異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
648 / 1,370

647 宿敵との対峙

しおりを挟む
「ガラハド、サリー・・・アラタ!」

通路を駆け抜けたレイチェルの目に飛び込んで来たのは、ボロボロのサリーとガラハドだった。
そしてガラハドが抱きかかえている黒髪の男が誰か分かると、レイチェルは大きく声を上げ、強く床を蹴って加速した。

「うぉっ!・・・・・あ、相変わらず、すげぇ速さだな」

目にした時は、なんとか姿が分かる程度の距離だった。
そして姿を認めた直後に一瞬で懐まで距離を詰められ、ガラハドはただ驚きをそのまま言葉にするだけだった。

「アラタ!・・・大丈夫、なのか?」

「レイチェルさん、安心して。ヒールもかけたし薬も飲ませたから、アラタさんは大丈夫よ。時期に目を覚ますわ」

眉根を寄せて、心配そうにアラタの顔を見るレイチェルに、サリーがそっと声をかけた。

「そうか・・・サリー、あなたがいて良かった。ありがとう。おかげで私の友達が泣かなくてすむ」

「カチュアさんね?ええ、私も助けられてほっとしてるわ・・・」

「二人とも、お話しはここまでね・・・」

レイチェルとサリーの間に言葉を割り込ませたのはリンジー。
普段の明るい声色からは想像もできない程、低く真剣味を帯びた声が二人の言葉を止めた。

「・・・お待ちかねよ」

髪より少し薄い灰色の瞳を向ける先には、宿敵ラミール・カーン。そしてギルバート・メンドーサがこちらを見据えていた。



「おしゃべりは終わったかな?」

腕を組み、冷たい眼差しを向けるカーンに対抗するように、リンジーは前に出た。
二人の間には数メートルの開きがあるが、両者にとっては一歩で詰める事ができる距離であり、すでにお互いが射程内に入っている。

「カーン・・・」

リンジーは静かに目を伏せて一度大きく呼吸をする。
半歩右足を下げて両手の平をカーンに向けると、左手は胸の高さに、右手は腰の高さで正対に構えた。身に纏う黒い生地の一枚布が、高まっていくリンジーの気に呼応するように、はためかせられる。
首から下げている、沢山の青い石が付いた革紐のネックレスも輝きを増していく。

首元から左右に分けて結ばれている腰まである長い髪、髪の先には宝石のような小ぶりで丸い玉がリボンで付けられている。その玉も輝きを放ち始め、ゆらゆらと揺れ動きだした。


「・・・フッ、やる気満々だな、まぁ、それもそうか・・・ここまで来てもはや話す事は無い・・・いいだろう。決着をつけてやる」

リンジーの気迫をその身に受けて、カーンもまた腰に下げた剣を抜いた。

「噂に聞いた事はあるだろうが・・・見るのは初めてだろ?」

見たままの印象をそのまま言えば、大きくて肉厚な剣だった。
特別に長いわけではないが太さが違った。男の太腿程、いやそれ以上には幅があるその得物の重さはかなりの物だろう。
それを片手で扱うカーンの腕力も、並々ならぬものであると理解できる。

しかしリンジーはそれ以外にももう一つ、カーンの剣に対して感じるものがあった。


あの剣、刃が・・・潰してあるのか?あれでは斬る事はできない。
斬る事が目的ではないのか?では鈍器のように叩き潰す戦い方をするのか?


「これが俺の、反響(はんきょう)の剣だ」

感触を確かめるように、見るからに重々しい剣を片手で振り回して見せると、カーンはニヤリと笑ってその名を告げた。


リンジー・ルプレクト
ラミール・カーン

二人の因縁の戦いが始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...