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【734 あなたの心を ⑦】
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用心はしているつもりだった。
だが、慢心があったのだろう。その気になればいつでも制圧できる。
自分が圧倒的に強者だという自覚が、連中につけ入る隙を与えていた。
狩りから帰った時、壊された玄関を目にして血の気が引いた。
玄関戸が二つに折れ曲がって、屋内に転がっているところを見ると、外から蹴破ったのだろう。
目につきやすいように捨て置かれた紙を手に取り、殴り書きされた一文に目を通す。
レイラは連れて行く。
一人で山に来いとだけ書いてあった。
狩りに行っている間を狙われた。
ドアを蹴破られたところを考えると、レイラは俺に言われた通り、ヤツらが来た時に開けなかったんだろう。だが、そこで終わらなかった。
「・・・俺があまかった」
まさかここまでするとはな。
ダニエルはレイラに気があるのだし、ここまで乱暴な手段をとるとは思わなかった。
レイラ・・・・・
悲し気に笑うレイラ
寂しそうに微笑むレイラ
家事を手伝うとお礼を口にするレイラ
少しづつ感情を出してくれるレイラ
最初はお互いに必要な事だけしか話さない関係だった
けれど今は違う
心からの笑顔を見せてくれるようになったレイラ
「・・・・・こんなに憎しみを覚えたのは、久しぶりだ」
感情のままに魔力を爆発させて、この村を消し飛ばしてやろうかと思った。
かろうじて思い留まったのは、レイラの家があるからだ。
俺を受け入れてくれた事には感謝しているが、この村の人間は腐っている。
今も遠巻きに俺を囲んで、ひそひそと話している。
耳に届く言葉はどれも歪んでいて、聞くに堪えないものだった。
いやねぇ物騒だわ。
こっちまで巻き込まないでほしいわ。
最近大人しくなってたのになんだよ?
ダニエルのヤツ、まだレイラを諦めてなかったのか?
レイラもいつまでも引きずってるのが悪いんだよ。
まだ若いんだし、ダニエルとくっつけばこんな事にならないのに!
こうなったのも、あの余所者のせいなんだろ?
せっかく村に住ませてやってんのに、こんな騒ぎを起こすなんて!
やっぱりあの時、全員で反対して追い出しておけばよかったんだ!
玄関が破壊されたレイラの家を見ているのに、村人達からはレイラを心配する言葉は何一つ聞こえない。
それどころか、騒動に巻き込まれないかと自己保身ばかりを口にする。
それはいい。自己保身はしかたのない事だ。誰だってこんな事に巻き込まれたくはないだろう。
俺の事はいい。
俺は余所者だ。何を言われてもしかたないさ。
だがレイラは、この村で生まれ育った一員だろ?
それなのに、お前らはたったの一言も、レイラの身を案じる言葉を出せないのか?
レイラがどうなってもいいと思っているのか?
なぜここまで無情なんだ?
ひそひそと話している連中の顔を見回すと、俺をこの村に受けれいる事に賛成してくれた村人達もいた。
親切な人達だと思った事もあったが、なにか一つ騒ぎが起こると、こうも変わるのかとむなしくなる。
人の醜さを目の当たりにして、俺は体の中の血液が冷えていく様を感じた。
「・・・黙れ」
これ以上ただの一言も耳に入れたくなくて、俺は魔力を開放した。
体中からあふれる魔力を炎に変えて、全身に纏わせる。
帝国との戦争以来、上級魔法は一度も使った事がなかった。
火の上級魔法 灼炎竜
出現させたのは3メートル級の竜だが、初級魔法しか使えないこの村の人間を圧倒するには十分だった。
おそらく見るのも初めてだったのだろう。
村人達は俺の灼炎竜に圧倒され、ほとんどが腰を抜かしてわなわなと震えている。
「お前達はもう何も話すな」
それだけ言い捨てて、俺は山へと駆けた。
樹々の間を走り抜けて山道を急ぐ
レイラ・・・ここにいては駄目だ
あの日の夜、レイラを抱きしめた時の温もりを思い出す
俺もレイラもこの心の傷は生涯消える事はないだろう
だが俺は・・・レイラ、キミといる時は確かに心が癒されていた
また笑う事ができた
レイラ、キミもそうだったんじゃないか?
俺と一緒に行こう
二人でどこか静かな場所で暮らそう
山道をしばらく進むと、少し開けた場所に出た。ここは狩りの時に休憩で村人達がよく使う場所だ。
山に入ればここは必ず通るため、間違いなくここで待っているだろうと思っていた。
「・・・バリオスさん」
ダニエル達五人、そして手首を縛られたレイラが、地べたに座らされていた。
レイラは俺の姿を目に映すと、嬉しそうな・・・けれど今にも泣き出しそうな笑顔を浮かべた。
「レイラ・・・」
ニヤニヤと笑うダニエル達を目にして、俺の体の中に闇よりも暗く黒い感情が湧き上がった。
だが、慢心があったのだろう。その気になればいつでも制圧できる。
自分が圧倒的に強者だという自覚が、連中につけ入る隙を与えていた。
狩りから帰った時、壊された玄関を目にして血の気が引いた。
玄関戸が二つに折れ曲がって、屋内に転がっているところを見ると、外から蹴破ったのだろう。
目につきやすいように捨て置かれた紙を手に取り、殴り書きされた一文に目を通す。
レイラは連れて行く。
一人で山に来いとだけ書いてあった。
狩りに行っている間を狙われた。
ドアを蹴破られたところを考えると、レイラは俺に言われた通り、ヤツらが来た時に開けなかったんだろう。だが、そこで終わらなかった。
「・・・俺があまかった」
まさかここまでするとはな。
ダニエルはレイラに気があるのだし、ここまで乱暴な手段をとるとは思わなかった。
レイラ・・・・・
悲し気に笑うレイラ
寂しそうに微笑むレイラ
家事を手伝うとお礼を口にするレイラ
少しづつ感情を出してくれるレイラ
最初はお互いに必要な事だけしか話さない関係だった
けれど今は違う
心からの笑顔を見せてくれるようになったレイラ
「・・・・・こんなに憎しみを覚えたのは、久しぶりだ」
感情のままに魔力を爆発させて、この村を消し飛ばしてやろうかと思った。
かろうじて思い留まったのは、レイラの家があるからだ。
俺を受け入れてくれた事には感謝しているが、この村の人間は腐っている。
今も遠巻きに俺を囲んで、ひそひそと話している。
耳に届く言葉はどれも歪んでいて、聞くに堪えないものだった。
いやねぇ物騒だわ。
こっちまで巻き込まないでほしいわ。
最近大人しくなってたのになんだよ?
ダニエルのヤツ、まだレイラを諦めてなかったのか?
レイラもいつまでも引きずってるのが悪いんだよ。
まだ若いんだし、ダニエルとくっつけばこんな事にならないのに!
こうなったのも、あの余所者のせいなんだろ?
せっかく村に住ませてやってんのに、こんな騒ぎを起こすなんて!
やっぱりあの時、全員で反対して追い出しておけばよかったんだ!
玄関が破壊されたレイラの家を見ているのに、村人達からはレイラを心配する言葉は何一つ聞こえない。
それどころか、騒動に巻き込まれないかと自己保身ばかりを口にする。
それはいい。自己保身はしかたのない事だ。誰だってこんな事に巻き込まれたくはないだろう。
俺の事はいい。
俺は余所者だ。何を言われてもしかたないさ。
だがレイラは、この村で生まれ育った一員だろ?
それなのに、お前らはたったの一言も、レイラの身を案じる言葉を出せないのか?
レイラがどうなってもいいと思っているのか?
なぜここまで無情なんだ?
ひそひそと話している連中の顔を見回すと、俺をこの村に受けれいる事に賛成してくれた村人達もいた。
親切な人達だと思った事もあったが、なにか一つ騒ぎが起こると、こうも変わるのかとむなしくなる。
人の醜さを目の当たりにして、俺は体の中の血液が冷えていく様を感じた。
「・・・黙れ」
これ以上ただの一言も耳に入れたくなくて、俺は魔力を開放した。
体中からあふれる魔力を炎に変えて、全身に纏わせる。
帝国との戦争以来、上級魔法は一度も使った事がなかった。
火の上級魔法 灼炎竜
出現させたのは3メートル級の竜だが、初級魔法しか使えないこの村の人間を圧倒するには十分だった。
おそらく見るのも初めてだったのだろう。
村人達は俺の灼炎竜に圧倒され、ほとんどが腰を抜かしてわなわなと震えている。
「お前達はもう何も話すな」
それだけ言い捨てて、俺は山へと駆けた。
樹々の間を走り抜けて山道を急ぐ
レイラ・・・ここにいては駄目だ
あの日の夜、レイラを抱きしめた時の温もりを思い出す
俺もレイラもこの心の傷は生涯消える事はないだろう
だが俺は・・・レイラ、キミといる時は確かに心が癒されていた
また笑う事ができた
レイラ、キミもそうだったんじゃないか?
俺と一緒に行こう
二人でどこか静かな場所で暮らそう
山道をしばらく進むと、少し開けた場所に出た。ここは狩りの時に休憩で村人達がよく使う場所だ。
山に入ればここは必ず通るため、間違いなくここで待っているだろうと思っていた。
「・・・バリオスさん」
ダニエル達五人、そして手首を縛られたレイラが、地べたに座らされていた。
レイラは俺の姿を目に映すと、嬉しそうな・・・けれど今にも泣き出しそうな笑顔を浮かべた。
「レイラ・・・」
ニヤニヤと笑うダニエル達を目にして、俺の体の中に闇よりも暗く黒い感情が湧き上がった。
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