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646 それぞれの関係
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「ガラハド、お前がいるという事はリンジーもいるんだろ?やはり侵入者はお前達だったか」
カーンは一歩一歩、ゆっくりと距離を詰めて来る。
水に追い立てられている事など、まるで気にも留めていないかのように、非常にゆっくりとした歩みだった。
やけにハッキリと耳に届く足音が、背中に氷でもいれられたかのように冷たさを感じさせた。
そしてそのカーンの隣を歩く、ネイビーのスーツ姿の男の存在がガラハドの目を引いた。
「ギルバート・メンドーサ・・・」
大海の船団のオーナー、ギルバート・メンドーサ。
歳の頃は60に差し掛かろうというところだろう。
カーンより頭半分程背は低く、やや細身で端正な顔立ちをしている。
白と黒の入り混じった髪は後ろに撫でつけられており、年齢と共に顔に刻まれていったシワは、ギルバートの心中を表すかのように、眉間に険しく寄せられている。
「やってくれたなガラハド。ここまでするとは思わなかったぞ。いくら我々が気に喰わんと言っても、関係無い大勢の乗客まで巻き込むとは、貴様らこそ真の悪党だな」
「はぁ、何言ってんだ?自分の船のポンコツ具合を俺らのせいにすんじゃねぇよ。出航一時間で転覆なんて聞いた事もねぇ!大海の船団の技術の底が知れるな」
怒りに満ちた目でガラハドを睨みつけるギルバートだが、ガラハドも負けじと睨み返す。
一触即発の雰囲気に、空気が張り詰める。
「カーンよ、船を沈めたのはこいつらだという事は疑う余地も無い。やれ」
ギルバートが顎で指示を出す。
合わせてガラハドとサリーが身構える。だが、殺気こそ滲ませているものの、カーンは動く事はなかった。
「・・・どうした?なぜやらん?ここに来る途中にも見ただろう?お前の部下だった魔道剣士の死体を。それもこいつらとしか考えられんぞ?魔道剣士を倒す程の実力者が、乗客にいるとは考え難し、戦う理由も無いからな」
煽り始めるギルバートに、カーンはまず視線を送ると、ゆっくりと顔を向けて答えた。
「なにか、勘違いしているようだな?・・・俺がいつお前の部下になった?」
「・・・なんだと?」
場が凍りつくような低く冷たい声だった。
ギルバートは一瞬だけ目を開いたが、カーンの視線を正面から受け、撥(は)ねつけるように睨み返した。
「今は強力体勢をとっているから、ここまで護衛を引き受けてやったが、俺はお前の部下になった覚えはない。俺に命令をするな。俺を操れると思うな」
「若造が、貴様こそ俺を見くびるなよ?護衛を任せたからと言って、俺に戦う力がないわけではないんだぞ?貴様ごとき海の藻屑にする事など容易い事だ」
ギルバートが上着の中に右手を入れて何かを取り出そうとしたところで、カーンがギルバートから視線を外してガラハド達に顔を向けた。
「・・・ここまでだ。お前も俺より先に戦う相手がいるだろ?」
睨み合うギルバートから視線を外したのは、この状況では自分を攻撃できないだろうという読みもあったが、仮に攻撃をされても対応できるという、確信的な自信があってこそだった。
「フン・・・まぁ、確かにな。目的が一致する間は敵対しないでおいてやる」
ギルバートもカーンの向く方に顔を向けた。
それはガラハド達を見ていると言うよりも、さらにその後方に目が向けられていた。
一瞬遅れてガラハドとサリーも気が付いた。
自分達の後ろから近づいて来る気配に・・・頼もしい仲間達に!
「リンジー!レイチェル!」
後ろを振り返ったガラハドは、こちらに走って来る灰色の髪の女リンジーと、赤毛の女レイチェルを目にして声を上げた。
カーンは一歩一歩、ゆっくりと距離を詰めて来る。
水に追い立てられている事など、まるで気にも留めていないかのように、非常にゆっくりとした歩みだった。
やけにハッキリと耳に届く足音が、背中に氷でもいれられたかのように冷たさを感じさせた。
そしてそのカーンの隣を歩く、ネイビーのスーツ姿の男の存在がガラハドの目を引いた。
「ギルバート・メンドーサ・・・」
大海の船団のオーナー、ギルバート・メンドーサ。
歳の頃は60に差し掛かろうというところだろう。
カーンより頭半分程背は低く、やや細身で端正な顔立ちをしている。
白と黒の入り混じった髪は後ろに撫でつけられており、年齢と共に顔に刻まれていったシワは、ギルバートの心中を表すかのように、眉間に険しく寄せられている。
「やってくれたなガラハド。ここまでするとは思わなかったぞ。いくら我々が気に喰わんと言っても、関係無い大勢の乗客まで巻き込むとは、貴様らこそ真の悪党だな」
「はぁ、何言ってんだ?自分の船のポンコツ具合を俺らのせいにすんじゃねぇよ。出航一時間で転覆なんて聞いた事もねぇ!大海の船団の技術の底が知れるな」
怒りに満ちた目でガラハドを睨みつけるギルバートだが、ガラハドも負けじと睨み返す。
一触即発の雰囲気に、空気が張り詰める。
「カーンよ、船を沈めたのはこいつらだという事は疑う余地も無い。やれ」
ギルバートが顎で指示を出す。
合わせてガラハドとサリーが身構える。だが、殺気こそ滲ませているものの、カーンは動く事はなかった。
「・・・どうした?なぜやらん?ここに来る途中にも見ただろう?お前の部下だった魔道剣士の死体を。それもこいつらとしか考えられんぞ?魔道剣士を倒す程の実力者が、乗客にいるとは考え難し、戦う理由も無いからな」
煽り始めるギルバートに、カーンはまず視線を送ると、ゆっくりと顔を向けて答えた。
「なにか、勘違いしているようだな?・・・俺がいつお前の部下になった?」
「・・・なんだと?」
場が凍りつくような低く冷たい声だった。
ギルバートは一瞬だけ目を開いたが、カーンの視線を正面から受け、撥(は)ねつけるように睨み返した。
「今は強力体勢をとっているから、ここまで護衛を引き受けてやったが、俺はお前の部下になった覚えはない。俺に命令をするな。俺を操れると思うな」
「若造が、貴様こそ俺を見くびるなよ?護衛を任せたからと言って、俺に戦う力がないわけではないんだぞ?貴様ごとき海の藻屑にする事など容易い事だ」
ギルバートが上着の中に右手を入れて何かを取り出そうとしたところで、カーンがギルバートから視線を外してガラハド達に顔を向けた。
「・・・ここまでだ。お前も俺より先に戦う相手がいるだろ?」
睨み合うギルバートから視線を外したのは、この状況では自分を攻撃できないだろうという読みもあったが、仮に攻撃をされても対応できるという、確信的な自信があってこそだった。
「フン・・・まぁ、確かにな。目的が一致する間は敵対しないでおいてやる」
ギルバートもカーンの向く方に顔を向けた。
それはガラハド達を見ていると言うよりも、さらにその後方に目が向けられていた。
一瞬遅れてガラハドとサリーも気が付いた。
自分達の後ろから近づいて来る気配に・・・頼もしい仲間達に!
「リンジー!レイチェル!」
後ろを振り返ったガラハドは、こちらに走って来る灰色の髪の女リンジーと、赤毛の女レイチェルを目にして声を上げた。
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