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724 アラタとカチュアの結婚式 ②

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「うわぁ・・・カチュアちゃんめっちゃ綺麗だね」

神父の前に立つアラタとカチュア。
純白のウエディングドレスに身を包むカチュアを見つめて、シャノンは呟いた。

シャノンの髪は少しクセのある黒髪で、サイドをツイスト編みで仕上げている。
花の刺繍のレースの使いのドレスは、空色のとても爽やかな色使いだった。

「そうね。カチュアちゃん、久しぶりに会ったけど前よりずっと綺麗になったわね。えっと先月誕生日って聞いたから今19歳よね。なんだか急に大人の女性になったって感じがするわ」

シャノンの隣に座るリンジーは、口元に笑みを浮かべて神父の前に立つ二人を見つめている。

リンジーは腰より下まである長いシルバーグレーの髪を、肩よりしたくらいの高さで華やかに結び、ハーフアップにしてまとめている。
肩の辺りに程よく透け感があり、袖がレースの濃紺のドレスを着て、パールのネックレスを付けている。


「私より一つ年下なんて思えないです。すごく綺麗・・・・・いいなぁ」

長椅子の端に座るファビアナが羨ましそうにカチュアを見つめて呟くと、リンジーがファビアナの膝に手を置いて、ぽんぽんと叩いた。

「ファビアナ、あなたも婚約したんだし、そのうちウエディングドレスを着るのよ。ビリージョーさんにうんと綺麗なところ見せてあげてね。まぁ、今日のファビアナのドレス姿を見た時の反応を考えれば、想像できちゃうけどね」

そう言って、リンジーがウインクをして見せると、ファビアナは赤くなった頬を両手で押さえた。

ファビアナは淡いピンクのドレスを着ている。
ボリュームのある薄紫色の髪はアップにしてまとめているため、うなじが見える。
ビリージョは今日ファビアナに会った時、それを見て顔を赤くしていたのだ。

「・・・ね、ねぇリンジー・・・ビ、ビリージョーさん・・・私の事、どう思ったかな?」

頬を押さえたままチラリとリンジーに目を向けるファビアナ。

「あらあら、そんなの綺麗だなって思ったに決まってるじゃない」

恥ずかしそうに、けれどとても嬉しそうな笑顔のファビアナを見て、リンジーも優し気に微笑んだ。




「ビリージョー、お前のおかげでファビアナも望まない婚約をせずにすんだ。堅苦しい王宮暮らしもしないでよくなったし、本当に感謝してるぞ」

ガラハドは腕を組んで、隣に座るビリージョーに顔を向けた。
二人ともネイビーのスーツを着て、落ち着いた様子で椅子に腰を掛けている。

「・・・口には出さないが、ファビアナは俺とのんびり料理屋をやりたかったのかもしれない。けど、いくら王位継承権を放棄しても、王女には変わりない。平民に嫁ぐわけにはいかないだろ?アンリエール女王陛下の温情で子爵位をもらって、さらに後ろ盾にまでなっていただいて、やっと婚約を認めてもらえたけど、貴族になったからには料理だけをやるわけにはいかない。ファビアナにも苦労をかけると思う・・・」

ビリージョーが眉間を押すように指を当て目を閉じると、ガラハドはビリージョーの胸を軽く叩いた。

「何言ってんだよ?結婚したら、二人で支えあうのが普通だろ?ファビアナはお前と一緒なら、そんなの苦労にも思わないと思うぜ。親代わりで見て来た俺が断言してやる。だから、あんまり難しく考えんじゃねぇぞ?お前とファビアナの結婚式は、俺が泣くくらい幸せな顔を見せてくれよな?」

大柄なガラハドに肩を叩かれる。細かい事は気にするなと笑うガラハドにつられるように、ビリージョーも笑った。




「店長さん、お蔭様で今日の良き日を迎える事ができました」

「あの子のあんな幸せそうな顔、私達も初めて見ました」

カチュアの祖父母が一番前の席に腰をかけながら、隣に座る店長のバリオスに感謝の言葉を口にする。

「いえいえ、私は大した事はしておりません。カチュアさんは接客も丁寧だし、カチュアさんの作る傷薬はとても評判が良いんです。レイジェスになくてはならない存在なんです。こちらの方が助けられているんですよ。お相手のアラタも誠実な人柄ですから、きっと幸せになれますよ」

ニコリと微笑んで、普段のカチュアの様子を口にするバリオスに、カチュアの祖父母は目に涙を浮かべて何度も頷いた。

バリオスは神父の前に立つアラタとカチュアに顔を戻した。


神父の話しを聞きながら、幸せそうに微笑む二人を見つめていると、ふと自分の時が思い出される。
バリオスは長い金色の髪を結ぶ青い紐を、そっと指で撫でて目を閉じた。



純白のウエディングドレスに身を包むメアリーはとても綺麗だった。

あの日の事は今も昨日の事のように思い出せる。
今日のように穏やかな青空が広がっていて、みんなが祝福してくれた。


俺の人生で、一番幸せな日だった・・・・・・・


メアリー
ティナ

思い浮かぶのは最愛の妻と娘の笑顔・・・・・



「・・・店長さん?どう、されたんですか?」


カチュアの祖母ハンナが、驚きと心配の混じった声を出す。


「・・・え・・・あぁ、なんでもありません。幸せそうな二人に感動したんです」


ハンナに声をかけられて、いつの間にか両の眼から涙が零れている事に気が付き、笑って指で拭う。


「そう、ですか・・・」

じゃあ、なんでそんな悲しそうな目をしているんですか?
そう聞こうとして、ハンナは言葉を飲み込んだ。

バリオスは表情を戻して、アラタとカチュアを見つめている。
なにかを聞ける雰囲気でもなかったし、聞いてはいけないとも感じていた。


「失礼しました。さぁ、お孫さんの晴れの日です。式を見守りましょう」
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