654 / 1,370
653 圧倒的な力の差
しおりを挟む
「まともに受けるな!防げビリージョー!」
身をもってダリルの拳を受けたガラハドは、ビリージョーに向かって声を振り絞って叫んだ。
ガラハドが受けた攻撃は、腹と顔に一発づつである。
だがその異常ともいえる攻撃力は、たった二発でガラハドから立ち上がる力を奪う程だった。
自分がこうなのだ。
体格ではガラハドに遠く及ばないビリージョーでは、とても耐えられるとは思えない。
「ぐぅッ!」
落下してくるタイミングに合わせて、ダリルの突き出した右拳を、ビリージョーは交差させた両腕で受け止めた。だが想像以上の威力に、肉がひしゃげて腕が軋み音を立てる。
「フンッ!」
ビリージョーの腕に拳をめり込ませたまま、ダリルは腕を振り抜いた。
なすすべもなく、ほぼ水平に体を飛ばされたビリージョーは、そのまま壁に体を叩きつけられる。
「がはッ・・・!」
その衝撃は背中から全身を駆け抜けるが、それ以上に甚大なダメージを、たった一発でビリージョーは負ってしまった。
「貧弱だな。その腕、もう使えないな」
「くっ・・・お前、この力・・・」
右腕の肘から下、ダリルの拳を受けた腕は、赤黒く変色し小刻みに震えている。
本職は料理人だがビリージョーとて体力型、そしてレイジェスで店長のバリオスから、戦闘の手ほどきを受けた経験もある。体はしっかりと鍛えていた。
「ダリル・・・パープルズ、お前、一体なにをした?」
たった一発で右腕が折れた。それを認識した事で、強烈な痛みが現実になって脳に突き上げて来る。
ビリージョーは残った左腕に諸刃のナイフを握り、ゆっくりとこっちに向かって来るダリルに突きつけた。
「右の拳で殴っただけだ・・・と言っても信用しなそうだな。なかなか勘が良さそうだが、それを教えてやるほど私はお人良しではない」
手の平でナイフを回しながら、ダリル・パープルズは一歩一歩足を進めて来た。
ビリージョーはこちらに向かって歩いて来るダリルに対して、自分ではまるで歯が立たないという現実を冷静に受け入れていた。
なんだ?この力はどう考えても普通じゃない。
いくらなんでも片手で俺を天井にぶん投げるなんて、できるはずがない!
こいつ、なんらかの魔道具を使ってるな?
どうする・・・戦闘系の魔道具を持たない俺にこれ以上できる事なんて・・・
痛みよりも、精神的なものによる嫌な汗が全身から噴き出る。
「どうした?もう観念したのか?だったら死ぬしかないぞ?」
ビリージョーの動揺を見て、ダリル・パープルズは薄い笑みを浮かべた。
「くっ・・・オォォォォーーーッ!」
壁を背にしたまま追い詰められたビリージョーは、その心の揺らぎ、恐怖心をかき消すように声を張り上げると、腰を捻り左の上段蹴りをダリルの顔面目掛けて放った。
「フッ・・・」
鼻で笑って上体を反らし、最小限の動きでビリージョーの蹴りをかわす。
ビリージョーはそのまま体を右に回し、左足を地に付けると同時に、勢いをそのままに右の回し蹴りをダリルの胸に向かって繰り出すが、それさえもダリルは左手で難なく受け止める。
「ウォォォォーーーッ!」
蹴りを止められる事は想定済だ!これならどうだ!
左足で床を蹴り上げると、ビリージョーはそのまま腰を右に捻り、左のナイフでダリルの喉元に斬りかかった!
ぶつりかり合う金属音と共に、ビリージョーのナイフは、刃の中心から真っ二つに斬り落とされた。
ダリルは右手に持つナイフを見せつけるように、ビリージョーに突きつけた。
「な・・・!?」
俺のナイフをこうも容易く・・・
これほど・・・これほどなのか!?
「どうした?抵抗は終わりか?」
驚愕するビリージョーを鼻で笑うと、ダリルは左手で掴んでいるビリージョーの右足を持ち上げ、そのまま壁に向かって叩きつけた!
「グァッ!」
「フハハハハ!まだまだ!これからだぞ!」
まるで棒切れでも振り回すかのように、ビリージョーを、一人の人間を振り回すその姿は、異質、異常、とてもまともなものではなかった。
「やめろォォォーーーッツ!」
ガラハドは叫び、震える足を無理やり立たせると、背後からダリルに飛び掛かった!
だが疲労とダメージで、スピードもパワーもまるで無いその特攻は、ダリルに腹を蹴り飛ばされ、あえなく倒されてしまう。
「ガッ・・・!ハァッ、うぐ・・・」
「そのまま寝ていろガラハド!あせらなくてもこいつの次はお前だ!」
倒れるガラハドの背を見て嘲笑うと、ダリルは再びビリージョーの足を振り上げ、床に壁に叩きつける。やがてビリージョーから、か細いうめき声がかろうじて聞こえるに程度になると、ダリルはようやくビリージョーを手放した。
全身が血にまみれ力無く倒れるビリージョー。
右腕だけでなく、左腕、両足、肋骨なども砕かれているだろう。
「・・・まぁ、こんなものだな。そろそろ楽に・・・」
右手に握るナイフを振り上げたその時、背後に感じた強烈な気配に、ダリルは思わず振り返った。
「・・・貴様、何者だ?」
ダリルの視線の先には、黒髪黒目の男が映っていた。
「・・・よくも・・・やってくれたな・・・」
その男の目は倒れているガラハド、そしてビリージョーを見ると、最後に鋭くダリルを見据えた。
「ん?なんと言ったのかね?声が小さくて聞こえんな」
鼻で笑い、見下すように言葉を返すダリル。それが正面の男の怒りに更なる火を付けた。
「絶対に許さねぇぞッ!」
拳を硬く握り締め、アラタはダリルへと向かった!
身をもってダリルの拳を受けたガラハドは、ビリージョーに向かって声を振り絞って叫んだ。
ガラハドが受けた攻撃は、腹と顔に一発づつである。
だがその異常ともいえる攻撃力は、たった二発でガラハドから立ち上がる力を奪う程だった。
自分がこうなのだ。
体格ではガラハドに遠く及ばないビリージョーでは、とても耐えられるとは思えない。
「ぐぅッ!」
落下してくるタイミングに合わせて、ダリルの突き出した右拳を、ビリージョーは交差させた両腕で受け止めた。だが想像以上の威力に、肉がひしゃげて腕が軋み音を立てる。
「フンッ!」
ビリージョーの腕に拳をめり込ませたまま、ダリルは腕を振り抜いた。
なすすべもなく、ほぼ水平に体を飛ばされたビリージョーは、そのまま壁に体を叩きつけられる。
「がはッ・・・!」
その衝撃は背中から全身を駆け抜けるが、それ以上に甚大なダメージを、たった一発でビリージョーは負ってしまった。
「貧弱だな。その腕、もう使えないな」
「くっ・・・お前、この力・・・」
右腕の肘から下、ダリルの拳を受けた腕は、赤黒く変色し小刻みに震えている。
本職は料理人だがビリージョーとて体力型、そしてレイジェスで店長のバリオスから、戦闘の手ほどきを受けた経験もある。体はしっかりと鍛えていた。
「ダリル・・・パープルズ、お前、一体なにをした?」
たった一発で右腕が折れた。それを認識した事で、強烈な痛みが現実になって脳に突き上げて来る。
ビリージョーは残った左腕に諸刃のナイフを握り、ゆっくりとこっちに向かって来るダリルに突きつけた。
「右の拳で殴っただけだ・・・と言っても信用しなそうだな。なかなか勘が良さそうだが、それを教えてやるほど私はお人良しではない」
手の平でナイフを回しながら、ダリル・パープルズは一歩一歩足を進めて来た。
ビリージョーはこちらに向かって歩いて来るダリルに対して、自分ではまるで歯が立たないという現実を冷静に受け入れていた。
なんだ?この力はどう考えても普通じゃない。
いくらなんでも片手で俺を天井にぶん投げるなんて、できるはずがない!
こいつ、なんらかの魔道具を使ってるな?
どうする・・・戦闘系の魔道具を持たない俺にこれ以上できる事なんて・・・
痛みよりも、精神的なものによる嫌な汗が全身から噴き出る。
「どうした?もう観念したのか?だったら死ぬしかないぞ?」
ビリージョーの動揺を見て、ダリル・パープルズは薄い笑みを浮かべた。
「くっ・・・オォォォォーーーッ!」
壁を背にしたまま追い詰められたビリージョーは、その心の揺らぎ、恐怖心をかき消すように声を張り上げると、腰を捻り左の上段蹴りをダリルの顔面目掛けて放った。
「フッ・・・」
鼻で笑って上体を反らし、最小限の動きでビリージョーの蹴りをかわす。
ビリージョーはそのまま体を右に回し、左足を地に付けると同時に、勢いをそのままに右の回し蹴りをダリルの胸に向かって繰り出すが、それさえもダリルは左手で難なく受け止める。
「ウォォォォーーーッ!」
蹴りを止められる事は想定済だ!これならどうだ!
左足で床を蹴り上げると、ビリージョーはそのまま腰を右に捻り、左のナイフでダリルの喉元に斬りかかった!
ぶつりかり合う金属音と共に、ビリージョーのナイフは、刃の中心から真っ二つに斬り落とされた。
ダリルは右手に持つナイフを見せつけるように、ビリージョーに突きつけた。
「な・・・!?」
俺のナイフをこうも容易く・・・
これほど・・・これほどなのか!?
「どうした?抵抗は終わりか?」
驚愕するビリージョーを鼻で笑うと、ダリルは左手で掴んでいるビリージョーの右足を持ち上げ、そのまま壁に向かって叩きつけた!
「グァッ!」
「フハハハハ!まだまだ!これからだぞ!」
まるで棒切れでも振り回すかのように、ビリージョーを、一人の人間を振り回すその姿は、異質、異常、とてもまともなものではなかった。
「やめろォォォーーーッツ!」
ガラハドは叫び、震える足を無理やり立たせると、背後からダリルに飛び掛かった!
だが疲労とダメージで、スピードもパワーもまるで無いその特攻は、ダリルに腹を蹴り飛ばされ、あえなく倒されてしまう。
「ガッ・・・!ハァッ、うぐ・・・」
「そのまま寝ていろガラハド!あせらなくてもこいつの次はお前だ!」
倒れるガラハドの背を見て嘲笑うと、ダリルは再びビリージョーの足を振り上げ、床に壁に叩きつける。やがてビリージョーから、か細いうめき声がかろうじて聞こえるに程度になると、ダリルはようやくビリージョーを手放した。
全身が血にまみれ力無く倒れるビリージョー。
右腕だけでなく、左腕、両足、肋骨なども砕かれているだろう。
「・・・まぁ、こんなものだな。そろそろ楽に・・・」
右手に握るナイフを振り上げたその時、背後に感じた強烈な気配に、ダリルは思わず振り返った。
「・・・貴様、何者だ?」
ダリルの視線の先には、黒髪黒目の男が映っていた。
「・・・よくも・・・やってくれたな・・・」
その男の目は倒れているガラハド、そしてビリージョーを見ると、最後に鋭くダリルを見据えた。
「ん?なんと言ったのかね?声が小さくて聞こえんな」
鼻で笑い、見下すように言葉を返すダリル。それが正面の男の怒りに更なる火を付けた。
「絶対に許さねぇぞッ!」
拳を硬く握り締め、アラタはダリルへと向かった!
0
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる