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ララが使用した魔道具は、発光石だった。
生活系魔道具の発光石は、暗い部屋を明るく照らすための道具であり、それ以上でも以下でもない。
戦闘で使う事は本来ありえない魔道具だった。
時刻は正午を回ったところだったため、船内にも明るい明るい陽射しが十分に差し込んでいたが、ララの使用した発光石はそんな自然光などかき消し、目も眩むほどの非情に強い光を放った。
「うっ!」
あまりに強い光に、サリーは目を開けている事ができず、体を丸めて防御の体勢をとった。
身を護るための条件反射であり、また一番戦闘に向かない白魔法使いのサリーにとっては、やむを得ない事だったが、敵を前に完全に視界を遮断し、防御に回った事は致命的だった。
次の瞬間、腹を深く抉る強い痛みに、サリーは膝をから崩れ落ちた。
肺の中の空気を全て吐き出される程の衝撃、その正体はララの右膝だった。
「ふっふっふ!おやおや、さっきまで生意気な口を利いていたのに、こんなものですか?」
「あぐっ!」
腹を押さえて体を折ったサリーの背中に、ララの追撃の右肘が深々と突き刺さり、サリーはうつ伏せに床に倒される。
「がはっ、あぐ・・・」
な、なぜだ・・・?これだけ強い光で、なぜこいつは?
意識を失わないように歯を食いしばりながら、サリーは考えた。
あれだけ強い光を浴びたならば、使い手のララとて目を開けてはいられないはず。
光を遮断する魔道具を同時に使ったようには見えなかった、それなのになぜこうも正確に自分の腹に膝を入れ、狙いすまして肘を振り下ろせる?
「ふっふっふ、たった一つの魔道具でお終いとは・・・あなた、私に色々言ってくれましたが、ご自分の実力を鑑みてはどうです?所詮メイドはメイド、お茶くみでもして大人しくしていればいいのです」
倒れ伏したサリーを見下ろしたその表情には、歪んだ笑みが広がっていた。
そして自分の優位性を確かめたララは、右足を上げてそのままサリーの頭を踏みつけた・・・はずだった。
「ふーふっふっふ!さぁ、泣きなさい!このララを侮辱した事を詫びるのです!そうすれば・・・おや?」
足元に感じる違和感にララは目を見張った。
「・・・氷?」
ララが踏みつけていたのは氷だった。
サリーの体を護るように、氷が殻のようにサリーの体を覆い、ララの足はサリーの頭との間にできた氷の膜を踏みつけていたのだ。
「・・・これはあなたの魔法ですね?役立たずなメイドに代わり、ここからはあなたがこのララの相手をすると?」
「ゲスが・・・貴様ごときがよくも私のサリーを痛めつけたな?楽に死ねると思うなよ」
下卑た笑みを浮かべるララを、怒りに満ちた目でバルデスが睨み付けていた。
「ふっふっふ、あなた馬鹿ですねぇ~、今この女を氷で護る事ができたのならば、このララを攻撃する事もできたでしょう?自分がビッグチャンスを逃した事をお分かりですか?」
サリーを護る氷から足を下ろすと、両手を広げて声高々に演説を始めた。
バルデスを見る目には、侮りと蔑みがありありと浮かんでいて、その声色には自分が絶対的な強者と信じて疑わない自信があった。
「・・・分からんか?」
「何がでしょう?」
一歩前に足を進めると、バルデスは体中に魔力を漲らせて戦闘態勢に入った事を告げる。
「サリーの受けた痛みを百倍にして返すには、あっさり殺すわけにはいかんからだ。貴様にはしっかりと後悔しながら死んでもらう」
「・・・言いますねぇ、ではその後悔とやらを教えてもらいましょうか!」
再び懐から取り出した石を上空に放ると、先ほどと同じく強烈な光で辺りが埋め尽くされる。
「ふーっふっふっふ!どうです!?視界を奪われては手も足も・・・っ!?」
突然足の動きが止まった事に顔を下に向けると、両足が氷漬けにされている事に気付く。
「貴様は馬鹿か?二度も続けて同じ魔道具が通用すると思ったか?これほど強い光は見た事がないからな、初見では私も驚かされたが、一度見れば対策はできる。目を閉じて自分を中心に足元から凍らせるだけだ。貴様の攻めは単純、目を眩ませてつっこむだけのようだからな。まぁ、とりあえず最初のお返しをしてやろうか」
目を閉じたまま、バルデスは右手の平を目線の高さまで上げると、位置を確かめるように左右に少しだけ動かす。
「俺の氷が捕まえたのは・・・そっちか」
手の平には風の魔力が集められ、バルデスの攻撃の準備が整う。
「く、くそっ!こんな氷ッツ!」
「吹き飛べ」
両足を封じる氷から、足を取ろうともがくララに、圧縮した風の塊が正面からぶつけられる。
その威力はララの足を縛る氷を破壊し、そのまま通路奥の壁までララを吹き飛ばし、叩きつける程のものだった。
「・・・あ~、いかんな、ちと音が大きすぎたかもしれん」
バルデスはゆっくりと瞼を開けて辺りを見回す。
床は自分が放った魔法で凍り付いており、通路の奥ではララがうつ伏せに倒れている。
そしてララが二度も魔道具で強烈な光を放った事で、船内のあちこちから乗客のざわめきが聞こえ始めてきた。
「まぁ、これだけ騒いでいれば今更か。なるようになるだろう!」
秘密裡の行動だったが、すでに台無しになった事を悟り、バルデスは顎をさすって軽く笑った。
生活系魔道具の発光石は、暗い部屋を明るく照らすための道具であり、それ以上でも以下でもない。
戦闘で使う事は本来ありえない魔道具だった。
時刻は正午を回ったところだったため、船内にも明るい明るい陽射しが十分に差し込んでいたが、ララの使用した発光石はそんな自然光などかき消し、目も眩むほどの非情に強い光を放った。
「うっ!」
あまりに強い光に、サリーは目を開けている事ができず、体を丸めて防御の体勢をとった。
身を護るための条件反射であり、また一番戦闘に向かない白魔法使いのサリーにとっては、やむを得ない事だったが、敵を前に完全に視界を遮断し、防御に回った事は致命的だった。
次の瞬間、腹を深く抉る強い痛みに、サリーは膝をから崩れ落ちた。
肺の中の空気を全て吐き出される程の衝撃、その正体はララの右膝だった。
「ふっふっふ!おやおや、さっきまで生意気な口を利いていたのに、こんなものですか?」
「あぐっ!」
腹を押さえて体を折ったサリーの背中に、ララの追撃の右肘が深々と突き刺さり、サリーはうつ伏せに床に倒される。
「がはっ、あぐ・・・」
な、なぜだ・・・?これだけ強い光で、なぜこいつは?
意識を失わないように歯を食いしばりながら、サリーは考えた。
あれだけ強い光を浴びたならば、使い手のララとて目を開けてはいられないはず。
光を遮断する魔道具を同時に使ったようには見えなかった、それなのになぜこうも正確に自分の腹に膝を入れ、狙いすまして肘を振り下ろせる?
「ふっふっふ、たった一つの魔道具でお終いとは・・・あなた、私に色々言ってくれましたが、ご自分の実力を鑑みてはどうです?所詮メイドはメイド、お茶くみでもして大人しくしていればいいのです」
倒れ伏したサリーを見下ろしたその表情には、歪んだ笑みが広がっていた。
そして自分の優位性を確かめたララは、右足を上げてそのままサリーの頭を踏みつけた・・・はずだった。
「ふーふっふっふ!さぁ、泣きなさい!このララを侮辱した事を詫びるのです!そうすれば・・・おや?」
足元に感じる違和感にララは目を見張った。
「・・・氷?」
ララが踏みつけていたのは氷だった。
サリーの体を護るように、氷が殻のようにサリーの体を覆い、ララの足はサリーの頭との間にできた氷の膜を踏みつけていたのだ。
「・・・これはあなたの魔法ですね?役立たずなメイドに代わり、ここからはあなたがこのララの相手をすると?」
「ゲスが・・・貴様ごときがよくも私のサリーを痛めつけたな?楽に死ねると思うなよ」
下卑た笑みを浮かべるララを、怒りに満ちた目でバルデスが睨み付けていた。
「ふっふっふ、あなた馬鹿ですねぇ~、今この女を氷で護る事ができたのならば、このララを攻撃する事もできたでしょう?自分がビッグチャンスを逃した事をお分かりですか?」
サリーを護る氷から足を下ろすと、両手を広げて声高々に演説を始めた。
バルデスを見る目には、侮りと蔑みがありありと浮かんでいて、その声色には自分が絶対的な強者と信じて疑わない自信があった。
「・・・分からんか?」
「何がでしょう?」
一歩前に足を進めると、バルデスは体中に魔力を漲らせて戦闘態勢に入った事を告げる。
「サリーの受けた痛みを百倍にして返すには、あっさり殺すわけにはいかんからだ。貴様にはしっかりと後悔しながら死んでもらう」
「・・・言いますねぇ、ではその後悔とやらを教えてもらいましょうか!」
再び懐から取り出した石を上空に放ると、先ほどと同じく強烈な光で辺りが埋め尽くされる。
「ふーっふっふっふ!どうです!?視界を奪われては手も足も・・・っ!?」
突然足の動きが止まった事に顔を下に向けると、両足が氷漬けにされている事に気付く。
「貴様は馬鹿か?二度も続けて同じ魔道具が通用すると思ったか?これほど強い光は見た事がないからな、初見では私も驚かされたが、一度見れば対策はできる。目を閉じて自分を中心に足元から凍らせるだけだ。貴様の攻めは単純、目を眩ませてつっこむだけのようだからな。まぁ、とりあえず最初のお返しをしてやろうか」
目を閉じたまま、バルデスは右手の平を目線の高さまで上げると、位置を確かめるように左右に少しだけ動かす。
「俺の氷が捕まえたのは・・・そっちか」
手の平には風の魔力が集められ、バルデスの攻撃の準備が整う。
「く、くそっ!こんな氷ッツ!」
「吹き飛べ」
両足を封じる氷から、足を取ろうともがくララに、圧縮した風の塊が正面からぶつけられる。
その威力はララの足を縛る氷を破壊し、そのまま通路奥の壁までララを吹き飛ばし、叩きつける程のものだった。
「・・・あ~、いかんな、ちと音が大きすぎたかもしれん」
バルデスはゆっくりと瞼を開けて辺りを見回す。
床は自分が放った魔法で凍り付いており、通路の奥ではララがうつ伏せに倒れている。
そしてララが二度も魔道具で強烈な光を放った事で、船内のあちこちから乗客のざわめきが聞こえ始めてきた。
「まぁ、これだけ騒いでいれば今更か。なるようになるだろう!」
秘密裡の行動だったが、すでに台無しになった事を悟り、バルデスは顎をさすって軽く笑った。
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