異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
636 / 1,393

635 脱出の手段

しおりを挟む
「もう一度聞く、ここは治療室だが何をしている?」

腰丈で、厚手ウールのダブル前の外套だ。
白い生地に黒い鍔のキャップは、船乗りが被るマリンキャップ。
2メートルはあるだろう体躯、そして鋭い青い双眸で、バルデスとサリーを射抜くように見る。

体力型の中でも抜きんでた体付きのウラジミールは、まさに巨人といっていいほどだった。
肉体的な強さは一般人と変わらない魔法使いの二人からすれば、ウラジミールの眼光を浴びる事は、それだけで相当なプレッシャーである。

ビリビリとした威圧はバルデスでさえ体にくるものがった。

そしてそれに耐えながら、バルデスとサリーは最初に考えた事が、なぜ今ウラジミール・セルヒコがここにいるのか?
二人は同じ疑問を抱いたが、答えも同時に察しがついた。
下の階からはどんどん水が押し寄せてくるのだ。当然上に逃げてきたのだろう。
そしてもう一つ気付いた事がある。

それはウラジミールの姿と表情である。
頭から水を被ったようにずぶ濡れで、油汚れや、血液と思われる赤黒い汚れも見える。
平静を装ってはいるが、僅かに呼吸も乱れて、汗もかいている。
どうやらウラジミールも、この転覆と水でそれなりに疲労しているようだ。
赤黒い汚れは、もしや鮫と交戦し、その返り血を浴びたからかもしれない。


僅かな時間の逡巡だったが、バルデスとサリーが質問に答えずに口を閉じていると、ウラジミールがその大きな足で一歩室内に踏み込み、見限ったように呟いた。

「・・・だんまりか、じゃあしかたないな。カーンの言う侵入者かもしれんし、ここで始末・・・」

「お、お待ちください!私達はただ傷の手当をしようと、薬を取りに探しに来ただけです!驚いてしまいお返事が遅くなった事は申し訳ありません!」

ウラジミールの体から殺気が滲み出た時、サリーが慌てた様子でウラジミールの前に飛び出し、両手を握り合わせ懇願し始めた。

切れ長の目には涙が浮かび、怯えるように声が震えている。

「・・・傷の手当?・・・あぁ、そっちの男か?」

「はい、彼が怪我をしてしまって・・・それで傷薬を探していたんです。あなた様はこの船の方ですよね?勝手に入ってしまった事は申し訳ありません。ですが、この状況で私達も必死だったのです。どうかお見逃しください」

ウラジミールは、サリーから少し離れたところに立っているバルデスに目を向けた。
サリーのヒールで怪我は治したが、ボロボロで血の跡も付いている服を見て、ウラジミールは納得したように二度三度うなずいた。

「そうだったのか、事情は分かった。俺はウラジミール・セルヒコと言う。この船の船長だ。原因は不明だが、船になにかがぶつかったようでこの有様だ。この階に緊急脱出用のボートがあるから、それを取りに来てお前達を見かけてな・・・驚かせてすまなかったな。不正侵入者がいると聞いててな、もしやお前達がと思ったんだ」

「まぁ、侵入者なんて怖いですね!出航してすぐの転覆でしたから、どうしてと思ったのですが、もしやその侵入者の仕業ではないでしょうか?シャー君、私達もボートに乗せてもらって逃げましょう!」

シャー君!?

突然サリーからウルウルとした怯えの目を向けられ、更にシャー君などと、今まで一度も呼ばれた事のない呼ばれ方をしたバルデスは、さすがに言葉につまったが、それでもなんとか合わせて言葉を返した。

「お、そ、そうだな!お、俺もそれがいいと思うよ、サっちゃん!」

サっちゃん!? 俺!?

バルデスの一人称と、サっちゃんと呼ばれた事に、サリーも同様したのか目を丸くする。
だがすぐに我に返り、ウラジミールにもう一度言葉をかけた。

「船長様、お願いです。私達も同行させてくださいませ!私達には帰りを待っている年老いた父と母がいるのです!」

「お、そ、そうか・・・別にかまわんぞ。薬はもういいのか?」

ころころ表情の変わる二人に、ウラジミールは変わったカップルだなと少し首を傾げた。

「はい。丁度見つけたところでしたので大丈夫です。では、案内よろしくお願いいたします」

ウラジミールが背を向けて部屋を出ると、サリーとバルデスは目線を合わせて後に続いた。


ボートがある・・・

今、無防備に背を向けているウラジミールに、攻撃をする事は可能だ。
ウラジミールが強敵なのは分かる。このチャンスを生かせば、楽に倒せるかもしれない。
だが、脱出の役に立つ物があるというのなら、それを確保してからでいい。
それがバルデスとサリーの出した答えだった。

バルデスはパンツの右ポケットに入れた充血剤を、確認するように握った。


すまんなアラタ、もう少しだけ耐えてくれ。
このフロアにあるボートの場所を確認したら、すぐに助けてやる。

「どうした?こっちだぞ」

立ち止まったバルデスに、ウラジミールが声をかける。
バルデスは短く返事をすると、そのまま後を追いかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

処理中です...