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562 贈り物 ①
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それから数週間、俺は店と城を行き来して、忙しい日々を送った。
城に行く時は、主にロンズデールにいるリンジーさんや、バルカルセル大臣と、写しの鏡を使って話した事を、報告に行くためというのが多い。
今のところ、緊急を要する事態にはなっていないようだけど、リンジーさんが言うには、ラミール・カーンから視線を感じる事が多くなったという。
やはり、俺達が行った事で、カーンもなにかを感じているのかもしれない。
シャノンさんとはレイチェルが話しているが、アラルコン商会・クインズベリー支店の話しは順調に進んでいて、もう土地は決まったと言う。
順調に行けば、来年には建物を造り始めるようだ。
城に行く日は、ジャレットさんは必ず帰って来いと念を押して言う。
なんでそんなに言うのかと不思議だったのだが、ある日俺が城から帰って来ると、ジャレットさんとカチュアが話していて、俺に気が付いたジャレットさんが、カチュアに行って来いと言うように、手を向けたのだ。
カチュアも俺に気が付くと、ほっとしたような笑顔を見せて走って来たので、なんとなく分かった。
ジャレットさんは、カチュアのために俺に必ず帰って来いと言っていたんだ。
今度ロンズデールに行ったら、しばらく帰って来れないだろう。だから、ここにいる間はカチュアが寂しい思いをしないようにと。そう考えて必ず帰って来いと言っているのだ。
本当に仲間思いで面倒見の良い先輩だ。
きっと協会での一件があったから、カチュアが不安定にならないように、今も注意深く見ているんだと思った。本当は俺がもっと気にかけなきゃならないのに、ジャレットさんには教えられる事ばかりだ。
それに気が付いてから、俺はジャレットさんに言われなくても、自分からちゃんと帰ってきますと言うようになった。
ジャレットさんは、満足そうにうなずき、俺に必ず帰って来いと言わなくなった。
三日に一回くらい、リカルドが夕飯を食べに来て泊っていく。
これはもうしかたがないと諦めた。現実問題として、リカルドが弁当ばかり食べてるのも心配だし、なんだかんだで、リカルドは俺を兄として、カチュアを姉として見ているようなところが確かにある。
そういうものを感じると、やっぱり面倒を見てやりたくもなるものだ。
そしてとうとうその日は来た。
ラミール・カーンとロンズデール国王が、深夜に密会を行ったと言う情報が、バルカルセル大臣との連絡で伝えられた。そしてそれは、ロンズデールの今後を左右するほどの事態になりかねないというのだ。
「アラやん、これを持って行け」
俺達がロンズデールに行く前日の閉店後、事務所で申し送りを済ませた後、ジャレットさんが俺に手渡してくれた物は、黒い革製のグローブだった。
「え、あの、これは?」
「俺が作った。甲と拳頭の部分には、可能な限り薄くて柔らかく丈夫なプレートを入れて置いた。握りに問題はないはずだ。指の部分には鉄糸(てっし)って言う、鉄と同じ強度の糸が仕込んである。仮に剣で斬り付けられても耐えられるはずだ。まぁ、相手の力量にもよるから、過信はできないけどな。パンチスピードを殺さない、ギリギリの重さに仕上げたつもりだ」
「ジャレットさん・・・」
ニヤっと、やたら白い歯を見せて笑うジャレットさん。
まさかこんな物を用意してくれているなんて、思いもしなかった。
「アラタ君、それだけじゃないのよ。土台となるその革は私が作ったの。それね、冷気の耐性がすごく強いのよ。氷を持っても何も感じないし、松明の火だって握り潰せるわ。だから、もし黒魔法使いと戦う事があっても、火魔法と氷魔法には対抗できるわ。私、氷魔法は得意なの」
シルヴィアさんが、ちょんちょんと、グローブを指して優しく笑いかけてくれる。
俺のためにジャレットさんと一緒に作ってくれたんだ。その事がすごく嬉しくて、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
「まぁ、あれだ。店長が作る物にはおよばねぇけどよ。拳で戦うアラやんのスタイルは、理解して作ったつもりだ。今までなにかあると光の力を使うしかなかっただろ?それがありゃ、ちょっとは戦術も広がるんじゃねぇか?」
「ジャレットさん、シルヴィアさん・・・ありがとうございます。俺、まさかこんなの作ってもらってるなんて、思わなくて・・・本当にありがとうございます」
深く頭を下げて、感謝の気持ちを伝えると、ジャレットさんが笑いながら俺の肩を何度も叩いて、いいからいいから、と声をかけてくれた。
「アラタ、アタシとジーンからはこれ」
頭を上げたところで、ケイトが俺の肩をトントンと指で叩いてきたので顔を向けると、ウエストポーチを手渡された。
金具をベルトに引っ掛けるタイプだ。暗めの茶色で革製だ。
「ちょっと小さめだけど、そのくらいの方が動くのに邪魔にならないと思ってさ。あんた、店に来る時いっつも手ぶらでしょ?ロンズデールに行く時は、最低限回復薬とか傷薬くらいは持って行きなよ。それ、アタシが形を作って、ジーンが魔力で物理と魔法の耐久性を上げたの。しっかりやってくんだよ」
ケイトが拳を向けてきたので、俺も拳を作りかるく合わせた。
歯を見せてニカっと笑うケイト。本人には言えないが、こういうところは男より男らしくてかっこいい。
「ケイト、ジーン、ありがとう。大事にするよ」
「アラタ、本当は僕らも一緒に行きたいけど、やっぱり店を閉める事はできない。でも、何度も困難を乗り越えて来たキミなら、今回もきっと大丈夫だって信じてるよ。帰ってきたら、またみんなでご飯にでも行こう」
ジーンが差し出した手を、俺は強く握って応えた。
「アラタ、俺からはこれだ。使う機会はないかもしれないが、持ってて損はしないだろう」
右手でボサボサ頭を掻きながら、ミゼルさんがポケットから出してきたのは、古びた細長い冊子だった。薄い青色で20cm程度の長さ、表紙には大波に立ち向かう船の絵が描かれている。
「・・・えっと、これはなんですか?」
「俺が昔、ロンズデールの大海の船団で働いていたって言ったろ?そこのお得意様ポイント帳だ」
そう話しながら、ミゼルさんは冊子をめくって説明を始めた。
なんでも、大海の船団系列店で買い物をするごとに、スタンプを押してもらえるようだ。
冊子は全部で30枚つづりで、10個のスタンプで1枚が埋まり、2枚目にいくらしい。
1,000イエンでスタンプ1個。10,000イエンで1枚埋まる計算で、30枚つづりを全部埋めるには、300,000イエンという事になる。
冊子の枚数で景品と交換できるらしい。一枚だと安い菓子とかで、枚数が増えるにしたがって良い景品と交換できるようだ。
「へぇ~・・・すごいじゃないですか。だってこれ、30枚全部埋まってますよ?ミゼルさん、なにをこんなに買ったんですか?」
純粋な好奇心と興味からでた質問だった。聞いた話しでは、ミゼルさんは一年しかロンズデールにいなかったはずだ。たった一年で、300,000イエンも、何を買ったというのだ?
「・・・・・自腹切っただけだ」
「・・・え?」
それは、ただただ、ものすごく暗い声だった。
事務所内が、水を打ったような静けさに包まれる。
「売上目標に届かねぇと、船団の代表がめっちゃキレるんだよ。やる気が足りないとか、本気で売る努力してんのか、とかよ・・・だから、目標に届かねぇ分を従業員が自腹で買い物して埋めんだよ。それで毎日の目標をクリアしてりゃあ、そんなスタンプ帳、余裕で埋まるってもんだ」
ミゼルさんは視線を地面に落とし、自虐気味の笑みを浮かべて吐き捨てるように語り出した。
大海の船団は、完全にブラック企業のようだ。
従業員に自発的に自腹を切らせて売り上げ目標を達成する。そうせざるを得ないように、恫喝して追い込むところがタチが悪い。
そう言えば、日本でもそういう会社があると噂で聞いた事はある。
幸い俺のいたウイニングはそんなところではなかったが。
「あ、で、でも、従業員もポイント帳を作れるんですね?」
「いや、作れねぇよ。それは俺がいくら使ったか忘れないために、記録として作っただけだ」
「・・・・・あ、えぇと・・・・・ミゼルさん、俺、こんな重いのもらえません」
さすがに引いてしまった。そんな怨念のこもったポイント帳、とてももらえない。
だが、返そうとする俺に、ミゼルさんは顔を上げて手を前にだし首を振った。
「男が一度出した物を引っ込めるか!」
「・・・・・えぇ~」
かっこいい・・・のか?
なんて言っていいか分からないぞ。
もう、レイチェルも空いた口がふさがらないを、そのまんま体現している。
ジャレットさんは、見てられないというように、手で目を覆って天井を見上げているし、シルヴィアさんも無表情に目をパチクリさせている。どう反応していいか分からないのだろう。
みんな困っている。
「アラタ、最初にも言ったが、これは持ってて損をする事はない。色々ひどい仕事場だったが、このポイント帳だけはすげぇんだよ。なんせ有効期限がねぇんだ。ほら、書いてあるだろ?」
ミゼルさんは冊子の表紙の裏を指さしながら見せて来た。
そこには、有効期限無し、とハッキリ書かれている。これには俺も驚いた。
普通は最終利用日から一年とか、そんなものだ。有効期限無しは大したものだと思う。
「へぇ~!じゃあ、このポイント帳、今も使えるんですね!?」
「その通りだ!だから、遠慮せず使って来い。俺が持ってても使う事はねぇからよ。さすがに今と昔じゃ景品は変わってると思うが、役に立つ物あるかもしれねぇぞ」
そう言って、手をひらひら振って笑うミゼルさんからは、さっきまでの負のオーラは消えていた。
俺は、ありがとうございます。としっかりお礼を口にして頭を下げた。
なんだかんだで、このポイント帳はすごそうだ。
本当に驚くような便利な物と交換できるかもしれないと、期待が高まる。
城に行く時は、主にロンズデールにいるリンジーさんや、バルカルセル大臣と、写しの鏡を使って話した事を、報告に行くためというのが多い。
今のところ、緊急を要する事態にはなっていないようだけど、リンジーさんが言うには、ラミール・カーンから視線を感じる事が多くなったという。
やはり、俺達が行った事で、カーンもなにかを感じているのかもしれない。
シャノンさんとはレイチェルが話しているが、アラルコン商会・クインズベリー支店の話しは順調に進んでいて、もう土地は決まったと言う。
順調に行けば、来年には建物を造り始めるようだ。
城に行く日は、ジャレットさんは必ず帰って来いと念を押して言う。
なんでそんなに言うのかと不思議だったのだが、ある日俺が城から帰って来ると、ジャレットさんとカチュアが話していて、俺に気が付いたジャレットさんが、カチュアに行って来いと言うように、手を向けたのだ。
カチュアも俺に気が付くと、ほっとしたような笑顔を見せて走って来たので、なんとなく分かった。
ジャレットさんは、カチュアのために俺に必ず帰って来いと言っていたんだ。
今度ロンズデールに行ったら、しばらく帰って来れないだろう。だから、ここにいる間はカチュアが寂しい思いをしないようにと。そう考えて必ず帰って来いと言っているのだ。
本当に仲間思いで面倒見の良い先輩だ。
きっと協会での一件があったから、カチュアが不安定にならないように、今も注意深く見ているんだと思った。本当は俺がもっと気にかけなきゃならないのに、ジャレットさんには教えられる事ばかりだ。
それに気が付いてから、俺はジャレットさんに言われなくても、自分からちゃんと帰ってきますと言うようになった。
ジャレットさんは、満足そうにうなずき、俺に必ず帰って来いと言わなくなった。
三日に一回くらい、リカルドが夕飯を食べに来て泊っていく。
これはもうしかたがないと諦めた。現実問題として、リカルドが弁当ばかり食べてるのも心配だし、なんだかんだで、リカルドは俺を兄として、カチュアを姉として見ているようなところが確かにある。
そういうものを感じると、やっぱり面倒を見てやりたくもなるものだ。
そしてとうとうその日は来た。
ラミール・カーンとロンズデール国王が、深夜に密会を行ったと言う情報が、バルカルセル大臣との連絡で伝えられた。そしてそれは、ロンズデールの今後を左右するほどの事態になりかねないというのだ。
「アラやん、これを持って行け」
俺達がロンズデールに行く前日の閉店後、事務所で申し送りを済ませた後、ジャレットさんが俺に手渡してくれた物は、黒い革製のグローブだった。
「え、あの、これは?」
「俺が作った。甲と拳頭の部分には、可能な限り薄くて柔らかく丈夫なプレートを入れて置いた。握りに問題はないはずだ。指の部分には鉄糸(てっし)って言う、鉄と同じ強度の糸が仕込んである。仮に剣で斬り付けられても耐えられるはずだ。まぁ、相手の力量にもよるから、過信はできないけどな。パンチスピードを殺さない、ギリギリの重さに仕上げたつもりだ」
「ジャレットさん・・・」
ニヤっと、やたら白い歯を見せて笑うジャレットさん。
まさかこんな物を用意してくれているなんて、思いもしなかった。
「アラタ君、それだけじゃないのよ。土台となるその革は私が作ったの。それね、冷気の耐性がすごく強いのよ。氷を持っても何も感じないし、松明の火だって握り潰せるわ。だから、もし黒魔法使いと戦う事があっても、火魔法と氷魔法には対抗できるわ。私、氷魔法は得意なの」
シルヴィアさんが、ちょんちょんと、グローブを指して優しく笑いかけてくれる。
俺のためにジャレットさんと一緒に作ってくれたんだ。その事がすごく嬉しくて、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
「まぁ、あれだ。店長が作る物にはおよばねぇけどよ。拳で戦うアラやんのスタイルは、理解して作ったつもりだ。今までなにかあると光の力を使うしかなかっただろ?それがありゃ、ちょっとは戦術も広がるんじゃねぇか?」
「ジャレットさん、シルヴィアさん・・・ありがとうございます。俺、まさかこんなの作ってもらってるなんて、思わなくて・・・本当にありがとうございます」
深く頭を下げて、感謝の気持ちを伝えると、ジャレットさんが笑いながら俺の肩を何度も叩いて、いいからいいから、と声をかけてくれた。
「アラタ、アタシとジーンからはこれ」
頭を上げたところで、ケイトが俺の肩をトントンと指で叩いてきたので顔を向けると、ウエストポーチを手渡された。
金具をベルトに引っ掛けるタイプだ。暗めの茶色で革製だ。
「ちょっと小さめだけど、そのくらいの方が動くのに邪魔にならないと思ってさ。あんた、店に来る時いっつも手ぶらでしょ?ロンズデールに行く時は、最低限回復薬とか傷薬くらいは持って行きなよ。それ、アタシが形を作って、ジーンが魔力で物理と魔法の耐久性を上げたの。しっかりやってくんだよ」
ケイトが拳を向けてきたので、俺も拳を作りかるく合わせた。
歯を見せてニカっと笑うケイト。本人には言えないが、こういうところは男より男らしくてかっこいい。
「ケイト、ジーン、ありがとう。大事にするよ」
「アラタ、本当は僕らも一緒に行きたいけど、やっぱり店を閉める事はできない。でも、何度も困難を乗り越えて来たキミなら、今回もきっと大丈夫だって信じてるよ。帰ってきたら、またみんなでご飯にでも行こう」
ジーンが差し出した手を、俺は強く握って応えた。
「アラタ、俺からはこれだ。使う機会はないかもしれないが、持ってて損はしないだろう」
右手でボサボサ頭を掻きながら、ミゼルさんがポケットから出してきたのは、古びた細長い冊子だった。薄い青色で20cm程度の長さ、表紙には大波に立ち向かう船の絵が描かれている。
「・・・えっと、これはなんですか?」
「俺が昔、ロンズデールの大海の船団で働いていたって言ったろ?そこのお得意様ポイント帳だ」
そう話しながら、ミゼルさんは冊子をめくって説明を始めた。
なんでも、大海の船団系列店で買い物をするごとに、スタンプを押してもらえるようだ。
冊子は全部で30枚つづりで、10個のスタンプで1枚が埋まり、2枚目にいくらしい。
1,000イエンでスタンプ1個。10,000イエンで1枚埋まる計算で、30枚つづりを全部埋めるには、300,000イエンという事になる。
冊子の枚数で景品と交換できるらしい。一枚だと安い菓子とかで、枚数が増えるにしたがって良い景品と交換できるようだ。
「へぇ~・・・すごいじゃないですか。だってこれ、30枚全部埋まってますよ?ミゼルさん、なにをこんなに買ったんですか?」
純粋な好奇心と興味からでた質問だった。聞いた話しでは、ミゼルさんは一年しかロンズデールにいなかったはずだ。たった一年で、300,000イエンも、何を買ったというのだ?
「・・・・・自腹切っただけだ」
「・・・え?」
それは、ただただ、ものすごく暗い声だった。
事務所内が、水を打ったような静けさに包まれる。
「売上目標に届かねぇと、船団の代表がめっちゃキレるんだよ。やる気が足りないとか、本気で売る努力してんのか、とかよ・・・だから、目標に届かねぇ分を従業員が自腹で買い物して埋めんだよ。それで毎日の目標をクリアしてりゃあ、そんなスタンプ帳、余裕で埋まるってもんだ」
ミゼルさんは視線を地面に落とし、自虐気味の笑みを浮かべて吐き捨てるように語り出した。
大海の船団は、完全にブラック企業のようだ。
従業員に自発的に自腹を切らせて売り上げ目標を達成する。そうせざるを得ないように、恫喝して追い込むところがタチが悪い。
そう言えば、日本でもそういう会社があると噂で聞いた事はある。
幸い俺のいたウイニングはそんなところではなかったが。
「あ、で、でも、従業員もポイント帳を作れるんですね?」
「いや、作れねぇよ。それは俺がいくら使ったか忘れないために、記録として作っただけだ」
「・・・・・あ、えぇと・・・・・ミゼルさん、俺、こんな重いのもらえません」
さすがに引いてしまった。そんな怨念のこもったポイント帳、とてももらえない。
だが、返そうとする俺に、ミゼルさんは顔を上げて手を前にだし首を振った。
「男が一度出した物を引っ込めるか!」
「・・・・・えぇ~」
かっこいい・・・のか?
なんて言っていいか分からないぞ。
もう、レイチェルも空いた口がふさがらないを、そのまんま体現している。
ジャレットさんは、見てられないというように、手で目を覆って天井を見上げているし、シルヴィアさんも無表情に目をパチクリさせている。どう反応していいか分からないのだろう。
みんな困っている。
「アラタ、最初にも言ったが、これは持ってて損をする事はない。色々ひどい仕事場だったが、このポイント帳だけはすげぇんだよ。なんせ有効期限がねぇんだ。ほら、書いてあるだろ?」
ミゼルさんは冊子の表紙の裏を指さしながら見せて来た。
そこには、有効期限無し、とハッキリ書かれている。これには俺も驚いた。
普通は最終利用日から一年とか、そんなものだ。有効期限無しは大したものだと思う。
「へぇ~!じゃあ、このポイント帳、今も使えるんですね!?」
「その通りだ!だから、遠慮せず使って来い。俺が持ってても使う事はねぇからよ。さすがに今と昔じゃ景品は変わってると思うが、役に立つ物あるかもしれねぇぞ」
そう言って、手をひらひら振って笑うミゼルさんからは、さっきまでの負のオーラは消えていた。
俺は、ありがとうございます。としっかりお礼を口にして頭を下げた。
なんだかんだで、このポイント帳はすごそうだ。
本当に驚くような便利な物と交換できるかもしれないと、期待が高まる。
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