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652 ダリルの秘密
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ダリル・パープルズは、自分に向かってこようとしない限り、サリーに攻撃を仕掛けようとする事はなかった。正確には、がむしゃらに突っ込んでくるガラハドを相手にしながらでは、サリーに手を伸ばす事まではできなかった。
その意味では、ガラハドはダリルを押さえる事はできていた。
だが、あまりに大きな戦闘力の差は、決して埋める事ができなかった。
「ウオォォォーーーッ!」
右腕を振り上げ渾身の一撃を繰り出すが、ダリルはそれさえも意に介さず、楽々と片手で受け止めた。
「ぐうぅぅぅぅ!」
力を振り絞り右の拳を推し進めようとするが、それを押さえるダリルの手はビクともしない。
体力型としての力の差は言葉にするまでもなかった。
「もういいだろう」
「ぐァッ・・・!」
ダリルの右の拳がガラハドの鳩尾を抉る。
腹部にめり込む衝撃に、ガラハドの体が浮き上がった。
呼吸が止まり、胃の中の物が全て吐き出されそうになる。
「寝てろ」
ダリルの左拳がガラハドの右の頬を撃ち抜いた。
190cm、100キロを超える巨体が殴り飛ばされる。数メートル後方に肩から落ちると、そのまま勢いにまかせて体を転がされる。
「ガラハド、なかなかのパワーだ。だが、パワーだけでは私には絶対に勝てない。勝てない理由があるのだよ」
「う・・・ぐぅ、ぁ・・・」
体格では決して引けを取っていない。だが、なぜここまで一方的に打ちのめされるのか?
ガラハドは床に肘をついてなんとか体を起こそうとするが、たった二発の攻撃で、すでに足に来るほどのダメージを受けている。
上半身を起こし、自分を見下ろすダリルを睨みつける事が精いっぱいだった。
「似たような体格なのに、どうして自分がこうも子供扱いされるか不思議だろ?」
「くっ、貴様・・やはり、なに使っているな!?」
ガラハドの言葉にダリルは薄い笑みだけを見せると、小さく首を横に振った。
「これから死ぬお前が、気にする事ではない。さよならだ・・・」
ダリル・パープルズは上着の内ポケットからナイフを取り出すと、逆手に持って振り上げた。
「くそ!」
咄嗟に顔の前で腕を盾にして身を守るが、おそらくなんの役にも立たない。
それだけの力の差がある事を、ガラハドは理解している。
「死ねっ!ガラハ・・・!?」
ガラハドの脳天目掛けてナイフを振り下ろそうとしたが、耳に届いた微かな風切り音に、ダリルは後ろを振り返り、自分に向けて投げられたソレを叩き落とした。
床にぶつかる金属音とともに、ダリルが目にしたソレは水に濡れた諸刃のナイフ。
そして・・・・・
「くらえぇぇぇーーーッ!」
その叫び声の主、ビリージョー・ホワイトは、ナイフを投げつけると同時に、すでに走り距離を詰めていた。頭から水をかぶったかのように全身が濡れているのは、おそらく浸水した下の階を潜り抜けてきたからだろう。
ビリージョーは、投げたナイフを弾かれた時には、すでにダリルの顔の高さまで跳躍しており、黒に近いダークブラウンの瞳は、ダリル・パープルズを鋭く睨みつけていた。
「ビリージョー!」
ガラハドの声に応えるように繰り出したビリージョーの飛び蹴りが、ダリルの顔を捉えた。
「・・・なに!?」
右足を正面から、ダリルの顔を打ち抜くように蹴り放った。
これ以上ないというタイミングだったが、ビリージョーの渾身の飛び蹴りさえ、ダリルは左手一本で受け止めていた。
「いかん!早く離れろビリージョー!」
ガラハドの叫びにビリージョーが反応した時には、すでにビリージョーの右足はダリルに掴まれていた。
「遅いな」
突然体が宙に投げ出され、ビリージョーは驚きのあまり一瞬言葉を失った。
ガラハドには比べられもしないが、ビリージョーとて背丈は185cmある。身体つきはやや細いが、それでも成人男性一人を、軽々と片手で投げる事が尋常ではない腕力だった。
「その細い体で、私の拳に耐えられるな?」
宙に投げられれば当然落ちて来る。
ビリージョーの落下に合わせ、ダリルは右の拳を握り締めた。
その意味では、ガラハドはダリルを押さえる事はできていた。
だが、あまりに大きな戦闘力の差は、決して埋める事ができなかった。
「ウオォォォーーーッ!」
右腕を振り上げ渾身の一撃を繰り出すが、ダリルはそれさえも意に介さず、楽々と片手で受け止めた。
「ぐうぅぅぅぅ!」
力を振り絞り右の拳を推し進めようとするが、それを押さえるダリルの手はビクともしない。
体力型としての力の差は言葉にするまでもなかった。
「もういいだろう」
「ぐァッ・・・!」
ダリルの右の拳がガラハドの鳩尾を抉る。
腹部にめり込む衝撃に、ガラハドの体が浮き上がった。
呼吸が止まり、胃の中の物が全て吐き出されそうになる。
「寝てろ」
ダリルの左拳がガラハドの右の頬を撃ち抜いた。
190cm、100キロを超える巨体が殴り飛ばされる。数メートル後方に肩から落ちると、そのまま勢いにまかせて体を転がされる。
「ガラハド、なかなかのパワーだ。だが、パワーだけでは私には絶対に勝てない。勝てない理由があるのだよ」
「う・・・ぐぅ、ぁ・・・」
体格では決して引けを取っていない。だが、なぜここまで一方的に打ちのめされるのか?
ガラハドは床に肘をついてなんとか体を起こそうとするが、たった二発の攻撃で、すでに足に来るほどのダメージを受けている。
上半身を起こし、自分を見下ろすダリルを睨みつける事が精いっぱいだった。
「似たような体格なのに、どうして自分がこうも子供扱いされるか不思議だろ?」
「くっ、貴様・・やはり、なに使っているな!?」
ガラハドの言葉にダリルは薄い笑みだけを見せると、小さく首を横に振った。
「これから死ぬお前が、気にする事ではない。さよならだ・・・」
ダリル・パープルズは上着の内ポケットからナイフを取り出すと、逆手に持って振り上げた。
「くそ!」
咄嗟に顔の前で腕を盾にして身を守るが、おそらくなんの役にも立たない。
それだけの力の差がある事を、ガラハドは理解している。
「死ねっ!ガラハ・・・!?」
ガラハドの脳天目掛けてナイフを振り下ろそうとしたが、耳に届いた微かな風切り音に、ダリルは後ろを振り返り、自分に向けて投げられたソレを叩き落とした。
床にぶつかる金属音とともに、ダリルが目にしたソレは水に濡れた諸刃のナイフ。
そして・・・・・
「くらえぇぇぇーーーッ!」
その叫び声の主、ビリージョー・ホワイトは、ナイフを投げつけると同時に、すでに走り距離を詰めていた。頭から水をかぶったかのように全身が濡れているのは、おそらく浸水した下の階を潜り抜けてきたからだろう。
ビリージョーは、投げたナイフを弾かれた時には、すでにダリルの顔の高さまで跳躍しており、黒に近いダークブラウンの瞳は、ダリル・パープルズを鋭く睨みつけていた。
「ビリージョー!」
ガラハドの声に応えるように繰り出したビリージョーの飛び蹴りが、ダリルの顔を捉えた。
「・・・なに!?」
右足を正面から、ダリルの顔を打ち抜くように蹴り放った。
これ以上ないというタイミングだったが、ビリージョーの渾身の飛び蹴りさえ、ダリルは左手一本で受け止めていた。
「いかん!早く離れろビリージョー!」
ガラハドの叫びにビリージョーが反応した時には、すでにビリージョーの右足はダリルに掴まれていた。
「遅いな」
突然体が宙に投げ出され、ビリージョーは驚きのあまり一瞬言葉を失った。
ガラハドには比べられもしないが、ビリージョーとて背丈は185cmある。身体つきはやや細いが、それでも成人男性一人を、軽々と片手で投げる事が尋常ではない腕力だった。
「その細い体で、私の拳に耐えられるな?」
宙に投げられれば当然落ちて来る。
ビリージョーの落下に合わせ、ダリルは右の拳を握り締めた。
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