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685 存在を懸けたぶつかり合い
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動けない・・・!
闇の瘴気に全身を締め付けられているアラタは、どうにか逃れようと力を振り絞った。
しかし腕力だけではどうしようもない現実がある。
ダリル・パープルズの闇は空気のようなものである。
アラタの体を締め上げている以上、その反対に力で引きはがす事ができるのではと思うかもしれない。
しかし腕力ではどうにもならない領域がある。
人の体には常に空気が触れているが、それを素手で掴み投げられるかと言えばそれは不可能である。
ダリル・パープルズの闇の瘴気とは、ダリルの意志一つで形を変え人体に接触できるが、他人がそれに干渉してどうにかできるものではない。ゆえにアラタも自身の体の力だけではどうにもならないのである。
アラタが唯一闇に対抗できる力。
アラタにしかない力、そう、闇に立ち向かえるのは光の力だけである。
「ぐぅっ・・・!うぅ・・・」
「ふははははは!どうした?あの力は使わないのか?船で見せた光の力を使って見せろ!?それとも・・・・・もう使えないのか?」
首にまで回った闇の瘴気に、アラタは苦し気な声をもらす。
闇に包まれた部屋の中で、宙に浮かぶダリルの顔、その目だけが狂気に満ちた光を発していた。
ひ、光だ・・・!
光の力しかない!もう限界に近いが、振り絞れば僅かな時間程度はなんとかなる!
骨が折れるのではないかと感じる程に締め付けは強くなる。
残り全ての光の力を使えば、ダリルの闇から脱出できる事は不可能ではない。
だが、その後は数日は動けなくなるだろう。
そしてアラタ自身が感じているように、光の力は生命力を消耗する。
マルコス・ゴンサレス。
偽国王マウリシオ。
この二人との戦いでも、アラタは限界を超えて光の力を使った。
それは確実に、体の芯にダメージを残していた。
異世界に来てからわずか半年足らず。
この短期間で何度も使うべき力ではない。
だが、今ここで使わなければ確実に殺されるだろう。
選択肢はなかった。
「ウォォォォォーーーーーッ!」
アラタの全身が光輝き、体を締め付けるダリル・パープルズの闇の瘴気を振り払った!
俺は生きて帰る!
こんなところで死んでたまるか!
「そうだ!その力だ!サカキ・アラタ!私の自尊心(プライド)を取り戻させてもらうぞ!」
アラタの光が部屋を覆う闇をかき消していく。
だが、ダリルもまた闇を増殖させていく。
光と闇の力は拮抗しせめぎ合う。
ダリル・パープルズは闇に姿を変えて船を脱出した。
そのまま帝国へ帰る事はできた。
だが、船の事故の責任をロンズデールに問い、そのまま帝国主導で交渉をし、ロンズデールを傀儡国家へと落とす計画は挫折した。
世話係として用意した帝国の使用人や兵士達は替えが利くが、師団長クラスの実力者、リコ・ヴァリンを失った事は計算外だった。淡々と任務を実行し、暗殺者としても優秀だったリコ・ヴァリンは皇帝の覚えもよく、今回ダリルの護衛としてつけられたが、まさかリコ・ヴァリンを失うとは、皇帝も思いもしなかっただろう。
その責任どころはダリルが追及されるだろう。
このままおめおめと、自分だけ帝国に戻るわけにはいかなかった。
せめて何か一つ、申し開きできる成果を上げなければならない。
そして、一度は逃げ出した自分の自尊心も取り戻さなくては、この先ずっと逃げた汚名を背負って生きていかなければならない。
「そんな光など消し去ってくれるわ!」
僅かに人の部分を残した肩口から、闇の瘴気が伸びて人の手を形作る。
眼下のアラタに向けられたその両手の平には、闇の瘴気が渦巻き集まっていく。
「ダリル・パープルズーーーッツ!」
右手に全ての光を集め、アラタは右足で床を強く蹴って飛んだ。
どのみち長くは持たない!ならばこの一撃に全てを懸ける!
狙いは天井に浮かぶ闇の化身となったダリル・パープルズ!
「サカキ・アラターーーーーッツ!」
ギラギラと狂気に満ちた両目さえも黒く染まり、その存在が闇そのものと変わったダリル・パープルズの両手から、全ての力を集約させた闇の波動が撃ち放たれた!
アラタとダリル
光の拳と闇の波動
その存在を懸けた二つの力がぶつかった
闇の瘴気に全身を締め付けられているアラタは、どうにか逃れようと力を振り絞った。
しかし腕力だけではどうしようもない現実がある。
ダリル・パープルズの闇は空気のようなものである。
アラタの体を締め上げている以上、その反対に力で引きはがす事ができるのではと思うかもしれない。
しかし腕力ではどうにもならない領域がある。
人の体には常に空気が触れているが、それを素手で掴み投げられるかと言えばそれは不可能である。
ダリル・パープルズの闇の瘴気とは、ダリルの意志一つで形を変え人体に接触できるが、他人がそれに干渉してどうにかできるものではない。ゆえにアラタも自身の体の力だけではどうにもならないのである。
アラタが唯一闇に対抗できる力。
アラタにしかない力、そう、闇に立ち向かえるのは光の力だけである。
「ぐぅっ・・・!うぅ・・・」
「ふははははは!どうした?あの力は使わないのか?船で見せた光の力を使って見せろ!?それとも・・・・・もう使えないのか?」
首にまで回った闇の瘴気に、アラタは苦し気な声をもらす。
闇に包まれた部屋の中で、宙に浮かぶダリルの顔、その目だけが狂気に満ちた光を発していた。
ひ、光だ・・・!
光の力しかない!もう限界に近いが、振り絞れば僅かな時間程度はなんとかなる!
骨が折れるのではないかと感じる程に締め付けは強くなる。
残り全ての光の力を使えば、ダリルの闇から脱出できる事は不可能ではない。
だが、その後は数日は動けなくなるだろう。
そしてアラタ自身が感じているように、光の力は生命力を消耗する。
マルコス・ゴンサレス。
偽国王マウリシオ。
この二人との戦いでも、アラタは限界を超えて光の力を使った。
それは確実に、体の芯にダメージを残していた。
異世界に来てからわずか半年足らず。
この短期間で何度も使うべき力ではない。
だが、今ここで使わなければ確実に殺されるだろう。
選択肢はなかった。
「ウォォォォォーーーーーッ!」
アラタの全身が光輝き、体を締め付けるダリル・パープルズの闇の瘴気を振り払った!
俺は生きて帰る!
こんなところで死んでたまるか!
「そうだ!その力だ!サカキ・アラタ!私の自尊心(プライド)を取り戻させてもらうぞ!」
アラタの光が部屋を覆う闇をかき消していく。
だが、ダリルもまた闇を増殖させていく。
光と闇の力は拮抗しせめぎ合う。
ダリル・パープルズは闇に姿を変えて船を脱出した。
そのまま帝国へ帰る事はできた。
だが、船の事故の責任をロンズデールに問い、そのまま帝国主導で交渉をし、ロンズデールを傀儡国家へと落とす計画は挫折した。
世話係として用意した帝国の使用人や兵士達は替えが利くが、師団長クラスの実力者、リコ・ヴァリンを失った事は計算外だった。淡々と任務を実行し、暗殺者としても優秀だったリコ・ヴァリンは皇帝の覚えもよく、今回ダリルの護衛としてつけられたが、まさかリコ・ヴァリンを失うとは、皇帝も思いもしなかっただろう。
その責任どころはダリルが追及されるだろう。
このままおめおめと、自分だけ帝国に戻るわけにはいかなかった。
せめて何か一つ、申し開きできる成果を上げなければならない。
そして、一度は逃げ出した自分の自尊心も取り戻さなくては、この先ずっと逃げた汚名を背負って生きていかなければならない。
「そんな光など消し去ってくれるわ!」
僅かに人の部分を残した肩口から、闇の瘴気が伸びて人の手を形作る。
眼下のアラタに向けられたその両手の平には、闇の瘴気が渦巻き集まっていく。
「ダリル・パープルズーーーッツ!」
右手に全ての光を集め、アラタは右足で床を強く蹴って飛んだ。
どのみち長くは持たない!ならばこの一撃に全てを懸ける!
狙いは天井に浮かぶ闇の化身となったダリル・パープルズ!
「サカキ・アラターーーーーッツ!」
ギラギラと狂気に満ちた両目さえも黒く染まり、その存在が闇そのものと変わったダリル・パープルズの両手から、全ての力を集約させた闇の波動が撃ち放たれた!
アラタとダリル
光の拳と闇の波動
その存在を懸けた二つの力がぶつかった
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