異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
478 / 1,352

477 全てを出し尽くしたその後

しおりを挟む
アルベルトから視線を切る事はなかった。

アルベルトは一瞬でレイチェルの眼前に距離を詰めていたが、瞬きもせずに見ていたレイチェルの目には、アルベルトの歩方、地滑りの正体が見えた。


僅かに爪先が動いている?これは・・・指か!?

アルベルトのこの歩方は、指だけで地面を滑るように移動している。
信じられない指の力だ・・・上半身、下半身、体の軸を全くぶらす事なく、指だけでこの速さを出すなんて、いったいどれほどの修練を積んだというのだ?

確かにこの移動方なら、足首も膝も腰も動かす事無く移動できる。
しかし技の理屈が分かっても、私には到底できない技だ。尊敬の念すら覚える。

そしてこの歩方は、これまで以上に速い・・・・・

いいだろう!この一撃は私が受け止めてやる!
お前の全身全霊を乗り越えて私が勝つ!






なるほど・・・・・
体から余計な力を抜けば、これほどの速さが出せるのだな。

レイチェル・エリオットよ、俺の地滑りが一つ高みにいけたのはお前のおかげだ。

だからこそ、この技でお前との勝負に決着をつける!

剣をどうするか?
上段から頭へ斬り下ろす。首を狙い斬り払う。的の大きい胸を刺し貫く。


いいや違う!


レイチェル・エリオットの目は俺を真っすぐに見ている。

この目は戦士の目だ!
騎士としての俺の剣を、戦士として受け止める覚悟と誇りを持った目だ!

そしてレイチェルは自分が勝つと信じている。

血がたぎるという言葉は、こういう時に使うのだろう・・・・・

面白い!
ならば俺が狙う場所はここだ!


勝負だ!レイチェル・エリオットォォォォォォーーーッツ!


アルベルトの突きが、レイチェルの目と目の間に吸い込まれるように入って行った。





「お前ならここを狙うと信じていた」



一瞬の後、その体が宙を舞う直前、アルベルトは確かに聞いた


アルベルトの突きは確かにレイチェルを突き刺した
しかしそれは、目と目の間に差し出された・・・レイチェルの右手の平だった

まるでその場所を狙う事を確信していたかのようなレイチェルの防御方法に、アルベルトは目を開き動揺してしまった

ほんの僅かだが反撃への備えに遅れが出る

結果、レイチェルの次の一手が先を取った

いかに重くても左腕を動かせないわけではない
動揺したアルベルトに一撃を与える事は可能だった

左腕を振り上げ、その重さを利用したレイチェルの手刀は、アルベルトの右腕を砕いた

「ぐぁッツ!」

アルベルトは痛みに顔を歪め、片手剣を手放した


レイチェルは右手に刺さっている片手剣を引き抜くと、そのままアルベルトの左手首を掴み、後方に投げ飛ばした







「・・・・・しばらく動けそうにない・・・・・お前の、勝ちだ・・・」

ふわりと、まるで風に乗ったかのように軽やかに体が浮いたと思った直後、背中から全身を突き抜けるような強烈な衝撃が体を駆け巡った

アルベルトに意識はあったが、大技グラビティバーストを使用した疲労、そしてこれまでの戦いで受けたダメージが一気に表面化し、もはや戦う力は残っていなかった


「はぁ・・・はぁ・・・あんた、強かったよ・・・」

レイチェルもまた、限界だった

最初に左肩を貫かれた時の出血は止まっていない

最小限に抑えたと言っても、グラビティバーストで吹き飛ばされたダメージは大きかった

そして、右手を犠牲にしなければ勝てなかったと言っても、血を失っているところに、更に右手を刺させての出血は大きかった



意識が霞んでいくが、レイチェルは倒れる事はしなかった

背後に聞こえる足音、それはアラタとエリザベートが階段を駆け上がってきている事を教えていた


今倒れては駄目だ
二人に余計な心配を与える
特にアラタはあまいし、エリザ様も足を止めて回復をしてくるかもしれない

時間が惜しい・・・だから・・・二人、が・・・行くま、で・・は・・・・・・・


視界の端に映るアラタとエリザベートの姿が、三階への階段を上がって行ったところで、レイチェルの力は尽きた




・・・・・店長、私・・・・・頑張りました、よ・・・・・・・・




足の力が抜け、後ろに倒れるレイチェルの体が優しく受け止められる


「レイチェル、頑張ったね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...