異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
561 / 1,454

560 バリオスの考え

しおりを挟む
「師匠!待ってください!」

女王アンリエール様への謁見が終わり、俺達4人が玉座の間を出ると、後ろから追いかけて来る声に立ち止まって振り返った。

腰のあたりまである長いダークブラウンの髪を揺らし、足早に追いかけてくるのは、女王の護衛にして青魔法使いのローザ・アコスタだった。

縁取りに暗めの茶色のパイピングをあしらった、クインズベリーの青魔法使いのローブを着ている。

「ローザ、どうした?」

「師匠・・・師匠も行くのですか?ロンズデールに?」

店長の前に立ったローザは、髪と同じ色の切れ長の瞳で、何かを訴えるように、何かを確認するように、じっとその顔を見つめている。

「いや、俺は行かない。この城の復興、国の混乱を治めねばならないし、それにベナビデス公爵家の事もでてきたからな」

「師匠・・・ベナビデス公爵家の三男、ディリアンを一緒に行かせるんですよね?大丈夫なのですか?その、あの者は素行に少々問題が・・・」

「うん、言いたい事は分かる。確かにディリアンは粗雑だ。だが、悪人ではない。将来性はあるが素行不良が目立ち、今では存在しないかのように扱われている。伸びしろはあるのにもったいないだろう?逆に次男は聡明だが、魔法使いとしては平凡だ。領地を治める力はあるが、領主として時に強引にいかねばならない時に、若干の不安を感じる。そういう時に、ディリアンが助けになれればいいと思ってな・・・」

「・・・師匠、そのために・・・」

そうか、俺はなぜ因縁のあるベナビデス家の人間を同行させようとしているのか、疑問でしかなかったが、ディリアンを成長させ、認めさせる。そういう考えがあったのか。

店長の話しの通りなら、国にとって、公爵家の領地に住む多くの人々のためになる事だろう。
俺達の個人的な因縁は目を瞑るべきなのだろう。


「ビリージョー、キミと公爵家の事は知っている。だが、ディリアンは15歳。あの時は生まれてすらいなかったんだ。感情を抑えてほしい」

トレバーによって左目を失い、長年苦しんできたビリージョーさん。
ベナビデス公爵家の人間が同行するというのは、心中穏やかではないだろう。

「はい。確かに複雑ではありますが・・・いえ、そうですね。あの当時まだ生まれてもいなかった・・・そんな子供にまで憎しみをもつのは・・・分かりました。その子に敵意を持たない事を約束します」

僅かに悩んだようだが、ビリージョーさんはすぐに頷き了承した。

「アラタ、キミもだ。カチュアの事を大切に想うのは分かる。だが、ベナビデス公爵は今回の一件で完全に失脚だ。次男に跡を継がせるとは言ったが、力はだいぶ削がれるだろう。それに俺が締めておくから心配するな」

「・・・はい」

俺も少し悩んでしまったが、この件は店長の言う通りにしよう。
そう決めて返事をした。

「カチュアの父の名誉は護る。カチュアの気持ちを考えれば、暴行死という事実は発表しない方がいいだろう。代わりになにか考えておく。例えば、家族を護るために悪に立ち向かった立派な騎士・・・とかな」

「あ、はい!ありがとうございます!」

カチュアの心中を想っての言葉を聞き、俺は声を大きくお礼言葉にすると、店長は実におかしそうに笑った。

「ぷっ、あはははは!アラタ、カチュアの父の事で、キミがお礼を口にするとはな。カチュアは本当に良い男を捕まえたものだ」

「え、いや、そんな、からかわないでくださいよ!」

軽く抗議の言葉をあげると、店長は、悪い悪いと言って、俺の肩を軽く叩いた。

「なるほどな・・・この前話した時も思ったが、確かにキミは優しいな。その優しさをどうか失わないでほしい」

笑いの余韻を残した顔で、店長は俺に優しい声をかけてくれた。
しかし、大笑いをしたはずなのに、その瞳にはどこか寂しさが見えた。

店長はいつもどこか寂しそうにしていると聞いた事がある。
その時はピンと来なくて、どういう事かと思ったが、俺はその意味が分かった気がした。

店長の正体はウィッカー・バリオス。
本人に確認した訳ではないが、間違いない。弥生さんの話しもしたし、確信を持って言える。

俺はジャレットさんから聞いた、かつてのカエストゥスと帝国の戦争の歴史を思い出した。

俺が聞いたところまではカエストゥスが優勢だった。だが、カエストゥスは負けた。
それは歴史が証明している。

敗戦によって大切な人を亡くした事は、想像するまでもない。
それによって負った心の傷は全く癒えていないのだ。


「・・・俺は、自分が優しいなんて思いません。ただ、臆病なだけです。でも、優しい人になれるように頑張りたいと思います」

「そうか・・・俺が聞いていた話しより、ずいぶんと強いじゃないか。アラタ・・・この一件が片付いたら、俺が鍛えてやろう。だから、必ず生きて帰って来い」

そう言って店長は俺の手を取ると、なにか固い物を握らせた。

「・・・これは?」

手の平に乗せられたのは、樹の破片だった。

「銘は新緑・・・ヤヨイさんが使っていた、ナギナタという武器の破片だ。手の平に収まるこんなに小さな破片でも、強い風の加護が宿っている。お守りだ・・・なにかあればヤヨイさんが護ってくれるだろう」

「え・・・」

その言葉に驚き、再び握らされた樹の破片に目をやる。
この樹の破片が、弥生さんの使っていた新緑?

「セシリア・シールズとの戦いで、新緑は限界を超えた力を引き出した。無理がたたってな・・・もはや武器としては使えないし、持ち主もいないのに、精霊は今でも新緑から離れようとしないんだ。アラタ、キミなら風の精霊もきっと認めると思う。持って行け」


弥生さん・・・・・

新緑の破片から、どこか懐かしいものを感じられた。
これは・・・・・


「・・・店長、ありがとうございます。大事にします」

「あぁ、大事にしてくれ」

店長は優しく微笑むと、傍らでずっと店長を見ているローザに顔を向けた。

「さて、ローザ。俺の考えはこの通りだ。ローザの心配も分かるが、ビリージョーも納得してくれた。少なくとも、仲間内でのトラブルは起きないんじゃないかな」

「はい。師匠がそう言われるのでしたら、私がこれ以上口を挟む事はありません」

納得したローザは、そこで一礼をすると、玉座の間へと戻って行った。

「・・・本当なら、もう少し人を出したいんだが、今は国の立て直しが急務だからな。それに、お前達についていけなくては、かえって足手まといになるだけだ。そう考えると、四勇士のバルデスとサリー、そして公爵家のディリアンも加えれば、少数精鋭としては申し分ないだろう」

ローザの後ろ姿を見送った後、店長はまとめるように話し出した。

「そうですね。バルデスとサリーは、直接戦ったジーンもユーリも自分達以上と認めてる程ですし、私達三人は体力型ですから、黒魔法と白魔法が入ってくれるのは助かります。ところで、そのディリアンは何の魔法使いですか?」

店長の話しに同意しながら問いかけるレイチェルに、店長は当然と言わんばかりに腕を組んで答えた。


「青魔法使いだ。これで三系統揃うな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

処理中です...