異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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455 南東の塔

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「シーちゃん、もし俺が倒れたら逃げろよ」

「ジャレット、もう・・・何回同じ事言うのよ?」

南東の塔に入り、俺とシーちゃんは最上階を目指して螺旋階段を上がっていた。
最上階まで数十メートルはあるだろう。
最上階以外に、途中の部屋は一切無いというなんとも変わった作りだった。

この塔を護る四勇士は、唯一の体力型という話しだった。
そして俺とシーちゃんがこの塔に向かう前に、エリザ様から聞かされた話しでは、四勇士レオ・アフマダリエフは、四勇士の将と言える男らしい。


「・・・まぁまぁ、いいじゃねぇか。大事な事なんだ、とにかくもし俺がやられたら逃げろよ」

「・・・ジャレット、いい加減にして」

前を歩きながら軽い調子で話すと、後ろから肩を掴まれ壁に押し付けられた。


「なに考えてるの?みんなで生きて帰ろうって約束したわよね?さっきから聞いてれば、まるであなたは死ぬみたいじゃない」

視線を逸らす事は許されない強い瞳だった。
シーちゃんは睨むように俺を見ているけど、それが俺の身を案じる事からきているのは十分過ぎる程分かった。


「・・・そんなつもりはねぇよ・・・俺だってわざわざ死にに行くつもりはねぇ」

「じゃあ、どういうつもりよ?」

ごまかす事は許さない。納得のいく説明がなければ、この場から動く事はない。
シーちゃんの青い目はそう言っていた。


「・・・体力型にしか分からねぇ事がある」

「・・・なんの事?」

シーちゃんの疑問には答えず、俺は顔を上げて最上階に目を向けた。
つられるようにシーちゃんも顔を上げる。

「・・・この塔に入った時から、ずっと感じていたんだ。俺は・・・こんな静かな殺気を向けられたのは初めてだ。喉元に刃物を当てられた気分だぜ」

「・・・そう、なの・・・?私は、何も・・・・・」

「魔法使いは体を鍛えてるわけじゃねぇからな。これは誰にでも分かるように気力を爆発させた類じゃねぇ・・・一定レベル以上の者でなきゃ分からない、戦う資格を見る殺意だ。つまり、これに気付かないヤツが無防備に目の前に立てば・・・その瞬間殺されるだろう」

そう話すと、シーちゃんは俺の肩から手を離した。

「ジャレット・・・あなたがそんなに言う程、強いの・・・?」

シーちゃんの言葉に俺は頷いた。

「強い・・・四勇士の将というのもよく分かる。協会でアラやんと戦うマルゴンを見た時、俺はとても勝てねぇって思った。今この殺気を感じて・・・あの時と全く同じを思っちまったよ・・・」

一段一段、階段を上がるごとに、まるで命を刻んでいくような殺気を浴びせられ、俺の背中に嫌な汗をかいていた。

四勇士とは、いや、レオ・アフマダリエフとは・・・これほどなのか・・・・・


「ふぅ~・・・ジャレット、いつまでぼやっとしてるの?」

「ん、あぁ、ごめんシーちゃ、痛っ!」

最上階を見上げたままいると、シーちゃんに溜息を付かれた。
顔を戻すと、指で鼻を弾かれてしまった。

「痛ってぇ~、シーちゃんなにすんだよ!?」

「ジャレット、あなたっていつもお兄さんって立場でいるわよね?」

鼻を押さえ抗議の言葉を口にすると、シーちゃんは俺をジロリと睨んできた。

「え、あぁ・・・急になんだよ?別に偉ぶってるわけじゃねぇぞ?レイチーは店長不在の穴を埋めようって頑張ってんだ。ミッチーは事務能力は高いけど、大勢をまとめんのは苦手だろ?だったら俺がやるしかねぇじゃねぇか?」


「・・・私がいるじゃない?・・・もう少し頼ってくれてもいいのよ?」

シーちゃんは自分の存在を見せるように、胸に手をあてた。
眉を下げた寂しそうな表情に、俺の胸が少し傷んだ。


「ねぇ、ジャレット・・・魔法使いの私には、あなたの言う殺気は感じ取れないわ。でも、あなたの様子を見れば、この上にいる敵がどれほど強いのか、なんとなく分かった。ねぇ・・・ジャレットは、私が護られるだけの女って思ってるの?」

シーちゃんは、狭い階段で一歩俺に体を寄せてきた。
ほぼ密着するような状態になる。


「シ、シーちゃん!ち、近いって!」

「・・・ジャレット、私も戦えるのよ?分かってる?」

「わ、分かった!分かったから離れろって!」

ぎゅうぎゅうに体を押し付けられて、俺はつい大きな声を出してしまった。


「ふふ・・・本当に見かけと違う男ね?分かってくれて嬉しいわ」

「たくっ、からかうなよ・・・」

頭を掻いてシーちゃんから視線を逸らすと、シーちゃんがまた一歩近づいて来た。
またかよ!?そう思って俺も一歩後ろに下がろうとすると、シーちゃんが俺の手を握ってきた。


「ジャレット、二人よ。忘れないで・・・あなたと私、二人で戦うの。護ってくれるのは嬉しいわ。でも、わたしにもあなたを護れる力があることを・・・忘れないで」


「・・・シーちゃん・・・」



「・・・行きましょう、ジャレット」

そう言ってシーちゃんは小さく微笑むと、俺の前に出て階段を上がって行った。
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