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541 レイジェスとアラルコン商会
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「・・・そっかそっか、お仕事でこっちに来たわけね。商人でもないお兄さんがこっちに来るなんて、あの彼女さんとの新婚旅行かと思ったよ。いやぁ、それにしても、リサイクルショップの店員が国からの仕事を任せられるなんて、お兄さんけっこうすごい人なの?」
アラルコン商会の跡取り娘シャノンさんは、レジカウンターの奥から出て来て俺の姿を認めると、簡単な挨拶をして俺とファビアナさん、それにレイチェル達も一緒にと言って、通路奥の従業員用の部屋に通した。
「いや、俺はいたって普通のリサイクルショップの店員ですよ。俺の周りの人がすごいんです。だから国からも信頼が厚いようで」
上等な黒い革張りのソファに腰を沈ませながら、俺はその人物をアピールするように、隣に座るレイチェルに顔を向ける。
「ん、あぁ・・・確かにね。隣の赤い髪の彼女、レイチェルさん。あなた相当強いよね?私は魔法使いだけどさ、あなたが強いってのは分かるよ。でも、お兄さんもあのクインズベリー最強の、マルゴンってヤツの首をねじ切ったんでしょ?十分つよ・・・」
「いや!違うから!なんでマルゴンの話しになると、八つ裂きとか埋めたとか、みんな尾ひれ付いてんの!?」
思わず大きな声を出して抗議すると、シャノンさんは一瞬きょんとした後に、大きく口を開けて笑い声をあげた。
「あはははは!なるほどね、お兄さん、苦労してるっぽいね!」
「そう、そうなんですよ!マルゴン、あいつ元気ハツラツですからね?それがなんで俺が殺した事になってんだか?シャノンさんも、首ねじ切ったなんて、普通に考えてありえないでしょ?信じないでくださいよ!」
「あはははは!ごめんごめん、まぁだいたい分かったよ。クインズベリーの新女王様からの任務で、こっちに来たのね。どんな任務か気になるけど、まぁそこまでは言えないよね。ファビアナちゃんと一緒ってのも驚いたけど、任務で協力なら分かるかな」
シャノンさんはまだ笑いの余韻を残し、左手で目元をぬぐっている。
しかし、俺がマルゴンを倒した事は、他国にまで伝わっていたのか。マルゴンがいかにビッグネームだったのか、つくづく思い知らされた。
それにしても、俺達がこの国に来た理由を、あまり深く追及されなくて良かった。ファビアナさんとリンジーさんが一緒である以上、ある程度は事実を伝えなければならない。
なぜならクインズベリーの俺やレイチェルが、なぜ彼女達と知り合いなのかという事を、できるだけ自然に説明するためには、その場限りの嘘では必ずほころびがでるからだ。
さずがに帝国の人間と一戦かまえた事は黙っていたが、新女王からの任務という言葉だけで、概ね納得は得られたようだ。
「忙しいとこわざわざありがとね。あの時、一緒だったお兄さんの彼女と会えなかったのは残念だけど、ネックレス大事にしてくれてるみたいで嬉しいよ」
30分くらいは滞在しただろう。
カチュアのネックレスの事や、お互いに話したい事を話した頃合いを見て、シャノンさんが締めくくりの言葉に入った。
「いや、こっちこそ約束もないの時間作ってもらって、ありがとうございます。今度はカチュアと一緒に旅行でゆっくり来ます」
そう言ってソファーから立つと、俺に合わせてみんな立ち上がる。
「なにかあったら、いつでも来てね。大抵の物は探せるし、力になれる事は多いと思うよ」
店の出入り口まで見送ってくれたシャノンさんは、別れ際にパチリと片目をつむってそう言ってくれた。とても歓迎されたし、そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、正直あの時の一回しか買い物をしていないので、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「ありがとうございます。でも、一回しか買い物してないのに、あんまり甘えるわけには・・・」
「あぁ、気にしないで。そりゃね、お兄さんとカチュアちゃんを気に入ったのは本当だよ。でも、それだけじゃないから。お兄さん達、リサイクルショップ・レイジェスの人なんでしょ。最初に名前聞いた時、すぐには思い出せなかったんだけど、話してて思い出したんだ。私のご先祖様、最後にカエストゥスに行商に行ってた人なんだけど、レオネラ・アラルコンって人がね、その当時、カエストゥスにあったリサイクルショップ・レイジェスで、すごくお世話になって、沢山友達できて、生涯とても感謝してたんだって。私は見た事はないけど、うちの親から聞いた話しでさ、レオネラの日誌にカエストゥスに行ってた5~6年くらいかな、その間はいつもレイジェスでの事が楽しく書かれてたそうなんだよ。お兄さん達のレイジェスって、もしかしてそのレイジェスなんじゃない?カエストゥスで商売できなくなったけど、クインズベリーに来て代々続けてたとか?」
ご先祖との縁を想い、目を細めて話すシャノンさん。
そうか・・・彼女は、自分のご先祖レオネラが、弥生さん達と出会って、友達として付き合っていた事を知っていたのか。
それがなくても、俺達に好意的だったのは確かだけど、それを知った事でご先祖の恩にも報いようとしている。とても義理堅い人だ。
しかし、カエストゥスのレイジェスとの関係をどう説明しようか?俺が言葉に詰まっているのを見て、レイチェルが助け舟とばかりに会話を引き継いだ。
「シャノンさん、ご厚意ありがとう。実は、アラタはまだ働き始めて数ヶ月で日が浅くてね。その辺の事情は詳しくないんだ。けど、あなたの言う通り、今のクインズベリーのレイジェスが、カエストゥスのレイジェスから来ているのは合ってるよ。創業主の想いを200年も受け継いでるんだ。すごい事だよね。あなたのアラルコン商会も、ご先祖を大切にしているからこそ、ここまで大きくなったんじゃないのかな。レオネラ・アラルコンの名前は私も知っている。レイジェスを創業する時に、とてもお世話になったそうだ。今日、私達が出会えた事には、特別ななにかがあるんじゃないかな。私達の代でも友好関係を築いていきたいと思うよ」
そう言ってレイチェルが右手を差し出す。
シャノンさんはその手をじっと見た後に、レイチェルの顔を見つめるとにっこりと笑い、そしてしっかりと手を握った。
「レイチェルさん、私、あなたの事も好きだな。よろしくね」
「私も、あなたのような人は好きだよ」
かつて親交を深めたレイジェスとアラルコン商会が、200年の時を得て、再会し手を取り合った。
アラルコン商会の跡取り娘シャノンさんは、レジカウンターの奥から出て来て俺の姿を認めると、簡単な挨拶をして俺とファビアナさん、それにレイチェル達も一緒にと言って、通路奥の従業員用の部屋に通した。
「いや、俺はいたって普通のリサイクルショップの店員ですよ。俺の周りの人がすごいんです。だから国からも信頼が厚いようで」
上等な黒い革張りのソファに腰を沈ませながら、俺はその人物をアピールするように、隣に座るレイチェルに顔を向ける。
「ん、あぁ・・・確かにね。隣の赤い髪の彼女、レイチェルさん。あなた相当強いよね?私は魔法使いだけどさ、あなたが強いってのは分かるよ。でも、お兄さんもあのクインズベリー最強の、マルゴンってヤツの首をねじ切ったんでしょ?十分つよ・・・」
「いや!違うから!なんでマルゴンの話しになると、八つ裂きとか埋めたとか、みんな尾ひれ付いてんの!?」
思わず大きな声を出して抗議すると、シャノンさんは一瞬きょんとした後に、大きく口を開けて笑い声をあげた。
「あはははは!なるほどね、お兄さん、苦労してるっぽいね!」
「そう、そうなんですよ!マルゴン、あいつ元気ハツラツですからね?それがなんで俺が殺した事になってんだか?シャノンさんも、首ねじ切ったなんて、普通に考えてありえないでしょ?信じないでくださいよ!」
「あはははは!ごめんごめん、まぁだいたい分かったよ。クインズベリーの新女王様からの任務で、こっちに来たのね。どんな任務か気になるけど、まぁそこまでは言えないよね。ファビアナちゃんと一緒ってのも驚いたけど、任務で協力なら分かるかな」
シャノンさんはまだ笑いの余韻を残し、左手で目元をぬぐっている。
しかし、俺がマルゴンを倒した事は、他国にまで伝わっていたのか。マルゴンがいかにビッグネームだったのか、つくづく思い知らされた。
それにしても、俺達がこの国に来た理由を、あまり深く追及されなくて良かった。ファビアナさんとリンジーさんが一緒である以上、ある程度は事実を伝えなければならない。
なぜならクインズベリーの俺やレイチェルが、なぜ彼女達と知り合いなのかという事を、できるだけ自然に説明するためには、その場限りの嘘では必ずほころびがでるからだ。
さずがに帝国の人間と一戦かまえた事は黙っていたが、新女王からの任務という言葉だけで、概ね納得は得られたようだ。
「忙しいとこわざわざありがとね。あの時、一緒だったお兄さんの彼女と会えなかったのは残念だけど、ネックレス大事にしてくれてるみたいで嬉しいよ」
30分くらいは滞在しただろう。
カチュアのネックレスの事や、お互いに話したい事を話した頃合いを見て、シャノンさんが締めくくりの言葉に入った。
「いや、こっちこそ約束もないの時間作ってもらって、ありがとうございます。今度はカチュアと一緒に旅行でゆっくり来ます」
そう言ってソファーから立つと、俺に合わせてみんな立ち上がる。
「なにかあったら、いつでも来てね。大抵の物は探せるし、力になれる事は多いと思うよ」
店の出入り口まで見送ってくれたシャノンさんは、別れ際にパチリと片目をつむってそう言ってくれた。とても歓迎されたし、そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、正直あの時の一回しか買い物をしていないので、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「ありがとうございます。でも、一回しか買い物してないのに、あんまり甘えるわけには・・・」
「あぁ、気にしないで。そりゃね、お兄さんとカチュアちゃんを気に入ったのは本当だよ。でも、それだけじゃないから。お兄さん達、リサイクルショップ・レイジェスの人なんでしょ。最初に名前聞いた時、すぐには思い出せなかったんだけど、話してて思い出したんだ。私のご先祖様、最後にカエストゥスに行商に行ってた人なんだけど、レオネラ・アラルコンって人がね、その当時、カエストゥスにあったリサイクルショップ・レイジェスで、すごくお世話になって、沢山友達できて、生涯とても感謝してたんだって。私は見た事はないけど、うちの親から聞いた話しでさ、レオネラの日誌にカエストゥスに行ってた5~6年くらいかな、その間はいつもレイジェスでの事が楽しく書かれてたそうなんだよ。お兄さん達のレイジェスって、もしかしてそのレイジェスなんじゃない?カエストゥスで商売できなくなったけど、クインズベリーに来て代々続けてたとか?」
ご先祖との縁を想い、目を細めて話すシャノンさん。
そうか・・・彼女は、自分のご先祖レオネラが、弥生さん達と出会って、友達として付き合っていた事を知っていたのか。
それがなくても、俺達に好意的だったのは確かだけど、それを知った事でご先祖の恩にも報いようとしている。とても義理堅い人だ。
しかし、カエストゥスのレイジェスとの関係をどう説明しようか?俺が言葉に詰まっているのを見て、レイチェルが助け舟とばかりに会話を引き継いだ。
「シャノンさん、ご厚意ありがとう。実は、アラタはまだ働き始めて数ヶ月で日が浅くてね。その辺の事情は詳しくないんだ。けど、あなたの言う通り、今のクインズベリーのレイジェスが、カエストゥスのレイジェスから来ているのは合ってるよ。創業主の想いを200年も受け継いでるんだ。すごい事だよね。あなたのアラルコン商会も、ご先祖を大切にしているからこそ、ここまで大きくなったんじゃないのかな。レオネラ・アラルコンの名前は私も知っている。レイジェスを創業する時に、とてもお世話になったそうだ。今日、私達が出会えた事には、特別ななにかがあるんじゃないかな。私達の代でも友好関係を築いていきたいと思うよ」
そう言ってレイチェルが右手を差し出す。
シャノンさんはその手をじっと見た後に、レイチェルの顔を見つめるとにっこりと笑い、そしてしっかりと手を握った。
「レイチェルさん、私、あなたの事も好きだな。よろしくね」
「私も、あなたのような人は好きだよ」
かつて親交を深めたレイジェスとアラルコン商会が、200年の時を得て、再会し手を取り合った。
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