686 / 1,359
685 存在を懸けたぶつかり合い
しおりを挟む
動けない・・・!
闇の瘴気に全身を締め付けられているアラタは、どうにか逃れようと力を振り絞った。
しかし腕力だけではどうしようもない現実がある。
ダリル・パープルズの闇は空気のようなものである。
アラタの体を締め上げている以上、その反対に力で引きはがす事ができるのではと思うかもしれない。
しかし腕力ではどうにもならない領域がある。
人の体には常に空気が触れているが、それを素手で掴み投げられるかと言えばそれは不可能である。
ダリル・パープルズの闇の瘴気とは、ダリルの意志一つで形を変え人体に接触できるが、他人がそれに干渉してどうにかできるものではない。ゆえにアラタも自身の体の力だけではどうにもならないのである。
アラタが唯一闇に対抗できる力。
アラタにしかない力、そう、闇に立ち向かえるのは光の力だけである。
「ぐぅっ・・・!うぅ・・・」
「ふははははは!どうした?あの力は使わないのか?船で見せた光の力を使って見せろ!?それとも・・・・・もう使えないのか?」
首にまで回った闇の瘴気に、アラタは苦し気な声をもらす。
闇に包まれた部屋の中で、宙に浮かぶダリルの顔、その目だけが狂気に満ちた光を発していた。
ひ、光だ・・・!
光の力しかない!もう限界に近いが、振り絞れば僅かな時間程度はなんとかなる!
骨が折れるのではないかと感じる程に締め付けは強くなる。
残り全ての光の力を使えば、ダリルの闇から脱出できる事は不可能ではない。
だが、その後は数日は動けなくなるだろう。
そしてアラタ自身が感じているように、光の力は生命力を消耗する。
マルコス・ゴンサレス。
偽国王マウリシオ。
この二人との戦いでも、アラタは限界を超えて光の力を使った。
それは確実に、体の芯にダメージを残していた。
異世界に来てからわずか半年足らず。
この短期間で何度も使うべき力ではない。
だが、今ここで使わなければ確実に殺されるだろう。
選択肢はなかった。
「ウォォォォォーーーーーッ!」
アラタの全身が光輝き、体を締め付けるダリル・パープルズの闇の瘴気を振り払った!
俺は生きて帰る!
こんなところで死んでたまるか!
「そうだ!その力だ!サカキ・アラタ!私の自尊心(プライド)を取り戻させてもらうぞ!」
アラタの光が部屋を覆う闇をかき消していく。
だが、ダリルもまた闇を増殖させていく。
光と闇の力は拮抗しせめぎ合う。
ダリル・パープルズは闇に姿を変えて船を脱出した。
そのまま帝国へ帰る事はできた。
だが、船の事故の責任をロンズデールに問い、そのまま帝国主導で交渉をし、ロンズデールを傀儡国家へと落とす計画は挫折した。
世話係として用意した帝国の使用人や兵士達は替えが利くが、師団長クラスの実力者、リコ・ヴァリンを失った事は計算外だった。淡々と任務を実行し、暗殺者としても優秀だったリコ・ヴァリンは皇帝の覚えもよく、今回ダリルの護衛としてつけられたが、まさかリコ・ヴァリンを失うとは、皇帝も思いもしなかっただろう。
その責任どころはダリルが追及されるだろう。
このままおめおめと、自分だけ帝国に戻るわけにはいかなかった。
せめて何か一つ、申し開きできる成果を上げなければならない。
そして、一度は逃げ出した自分の自尊心も取り戻さなくては、この先ずっと逃げた汚名を背負って生きていかなければならない。
「そんな光など消し去ってくれるわ!」
僅かに人の部分を残した肩口から、闇の瘴気が伸びて人の手を形作る。
眼下のアラタに向けられたその両手の平には、闇の瘴気が渦巻き集まっていく。
「ダリル・パープルズーーーッツ!」
右手に全ての光を集め、アラタは右足で床を強く蹴って飛んだ。
どのみち長くは持たない!ならばこの一撃に全てを懸ける!
狙いは天井に浮かぶ闇の化身となったダリル・パープルズ!
「サカキ・アラターーーーーッツ!」
ギラギラと狂気に満ちた両目さえも黒く染まり、その存在が闇そのものと変わったダリル・パープルズの両手から、全ての力を集約させた闇の波動が撃ち放たれた!
アラタとダリル
光の拳と闇の波動
その存在を懸けた二つの力がぶつかった
闇の瘴気に全身を締め付けられているアラタは、どうにか逃れようと力を振り絞った。
しかし腕力だけではどうしようもない現実がある。
ダリル・パープルズの闇は空気のようなものである。
アラタの体を締め上げている以上、その反対に力で引きはがす事ができるのではと思うかもしれない。
しかし腕力ではどうにもならない領域がある。
人の体には常に空気が触れているが、それを素手で掴み投げられるかと言えばそれは不可能である。
ダリル・パープルズの闇の瘴気とは、ダリルの意志一つで形を変え人体に接触できるが、他人がそれに干渉してどうにかできるものではない。ゆえにアラタも自身の体の力だけではどうにもならないのである。
アラタが唯一闇に対抗できる力。
アラタにしかない力、そう、闇に立ち向かえるのは光の力だけである。
「ぐぅっ・・・!うぅ・・・」
「ふははははは!どうした?あの力は使わないのか?船で見せた光の力を使って見せろ!?それとも・・・・・もう使えないのか?」
首にまで回った闇の瘴気に、アラタは苦し気な声をもらす。
闇に包まれた部屋の中で、宙に浮かぶダリルの顔、その目だけが狂気に満ちた光を発していた。
ひ、光だ・・・!
光の力しかない!もう限界に近いが、振り絞れば僅かな時間程度はなんとかなる!
骨が折れるのではないかと感じる程に締め付けは強くなる。
残り全ての光の力を使えば、ダリルの闇から脱出できる事は不可能ではない。
だが、その後は数日は動けなくなるだろう。
そしてアラタ自身が感じているように、光の力は生命力を消耗する。
マルコス・ゴンサレス。
偽国王マウリシオ。
この二人との戦いでも、アラタは限界を超えて光の力を使った。
それは確実に、体の芯にダメージを残していた。
異世界に来てからわずか半年足らず。
この短期間で何度も使うべき力ではない。
だが、今ここで使わなければ確実に殺されるだろう。
選択肢はなかった。
「ウォォォォォーーーーーッ!」
アラタの全身が光輝き、体を締め付けるダリル・パープルズの闇の瘴気を振り払った!
俺は生きて帰る!
こんなところで死んでたまるか!
「そうだ!その力だ!サカキ・アラタ!私の自尊心(プライド)を取り戻させてもらうぞ!」
アラタの光が部屋を覆う闇をかき消していく。
だが、ダリルもまた闇を増殖させていく。
光と闇の力は拮抗しせめぎ合う。
ダリル・パープルズは闇に姿を変えて船を脱出した。
そのまま帝国へ帰る事はできた。
だが、船の事故の責任をロンズデールに問い、そのまま帝国主導で交渉をし、ロンズデールを傀儡国家へと落とす計画は挫折した。
世話係として用意した帝国の使用人や兵士達は替えが利くが、師団長クラスの実力者、リコ・ヴァリンを失った事は計算外だった。淡々と任務を実行し、暗殺者としても優秀だったリコ・ヴァリンは皇帝の覚えもよく、今回ダリルの護衛としてつけられたが、まさかリコ・ヴァリンを失うとは、皇帝も思いもしなかっただろう。
その責任どころはダリルが追及されるだろう。
このままおめおめと、自分だけ帝国に戻るわけにはいかなかった。
せめて何か一つ、申し開きできる成果を上げなければならない。
そして、一度は逃げ出した自分の自尊心も取り戻さなくては、この先ずっと逃げた汚名を背負って生きていかなければならない。
「そんな光など消し去ってくれるわ!」
僅かに人の部分を残した肩口から、闇の瘴気が伸びて人の手を形作る。
眼下のアラタに向けられたその両手の平には、闇の瘴気が渦巻き集まっていく。
「ダリル・パープルズーーーッツ!」
右手に全ての光を集め、アラタは右足で床を強く蹴って飛んだ。
どのみち長くは持たない!ならばこの一撃に全てを懸ける!
狙いは天井に浮かぶ闇の化身となったダリル・パープルズ!
「サカキ・アラターーーーーッツ!」
ギラギラと狂気に満ちた両目さえも黒く染まり、その存在が闇そのものと変わったダリル・パープルズの両手から、全ての力を集約させた闇の波動が撃ち放たれた!
アラタとダリル
光の拳と闇の波動
その存在を懸けた二つの力がぶつかった
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる