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458 受け継がれる物
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俺は大馬鹿野郎だ。
レオの殺気にあてられて弱気になって、結果シーちゃんに護られた上に、危ない目にも合わせた。
戦う前から勝てねぇって自分で決めつけて、俺はなにしにここに来たんだよ!?
自分で自分が嫌になる・・・情けねぇ・・・本当に情けねぇ!
さっきシーちゃんにも言われたじゃねぇか、二人で戦うんだ。
このレオ・アフマダリエフは俺より強ぇ、見ただけでそれは分かる。
背だって俺より15cm以上は高ぇし、アホみてぇに筋肉がついてやがる。パワーじゃ話しにもならねぇ。
でも、俺が負ければ終わりなんじゃねぇ、俺とシーちゃんが負けたら終わりなんだ。
俺達は二人なんだ、二人で勝てばいい。
二人なら勝機はある!
思い切り右拳を振り抜く。レオの右頬にめり込んだ拳には確かな手応えが合った。
背中から地面に打ちつけられそうになったが、レオは体を捻り床を蹴ると、数メートル後方に軽やかに着地した。
これほどの巨体で見かけによらず、いや、あれだけの重量の鎧まで着て、恐ろしい程の身体能力だ。
「・・・貴様、それは・・・その盾はなんだ?」
口の端から流れる血を拭い、レオが俺の左腕に付けている円形の盾をじっと見つめる。
以前店長からもらった物だが、正直使う事はないと思っていた。
これを使う時は、戦争になった時くらいだと思っていたからな。
「これは全てを受け流す盾・・・流水の盾だ」
200年前、剣士隊の隊長ドミニクが使い、その後は隊長を引き継いだペトラが使っていたという、カエストゥス国剣士隊に伝わる伝説の盾。
「店長、これなんですか?」
「流水の盾だ・・・ジャレット、これはお前にやるよ。大事に使ってくれ」
「・・・はっ!?」
俺がレイジェスで働いて三年が過ぎたある日、いつものように防具コーナーで商品の手入れをしていると、店長が俺に手渡してきたのは、見事なまでに丸い盾だった。
とりあえず俺は手に取って見てみた。
元は手で握って使う形だったようだが、ベルトで腕に留めて使うように加工されていた。
人の手を渡り、その人に合うように使えるよう工夫されているようだ。
200年も前の品だと言うし、歴史が感じられる。
そしてこの盾の凄いところは、傷一つ無い事だった。
いや、正確には盾の裏側には経年相応と言える痛みはあった。
補修されている跡もある。だが表面、攻撃を受ける表側には、刀傷もヘコみも、攻撃を受けてついた傷は一つも無かったのだ。
全てを受け流す盾というのは本当のようだ。
確かに、前にカエストゥスとブロートンの戦争の話しを聞いたあと、俺は流水の盾に興味を持って、店長に見てみたいなと話した事はあった。
俺は防具担当だし、全てを受け流す盾なんて、ハンパねぇじゃん?興味もって当然じゃん?
けれど、まさか本当に持って来てくれるなんて思わなかった。
いや、それより、なんで店長が持ってんの?
「・・・いやぁ・・・店長、これ、マジすげぇっスね?マジで全部受け流すんですよね?」
「あぁ、俺も使ってみたからよく分かる。威力に関係なく、その盾は全て受け流す。盾として、これ以上の物はないんじゃないかな?そう思える程だ」
俺は感動した。
レイジェスで働いて、防具一筋でやってきた。
来る日も来る日も鎧を見て、兜を見て、盾を見てきた。買取りで特殊な魔道防具が来ると、テンションが上がって、絶対買い取ると、気合を入れて査定をしたもんだ。
そんな防具大好きな俺だが、この流水の盾は過去最高だった。
いや、これ以上の物は出てこないんじゃないと思える一品だ。
しかし、これは売りに出せば見た事も無い値段で売れるのではないか?
ハッキリ言って、商品価値で言えば俺にはとても買える品物ではない。
なぜ、これほどの物を俺にくれる事ができる?
疑問をそのまま口にすると、店長は俺の前のイスに腰をかけて、俺が手にしている流水の盾をじっと見つめた。
少しの間だったと思うけど、その目は盾を通してどこか遠くを見ているような、そんな目だった。
「・・・ジャレット・・・俺もね、実は少しだけ迷ったんだ。お金の事じゃなくて、この流水の盾はカエストゥスの剣士隊で受け継がれてきた物だからね。俺が勝手に人に渡していいのかなって・・・・・でもさ、ジャレットなら、みんな納得してくれると思ったんだ。物を大切して、気持ちをこめて修理して・・・ジャレットの働く姿は、本当にリサイクルショップが好きなんだなって伝わってくるからね。
だから、流水の盾はジャレットが使ってくれ」
「みんな?・・・はぁ、いや、よく分かんねぇッスけど、俺は使える物は大事にしますよ。お客さんから買い取った防具は、いや、防具だけじゃなくて、なんでもっスね。買い取ったのはなんでも修理して、次のお客さんに気持ちよく売りたいじゃないですか?これ、本当にいいんですか?」
そう言いつつ、俺の目はすでに流水の盾にくぎ付けだった。
店長はそんな俺を見て笑うと、俺の肩に手を置いた。
「あぁ、流水の盾はジャレットが使ってくれ。それと、実はもう一つあるんだ。これなんだが・・・」
「ふんッツ!」
再び俺の頭にメイスを振り下ろしてくるレオに、俺は左腕に付けている流水の盾を向けた。
すでに一度流水の盾を見ているレオは、盾に当たる寸前でメイスを止めると、左足で俺の腹を狙い蹴り上げてきた。
・・・きたな!流水の盾は強力だが、腕にベルトで留めているし小回りが利かない。
そのため盾を持っていない右側からの攻撃には対応しづらい。
だからこそ右側から攻撃に備える必要があった。
店長、使わせてもらうぜ!
「なっ!?」
ジャレットの右脇腹に入るかと思われたレオの左足は、ジャレットが右手に握る、銀色の光を放つ剣によって阻まれていた。
「これが俺のもう一つの魔道具、オーラブレードだ!」
ジャレットのオーラブレードが、レオの足を弾き飛ばした。
レオの殺気にあてられて弱気になって、結果シーちゃんに護られた上に、危ない目にも合わせた。
戦う前から勝てねぇって自分で決めつけて、俺はなにしにここに来たんだよ!?
自分で自分が嫌になる・・・情けねぇ・・・本当に情けねぇ!
さっきシーちゃんにも言われたじゃねぇか、二人で戦うんだ。
このレオ・アフマダリエフは俺より強ぇ、見ただけでそれは分かる。
背だって俺より15cm以上は高ぇし、アホみてぇに筋肉がついてやがる。パワーじゃ話しにもならねぇ。
でも、俺が負ければ終わりなんじゃねぇ、俺とシーちゃんが負けたら終わりなんだ。
俺達は二人なんだ、二人で勝てばいい。
二人なら勝機はある!
思い切り右拳を振り抜く。レオの右頬にめり込んだ拳には確かな手応えが合った。
背中から地面に打ちつけられそうになったが、レオは体を捻り床を蹴ると、数メートル後方に軽やかに着地した。
これほどの巨体で見かけによらず、いや、あれだけの重量の鎧まで着て、恐ろしい程の身体能力だ。
「・・・貴様、それは・・・その盾はなんだ?」
口の端から流れる血を拭い、レオが俺の左腕に付けている円形の盾をじっと見つめる。
以前店長からもらった物だが、正直使う事はないと思っていた。
これを使う時は、戦争になった時くらいだと思っていたからな。
「これは全てを受け流す盾・・・流水の盾だ」
200年前、剣士隊の隊長ドミニクが使い、その後は隊長を引き継いだペトラが使っていたという、カエストゥス国剣士隊に伝わる伝説の盾。
「店長、これなんですか?」
「流水の盾だ・・・ジャレット、これはお前にやるよ。大事に使ってくれ」
「・・・はっ!?」
俺がレイジェスで働いて三年が過ぎたある日、いつものように防具コーナーで商品の手入れをしていると、店長が俺に手渡してきたのは、見事なまでに丸い盾だった。
とりあえず俺は手に取って見てみた。
元は手で握って使う形だったようだが、ベルトで腕に留めて使うように加工されていた。
人の手を渡り、その人に合うように使えるよう工夫されているようだ。
200年も前の品だと言うし、歴史が感じられる。
そしてこの盾の凄いところは、傷一つ無い事だった。
いや、正確には盾の裏側には経年相応と言える痛みはあった。
補修されている跡もある。だが表面、攻撃を受ける表側には、刀傷もヘコみも、攻撃を受けてついた傷は一つも無かったのだ。
全てを受け流す盾というのは本当のようだ。
確かに、前にカエストゥスとブロートンの戦争の話しを聞いたあと、俺は流水の盾に興味を持って、店長に見てみたいなと話した事はあった。
俺は防具担当だし、全てを受け流す盾なんて、ハンパねぇじゃん?興味もって当然じゃん?
けれど、まさか本当に持って来てくれるなんて思わなかった。
いや、それより、なんで店長が持ってんの?
「・・・いやぁ・・・店長、これ、マジすげぇっスね?マジで全部受け流すんですよね?」
「あぁ、俺も使ってみたからよく分かる。威力に関係なく、その盾は全て受け流す。盾として、これ以上の物はないんじゃないかな?そう思える程だ」
俺は感動した。
レイジェスで働いて、防具一筋でやってきた。
来る日も来る日も鎧を見て、兜を見て、盾を見てきた。買取りで特殊な魔道防具が来ると、テンションが上がって、絶対買い取ると、気合を入れて査定をしたもんだ。
そんな防具大好きな俺だが、この流水の盾は過去最高だった。
いや、これ以上の物は出てこないんじゃないと思える一品だ。
しかし、これは売りに出せば見た事も無い値段で売れるのではないか?
ハッキリ言って、商品価値で言えば俺にはとても買える品物ではない。
なぜ、これほどの物を俺にくれる事ができる?
疑問をそのまま口にすると、店長は俺の前のイスに腰をかけて、俺が手にしている流水の盾をじっと見つめた。
少しの間だったと思うけど、その目は盾を通してどこか遠くを見ているような、そんな目だった。
「・・・ジャレット・・・俺もね、実は少しだけ迷ったんだ。お金の事じゃなくて、この流水の盾はカエストゥスの剣士隊で受け継がれてきた物だからね。俺が勝手に人に渡していいのかなって・・・・・でもさ、ジャレットなら、みんな納得してくれると思ったんだ。物を大切して、気持ちをこめて修理して・・・ジャレットの働く姿は、本当にリサイクルショップが好きなんだなって伝わってくるからね。
だから、流水の盾はジャレットが使ってくれ」
「みんな?・・・はぁ、いや、よく分かんねぇッスけど、俺は使える物は大事にしますよ。お客さんから買い取った防具は、いや、防具だけじゃなくて、なんでもっスね。買い取ったのはなんでも修理して、次のお客さんに気持ちよく売りたいじゃないですか?これ、本当にいいんですか?」
そう言いつつ、俺の目はすでに流水の盾にくぎ付けだった。
店長はそんな俺を見て笑うと、俺の肩に手を置いた。
「あぁ、流水の盾はジャレットが使ってくれ。それと、実はもう一つあるんだ。これなんだが・・・」
「ふんッツ!」
再び俺の頭にメイスを振り下ろしてくるレオに、俺は左腕に付けている流水の盾を向けた。
すでに一度流水の盾を見ているレオは、盾に当たる寸前でメイスを止めると、左足で俺の腹を狙い蹴り上げてきた。
・・・きたな!流水の盾は強力だが、腕にベルトで留めているし小回りが利かない。
そのため盾を持っていない右側からの攻撃には対応しづらい。
だからこそ右側から攻撃に備える必要があった。
店長、使わせてもらうぜ!
「なっ!?」
ジャレットの右脇腹に入るかと思われたレオの左足は、ジャレットが右手に握る、銀色の光を放つ剣によって阻まれていた。
「これが俺のもう一つの魔道具、オーラブレードだ!」
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