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667 隠していたもの
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首がねじ切れるかと思う程に殴り飛ばされる!
身体強化も闇の瘴気も意味を成さない。
鼻が潰され、粘着性のある真っ赤な血液が宙に飛び散らされる。
体勢を立て直す間さえなく、続けざまに右の脇腹に衝撃を受け、胃液を撒き散らしそうになる。
胃が逆流させられそうな程の衝撃、それは目の前の黒髪の男の、左拳のよる打撃だった。
左胸、心臓の位置が殴られ、一瞬だが意識が飛びそうになる。
足元がぐらつき、上半身が崩れ落ちそうになったところで、顎が撥ね上げられた!
な・・・ぜだ?
なぜ、突然、ここまで速く・・・なった!?
私の闇は、確かにコイツの攻撃を察知している・・・だが・・・
190cm、100キロを超える巨体が浮く程の衝撃!
ヘビー級の体躯を持つダリルが、自分よりはるかに小さいアラタの拳に圧倒されている。
光の拳はダリルの闇を確実に上回っていた。
ダリルは体から発する闇の瘴気に拳が触れた瞬間を察知し、肉体に拳が届く前に体を動かし躱していた。
瘴気に拳が触れてから肉体に届くまでの時間は極めて短い。
短いが、回避を前提とした動きをしているダリルには、一瞬の猶予があれば躱す事は可能だった。
しかしここに来て突然、回避が間に合わず、アラタの攻撃を一方的に食らい始めた。
なぜか?
アラタはダリルの回避方法を見破ったわけではない。
だが、届かないのならば、ダリルが躱すよりも早く動き、拳をあてればいい!
ダリルのパワーはアラタを大きく上回っているが、力任せに振るわれるだけの攻撃など、おそるるに足らず!アラタはフットワークを駆使し、攻撃時にはダリルが躱せない程の超接近戦を挑んでいた。
いかに闇が拳を察知しようが、それが意味をなさないくらいに迫り撃てばいい!
「ふ、ふざ・・・ふざけっ・・・!」
脇を閉めて両腕を盾に体を守る。
ガードの上からでもおかいまいなく撃ち続けるアラタの拳は、ダリルの上等な上着をズタボロにし、その腕が赤黒く変色する程の強打を浴びせていた。
「オォォォォーーーッ!」
左足を深く踏み込み、腰を回し、肩を入れて撃つ。
完全に防御の体勢に入った相手に対してならば、繰り出した拳を戻す事までは考えなくていい。
ただ倒すためだけに、この一撃をぶつける!!
「な、んだとぉぉぉッ!?」
アラタの右ストレートに、貝のように閉じていた両腕が弾かれた!!
無防備にさらけ出された体に、渾身の右が突き刺さる!
「ガッ・・・!」
筋肉の鎧のようなダリルの肉体だが、光の拳の前では用をなさない。
左胸に深く拳をめり込ませたまま、アラタは更に強く拳を振り抜いた!
殴られるままに背中から床に叩き付けられる。
恵まれた体を持つダリルにとって、これは初めての経験だった。
しかも自分に土を付けた相手は、頭半分は小さく、体付きも自分とは比べ物にならないくらい細いのだ。
一連の攻撃、特に最後の右ストレートで闇の力も大きく削られた。
カーンも倒れ、ギルバートも殺された。
護衛の二人もいなくなった今、ダリル・パープルズは敗北という現実を認めるしかなかった。
この黒髪の男サカキ・アラタにも、ここまで追いつめられている。
どう考えても、ロンズデール国王を奪取できる状況にはない。
「ゲホッ・・・フッ・・・ハハハハハ!認めるしか、ない、な・・・この場の勝利は、お前達の、ものだ。だが、あくまでこの場だけだ・・・」
言葉を口にすると左胸に突き刺さるような、酷く鋭い痛みが走る。
どうやら今の一撃で胸骨を砕かれたようだ。
ダリル・パープルズはゆっくりと上半身を起こすと、数歩程離れた場所で拳を構えているアラタに目を向けた。
「・・・私をここまで追い込んで・・・絶好機にも関わらず、まだ警戒するその用心深さは褒めてやろう。そうだ・・・貴様のその警戒は・・・正しい」
胸のダメージの大きい事は一目で分かった。
足にも力が入らないのだろう。膝に手を着きやっとの思いで立ち上がる。
もはや勝負は完全についていた。
だが、追い詰められたダリルの表情には、焦りも苛立ちもなく、ある種の覚悟を決めた者の余裕さえ浮かんでいた。
アラタに残された時間は、あと十数秒しかない。
しかし今のダリルならば、十秒あればノックアウトする事は可能である。
アラタの宣言通りの状況になっていた。
しかし、目に見えない部分で、両者の間には緊張感が漂い、アラタはダリルから放たれるプレッシャーに気圧されかけていた。
なんだ・・・?いったいなにを隠している?
勝負はもうついた。だが、コイツのこの自信はなんだ?
分からない・・・このまま殴り倒せばいいだろうが、今迂闊に近づくのは危険に感じる。
だが、俺にはもう時間が無い・・・行くしかない!
覚悟を決めたアラタの残り十秒。
それはダリルへ向かって大きく踏み込み、左のストレートを放とうとしたその時だった。
「私にとっても危険だが、お前らも無事に帰る事はできない」
ダリルの呟きは、とても小さなものだった。
その言葉をアラタが耳にした直後、ダリルの全身から闇が火山噴火の如く、勢いよく放出された。
「なに!?」
アラタの顔に動揺が走る。
闇は瞬く間にフロアを埋め尽くし、アラタ達は身動きが取れなくなってしまった。
「くっ、やはり切り札を持っていたか!」
完全なる暗闇はアラタ達を一瞬で閉じ込めた。
「この戦いは貴様らの勝利だ。だが、生き残り国へ帰れるのは私だけだ」
一寸先も見えない闇に囲まれた中、ダリルの声だけが空間に反射して、上に下に右に左と、あちこちから響き聞こえた。
そして闇の瘴気は船を食い破った
身体強化も闇の瘴気も意味を成さない。
鼻が潰され、粘着性のある真っ赤な血液が宙に飛び散らされる。
体勢を立て直す間さえなく、続けざまに右の脇腹に衝撃を受け、胃液を撒き散らしそうになる。
胃が逆流させられそうな程の衝撃、それは目の前の黒髪の男の、左拳のよる打撃だった。
左胸、心臓の位置が殴られ、一瞬だが意識が飛びそうになる。
足元がぐらつき、上半身が崩れ落ちそうになったところで、顎が撥ね上げられた!
な・・・ぜだ?
なぜ、突然、ここまで速く・・・なった!?
私の闇は、確かにコイツの攻撃を察知している・・・だが・・・
190cm、100キロを超える巨体が浮く程の衝撃!
ヘビー級の体躯を持つダリルが、自分よりはるかに小さいアラタの拳に圧倒されている。
光の拳はダリルの闇を確実に上回っていた。
ダリルは体から発する闇の瘴気に拳が触れた瞬間を察知し、肉体に拳が届く前に体を動かし躱していた。
瘴気に拳が触れてから肉体に届くまでの時間は極めて短い。
短いが、回避を前提とした動きをしているダリルには、一瞬の猶予があれば躱す事は可能だった。
しかしここに来て突然、回避が間に合わず、アラタの攻撃を一方的に食らい始めた。
なぜか?
アラタはダリルの回避方法を見破ったわけではない。
だが、届かないのならば、ダリルが躱すよりも早く動き、拳をあてればいい!
ダリルのパワーはアラタを大きく上回っているが、力任せに振るわれるだけの攻撃など、おそるるに足らず!アラタはフットワークを駆使し、攻撃時にはダリルが躱せない程の超接近戦を挑んでいた。
いかに闇が拳を察知しようが、それが意味をなさないくらいに迫り撃てばいい!
「ふ、ふざ・・・ふざけっ・・・!」
脇を閉めて両腕を盾に体を守る。
ガードの上からでもおかいまいなく撃ち続けるアラタの拳は、ダリルの上等な上着をズタボロにし、その腕が赤黒く変色する程の強打を浴びせていた。
「オォォォォーーーッ!」
左足を深く踏み込み、腰を回し、肩を入れて撃つ。
完全に防御の体勢に入った相手に対してならば、繰り出した拳を戻す事までは考えなくていい。
ただ倒すためだけに、この一撃をぶつける!!
「な、んだとぉぉぉッ!?」
アラタの右ストレートに、貝のように閉じていた両腕が弾かれた!!
無防備にさらけ出された体に、渾身の右が突き刺さる!
「ガッ・・・!」
筋肉の鎧のようなダリルの肉体だが、光の拳の前では用をなさない。
左胸に深く拳をめり込ませたまま、アラタは更に強く拳を振り抜いた!
殴られるままに背中から床に叩き付けられる。
恵まれた体を持つダリルにとって、これは初めての経験だった。
しかも自分に土を付けた相手は、頭半分は小さく、体付きも自分とは比べ物にならないくらい細いのだ。
一連の攻撃、特に最後の右ストレートで闇の力も大きく削られた。
カーンも倒れ、ギルバートも殺された。
護衛の二人もいなくなった今、ダリル・パープルズは敗北という現実を認めるしかなかった。
この黒髪の男サカキ・アラタにも、ここまで追いつめられている。
どう考えても、ロンズデール国王を奪取できる状況にはない。
「ゲホッ・・・フッ・・・ハハハハハ!認めるしか、ない、な・・・この場の勝利は、お前達の、ものだ。だが、あくまでこの場だけだ・・・」
言葉を口にすると左胸に突き刺さるような、酷く鋭い痛みが走る。
どうやら今の一撃で胸骨を砕かれたようだ。
ダリル・パープルズはゆっくりと上半身を起こすと、数歩程離れた場所で拳を構えているアラタに目を向けた。
「・・・私をここまで追い込んで・・・絶好機にも関わらず、まだ警戒するその用心深さは褒めてやろう。そうだ・・・貴様のその警戒は・・・正しい」
胸のダメージの大きい事は一目で分かった。
足にも力が入らないのだろう。膝に手を着きやっとの思いで立ち上がる。
もはや勝負は完全についていた。
だが、追い詰められたダリルの表情には、焦りも苛立ちもなく、ある種の覚悟を決めた者の余裕さえ浮かんでいた。
アラタに残された時間は、あと十数秒しかない。
しかし今のダリルならば、十秒あればノックアウトする事は可能である。
アラタの宣言通りの状況になっていた。
しかし、目に見えない部分で、両者の間には緊張感が漂い、アラタはダリルから放たれるプレッシャーに気圧されかけていた。
なんだ・・・?いったいなにを隠している?
勝負はもうついた。だが、コイツのこの自信はなんだ?
分からない・・・このまま殴り倒せばいいだろうが、今迂闊に近づくのは危険に感じる。
だが、俺にはもう時間が無い・・・行くしかない!
覚悟を決めたアラタの残り十秒。
それはダリルへ向かって大きく踏み込み、左のストレートを放とうとしたその時だった。
「私にとっても危険だが、お前らも無事に帰る事はできない」
ダリルの呟きは、とても小さなものだった。
その言葉をアラタが耳にした直後、ダリルの全身から闇が火山噴火の如く、勢いよく放出された。
「なに!?」
アラタの顔に動揺が走る。
闇は瞬く間にフロアを埋め尽くし、アラタ達は身動きが取れなくなってしまった。
「くっ、やはり切り札を持っていたか!」
完全なる暗闇はアラタ達を一瞬で閉じ込めた。
「この戦いは貴様らの勝利だ。だが、生き残り国へ帰れるのは私だけだ」
一寸先も見えない闇に囲まれた中、ダリルの声だけが空間に反射して、上に下に右に左と、あちこちから響き聞こえた。
そして闇の瘴気は船を食い破った
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