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528 追跡 ⑦
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「ここがロンズデール国境の町、レフェリだ。時間を考えて今日はここで一泊してるはずだよ」
国境を抜けた俺達は、レイチェルの案内でレフェリという町に着いた。
ここは他国からロンズデールに入る人は、必ずと言っていい程立ち寄る町らしい。
と言うのも、やはり日没の関係だ。今回俺達が進んだルート、ナック村から国境まで馬車を出せば、ここで宿をとらねばならなくなる時間帯になるからだ。
ここまで来て俺は、この世界が本当に夜をどう過ごすかを考えて出来ていると感じた。
ナック村もそうだったが、このレフェリも酒場を兼ねた宿が非常に多いのだ。
日本なら、夜通し車を走らせ目的地に行く事は珍しくもなんともない。
しかしこの世界では、トバリという存在がそれを許さない。
不用意に、夜外を出歩けば、食われて人生を終える事になるからだ。
ナック村にしろレフェリにしろ、旅人の通り道にできた町は、宿泊業は手堅く、そしてとても有益そうだ。
「まぁ、あと30分もすれば暗くなるだろうから、リンジーさん達もここで宿をとってるはずだよな。でも、こんだけ宿があると、どこに泊ってるか検討もつかねぇな・・・」
独り言ちながら町を見渡す。立ち並ぶ店の大半は酒場宿だ。
しかも外まで漏れ聞こえる喧噪から、どこもかしこも宴会のように酒飲みしている事が分かる。
「・・・しかしナック村と変わらないな」
「そうだな。俺もこの町は初めてだ。町の大きさはナック村と比較にならないが、この雰囲気は似ている。やっぱ、立地条件が同じだからなんだろうな」
俺の呟きに、ビリージョーさんが同意しながら、周囲に目を向ける。
「さて二人とも、私達もそろそろ宿をとろうか。ナック村みたく、特別な宿があるわけではないが、リンジー達が泊まらない宿は分かるから安心しろ」
立ち止まって町を見ている俺とビリージョーさんに、レイチェルが付いて来いと言うように、親指をクイっと後ろに向けた。
泊る宿ではなく、泊まらない宿は分かる?どういう意味だ?
「ここはロンズデールの国境沿いの町だけど、当然住んでいる住人が、全員ロンズデール出身というわけではない。だから、青の船団のプレートがかかげられていない宿は、他国の出身者が経営している宿という事になる。リンジー達がどの宿に泊まったかは分からないが、青の船団のプレートがある宿を選んだのは間違いない。自国の店に金を落としたいはずだからな」
三人で並んで歩く。
レイチェルは宿の看板を確認しながら、選ぶ基準を説明する。
なるほど、そう言えば以前ミゼルさんに聞いたなと思い出していた。
ロンズデールは水の精霊の加護を受けていて、水産業が非常に盛んだと。
そして青の船団という漁を生業にしている組織が、一番大きい勢力らしい。そのプレートがある店は青の船団の組合らしいから、おそらく青の船団からなにかしらの恩恵を受けているのだろう。
ミゼルさんから聞いた話しを思い出しながら町を歩くと、確かに船のマークの入ったプレートが、そこかしこに見られ、青の船団の勢力の大きさがよく分かる感じだった。
例えるなら、なぜかその町には同じコンビニしかなかったという感覚だろうか。
「それにしても青の船団ばかりだな・・・お、あったあった、あそこにしよう。あそこは青の船団じゃない」
しばらく歩き進むと、町の中心地から少し外れた一角に、青の船団のプレートがついていない宿があった。二階建ての少し小さな宿だった。
レイチェルに続いて宿に入ると、一階が酒場でここもすでに飲み会が行われていた。
何人かの店員さんが忙しそうに。各テーブルに料理を運んでいる。
外からは小さく見えたが、席の2/3は埋まっていて、ここもなかなか繁盛しているようだ。
「三人で一泊したいのだが、部屋は空いてるかい?できれば二部屋欲しい」
「はい、大丈夫ですよ。二部屋ですね、お部屋は二階で、この番号の部屋をお使いください。素泊まりは4000イエンで前払いです。食事は別料金で、その都度いただいてますので、お申し付けください」
カウンターで受付の女性から宿の仕組みの説明を受けると、レイチェルは三人分として、まず12000イエンを支払い、部屋番号の書かれた薄い板を受けとった。
受け付けで部屋番号を口にしないのは、女性に対しての防犯のためだろうか。
なかなか気のきいた宿だと思った。
「じゃあ、このまま食事をしようかな。酒はいらないから、おすすめを三人分用意してくれ。やっぱり魚が美味しいのかい?」
「そうですね。ロンズデールから毎日新鮮な魚が届けられますので、魚が一番美味しいですよ」
「そうか、ここは青の船団の組合ではないようだが、魚はちゃんと仕入れられるんだね?」
「はい、ただやっぱり商人さんがうちに来るのは最後ですから、希望の魚が入るかと言えばそうではないですけどね」
青の船団の組合になると、朝の仕入れで優先的に回ってもらえるそうだ。
それ以外にも、ロンズデールから希望の品を持ってきてもらえたり、なにかと融通してもらえるらしい。
「ただ、組合費が少し高いんです。それに組合に入っても新参者の所に回ってくるのは、結局最後になるので、あまり意味がないんです。だから、うちは組合には入るつもりはないんです」
受け付け女性の話しに、レイチェルは、うんうんと頷きながら、さりげなく聞いた。
「なるほどね、それなら今のままでもよさそうだね。そう言えばこの町には帝国の人間もよく来ると聞いたが、ここにも泊まってたりするのかい?」
「帝国ですか?うちにはめったに来ませんよ。青の船団の宿に空きがなくて、しかたなくって時くらいですね。知ってますか?帝国の人って、ロンズデールだとすっごく優遇されるんですよ!だからここでも、青の船団の組合の宿に直行なんです」
「へぇ~、それはなんだか悔しいね。こんな良い宿があるのに、見る目がないんだよ」
レイチェルは少しオーバーな感じで、呆れたように両手を広げ、肩をすくめて見せる。
「あ、嬉しい事言ってくれますね!本当にそうですよ!実はこの前帝国の軍人さんが、わざわざうちに冷やかしに来たんです。だから、ちょっと落ち込んでたんですよね。でも、うちは料理も美味しいし、きっと満足してもらえますよ!」
レイチェルの言葉に気を良くしたらしく、受け付けの女性は笑顔で店のアピールを始めた。
「なるほど、ここは本当に良い宿だね。料理も期待させてもらうよ。その冷やかしてきた帝国の軍人も、もったいない事をしたものだ。こんな良い宿を蹴ってどこに泊まったんだろうね?」
「水月亭って一番高い宿に、何日も連泊してる帝国の人がいるみたいなんですよね。確認したわけじゃないですけど、多分その人だと思うんです。豪遊しててマナーも悪いから、ちょっと噂になってるんですよ」
受け付け女性が口の横に手をあてて、内緒話しをするように小声で話すと、レイチェルは小さく微笑んで、それは嫌なヤツだね、そう一言返した。
国境を抜けた俺達は、レイチェルの案内でレフェリという町に着いた。
ここは他国からロンズデールに入る人は、必ずと言っていい程立ち寄る町らしい。
と言うのも、やはり日没の関係だ。今回俺達が進んだルート、ナック村から国境まで馬車を出せば、ここで宿をとらねばならなくなる時間帯になるからだ。
ここまで来て俺は、この世界が本当に夜をどう過ごすかを考えて出来ていると感じた。
ナック村もそうだったが、このレフェリも酒場を兼ねた宿が非常に多いのだ。
日本なら、夜通し車を走らせ目的地に行く事は珍しくもなんともない。
しかしこの世界では、トバリという存在がそれを許さない。
不用意に、夜外を出歩けば、食われて人生を終える事になるからだ。
ナック村にしろレフェリにしろ、旅人の通り道にできた町は、宿泊業は手堅く、そしてとても有益そうだ。
「まぁ、あと30分もすれば暗くなるだろうから、リンジーさん達もここで宿をとってるはずだよな。でも、こんだけ宿があると、どこに泊ってるか検討もつかねぇな・・・」
独り言ちながら町を見渡す。立ち並ぶ店の大半は酒場宿だ。
しかも外まで漏れ聞こえる喧噪から、どこもかしこも宴会のように酒飲みしている事が分かる。
「・・・しかしナック村と変わらないな」
「そうだな。俺もこの町は初めてだ。町の大きさはナック村と比較にならないが、この雰囲気は似ている。やっぱ、立地条件が同じだからなんだろうな」
俺の呟きに、ビリージョーさんが同意しながら、周囲に目を向ける。
「さて二人とも、私達もそろそろ宿をとろうか。ナック村みたく、特別な宿があるわけではないが、リンジー達が泊まらない宿は分かるから安心しろ」
立ち止まって町を見ている俺とビリージョーさんに、レイチェルが付いて来いと言うように、親指をクイっと後ろに向けた。
泊る宿ではなく、泊まらない宿は分かる?どういう意味だ?
「ここはロンズデールの国境沿いの町だけど、当然住んでいる住人が、全員ロンズデール出身というわけではない。だから、青の船団のプレートがかかげられていない宿は、他国の出身者が経営している宿という事になる。リンジー達がどの宿に泊まったかは分からないが、青の船団のプレートがある宿を選んだのは間違いない。自国の店に金を落としたいはずだからな」
三人で並んで歩く。
レイチェルは宿の看板を確認しながら、選ぶ基準を説明する。
なるほど、そう言えば以前ミゼルさんに聞いたなと思い出していた。
ロンズデールは水の精霊の加護を受けていて、水産業が非常に盛んだと。
そして青の船団という漁を生業にしている組織が、一番大きい勢力らしい。そのプレートがある店は青の船団の組合らしいから、おそらく青の船団からなにかしらの恩恵を受けているのだろう。
ミゼルさんから聞いた話しを思い出しながら町を歩くと、確かに船のマークの入ったプレートが、そこかしこに見られ、青の船団の勢力の大きさがよく分かる感じだった。
例えるなら、なぜかその町には同じコンビニしかなかったという感覚だろうか。
「それにしても青の船団ばかりだな・・・お、あったあった、あそこにしよう。あそこは青の船団じゃない」
しばらく歩き進むと、町の中心地から少し外れた一角に、青の船団のプレートがついていない宿があった。二階建ての少し小さな宿だった。
レイチェルに続いて宿に入ると、一階が酒場でここもすでに飲み会が行われていた。
何人かの店員さんが忙しそうに。各テーブルに料理を運んでいる。
外からは小さく見えたが、席の2/3は埋まっていて、ここもなかなか繁盛しているようだ。
「三人で一泊したいのだが、部屋は空いてるかい?できれば二部屋欲しい」
「はい、大丈夫ですよ。二部屋ですね、お部屋は二階で、この番号の部屋をお使いください。素泊まりは4000イエンで前払いです。食事は別料金で、その都度いただいてますので、お申し付けください」
カウンターで受付の女性から宿の仕組みの説明を受けると、レイチェルは三人分として、まず12000イエンを支払い、部屋番号の書かれた薄い板を受けとった。
受け付けで部屋番号を口にしないのは、女性に対しての防犯のためだろうか。
なかなか気のきいた宿だと思った。
「じゃあ、このまま食事をしようかな。酒はいらないから、おすすめを三人分用意してくれ。やっぱり魚が美味しいのかい?」
「そうですね。ロンズデールから毎日新鮮な魚が届けられますので、魚が一番美味しいですよ」
「そうか、ここは青の船団の組合ではないようだが、魚はちゃんと仕入れられるんだね?」
「はい、ただやっぱり商人さんがうちに来るのは最後ですから、希望の魚が入るかと言えばそうではないですけどね」
青の船団の組合になると、朝の仕入れで優先的に回ってもらえるそうだ。
それ以外にも、ロンズデールから希望の品を持ってきてもらえたり、なにかと融通してもらえるらしい。
「ただ、組合費が少し高いんです。それに組合に入っても新参者の所に回ってくるのは、結局最後になるので、あまり意味がないんです。だから、うちは組合には入るつもりはないんです」
受け付け女性の話しに、レイチェルは、うんうんと頷きながら、さりげなく聞いた。
「なるほどね、それなら今のままでもよさそうだね。そう言えばこの町には帝国の人間もよく来ると聞いたが、ここにも泊まってたりするのかい?」
「帝国ですか?うちにはめったに来ませんよ。青の船団の宿に空きがなくて、しかたなくって時くらいですね。知ってますか?帝国の人って、ロンズデールだとすっごく優遇されるんですよ!だからここでも、青の船団の組合の宿に直行なんです」
「へぇ~、それはなんだか悔しいね。こんな良い宿があるのに、見る目がないんだよ」
レイチェルは少しオーバーな感じで、呆れたように両手を広げ、肩をすくめて見せる。
「あ、嬉しい事言ってくれますね!本当にそうですよ!実はこの前帝国の軍人さんが、わざわざうちに冷やかしに来たんです。だから、ちょっと落ち込んでたんですよね。でも、うちは料理も美味しいし、きっと満足してもらえますよ!」
レイチェルの言葉に気を良くしたらしく、受け付けの女性は笑顔で店のアピールを始めた。
「なるほど、ここは本当に良い宿だね。料理も期待させてもらうよ。その冷やかしてきた帝国の軍人も、もったいない事をしたものだ。こんな良い宿を蹴ってどこに泊まったんだろうね?」
「水月亭って一番高い宿に、何日も連泊してる帝国の人がいるみたいなんですよね。確認したわけじゃないですけど、多分その人だと思うんです。豪遊しててマナーも悪いから、ちょっと噂になってるんですよ」
受け付け女性が口の横に手をあてて、内緒話しをするように小声で話すと、レイチェルは小さく微笑んで、それは嫌なヤツだね、そう一言返した。
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