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504 戦いの後 ①
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マルコスとの話しを終え、外に出た私が目にしたものは、今まさに決着がついたその瞬間だった。
息をする事さえ忘れそうな攻防の果てに、アラタの右拳が闇を撃ち抜いた。
力無く倒れた闇の化身、偽国王はそのまま起き上がって来る事はなかった。
アラタの勝ちだ。
だが、勝利の余韻に浸る事も、喜びに声を上げる事もできない。
「アラタ!」
腹を斬り裂かれ、左腕が肘から絶たれた。今すぐに治癒しなければ死んでしまう!
駆け出そうとしたが、私が一歩踏み出した時には、すでに店長がアラタの体を支えていた。
・・・駄目だ、もう限界だ。
最後の一発、全てを振りしぼった右拳で、偽国王の顎を撃ち抜いた瞬間、体中の力が全て無くなくなっていく感覚を覚えた。
踏みとどまろうとしても、まるで自分の足ではないように指の一本さえ動かせない。
重い瞼が閉じようとする。
薄れゆく意識の狭間で俺の目に映ったものは、闇となった偽国王の体が、まるで蒸発するかのように煙を上げ、風に乗って消えていくところだった。
相打ちか。
けど、これでみんな助かる・・・それでいい・・・・・
「・・・よく戦った・・・」
誰かに背中を受け止められ、体が優しい温かさに包まれていく。
「自分のためだけにここまで戦う事はできない。キミはここで大切なものを見つけたんだな」
痛みが和らぎ、それと同時にあらがえない眠気に襲われていく。
「何も考えずに今は休め・・・・・」
耳に届いたその言葉を最後に、俺の意識は途切れた。
「店長!」
私が駆け付けると、店長はアラタにヒールをかけながら、私に言葉をかけてくれた。
「レイチェル、彼は大丈夫だ。腹の傷は塞いだ。左腕ももうすぐ繋がる」
致命傷だったはずだが、店長は顔色一つ変えずにアラタを治癒した。
切断された腕をたった一人で、しかもこれほどの速さで治癒するなんて・・・本職のカチュアとユーリをはるかに上回っている。
本当に、この桁違いの魔力はいったいどこから・・・・・
「・・・よし、これでいい」
店長はアラタを抱きかかえて立ち上がった。
アラタの左腕は傷一つ残らず、綺麗に繋がっていた。切断された事実など存在しなかったかと思えてしまう程だった。
「・・・カチュアが見てなくて良かった」
ほっと息を付くと、店長が不思議そうに少しだけ首を傾げた。
「なんの事だ?」
「あ、実は・・・」
私がアラタとカチュアの関係を説明すると、店長は驚きながらも興味深そうに何度も頷いた。
「それは驚いたな・・・そうか、あのカチュアが・・・」
「はい。ですから、血まみれのアラタを見せたくなかったんです。あんな姿をカチュアが見たら・・・」
アラタが協会に連れて行かれた時の、泣き崩れたカチュアの様子を思い出した。
あの時よりカチュアは精神的に強くなった。
けれど、やはりこんな姿を見たらショックは計り知れない。
「店長がいて良かったです・・・」
アラタの顔についた血を袖で拭いながら、そう口にする私に店長は優しく微笑んでくれた。
「おーい、レイチェルー!・・・え!?店長!?」
「うそ!?うぉっ!店長じゃん!」
近づいてくる足音に振り返ると、ケイトにリカルド、ジーン、ユーリ、そしてカチュアを背負ったミゼルが走って来た。
「みんな、久しぶりだな。遅くなってすまない。元気そうでなによりだ」
「店長、お久しぶりです。アラタ・・・」
「ジーン、大丈夫だ。力を使い果たして眠っているが怪我は治した」
店長が抱きかかえるアラタを見て、ジーンが心配そうに目を向けると、店長は安心させるように微笑んだ。
その言葉に、ジーンがほっとして表情をくずすと、店長はみんなに目を向けた。
「この国の闇は倒した。みんな、本当に頑張ったね」
その一言に、みんなの表情が明るくなる。
「店長・・・アタシ勝ったよ。四勇士を殴り倒した」
「ユーリ、ほどほどにな。キミは白魔法使いだぞ」
店長に頭を撫でられ、見た事のない笑顔を見せるユーリ。
「店長おっせぇよ。みんな心配してたぜ」
「ははは、ごめんごめん。でも、リカルドが頑張ってくれて助かったよ」
まぁよ!と言ってリカルドは特気な顔をして見せた。
「店長、お帰りなさい。いやぁ、疲れた疲れた。参りましたよ」
「ミゼル、苦労をかけたね。ありがとう」
肩をすくめるミゼルに、店長も笑って答えた。
「ミゼル、ジャレットとシルヴィアは?」
「まだ塔から戻って来てません。でも、大障壁が消えたって事は、目的を遂げたって事でしょうから、今は体を休めてるんじゃないですかね?」
「・・・そうだな。シルヴィアの魔力は感じるから、大丈夫だろう・・・カチュアは、よく寝てるようだな?」
ミゼルの背で眠るカチュアに目をやると、ミゼルは、しかたないというように笑ってみせた。
「はい。ずいぶん魔力を使ったみたいでして。女の子をそこら辺に寝かせるわけにはいかないですから、体格的に俺がおぶってます」
店長はカチュアの顔を見た後、そのまま自分が抱きかかえているアラタに視線を移した。
ヤヨイさん、この戦いを見て分かりました
彼は・・・アラタはこの世界で護るべき大切な人を見つけたようです
だから安心してください・・・彼は、今きっと幸せですよ・・・
頬にあたる風はカエストゥスの風とは違う・・・けれど俺は懐かしいあの時を思い出す
もう戻れないあの時を・・・・・
幸せだったあの日々を・・・・・
「・・・・・さぁ、行こうか、まずは王妃様と話そう・・・・・」
少しだけ目を瞑り、俺は空を見上げた
息をする事さえ忘れそうな攻防の果てに、アラタの右拳が闇を撃ち抜いた。
力無く倒れた闇の化身、偽国王はそのまま起き上がって来る事はなかった。
アラタの勝ちだ。
だが、勝利の余韻に浸る事も、喜びに声を上げる事もできない。
「アラタ!」
腹を斬り裂かれ、左腕が肘から絶たれた。今すぐに治癒しなければ死んでしまう!
駆け出そうとしたが、私が一歩踏み出した時には、すでに店長がアラタの体を支えていた。
・・・駄目だ、もう限界だ。
最後の一発、全てを振りしぼった右拳で、偽国王の顎を撃ち抜いた瞬間、体中の力が全て無くなくなっていく感覚を覚えた。
踏みとどまろうとしても、まるで自分の足ではないように指の一本さえ動かせない。
重い瞼が閉じようとする。
薄れゆく意識の狭間で俺の目に映ったものは、闇となった偽国王の体が、まるで蒸発するかのように煙を上げ、風に乗って消えていくところだった。
相打ちか。
けど、これでみんな助かる・・・それでいい・・・・・
「・・・よく戦った・・・」
誰かに背中を受け止められ、体が優しい温かさに包まれていく。
「自分のためだけにここまで戦う事はできない。キミはここで大切なものを見つけたんだな」
痛みが和らぎ、それと同時にあらがえない眠気に襲われていく。
「何も考えずに今は休め・・・・・」
耳に届いたその言葉を最後に、俺の意識は途切れた。
「店長!」
私が駆け付けると、店長はアラタにヒールをかけながら、私に言葉をかけてくれた。
「レイチェル、彼は大丈夫だ。腹の傷は塞いだ。左腕ももうすぐ繋がる」
致命傷だったはずだが、店長は顔色一つ変えずにアラタを治癒した。
切断された腕をたった一人で、しかもこれほどの速さで治癒するなんて・・・本職のカチュアとユーリをはるかに上回っている。
本当に、この桁違いの魔力はいったいどこから・・・・・
「・・・よし、これでいい」
店長はアラタを抱きかかえて立ち上がった。
アラタの左腕は傷一つ残らず、綺麗に繋がっていた。切断された事実など存在しなかったかと思えてしまう程だった。
「・・・カチュアが見てなくて良かった」
ほっと息を付くと、店長が不思議そうに少しだけ首を傾げた。
「なんの事だ?」
「あ、実は・・・」
私がアラタとカチュアの関係を説明すると、店長は驚きながらも興味深そうに何度も頷いた。
「それは驚いたな・・・そうか、あのカチュアが・・・」
「はい。ですから、血まみれのアラタを見せたくなかったんです。あんな姿をカチュアが見たら・・・」
アラタが協会に連れて行かれた時の、泣き崩れたカチュアの様子を思い出した。
あの時よりカチュアは精神的に強くなった。
けれど、やはりこんな姿を見たらショックは計り知れない。
「店長がいて良かったです・・・」
アラタの顔についた血を袖で拭いながら、そう口にする私に店長は優しく微笑んでくれた。
「おーい、レイチェルー!・・・え!?店長!?」
「うそ!?うぉっ!店長じゃん!」
近づいてくる足音に振り返ると、ケイトにリカルド、ジーン、ユーリ、そしてカチュアを背負ったミゼルが走って来た。
「みんな、久しぶりだな。遅くなってすまない。元気そうでなによりだ」
「店長、お久しぶりです。アラタ・・・」
「ジーン、大丈夫だ。力を使い果たして眠っているが怪我は治した」
店長が抱きかかえるアラタを見て、ジーンが心配そうに目を向けると、店長は安心させるように微笑んだ。
その言葉に、ジーンがほっとして表情をくずすと、店長はみんなに目を向けた。
「この国の闇は倒した。みんな、本当に頑張ったね」
その一言に、みんなの表情が明るくなる。
「店長・・・アタシ勝ったよ。四勇士を殴り倒した」
「ユーリ、ほどほどにな。キミは白魔法使いだぞ」
店長に頭を撫でられ、見た事のない笑顔を見せるユーリ。
「店長おっせぇよ。みんな心配してたぜ」
「ははは、ごめんごめん。でも、リカルドが頑張ってくれて助かったよ」
まぁよ!と言ってリカルドは特気な顔をして見せた。
「店長、お帰りなさい。いやぁ、疲れた疲れた。参りましたよ」
「ミゼル、苦労をかけたね。ありがとう」
肩をすくめるミゼルに、店長も笑って答えた。
「ミゼル、ジャレットとシルヴィアは?」
「まだ塔から戻って来てません。でも、大障壁が消えたって事は、目的を遂げたって事でしょうから、今は体を休めてるんじゃないですかね?」
「・・・そうだな。シルヴィアの魔力は感じるから、大丈夫だろう・・・カチュアは、よく寝てるようだな?」
ミゼルの背で眠るカチュアに目をやると、ミゼルは、しかたないというように笑ってみせた。
「はい。ずいぶん魔力を使ったみたいでして。女の子をそこら辺に寝かせるわけにはいかないですから、体格的に俺がおぶってます」
店長はカチュアの顔を見た後、そのまま自分が抱きかかえているアラタに視線を移した。
ヤヨイさん、この戦いを見て分かりました
彼は・・・アラタはこの世界で護るべき大切な人を見つけたようです
だから安心してください・・・彼は、今きっと幸せですよ・・・
頬にあたる風はカエストゥスの風とは違う・・・けれど俺は懐かしいあの時を思い出す
もう戻れないあの時を・・・・・
幸せだったあの日々を・・・・・
「・・・・・さぁ、行こうか、まずは王妃様と話そう・・・・・」
少しだけ目を瞑り、俺は空を見上げた
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