異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
529 / 1,359

528 追跡 ⑦

しおりを挟む
「ここがロンズデール国境の町、レフェリだ。時間を考えて今日はここで一泊してるはずだよ」

国境を抜けた俺達は、レイチェルの案内でレフェリという町に着いた。
ここは他国からロンズデールに入る人は、必ずと言っていい程立ち寄る町らしい。
と言うのも、やはり日没の関係だ。今回俺達が進んだルート、ナック村から国境まで馬車を出せば、ここで宿をとらねばならなくなる時間帯になるからだ。

ここまで来て俺は、この世界が本当に夜をどう過ごすかを考えて出来ていると感じた。

ナック村もそうだったが、このレフェリも酒場を兼ねた宿が非常に多いのだ。
日本なら、夜通し車を走らせ目的地に行く事は珍しくもなんともない。
しかしこの世界では、トバリという存在がそれを許さない。
不用意に、夜外を出歩けば、食われて人生を終える事になるからだ。

ナック村にしろレフェリにしろ、旅人の通り道にできた町は、宿泊業は手堅く、そしてとても有益そうだ。

「まぁ、あと30分もすれば暗くなるだろうから、リンジーさん達もここで宿をとってるはずだよな。でも、こんだけ宿があると、どこに泊ってるか検討もつかねぇな・・・」

独り言ちながら町を見渡す。立ち並ぶ店の大半は酒場宿だ。
しかも外まで漏れ聞こえる喧噪から、どこもかしこも宴会のように酒飲みしている事が分かる。

「・・・しかしナック村と変わらないな」

「そうだな。俺もこの町は初めてだ。町の大きさはナック村と比較にならないが、この雰囲気は似ている。やっぱ、立地条件が同じだからなんだろうな」

俺の呟きに、ビリージョーさんが同意しながら、周囲に目を向ける。

「さて二人とも、私達もそろそろ宿をとろうか。ナック村みたく、特別な宿があるわけではないが、リンジー達が泊まらない宿は分かるから安心しろ」

立ち止まって町を見ている俺とビリージョーさんに、レイチェルが付いて来いと言うように、親指をクイっと後ろに向けた。

泊る宿ではなく、泊まらない宿は分かる?どういう意味だ?




「ここはロンズデールの国境沿いの町だけど、当然住んでいる住人が、全員ロンズデール出身というわけではない。だから、青の船団のプレートがかかげられていない宿は、他国の出身者が経営している宿という事になる。リンジー達がどの宿に泊まったかは分からないが、青の船団のプレートがある宿を選んだのは間違いない。自国の店に金を落としたいはずだからな」

三人で並んで歩く。
レイチェルは宿の看板を確認しながら、選ぶ基準を説明する。

なるほど、そう言えば以前ミゼルさんに聞いたなと思い出していた。

ロンズデールは水の精霊の加護を受けていて、水産業が非常に盛んだと。
そして青の船団という漁を生業にしている組織が、一番大きい勢力らしい。そのプレートがある店は青の船団の組合らしいから、おそらく青の船団からなにかしらの恩恵を受けているのだろう。

ミゼルさんから聞いた話しを思い出しながら町を歩くと、確かに船のマークの入ったプレートが、そこかしこに見られ、青の船団の勢力の大きさがよく分かる感じだった。

例えるなら、なぜかその町には同じコンビニしかなかったという感覚だろうか。


「それにしても青の船団ばかりだな・・・お、あったあった、あそこにしよう。あそこは青の船団じゃない」

しばらく歩き進むと、町の中心地から少し外れた一角に、青の船団のプレートがついていない宿があった。二階建ての少し小さな宿だった。

レイチェルに続いて宿に入ると、一階が酒場でここもすでに飲み会が行われていた。
何人かの店員さんが忙しそうに。各テーブルに料理を運んでいる。
外からは小さく見えたが、席の2/3は埋まっていて、ここもなかなか繁盛しているようだ。


「三人で一泊したいのだが、部屋は空いてるかい?できれば二部屋欲しい」

「はい、大丈夫ですよ。二部屋ですね、お部屋は二階で、この番号の部屋をお使いください。素泊まりは4000イエンで前払いです。食事は別料金で、その都度いただいてますので、お申し付けください」

カウンターで受付の女性から宿の仕組みの説明を受けると、レイチェルは三人分として、まず12000イエンを支払い、部屋番号の書かれた薄い板を受けとった。
受け付けで部屋番号を口にしないのは、女性に対しての防犯のためだろうか。
なかなか気のきいた宿だと思った。

「じゃあ、このまま食事をしようかな。酒はいらないから、おすすめを三人分用意してくれ。やっぱり魚が美味しいのかい?」

「そうですね。ロンズデールから毎日新鮮な魚が届けられますので、魚が一番美味しいですよ」

「そうか、ここは青の船団の組合ではないようだが、魚はちゃんと仕入れられるんだね?」

「はい、ただやっぱり商人さんがうちに来るのは最後ですから、希望の魚が入るかと言えばそうではないですけどね」

青の船団の組合になると、朝の仕入れで優先的に回ってもらえるそうだ。
それ以外にも、ロンズデールから希望の品を持ってきてもらえたり、なにかと融通してもらえるらしい。

「ただ、組合費が少し高いんです。それに組合に入っても新参者の所に回ってくるのは、結局最後になるので、あまり意味がないんです。だから、うちは組合には入るつもりはないんです」

受け付け女性の話しに、レイチェルは、うんうんと頷きながら、さりげなく聞いた。

「なるほどね、それなら今のままでもよさそうだね。そう言えばこの町には帝国の人間もよく来ると聞いたが、ここにも泊まってたりするのかい?」

「帝国ですか?うちにはめったに来ませんよ。青の船団の宿に空きがなくて、しかたなくって時くらいですね。知ってますか?帝国の人って、ロンズデールだとすっごく優遇されるんですよ!だからここでも、青の船団の組合の宿に直行なんです」

「へぇ~、それはなんだか悔しいね。こんな良い宿があるのに、見る目がないんだよ」

レイチェルは少しオーバーな感じで、呆れたように両手を広げ、肩をすくめて見せる。

「あ、嬉しい事言ってくれますね!本当にそうですよ!実はこの前帝国の軍人さんが、わざわざうちに冷やかしに来たんです。だから、ちょっと落ち込んでたんですよね。でも、うちは料理も美味しいし、きっと満足してもらえますよ!」

レイチェルの言葉に気を良くしたらしく、受け付けの女性は笑顔で店のアピールを始めた。


「なるほど、ここは本当に良い宿だね。料理も期待させてもらうよ。その冷やかしてきた帝国の軍人も、もったいない事をしたものだ。こんな良い宿を蹴ってどこに泊まったんだろうね?」

「水月亭って一番高い宿に、何日も連泊してる帝国の人がいるみたいなんですよね。確認したわけじゃないですけど、多分その人だと思うんです。豪遊しててマナーも悪いから、ちょっと噂になってるんですよ」

受け付け女性が口の横に手をあてて、内緒話しをするように小声で話すと、レイチェルは小さく微笑んで、それは嫌なヤツだね、そう一言返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...