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525 追跡 ④
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早朝5時、11月にもなると外まだまだ暗く、日の出には時間がある。
「俺も一緒に行こう」
俺とレイチェルが朝食の席についてパンをかじっていると、カウンター内でコーヒー飲みながら、ビリージョーさんが決定事項を告げるようにそう口にした。
「え?いや、でも・・・」
突然の事でどう返事をしていいか分からず、俺は隣に座るレイチェルに、判断をまかせるように顔を向けた。
「・・・そう言うかもしれないって、思ってました。心配性は相変わらずですね」
レイチェルは肩をすくめ、俺に顔を向けた。
「アラタ、ビリージョーさんはな、昔っからこうなんだ。私が初めて会ったのは5年前、14歳の時だが、いやまぁとにかく世話焼きだし心配性だしでな、あれ忘れてないか、これ持ったか?どこに行くんだ?暗くなる前に帰って来いよと、まるで母親だ。だがまぁ、そんなビリージョーさんだから、安心してここに泊まれるんだがな」
「え、そうなんですか?」
思わずビリージョーさんに顔を向けると、ビリージョーさんは俺の目は見ずに苦笑いをしながらコーヒーカップを置いて、指先でつまむように顎を撫でた。
「・・・そんな細かい事はどうでもいいだろ。相手は三人なんだろ?俺も入れてこっちも三人だ。それに俺も体力型だから、お前達に付いて行く事はできる」
しかし、ビリージョーさんは料理人だ。
いくら体力型でも、鍛えていなければ俺達とは体力や戦闘力で大きな差があるだろう。
俺のそんな考えを読んだのか、レイチェルがビリージョさんの言葉に口添えをした。
「ふふ、アラタ、大丈夫だ。こう見えてビリージョーさんはけっこうやるんだぞ?それに、私達が断っても付いて来るさ。そういう人なんだ」
よろしく頼みます。
レイチェルがビリージョさんにそう言うので、俺も合わせてペコリ頭を下げた。
「おう、じゃあこれ飲んだら出るか」
ビリージョーさんはそう言って、食後のコーヒーを俺達の前に置いた。
6時になると空が白み始め、わずかに差す陽の光が地上を照らし始める。
俺達三人は身支度を済ませると、ビリージョーさんのお店、ホワイト亭の前で、ストレッチをして軽く体をほぐしていた。
「すみません。防寒着、貸していただいて」
昨日は急に城に行く事になったので、俺はデニムパンツにネルシャツ、薄手のジャンパーという完全に普段着だった。
「気にするな。着てないヤツだし、今日は特に冷えるからな。あんな薄いのじゃ風邪ひいちまうぞ」
ビリージョーさんは俺より10cmは背が高いので、サイズは大きかったが、肉厚のダウンジャケットは温かく、冷たい風をしっかりと防いでくれた。
ちなみにレイチェルは、最近城に泊まり込みだったから、昨日の段階でしっかりと温かいコートを用意して着込んでいた。フードボアの赤いウールコートだ。
「さて、俺はその三人の顔を知らないからな、お前達に付いて行くとしよう。それで、そいつらの泊まった宿が分からないらしいが、どこで張るんだ?」
ビリージョーさんの質問に、レイチェルが村の出入り口の方を指した。
「やっぱりあそこしかないですね。向こうは魔法使いが一人いますので、馬車で移動するのは間違いないです。私達は村の外で待って、村から出る馬車を追い駆けましょう」
「どの馬車に乗っているか分かるのか?知ってるだろうが、この村に出入りする馬車は多いんだぞ。行商人、旅行者、貴族も来るんだ。大丈夫なのか?」
ビリージョーさんの疑問は至極当然だった。
俺もその問題はどうするのかと、レイチェルに目で問いかける。
「そこでビリージョーさんの出番じゃないですか?頼りにしてますよ」
そう言ってレイチェルは、ビリージョーさんに顔を向け、ニッコリ笑って見せた。
「・・・はぁ~、おいレイチェル、お前最初からそのつもりだったな?」
「いえいえ、たまたまですよ。たまたまビリージョーさんが付いて来てくれる事になったんで、せっかくだからお願いしようとおもっただけです」
ビリージョーさんは頭を掻きながら、してやられたと言うように大きく溜息を付いた。
「えっと、どういう事ですか?」
話が掴めずビリージョーさんに尋ねると、ビリージョーさんは眉を寄せて、苦笑いしながら説明してくれた。
「アラタ君、俺の魔道具でなら多分どの馬車に乗ってるか分かる。疲れるからあまり使いたくないんだよな。まぁ、しかたない。そこに行ってから、実践して話そう」
そう言ってビリージョーさんは、村の出入り口に足を向けた。
「・・・なるほど、190cm程の大きな男と、アラタ君より少し背の高い女と、150cmくらい小柄な女の三人だな。そのくらいの特徴があれば分かると思う」
俺達は村から出ると、昨日俺がバテた樹の下に身を隠した。
ビリージィーさんはロンズデールの三人の特徴を確認すると、地面に片膝を着きながら村の出入り口を凝視している。
「あの、つまりビリージョーさんは、建物の中にいる人の温度が分かるって事なんですね?」
俺はさっきビリージョーさんが説明をしてくれた、ビリージョーさんの魔道具について確認した。
「そうだ。俺の左目は義眼でな、バリオスさんに作ってもらった魔道具なんだ。肉眼と変わらず物を見る事ができるが、神経を集中させると、障害物を通してその中にいる生き物の温度を、形として捉える事ができる」
サーモグラフィーみたいだな。
これがビリージョーさんの魔道具の能力を聞いて、真っ先に感じた印象だった。
「焼き加減とかさ、料理に生かせるかと思ってそう作ってもらったんだが、まさかこんな使い方する事になるとはな。けっこう目が疲れるんだよ」
不満を口にしながらも、ビリージョーさんは仕事に取りかかったらしく、真剣な顔つきになった。
レイチェルに顔を向けると、レイチェルは俺を見て、口の前に人差し指を一本立てた。
どうやら相当集中力がいるらしい。
体感だが、30分程は待っただろうか、ビリージョーさんは大きく息を吐き、前を向いたまま言葉を発した。
「・・・あれだな」
「俺も一緒に行こう」
俺とレイチェルが朝食の席についてパンをかじっていると、カウンター内でコーヒー飲みながら、ビリージョーさんが決定事項を告げるようにそう口にした。
「え?いや、でも・・・」
突然の事でどう返事をしていいか分からず、俺は隣に座るレイチェルに、判断をまかせるように顔を向けた。
「・・・そう言うかもしれないって、思ってました。心配性は相変わらずですね」
レイチェルは肩をすくめ、俺に顔を向けた。
「アラタ、ビリージョーさんはな、昔っからこうなんだ。私が初めて会ったのは5年前、14歳の時だが、いやまぁとにかく世話焼きだし心配性だしでな、あれ忘れてないか、これ持ったか?どこに行くんだ?暗くなる前に帰って来いよと、まるで母親だ。だがまぁ、そんなビリージョーさんだから、安心してここに泊まれるんだがな」
「え、そうなんですか?」
思わずビリージョーさんに顔を向けると、ビリージョーさんは俺の目は見ずに苦笑いをしながらコーヒーカップを置いて、指先でつまむように顎を撫でた。
「・・・そんな細かい事はどうでもいいだろ。相手は三人なんだろ?俺も入れてこっちも三人だ。それに俺も体力型だから、お前達に付いて行く事はできる」
しかし、ビリージョーさんは料理人だ。
いくら体力型でも、鍛えていなければ俺達とは体力や戦闘力で大きな差があるだろう。
俺のそんな考えを読んだのか、レイチェルがビリージョさんの言葉に口添えをした。
「ふふ、アラタ、大丈夫だ。こう見えてビリージョーさんはけっこうやるんだぞ?それに、私達が断っても付いて来るさ。そういう人なんだ」
よろしく頼みます。
レイチェルがビリージョさんにそう言うので、俺も合わせてペコリ頭を下げた。
「おう、じゃあこれ飲んだら出るか」
ビリージョーさんはそう言って、食後のコーヒーを俺達の前に置いた。
6時になると空が白み始め、わずかに差す陽の光が地上を照らし始める。
俺達三人は身支度を済ませると、ビリージョーさんのお店、ホワイト亭の前で、ストレッチをして軽く体をほぐしていた。
「すみません。防寒着、貸していただいて」
昨日は急に城に行く事になったので、俺はデニムパンツにネルシャツ、薄手のジャンパーという完全に普段着だった。
「気にするな。着てないヤツだし、今日は特に冷えるからな。あんな薄いのじゃ風邪ひいちまうぞ」
ビリージョーさんは俺より10cmは背が高いので、サイズは大きかったが、肉厚のダウンジャケットは温かく、冷たい風をしっかりと防いでくれた。
ちなみにレイチェルは、最近城に泊まり込みだったから、昨日の段階でしっかりと温かいコートを用意して着込んでいた。フードボアの赤いウールコートだ。
「さて、俺はその三人の顔を知らないからな、お前達に付いて行くとしよう。それで、そいつらの泊まった宿が分からないらしいが、どこで張るんだ?」
ビリージョーさんの質問に、レイチェルが村の出入り口の方を指した。
「やっぱりあそこしかないですね。向こうは魔法使いが一人いますので、馬車で移動するのは間違いないです。私達は村の外で待って、村から出る馬車を追い駆けましょう」
「どの馬車に乗っているか分かるのか?知ってるだろうが、この村に出入りする馬車は多いんだぞ。行商人、旅行者、貴族も来るんだ。大丈夫なのか?」
ビリージョーさんの疑問は至極当然だった。
俺もその問題はどうするのかと、レイチェルに目で問いかける。
「そこでビリージョーさんの出番じゃないですか?頼りにしてますよ」
そう言ってレイチェルは、ビリージョーさんに顔を向け、ニッコリ笑って見せた。
「・・・はぁ~、おいレイチェル、お前最初からそのつもりだったな?」
「いえいえ、たまたまですよ。たまたまビリージョーさんが付いて来てくれる事になったんで、せっかくだからお願いしようとおもっただけです」
ビリージョーさんは頭を掻きながら、してやられたと言うように大きく溜息を付いた。
「えっと、どういう事ですか?」
話が掴めずビリージョーさんに尋ねると、ビリージョーさんは眉を寄せて、苦笑いしながら説明してくれた。
「アラタ君、俺の魔道具でなら多分どの馬車に乗ってるか分かる。疲れるからあまり使いたくないんだよな。まぁ、しかたない。そこに行ってから、実践して話そう」
そう言ってビリージョーさんは、村の出入り口に足を向けた。
「・・・なるほど、190cm程の大きな男と、アラタ君より少し背の高い女と、150cmくらい小柄な女の三人だな。そのくらいの特徴があれば分かると思う」
俺達は村から出ると、昨日俺がバテた樹の下に身を隠した。
ビリージィーさんはロンズデールの三人の特徴を確認すると、地面に片膝を着きながら村の出入り口を凝視している。
「あの、つまりビリージョーさんは、建物の中にいる人の温度が分かるって事なんですね?」
俺はさっきビリージョーさんが説明をしてくれた、ビリージョーさんの魔道具について確認した。
「そうだ。俺の左目は義眼でな、バリオスさんに作ってもらった魔道具なんだ。肉眼と変わらず物を見る事ができるが、神経を集中させると、障害物を通してその中にいる生き物の温度を、形として捉える事ができる」
サーモグラフィーみたいだな。
これがビリージョーさんの魔道具の能力を聞いて、真っ先に感じた印象だった。
「焼き加減とかさ、料理に生かせるかと思ってそう作ってもらったんだが、まさかこんな使い方する事になるとはな。けっこう目が疲れるんだよ」
不満を口にしながらも、ビリージョーさんは仕事に取りかかったらしく、真剣な顔つきになった。
レイチェルに顔を向けると、レイチェルは俺を見て、口の前に人差し指を一本立てた。
どうやら相当集中力がいるらしい。
体感だが、30分程は待っただろうか、ビリージョーさんは大きく息を吐き、前を向いたまま言葉を発した。
「・・・あれだな」
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