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469 再び

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命乞いをする父と母、二人の兄を殺す事に一切の躊躇はなかった。

殺らなければ殺られる。
フェリックスにとってはただそれだけの事であり、戦いとはそういうものだという認識だった。


騎士として見限られ、家を出されたフェリックスだったが、騎士としての道を諦めてはいなかった。

それが目障りだったのだろう。
追い出した子供がいつまでも騎士を諦めずに、ズルズルと家の恥をさらしている。
ダラキアン家にはそう映った。


城の外で剣を振るうフェリックスを見つけると、フェリックスの兄二人は言いがかりとしか言えない言葉で絡み、フェリックスに斬りかかった。

しかし、二人の兄には誤算だった。

予想できなかった事はしかたのない事だろう。10歳の時に無能と判断し追い出した弟が、わずか2年でとても同じ人物とは思えない程の変貌を遂げているとは、いったい誰が予想できたであろう。

すでにシルバー騎士に昇格していた兄二人は、一太刀も浴びせる事ができずに斬り伏せられた。

そして兄二人を殺したフェリックスは、自分に剣を向けたダラキアン家を滅ぼそうと行動に出る。

それは何一つ計画性の無い行動だった。
ダラキアン家に正面から堂々と乗り込み、立ちはだかる兵を全て斬り捨てて進んだ。

当主である父は、シルバー騎士の上位5指に入る実力者だった。
老いたりとはいえ、まだまだその実力は健在だったが、その父でさえフェリックには手も足も出せずに首をはねられた。

その後、母を殺し、自分以外のダラキアンの血を根絶やしにしたフェリックスは、国王の前に立ち、これから自分はどうすべきか伺いをたてた。


国王はたった一言、これからはゴールド騎士として国のために剣を振れ、そうフェリックスに命じた。


それからフェリックスは、ダラキアン家の当主として、ゴールド騎士として、クインズベリー国のために剣を振るい生きてきた。




「きっかけはこの幻想の剣だった。僅かばかりの金を握らせ、裸同然で家を出された僕は土の精霊の住まう山に入った。祈るしかなかった・・・何もなかったからな、僕にはもう土の精霊に祈るしかなかった・・・・・ヴァン、この幻想の剣はね、土の精霊が僕に授けてくれた武器なんだよ」

幻想の剣は虹色の光をどんどん強く発している。


「た、隊長、こ、これはっ・・・!?」

「あぁ・・・土の加護だ!しかも、とんでもなく強い!どういう事だ・・・」

何とか立ち上がったヴァンとフェンテスだが、フェリックスの持つ幻想の剣が放つプレッシャーは、二人の体を強く打ち付け吹き飛ばそうとする。


「僕には何もないと思っていた。けれど、それは違ってたんだ。僕は精霊に近い人間だったんだよ。何日も何日も精霊の山で寝て過ごしたある日、ハッキリと精霊の声が聞こえたんだ。最初はほんの少しだった、けれど日が立つにつれ、その声は大きくハッキリと聞こえるようになって、数日もすると意思の疎通までできるようになった。いろんな事を話したよ・・・そして僕の生い立ちを知った精霊が、僕の中の眠れる力を起こしてくれたんだ・・・」



・・・くる!

一瞬、フェリックスの目に強い力が宿り、ギラリと光った。
ヴァンがその光を目にし身構えた時、フェリックスは一瞬でヴァンの背後を取り、その背を斬り裂いた。

「う!あがぁ・・・・・」

「今度は確実に斬らせてもらったよ。ヴァン、さよならだ」

右肩から左の脇腹にかけて、袈裟懸けに斬られたヴァンの背から、まるで噴水のごとく真っ赤な血が飛び散った。

うめき声を上げ、前のめりに力無く倒れたヴァンを見て、フェンテスが叫び声を上げてフェリックスに飛び掛かった。


「勝てないと分かっていても向かって来る・・・僕はそういうの、嫌いじゃないよ」

そう呟くフェリックスの目は、どこか優しげだった。
かつて騎士になれないと言われ続けても、夢を追い続けた自分を思い出した。


フェンテスのナイフを難なく躱し、幻想の剣を左から右へ真横に振るい、その腹を斬り裂いた。

返り血を浴び、その身を真っ赤に染めたフェリックスは、足元に倒れたヴァンとフェンテスに少しだけ目を向けた。


この出血だ、放っておいても持って数分・・・
首を切って楽にしてやるか・・・・・だが・・・・・


一瞬だが、フェリックスの心に迷いが生まれた。

ヴァンとフェンテス、二人の戦いから感じた気迫、それは己の命を捨ててでも絶対に成し遂げる。
二人はフェリックスがそう感じる程の、本物の魂をぶつけ立ち向かった。


いや、迷うな・・・この二人は僕が思った以上に、強い男だった・・・
敬意を示し止めを刺す事も騎士の務めだ

あれだけの惨殺をした僕を、国王は全て不問にして、今の地位を用意してくれた
裏切るな・・・国王を裏切るな・・・僕は親や兄とは違う!


フェリックスがヴァンの首筋に剣先を当てる
ほんの少し力を込めて突き刺せば、それで終わる・・・・・はずだった



突然の風切り音に、フェリックが後ろに飛び退く
髪をかすめていったのは、見覚えのある大振りのナイフ・・・治安部隊のナイフだった


「・・・・・な、んだと・・・お、お前は・・・ 」

ナイフの飛んできた方に顔を向けたフェリックスは、驚愕に目を開いた


「すみませんねぇ、その二人を殺されると困るんですよ。ここからは、私がお相手しましょう」

広間の出入口に立ち、フェリックスにナイフを向けるその男は、かつてこの国最強と呼ばれた男


マルコス・ゴンサレスだった
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