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690 同盟への意見

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大臣との話し合いを終えると、国王との謁見まで客室で休む事になった。
リンジー、ファビアナ、ガラハドの、ロンズデール国の三人は、そのまま大臣の執務室に残ったので、客室にはクインズベリー国の6人と、シャノンがいる事になる。
合計で7人だが、7人が休むにしては広過ぎる部屋だった。
絵画や壺などの煌びやかな調度品も備え付けられていて、壁際には3~4人が座れるようなソファが等間隔で複数備え付けられている。
部屋の中央にはやや縦長のスクエアテーブルと、両脇から挟むようにして3~4人は腰をかけられそうな長いソファーが、縦に並んで設置されていた。

謁見までは時間があるので、レイチェル達はテーブルを挟んで適当にソファに腰を下ろすと、各々が好きなようにくつろいでいた。

「なぁ、シャノンはこっちに来てよかったのか?」

「ん?あぁ・・・アタシは別にどっちでも良かったんだけど、リンジー達は大臣とプライベートな話しもあるでしょ?」

ロンズデール国出身のシャノンだが、謁見までレイチェル達と待機する事にしたのは、リンジー達と大臣が気兼ねなく話せるようにとの配慮もあった。
付き合いが長い彼らには、彼らだけの話しのあるのだ。

「それもそうか。ところで大臣の話しだが、どう思う?」

レイチェルの問いかけの意味を察し、シャノンはソファに座り直して唇に指を当てた。

「同盟の話しだよね?国王に正式に許可を得てからっては言ってたけど、アタシはいいと思うよ。むしろ、それしかないと思うね。ロンズデールにしても、クインズベリーにしても、一国では帝国に勝てないと思う。でも両国が手を結べば、帝国にだって勝算はある」

「そうだね。私もそう思うよ。謁見で国王を説得できる可能性も高いだろう。今の国王は話しが通じそうだし、一皮むけた感じがあるからね」

シャノンの意見にレイチェルも同意して答えた。
レイチェルの場合は初めて見た国王が、薬物の影響で心の奥底の負の感情に染まった状態だったため、悪い印象が強かった。
だが船から脱出し、港での演説を聞いた限りでは、国王としての威厳に満ち、力強さも感じる程だった。リンジー達や周りから聞いた話しでは、国王は気が弱く優柔不断だという話しだったが、今では真逆の印象である。

「レイチェルの言う通り、本当に一皮むけたんだろうな。理由はやっぱりファビアナとの関係だろう。死ぬかもしれない状況に陥って、なんとか生還して娘と和解もできた。これだけ強烈な経験をすればそりゃ変わるだろうさ」

ビリージョーはお茶を一口を飲むと、二人の会話に入った。
ビリージョーも国王の変化に驚いてはいるが、変化の方向は良いと感じていた。

「俺も同盟には賛成だ。シャノンさんの言う通り、両国が力を合わせれば帝国とも十分に戦ると思う。アラタはどう思う?」

話をふられたアラタは、お茶のカップを置くと二つ返事で答えた。

「俺も賛成です。せっかくこうして良い関係が築けたんです。ロンズデールとは仲良くしたいですよね」

アラタの返事に満足したように頷くと、ビリージョーはそのままディリアンに顔を向けた。
自分が見られていると気付いたディリアンは、面倒そうに頭をかくと軽く息をついた。

「あぁ~、別に俺の意見なんてどうでもいいだろ?反対なんてしねぇよ。まぁ、協力できるんならした方がいいんじゃねぇの?」

「そうか、ディリアンも賛成してくれて嬉しいぞ」

回りくどい言い方のディリアンにも笑顔で言葉を返したビリージョーは、続いてバルデスとサリーに顔を向けて、意見を促した。

「私もサリーも同意見だ。同盟を結ぶべきだな。大臣は国王に正式に許可を得てと言っていたが、この状況で却下される事もないだろう。ロンズデール国王が正式に同盟を希望すれば、書簡を持たされるだろうから、我々は帰ったらアンリエール女王に謁見せねばならんな・・・ふむ、レイチェルよ、私とサリーはクインズベリーに帰ったら任務終了でいいか?それとも謁見も付き合わねばならんのか?」

「え?・・・・・あぁ、うん、そうだな、謁見も来てもらったほうがいいな。普通に考えたらそうだろ?私達は全員報告に上がるべきだ。無事に帰ったと姿を見せるのは当然ではないのか?逆になんで謁見しなくてもいいと思ったんだ?」

まったく理解できないと首を傾げ、眉を寄せるレイチェルだが、バルデスは足を組みなおしてカップを手に取り、お茶をゆっくりと喉に流してから口を開いた。

「・・・ふむ、良い茶葉を使っているな。だが、蒸らし方、注ぎ方、温度管理まで全てが計算されている。さすが王宮の侍女だな、茶の入れ方が一流だ。まぁ、サリーには一歩およばないがな」

「お褒めにあずかり光栄です。バルデス様。ますます精進いたします」

「・・・おい、シャクール。茶の話しはしていないんだがね。サリーも話しが進まないから、黙っててくれ」

レイチェルが目を細めて、苦笑いまじりに睨みつけると、サリーはごまかすようにコホンと咳を一つ付いて姿勢を正した。

「まぁそう怒るな・・・質問の答えだが、そうだな。一言で言えば、面倒だからだな」

何か特別な理由でもあるのかと思えば、あまりに自分本位な理由を聞かされ、レイチェルは目を瞬かせた。まさか国を守護する四勇士の口から、そんな言葉が出るとは夢にも思わなかった。

「・・・シャクール、お前それはないだろ?女王陛下への報告を面倒って・・・さすがに聞き流せないな。もう少し言葉を選べ」

レイチェルが鋭く睨みつけるが、バルデスはまるで動じなかった。

「まぁ聞け・・・私はな、見張りの塔に何年も何年も、ずっと閉じ込められていたのだ。それが役目なのは分かるが、もううんざりなのだよ。だから偽国王の一件の後、女王と取引をしたのだ。私はクインズベリーに仕える事は約束するが、これからは自由に生きさせてくれとね。だから謁見なんて堅苦しい事に時間を使いたくないのだよ・・・・・だが、今回はレイチェルの顔を立てて謁見に立ち会うとしよう。これでいいか?」

なだめるような言い方に少し不満を覚えるが、レイチェルは軽く息をついて、分かった、と頷いた。

「・・・じゃあ、全員が同盟には賛成って事でいいね?」

全員の顔をあらためて見回すが、誰も意見を変える事がないと見て、レイチェルは、よし、と呟いて頷いた。

話しの区切りがついたそのタイミングで、部屋のドアがノックされ従者が顔を見せて頭を下げた。

謁見の準備が整ったと告げる従者に促され、アラタ達は腰を上げた。
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