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702 お土産

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「おおまかなところはロンズデールを出る前に、写しの鏡で話した通りだ。クルーズ船で俺達は帝国とも一戦交えたが、なんとか全員が無事に生還できた」

ロンズデールに行ったメンバーを代表して、ビリージョーが手を上げた。
クルーズ船を降りてから、一度レイジェスには写しの鏡で連絡をとっており、大筋は話してあるが、要点をまとめてあらためて説明を始めると、ロンズデールには行かずにレイジェスに残っていたメンバー達は、真剣な面持ちで耳を傾けた。


「・・・・・まぁ、だいたいこんなところだ。ロンズデール国王からの書簡は俺が持っている。明日にでも女王陛下へ謁見しよう」

ビリージョーが話しを終えると、腕を組んで聞いていたジャレットがゆっくりと口を開いた。

「・・・なるほどな・・・おおむね分かりました。本当に、大変でしたね」

「そうだな、実際俺は死にかけた。鮫にも食われそうになったし、本当によく生きて帰ってこれたもんだと思ってるよ」

ビリージョーはディリアンと一緒に、クルーズ船で行動した時の事を思い出していた。
魔道剣士カレイブ・プラットとの戦い、襲って来る無数の鮫、ダリル・パープルズに手ひどくやられた事、思い返せば五体満足でいられるのが不思議なくらいだった。

「まったくだ。俺は船でこのビリージョーと一緒に行動したが、何度死にかけたか分かんねぇよ。船なんざもう二度と乗らねぇよ」

肩より少し長いくらいの、軽く柔らかそうな白い髪をたくし上げ、ディリアンは忌々しそうに吐き捨てた。一見すると女性と見間違いしそうな中性的な顔立ちだが、粗雑な言葉使いは男性的である。

「ディリアン様もずいぶんお怪我されてましたものね。もう痛いところはありせんか?」

「ん、あぁ、あんたがヒールしてくれたおかげで、もうなんともねぇよ」

「それはなによりですね」

魔道剣士、カレイブ・プラットに手ひどく殴りつけられ、顔は痣と腫れで痛々しい状態だったが、サリーが完璧に治療したため、今や怪我の痕など一つも無く綺麗なものである。

他のメンバーはディリアンに対して、もはや公爵家という事を抜きにして気楽に接しているが、生粋の侍女であるサリーは身分は身分と重んじて、礼節を忘れずに接している。


「・・・それで、明日はビリージョーさん達6人で、城へ行って来るって事ッスよね?」

サリーとディリアンの話しの区切りを待って、ジャレットがビリージョーに確認すると、ビリージョーはロンズデールに行ったメンバーの顔を確認するように見て、ハッキリと頷いて答えた。

「そうだ。無事に帰ったって報告も兼ねてるから、やはり全員で行かなきゃならない。ゆっくり体を休めたいとこなんだけどな」

「本当にお疲れ様です。まぁ明日、謁見が終わったらしばらくはゆっくりできると思いますよ。さすがに帝国も負けるとは思ってなかったでしょうし、様子を見る時間は必要なはずだから、体を休める時間くらい十分とれるでしょう」

自分で肩を揉んで疲れた様子を見せるビリージョーに、ジャレットは笑って労いの言葉をかけた。


明日の予定など話す事も話し終えるとと、アラタとレイチェルはロンズデールで買って来たお土産を配り始めた。

アラタはお土産に、水の精霊の加護を受けたお守りを選んだ。
水の精霊の加護は僅かだが運気が上がるので、ポケットに入るくらい小さく身に着けていられるお守りは、お土産として人気があるらしい。

レイチェルのお土産は、魔道具のマグカップだった。
魔力を流すとカップが温まり、お茶が冷めにくい。雪の多いクインズベリーでは重宝すると考えての事だった。

みんな喜んでくれたが、リカルドだけは反応が悪く、不満が顔に表れていた。

「・・・なぁ、兄ちゃん」

「ん、どうした?リカルド」

「なんで食い物じゃねぇんだよ?普通はあっちの国の名物買ってこねぇか?」

「・・・お前・・・本当にぶれないな」

なぜ食べ物じゃないのか本当に訳が分からない。という顔をしているリカルドを見て、アラタは呆れを通りこして、いっそ清々しささえ感じていた。
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