597 / 1,347
596 ララの目
しおりを挟む
「う、バルデス、様・・・」
よろよろと立ち上がったサリーは、左手で自分の腹を押さえていた。
淡い光は回復魔法のヒール。
ララの膝蹴りは、白魔法使いのサリーには重いダメージを与えていたが、立ち上がれる程には回復していた。
「サリー!無理をするな、横になっていろ!」
「だ、大丈夫です・・・バルデス様、申し訳ありませんでした。自分でやると言っておきながら、醜態を晒してしまいました」
立ち上がったサリーに駆け寄ると、バルデスは背中に手を回してその体を支える。
「すまなかった。あの光に一瞬視界を奪われてしまったばかりに、サリーを傷つけてしまった。不甲斐ない私を許してくれ」
「そんな・・・バルデス様が謝らないでください。私の力不足です。あんなハゲに後れを取るなんて、バルデス様の侍女として恥ずかしい限りです。申し訳ありませんでした」
辛そうに目を伏せ、言葉を絞り出すようにして謝罪を口にするバルデスに、サリーもまた頭を下げる。
「・・・サリーよ、もう二度とお前を傷つけさせない。あのハゲにはサリーの痛みを百倍にして返してやるからな」
「バルデス様・・・私なんかにもったいないお言葉です」
見つめ合う二人の間に漂う親密な空気。
二人だけの特別な時間が流れる・・・・・それを打ち破ったのは、通路奥で倒れていたララだった。
「お・・・おのれ・・・よくも、よくも、この、ララを・・・このララォォォォォーーーッ!」
膝に手を着き、体を起こすと、額から流れる血でその目を赤く染めながら、バルデスを睨み付ける。
「バルデス様、僭越ながら、あのハゲについて一つの推測を立ててみました」
「ほう、聞かせてもらおうか、サリーよ」
ララは立ち上がり一歩前に足を踏み出すと、そのまま走り出して向かって来る。
「バルデス様、ヤツはあの強い光を浴びても、的確に的を捉えて攻撃してきました。そして明鏡の水で見えないはずの私達の姿も、普通に見ていました。そこから導き出せる答えは・・・あのハゲの目は特別だという事です。視覚に悪影響を受けない。まやかしを見抜くなどです」
「なるほど、それならば説明がつくな。しかし、サリーよ、もう一つの可能性もあるのではないか?」
サリーの考察に、バルデスは頷きながら、なぞかけのように言葉を返した。
それでサリーは、バルデスが自分の考えを更に深く理解して話していると理解する。
「はい。さすがバルデス様です。実は私も、もう一つの可能性も考えておりました。それは・・・」
「ウオォォォォォォーーーッツ!」
サリーがそこまで話したところで、ララは雄叫びを上げて飛び上がり、頭上から襲いかかってきた。
「このハゲは元々目が見えないという事です」
両手を握り合わせて振り上げると、ララはそれをバルデスの頭目掛けて振り下ろした。
「同感だ、サリーよ。私もそう思った」
ララの拳が頭バルデスの頭を打ち砕くかという寸前で、バルデスの体から発せられた雷が、ララの体を弾き飛ばした。
「ッ・・・ァァ・・・!」
か細い悲鳴を上げて、ララは床に背中から落ちると、体を痙攣させている。
肉の焦げた匂いが鼻につき、バルデスは鼻と口を手で隠し、不快そうに眉を潜めた。
「・・・サリーよ、今日の夕食は肉は遠慮したいな。こやつの匂いを思い出しそうだ」
「はい。バルデス様。サリーも同じ気持ちです。夕食はバイキングのようですから、サラダとパスタにしましょう」
もう動けないだろう。
バルデスとサリーは、肉を焦がし、口から泡を吐き、痙攣するララを見て、そう確信していた。
だが、魔道剣士四人衆のララは、バルデスが視線を外した瞬間を狙ったかのように飛び起きると、懐から取り出した短剣を最短の距離で突き出し、バルデスの腹にめり込ませた。
「・・・なっ!?バ、バルデス様ッツ!」
「ふーっふっふっふ!やった!やってやりましたよ!このララがこの程度で死んだと思いましたか!?残念でしたねぇぇぇぇぇーーーーーっつ!」
サリーは悲鳴を上げ、ララの高らかに笑い声を上げた。
よろよろと立ち上がったサリーは、左手で自分の腹を押さえていた。
淡い光は回復魔法のヒール。
ララの膝蹴りは、白魔法使いのサリーには重いダメージを与えていたが、立ち上がれる程には回復していた。
「サリー!無理をするな、横になっていろ!」
「だ、大丈夫です・・・バルデス様、申し訳ありませんでした。自分でやると言っておきながら、醜態を晒してしまいました」
立ち上がったサリーに駆け寄ると、バルデスは背中に手を回してその体を支える。
「すまなかった。あの光に一瞬視界を奪われてしまったばかりに、サリーを傷つけてしまった。不甲斐ない私を許してくれ」
「そんな・・・バルデス様が謝らないでください。私の力不足です。あんなハゲに後れを取るなんて、バルデス様の侍女として恥ずかしい限りです。申し訳ありませんでした」
辛そうに目を伏せ、言葉を絞り出すようにして謝罪を口にするバルデスに、サリーもまた頭を下げる。
「・・・サリーよ、もう二度とお前を傷つけさせない。あのハゲにはサリーの痛みを百倍にして返してやるからな」
「バルデス様・・・私なんかにもったいないお言葉です」
見つめ合う二人の間に漂う親密な空気。
二人だけの特別な時間が流れる・・・・・それを打ち破ったのは、通路奥で倒れていたララだった。
「お・・・おのれ・・・よくも、よくも、この、ララを・・・このララォォォォォーーーッ!」
膝に手を着き、体を起こすと、額から流れる血でその目を赤く染めながら、バルデスを睨み付ける。
「バルデス様、僭越ながら、あのハゲについて一つの推測を立ててみました」
「ほう、聞かせてもらおうか、サリーよ」
ララは立ち上がり一歩前に足を踏み出すと、そのまま走り出して向かって来る。
「バルデス様、ヤツはあの強い光を浴びても、的確に的を捉えて攻撃してきました。そして明鏡の水で見えないはずの私達の姿も、普通に見ていました。そこから導き出せる答えは・・・あのハゲの目は特別だという事です。視覚に悪影響を受けない。まやかしを見抜くなどです」
「なるほど、それならば説明がつくな。しかし、サリーよ、もう一つの可能性もあるのではないか?」
サリーの考察に、バルデスは頷きながら、なぞかけのように言葉を返した。
それでサリーは、バルデスが自分の考えを更に深く理解して話していると理解する。
「はい。さすがバルデス様です。実は私も、もう一つの可能性も考えておりました。それは・・・」
「ウオォォォォォォーーーッツ!」
サリーがそこまで話したところで、ララは雄叫びを上げて飛び上がり、頭上から襲いかかってきた。
「このハゲは元々目が見えないという事です」
両手を握り合わせて振り上げると、ララはそれをバルデスの頭目掛けて振り下ろした。
「同感だ、サリーよ。私もそう思った」
ララの拳が頭バルデスの頭を打ち砕くかという寸前で、バルデスの体から発せられた雷が、ララの体を弾き飛ばした。
「ッ・・・ァァ・・・!」
か細い悲鳴を上げて、ララは床に背中から落ちると、体を痙攣させている。
肉の焦げた匂いが鼻につき、バルデスは鼻と口を手で隠し、不快そうに眉を潜めた。
「・・・サリーよ、今日の夕食は肉は遠慮したいな。こやつの匂いを思い出しそうだ」
「はい。バルデス様。サリーも同じ気持ちです。夕食はバイキングのようですから、サラダとパスタにしましょう」
もう動けないだろう。
バルデスとサリーは、肉を焦がし、口から泡を吐き、痙攣するララを見て、そう確信していた。
だが、魔道剣士四人衆のララは、バルデスが視線を外した瞬間を狙ったかのように飛び起きると、懐から取り出した短剣を最短の距離で突き出し、バルデスの腹にめり込ませた。
「・・・なっ!?バ、バルデス様ッツ!」
「ふーっふっふっふ!やった!やってやりましたよ!このララがこの程度で死んだと思いましたか!?残念でしたねぇぇぇぇぇーーーーーっつ!」
サリーは悲鳴を上げ、ララの高らかに笑い声を上げた。
0
お気に入りに追加
197
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる