗りつぶされた感情
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「ダラァァァー--ッツ!」
左ボディをめり込ませる。
デービスの体が前に折れて来たところを、右のアッパーで撃ち上げる。
顎が撥ね上がり、体が開いたところへ、左右の拳を連打したたみかける。
胸に腹に顔面に、まさにメッタ撃ちの状態だった。
こいつが!こいつが!こいつが全て悪いんだ!
俺を殺し、弥生さんを殺し、村戸さんを殺した!
何もかも全てこいつが悪いんだ!
だからコイツは殺してもいいんだ
胸の中に渦巻いていた黒い感情に、頭の中を塗りたくられているような感覚だった。
殴りつける拳の一発一発に殺意を込め、憎いこの男を叩きのめしたい。
骨を砕き、血を吐かせ、ぐしゃぐしゃに潰してやりたい。
「ガァァァァァー----ッツ!」
それはもはや、ボクシングのパンチと呼べるか分からない、ただ叩きつけるだけのパンチだった。
右を大きく振るって、デービスの顔面に撃ちこむ・・・・・
「ぐはぁッツ!」
「ふ~・・・すげぇ攻撃だなぁ、けどよ熱くなりすぎだぜ」
撃たれるままだったデービスだが、アラタの大振りを見逃さず、カウンターで腹にケリを叩き込んだ。
超重量級のデービスの一蹴りで、アラタは軽々と後方に飛ばされ背中から地面に落ちると、二回三回と地面を転がされた。
「ぺっ・・・ふ~、てめぇよぉ、けっこうやるけど、そんな軽いパンチじゃ、何発撃っても俺は倒せねぇぞ」
血の混じった唾を吐き出す。
鼻から流れ出る血は顎の下まで垂れ落ち、頬や目の周りは赤い痣が出来ている。
着ていたシャツは破れ、何発もの拳を撃けた跡がハッキリと残っている。
だが外傷はあっても、ダメージらしいものはまるで見えなかった。
首を左右に動かして鳴らすと、拳を握り締めて、倒れているアラタへと近づいて行く。
「ぐ、うぁぁぁぁーーーッツ!」
「あ?こりねぇな、そのツラまるで獣だな。まぁいい、てめぇみたいな野郎は・・・こうだ!」
アラタは起き上がるなり、声を張り上げながら再びデービスへと突っ込んでいった。
がむしゃらに、ただ怒りの感情をそのままに拳を振り上げる姿は、我を忘れ憎しみに支配されてしまっているようにしか見えなかった。
そしてデービスにとって、これほど簡単な相手はいなかった。
怒りとはその気迫で勢いを生み出すが、動きは単調になり、結果相手に読まれやすくなる。
脇ががら空きだぜ!
デービスは姿勢を低く突進して前方から組み付くと、流れるような動きで素早く背後に回りこむ。
そのまま腰に両手を回すと、自分の体をのけ反らせてアラタを後方に投げつけた!
バックドロップ!
受け身をとる事さえできず、アラタは硬い石畳に、肩と後頭部を叩きつけられる。
凄まじい衝撃に言葉を発する事もできず、目の前が真っ暗に染まる。
「へぇ~い、どうだ?こっちの世界じゃ誰も知らねぇ技だったが、日本人のお前なら分かるよな?バックドロップだ」
確かな手ごたえに、デービスはニヤリと笑う。
そして地面に叩きつけたアラタの腰から腕を離すと、余裕を見せるようにゆっくりと体を起こした。
デービスが腰から腕を離すと、支えを失ったアラタの下半身は力なく地面に落ちる。
「誰でも名前くらいは知ってる有名な技だけどよぉ、実際に食らった事のあるヤツは意外と少ないんじゃねぇのかな?素人がとっさに対応できるものじゃねぇんだよ・・・て言っても、頭勝ち割ったわけだし、もう聞こえてねぇ・・・あ?」
倒れているアラタを見下ろして、デービス異変に気付いた。
ヘビー級の自分が、手加減なく食らわせたバックドロップ。しかもリングではなく、堅い石畳みの上に頭から叩きつけた。死んでもおかしくない。いや、むしろ死んで当然、頭を割ったはずなのだ。
「・・・血が出てねぇ・・・だと?」
意識を失っているのは間違いない。
バックドロップを後頭部にまともに受けて、アラタの意識はそこで途切れた。
しかし、堅い石畳に頭を叩きつけられたのに、ほんの一滴の出血も無かった。
その疑問がデービスの周囲への注意を散漫にした。
「なんで・・・ぐぁッ!」
突然顔の右側面に受けた強烈な衝撃に、デービスは頭を弾かれて足をもつれさせる。
「なんだッうばぁッツ!」
なんとか足を踏みとどまらせ、攻撃を受けた右側に体を受けた瞬間、再び同じ衝撃を真正面から受けて、頭を後ろへ弾かれた。
右足を後ろに引いて倒れないように踏みとどまるが、第三、第四の衝撃波が続けて放たれ、デービスの体を撃ちつけた!
「ぐぉぉぉぉぉー--ッツ!」
立て続けに全身を撃たれ、とうとうデービスは立っている事ができずに、その巨体を地面に転がされた。
「ぐぅ、な、なんだ今のは・・・!?」
肘を着いて体を起こしたデービスの目の前には、黒い鍔付きのキャップを被り、左手の人差し指を突きつける、明るいベージュの髪の女が立っていた。
「・・・てめぇ誰だ?何しやがった?そこの男を助けたのもてめぇか?答えろや!」
「バーン!」
デービスが凄みを効かせながら立ち上がろうと腰を上げると、ケイトの引斥の爪がデービスの顔面を撃ち飛ばした。
淡々としていたが、その目は氷のように冷たかった。
左ボディをめり込ませる。
デービスの体が前に折れて来たところを、右のアッパーで撃ち上げる。
顎が撥ね上がり、体が開いたところへ、左右の拳を連打したたみかける。
胸に腹に顔面に、まさにメッタ撃ちの状態だった。
こいつが!こいつが!こいつが全て悪いんだ!
俺を殺し、弥生さんを殺し、村戸さんを殺した!
何もかも全てこいつが悪いんだ!
だからコイツは殺してもいいんだ
胸の中に渦巻いていた黒い感情に、頭の中を塗りたくられているような感覚だった。
殴りつける拳の一発一発に殺意を込め、憎いこの男を叩きのめしたい。
骨を砕き、血を吐かせ、ぐしゃぐしゃに潰してやりたい。
「ガァァァァァー----ッツ!」
それはもはや、ボクシングのパンチと呼べるか分からない、ただ叩きつけるだけのパンチだった。
右を大きく振るって、デービスの顔面に撃ちこむ・・・・・
「ぐはぁッツ!」
「ふ~・・・すげぇ攻撃だなぁ、けどよ熱くなりすぎだぜ」
撃たれるままだったデービスだが、アラタの大振りを見逃さず、カウンターで腹にケリを叩き込んだ。
超重量級のデービスの一蹴りで、アラタは軽々と後方に飛ばされ背中から地面に落ちると、二回三回と地面を転がされた。
「ぺっ・・・ふ~、てめぇよぉ、けっこうやるけど、そんな軽いパンチじゃ、何発撃っても俺は倒せねぇぞ」
血の混じった唾を吐き出す。
鼻から流れ出る血は顎の下まで垂れ落ち、頬や目の周りは赤い痣が出来ている。
着ていたシャツは破れ、何発もの拳を撃けた跡がハッキリと残っている。
だが外傷はあっても、ダメージらしいものはまるで見えなかった。
首を左右に動かして鳴らすと、拳を握り締めて、倒れているアラタへと近づいて行く。
「ぐ、うぁぁぁぁーーーッツ!」
「あ?こりねぇな、そのツラまるで獣だな。まぁいい、てめぇみたいな野郎は・・・こうだ!」
アラタは起き上がるなり、声を張り上げながら再びデービスへと突っ込んでいった。
がむしゃらに、ただ怒りの感情をそのままに拳を振り上げる姿は、我を忘れ憎しみに支配されてしまっているようにしか見えなかった。
そしてデービスにとって、これほど簡単な相手はいなかった。
怒りとはその気迫で勢いを生み出すが、動きは単調になり、結果相手に読まれやすくなる。
脇ががら空きだぜ!
デービスは姿勢を低く突進して前方から組み付くと、流れるような動きで素早く背後に回りこむ。
そのまま腰に両手を回すと、自分の体をのけ反らせてアラタを後方に投げつけた!
バックドロップ!
受け身をとる事さえできず、アラタは硬い石畳に、肩と後頭部を叩きつけられる。
凄まじい衝撃に言葉を発する事もできず、目の前が真っ暗に染まる。
「へぇ~い、どうだ?こっちの世界じゃ誰も知らねぇ技だったが、日本人のお前なら分かるよな?バックドロップだ」
確かな手ごたえに、デービスはニヤリと笑う。
そして地面に叩きつけたアラタの腰から腕を離すと、余裕を見せるようにゆっくりと体を起こした。
デービスが腰から腕を離すと、支えを失ったアラタの下半身は力なく地面に落ちる。
「誰でも名前くらいは知ってる有名な技だけどよぉ、実際に食らった事のあるヤツは意外と少ないんじゃねぇのかな?素人がとっさに対応できるものじゃねぇんだよ・・・て言っても、頭勝ち割ったわけだし、もう聞こえてねぇ・・・あ?」
倒れているアラタを見下ろして、デービス異変に気付いた。
ヘビー級の自分が、手加減なく食らわせたバックドロップ。しかもリングではなく、堅い石畳みの上に頭から叩きつけた。死んでもおかしくない。いや、むしろ死んで当然、頭を割ったはずなのだ。
「・・・血が出てねぇ・・・だと?」
意識を失っているのは間違いない。
バックドロップを後頭部にまともに受けて、アラタの意識はそこで途切れた。
しかし、堅い石畳に頭を叩きつけられたのに、ほんの一滴の出血も無かった。
その疑問がデービスの周囲への注意を散漫にした。
「なんで・・・ぐぁッ!」
突然顔の右側面に受けた強烈な衝撃に、デービスは頭を弾かれて足をもつれさせる。
「なんだッうばぁッツ!」
なんとか足を踏みとどまらせ、攻撃を受けた右側に体を受けた瞬間、再び同じ衝撃を真正面から受けて、頭を後ろへ弾かれた。
右足を後ろに引いて倒れないように踏みとどまるが、第三、第四の衝撃波が続けて放たれ、デービスの体を撃ちつけた!
「ぐぉぉぉぉぉー--ッツ!」
立て続けに全身を撃たれ、とうとうデービスは立っている事ができずに、その巨体を地面に転がされた。
「ぐぅ、な、なんだ今のは・・・!?」
肘を着いて体を起こしたデービスの目の前には、黒い鍔付きのキャップを被り、左手の人差し指を突きつける、明るいベージュの髪の女が立っていた。
「・・・てめぇ誰だ?何しやがった?そこの男を助けたのもてめぇか?答えろや!」
「バーン!」
デービスが凄みを効かせながら立ち上がろうと腰を上げると、ケイトの引斥の爪がデービスの顔面を撃ち飛ばした。
淡々としていたが、その目は氷のように冷たかった。
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