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641 因縁の相手
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「バルデス、大丈夫か!?」
「・・・レイ、チェルか・・・ふっ、助けられたな」
レイチェルが駆け寄ると、バルデスは魔力の放出を押さえ、壁に背を預けて座り込んだ。
一瞬の差だった。レイチェル達が駆けつけ、一瞬早くシャノンが撃たなければ、自分が竜氷縛を撃っていた。
そうすればウラジミールは倒せていたかもしれないが、、自分もここで倒れていたであろう。
運がいい・・・バルデスは、目を伏せて口の端に少しだけ笑みを作った。
「お前・・・相当やられたみたいだな。早く治療しないと、サリーはどこだ?一緒じゃないのか?」
大量の汗、血の気の失せた顔色、そして右胸を押さえて苦しそうに呼吸をしている。
レイチェルはバルデス自身もひどいダメージを負っている事を見て取った。
白魔法使いのサリーに、すぐにでも治療をさせなければと、辺りを見回すレイチェルに、バルデスはサリーの向かった先、ボート部屋とは反対の通路の奥を指さした。
「あっちだ・・・アラタと、ガラハドもいる。はぁ・・はぁ・・・サリーは、薬を持って、助けに行った」
「なに!?アラタとガラハドもいるのか。薬と言ったが、二人の状態は?」
レイチェルの声に強い緊張感が含まれると、バルデスもレイチェルの目を見て言葉を返した。
「二人とも意識はないが、ガラハドは、大丈夫だろう・・・だが、アラタは・・・危険な状態だ・・・」
「・・・分かった。バルデス、お前はここで休んでいろ。サリーと合流したら、すぐにここに来させる」
そう言ってレイチェルはバルデスの指した方に顔を向ける。
「レイチェル、私も行くわ」
背中にかけられた声に振り返ると、リンジーが立っていた。
「ここはシャノンに任せましょう。バルデスさん、これを飲んでおいて。少しは楽になるはずよ」
レイチェルに目配せすると、リンジーはバルデスの前に腰を下ろし、懐から鉄の小瓶を取り出した。
「回復薬か・・・ありがたく、いただこう・・・」
バルデスが小瓶を受け取ると、リンジーとレイチェルは顔を合わせ、サリーの向かった先へ駆け出した。
二人の後ろ姿を見送ると、
バルデスは小瓶の蓋を開けて中身を飲み干した。
「・・・行ったか」
できるだけ急げよ・・・・・
そろそろこの階にも水がくるだろう。
もう時間はあまり残っていない・・・・
壁に預けた腰と背中を通じて感じるのは、階下から押し寄せる水の振動。
船の沈没は刻一刻と近づいている。
バルデスは正面に向き直ると、数メートル先で自分の代わり戦う黒髪の魔法使いと、その魔法使いの手によって氷の竜に飲まれたニメートルの大男を見つめた。
悪くない、なかなかの竜氷縛だ。だが・・・・・
このままでは終わらないだろう。
シャノン・アラルコン。
ロンズデール最大手の、アラルコン商会の一人娘。
アラルコン商会は青の船団を率いて、水産業にも力を入れて取り仕切っている。
その青の船団のライバルが、ウラジミール・セルヒコの大海の船団だ。
最も、シャノンは自分から喧嘩を売る事はしなかった。むしろできるだけ接触しないように、必要な事以外では関わる事をせず距離を取っていた。
しかし、ウラジミールは何かと因縁をつけ、青の船団を潰そうと躍起になって近づいて来る。
評判を落とすためにはどんな些細なネタでも大きく騒ぎ立て、青の船団にとって迷惑な隣人でしかなかった。
距離を取ろうとしても、その分近づいて来る。いずれぶつかる事は避けられなかっただろう。
「・・・うそ、竜氷縛でダメなの?」
目の前には、まるで大地にしっかりと根を張った大木のように、天井に向かってそびえ立つ氷の竜。
超高密度に固められた氷の竜の腹の中には、飲み込まれたウラジミールの姿が見える。
そして自分の放った魔法だからこそ分かる。
氷の竜に飲まれてもウラジミールは死んでいない。
力を溜めて中から氷を破壊しようとしている。
「クッ!そんな・・・!」
動揺と焦りで、シャノンの頬を冷たい汗が伝う。
ウラジミールを中心に氷の内側から亀裂が入り出し、崩壊の序曲のように軋み音が鳴り出した。
そして・・・
「オォォォォォーーーーッツ!」
力を解放するように両腕を広げ、ウラジミールは雄叫びを上げながら氷の竜を粉砕し脱出した。
「シャノンーーーッツ!決着を付けてやるぞ!」
殺意に目を光らせ、憎しみで顔を歪ませる。
絶空剣を振りかぶり、ウラジミールが上空から襲いかかって来た。
「・・・レイ、チェルか・・・ふっ、助けられたな」
レイチェルが駆け寄ると、バルデスは魔力の放出を押さえ、壁に背を預けて座り込んだ。
一瞬の差だった。レイチェル達が駆けつけ、一瞬早くシャノンが撃たなければ、自分が竜氷縛を撃っていた。
そうすればウラジミールは倒せていたかもしれないが、、自分もここで倒れていたであろう。
運がいい・・・バルデスは、目を伏せて口の端に少しだけ笑みを作った。
「お前・・・相当やられたみたいだな。早く治療しないと、サリーはどこだ?一緒じゃないのか?」
大量の汗、血の気の失せた顔色、そして右胸を押さえて苦しそうに呼吸をしている。
レイチェルはバルデス自身もひどいダメージを負っている事を見て取った。
白魔法使いのサリーに、すぐにでも治療をさせなければと、辺りを見回すレイチェルに、バルデスはサリーの向かった先、ボート部屋とは反対の通路の奥を指さした。
「あっちだ・・・アラタと、ガラハドもいる。はぁ・・はぁ・・・サリーは、薬を持って、助けに行った」
「なに!?アラタとガラハドもいるのか。薬と言ったが、二人の状態は?」
レイチェルの声に強い緊張感が含まれると、バルデスもレイチェルの目を見て言葉を返した。
「二人とも意識はないが、ガラハドは、大丈夫だろう・・・だが、アラタは・・・危険な状態だ・・・」
「・・・分かった。バルデス、お前はここで休んでいろ。サリーと合流したら、すぐにここに来させる」
そう言ってレイチェルはバルデスの指した方に顔を向ける。
「レイチェル、私も行くわ」
背中にかけられた声に振り返ると、リンジーが立っていた。
「ここはシャノンに任せましょう。バルデスさん、これを飲んでおいて。少しは楽になるはずよ」
レイチェルに目配せすると、リンジーはバルデスの前に腰を下ろし、懐から鉄の小瓶を取り出した。
「回復薬か・・・ありがたく、いただこう・・・」
バルデスが小瓶を受け取ると、リンジーとレイチェルは顔を合わせ、サリーの向かった先へ駆け出した。
二人の後ろ姿を見送ると、
バルデスは小瓶の蓋を開けて中身を飲み干した。
「・・・行ったか」
できるだけ急げよ・・・・・
そろそろこの階にも水がくるだろう。
もう時間はあまり残っていない・・・・
壁に預けた腰と背中を通じて感じるのは、階下から押し寄せる水の振動。
船の沈没は刻一刻と近づいている。
バルデスは正面に向き直ると、数メートル先で自分の代わり戦う黒髪の魔法使いと、その魔法使いの手によって氷の竜に飲まれたニメートルの大男を見つめた。
悪くない、なかなかの竜氷縛だ。だが・・・・・
このままでは終わらないだろう。
シャノン・アラルコン。
ロンズデール最大手の、アラルコン商会の一人娘。
アラルコン商会は青の船団を率いて、水産業にも力を入れて取り仕切っている。
その青の船団のライバルが、ウラジミール・セルヒコの大海の船団だ。
最も、シャノンは自分から喧嘩を売る事はしなかった。むしろできるだけ接触しないように、必要な事以外では関わる事をせず距離を取っていた。
しかし、ウラジミールは何かと因縁をつけ、青の船団を潰そうと躍起になって近づいて来る。
評判を落とすためにはどんな些細なネタでも大きく騒ぎ立て、青の船団にとって迷惑な隣人でしかなかった。
距離を取ろうとしても、その分近づいて来る。いずれぶつかる事は避けられなかっただろう。
「・・・うそ、竜氷縛でダメなの?」
目の前には、まるで大地にしっかりと根を張った大木のように、天井に向かってそびえ立つ氷の竜。
超高密度に固められた氷の竜の腹の中には、飲み込まれたウラジミールの姿が見える。
そして自分の放った魔法だからこそ分かる。
氷の竜に飲まれてもウラジミールは死んでいない。
力を溜めて中から氷を破壊しようとしている。
「クッ!そんな・・・!」
動揺と焦りで、シャノンの頬を冷たい汗が伝う。
ウラジミールを中心に氷の内側から亀裂が入り出し、崩壊の序曲のように軋み音が鳴り出した。
そして・・・
「オォォォォォーーーーッツ!」
力を解放するように両腕を広げ、ウラジミールは雄叫びを上げながら氷の竜を粉砕し脱出した。
「シャノンーーーッツ!決着を付けてやるぞ!」
殺意に目を光らせ、憎しみで顔を歪ませる。
絶空剣を振りかぶり、ウラジミールが上空から襲いかかって来た。
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