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492 リーザの特攻
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「お・・・うう、ぐうぁ・・・・ぐっ・はぁッ・・・はぁッ・・・」
それは実に不思議な光景だった。
さっきまで年相応にシワを刻んでいた肌が、時間を巻き戻すかのように、みるみるとハリを取り戻していき、年と共に枯れた事を思わせる白い髪は、息を吹き返すかのように暗い茶色に染まっていく。
そして齢60とは思えない程にしっかりとした肩、服の上からでも分かる太い二の腕は、反対に縮むように細く頼りないものに変わっていった。
「変身が・・・解けている」
イスに座ったまま両手で顔を覆い、うめき声をあげている国王は、真実の花の薬を浴びた事で、その変身が解けかかっていた。
「ハァァッツ!」
偽国王の闇の拘束が弱まった事を感じたアラタは、全身に纏った光を強く発し、その手を、首を、体を掴む闇の瘴気を消し飛ばした。
「私が時間を稼ぐ!」
拘束をから逃れ着地すると同時に、アラタの脇をリーザが駆け抜ける。
アラタに視線も合わせずにかけられた言葉だが、それだけでアラタはリーザの意図を理解した。
いまだ空中に捕らわれているエリザベートとアンリエールを見上げると、アラタはまずアンリエールに向かって飛び上がった。
自分達より長く闇に掴まっていたせいか、体力の消耗がいちじるしい。一刻も早い回復が必要だ。
両手に光を集め、アンリエールの体を掴む闇の触手を引き千切る。
「王妃様!大丈夫ですか!?」
「・・・うぅ・・・」
その体を抱え声をかけるが、青白い顔、かすかなうめき声に、危険な状態だと感じたアラタは、アンリエールを床に寝かせ、すぐにエリザベートの元へと飛んだ。
「ア、アラタさん!」
「エリザ様!王妃様を!」
アンリエールと同様に闇の触手を引き千切り、エリザベートの体を抱え下りると、エリザベートはすぐさまアンリエールの体に手を当てた。
「お母様!」
その手が淡く光り、アンリエールの体を包み込む。
ここはエリザ様に任せれば大丈夫だろう。
俺は・・・偽国王を倒す!
決意の強さを表すように、光の拳を握り締めると、アラタは偽国王に顔を向けた。
「ガァァァァァァァーーーーーッツ!」
獣のような咆哮とともに、偽国王の体から伸びたいくつもの闇の触手が、リーザを貫こうと襲い掛かる!
「ぶっ殺してやらぁぁぁぁーーーーーッツ!」
「本性丸出しだな?ずいぶん下品な言葉を使うじゃないか?」
大剣を手放したリーザは、丸腰で偽国王へと向かい走った。
真実の花の薬を浴びた偽国王の体からは、まるでその闇を浄化するかのように、蒸気が沸きあがっている。痛みを感じているのか、両手で顔を覆ったまま苦し気な声を上げる偽国王に、リーザは蔑むように嘲笑した。
闇に対して戦うすべを持たないリーザの素手での特攻。
偽国王は顔を押さえた指の隙間から、真っ赤に充血し、怒りと殺意に満ちたその目を覗かせた。
「止まって見えるよ」
「なに!?」
それは触手を躱す一連の動きが、まるで踊っているのかと思わせるような、華麗な流れだった。
顔に迫った触手を首を振り躱すと、そのまま反転し胸を狙った触手を躱す。
偽国王に背を向けた形になるが、リーザはそのまま背面跳びで軽やかに触手を躱し、見事に偽国王の頭上をとった。
「このっ!」
「遅い!」
予想外のリーザの動きに、偽国王は顔を押さえる両手を離し、闇の波動を撃つために手の平を向け構えるが、それよりも早くリーザの右の蹴りが偽国王の顔を蹴り飛ばした。
「へぇ、そういうツラだったのか。私の好みじゃないな」
変身の解けた偽国王の素顔を見て、リーザはニヤリと笑った。
それは実に不思議な光景だった。
さっきまで年相応にシワを刻んでいた肌が、時間を巻き戻すかのように、みるみるとハリを取り戻していき、年と共に枯れた事を思わせる白い髪は、息を吹き返すかのように暗い茶色に染まっていく。
そして齢60とは思えない程にしっかりとした肩、服の上からでも分かる太い二の腕は、反対に縮むように細く頼りないものに変わっていった。
「変身が・・・解けている」
イスに座ったまま両手で顔を覆い、うめき声をあげている国王は、真実の花の薬を浴びた事で、その変身が解けかかっていた。
「ハァァッツ!」
偽国王の闇の拘束が弱まった事を感じたアラタは、全身に纏った光を強く発し、その手を、首を、体を掴む闇の瘴気を消し飛ばした。
「私が時間を稼ぐ!」
拘束をから逃れ着地すると同時に、アラタの脇をリーザが駆け抜ける。
アラタに視線も合わせずにかけられた言葉だが、それだけでアラタはリーザの意図を理解した。
いまだ空中に捕らわれているエリザベートとアンリエールを見上げると、アラタはまずアンリエールに向かって飛び上がった。
自分達より長く闇に掴まっていたせいか、体力の消耗がいちじるしい。一刻も早い回復が必要だ。
両手に光を集め、アンリエールの体を掴む闇の触手を引き千切る。
「王妃様!大丈夫ですか!?」
「・・・うぅ・・・」
その体を抱え声をかけるが、青白い顔、かすかなうめき声に、危険な状態だと感じたアラタは、アンリエールを床に寝かせ、すぐにエリザベートの元へと飛んだ。
「ア、アラタさん!」
「エリザ様!王妃様を!」
アンリエールと同様に闇の触手を引き千切り、エリザベートの体を抱え下りると、エリザベートはすぐさまアンリエールの体に手を当てた。
「お母様!」
その手が淡く光り、アンリエールの体を包み込む。
ここはエリザ様に任せれば大丈夫だろう。
俺は・・・偽国王を倒す!
決意の強さを表すように、光の拳を握り締めると、アラタは偽国王に顔を向けた。
「ガァァァァァァァーーーーーッツ!」
獣のような咆哮とともに、偽国王の体から伸びたいくつもの闇の触手が、リーザを貫こうと襲い掛かる!
「ぶっ殺してやらぁぁぁぁーーーーーッツ!」
「本性丸出しだな?ずいぶん下品な言葉を使うじゃないか?」
大剣を手放したリーザは、丸腰で偽国王へと向かい走った。
真実の花の薬を浴びた偽国王の体からは、まるでその闇を浄化するかのように、蒸気が沸きあがっている。痛みを感じているのか、両手で顔を覆ったまま苦し気な声を上げる偽国王に、リーザは蔑むように嘲笑した。
闇に対して戦うすべを持たないリーザの素手での特攻。
偽国王は顔を押さえた指の隙間から、真っ赤に充血し、怒りと殺意に満ちたその目を覗かせた。
「止まって見えるよ」
「なに!?」
それは触手を躱す一連の動きが、まるで踊っているのかと思わせるような、華麗な流れだった。
顔に迫った触手を首を振り躱すと、そのまま反転し胸を狙った触手を躱す。
偽国王に背を向けた形になるが、リーザはそのまま背面跳びで軽やかに触手を躱し、見事に偽国王の頭上をとった。
「このっ!」
「遅い!」
予想外のリーザの動きに、偽国王は顔を押さえる両手を離し、闇の波動を撃つために手の平を向け構えるが、それよりも早くリーザの右の蹴りが偽国王の顔を蹴り飛ばした。
「へぇ、そういうツラだったのか。私の好みじゃないな」
変身の解けた偽国王の素顔を見て、リーザはニヤリと笑った。
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