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448 見えざる攻撃
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「やぁ、いらっしゃい。もう少しかかるかと思ったけど、意外に早かったね。少しは頭が回るみたいで安心したよ。もしかしたら幻覚を解けないで終わるかもって可能性も考えてたからさ」
重厚な鉄の扉を開けると、色白で小柄な、少年と言ってもいいくらいの幼顔の男が、部屋中央でイスに腰をかけて、湯気の立つカップに口を付けていた。
「・・・いきなり言ってくれんじゃない。てか、あんたが四勇士?何歳?四勇士は全員二十代って聞いてたけど・・・」
少し長めの赤茶色の髪。小顔で、丸みのある目元にはあどけなさも見える。生地の厚そうな白の長袖パーカーに、白のロングパンツを穿いている。
ハッキリ言って街にいる普通の若者にしか見えない。城を護る守護神なんて威厳はどこにも見当たらない。
「質問には答えようか。僕は四勇士、白魔法使いのエステバン・クアルト。今年で21歳だ。あまり良い気持ちはしないけど、僕は若く見られがちでね」
カップを机に置くと、やれやれとでも言うように肩をすくめて見せる。
「・・・若くじゃなくて、幼くの間違いでしょ?お坊ちゃん」
幻覚で遊ばれた上に、初っ端から子馬鹿された事で、アタシもけっこう頭に来ていた。
おそらく気にしているだろう事をぶつけてやると、どうやらドンピシャだったようだ。
「・・・言ってくれるじゃないか・・・取るに足らない平民なんて、少し遊んで帰してやろうと思ったけど止めだ。僕にそんな口を利いた事を後悔させてやろう」
クアルトはイスから立ち上がると、アタシを睨み付けてきた。
余裕のつもりか、パーカーのお腹のポケットに両手を入れている。
「平民?・・・へぇ、あんた貴族なんだ?クアルトなんて家、聞いた事ないけどどこの没落貴族なんだい?お坊ちゃん」
その一言でクアルトの目に強い殺気が宿り、体から強烈な魔力を吹き出させた。
くる!
こいつは白魔法使い、攻撃はなんらかの魔道具によるものだ!
まずはこいつの攻撃を結界で防ぎ、ミゼルの黒魔法で援護をしてもらいながら詰めていく。
「ミゼル!まずはアタシが結界で防ぐから、フォローお願い!」
「ケイト!なにしている!?結界だ!」
ミゼルに声をかけた直後、アタシはお腹にこれまで経験の無い強烈な痛み受け、顔を下に向けた。
「・・・・・え?」
「・・・どうだ?痛いだろ?」
いつの間にか目の前に立っていたクアルトが、アタシのお腹にナイフを突き刺していた。
「ケイトーッツ!」
耳に届くミゼルの声がやけに遠く感じる。
喉の奥からせりあがってきたなにかが、口の中に広がり、アタシはたまらずそれを吐いた。
「ふん、なめた口をたたいた割には一瞬じゃないか?この程度でよく僕の前に立てた・・・」
ケイトの腹に刺したナイフに力を込め、さらに奥深く突き刺そうとしたクアルトに、鋭く尖った氷が何十発も撃ち込まれ、反応できなかったクアルトは全身を突き刺され、勢いのままその体を飛ばされた。
クアルトを刺氷弾で刺し貫き、吹き飛ばした俺は、あまりにあっけないと思いながら、まず倒れているケイトに駆け寄った。
・・・・・なぜ、ケイトは無防備に接近を許した?
「・・・くそっ、深いな・・・早く血を止めないと」
うつ伏せに倒れているケイトの体を慎重に起こすと、腹部は真っ赤に染まり、血が溢れるように流れ出ていた。
すでに意識を失っているようで、ケイトの首はだらりと力なく後ろに折れる。
・・・・・まるで見えていないようだった
刺された箇所の服を引き破り、俺は腰に付けていたポーチから傷薬を取り出した。
店でも販売しているカチュアの作った傷薬だ。
縫う必要がある傷でもこれを塗れば治す事ができる。
だが、瞬間的に治るような便利な物ではない。塗れば薬が血を止め傷口を塞いでいくが当然時間はかかる。
少し切れた程度であれば、数分で治癒できるが、これほど深く刺された傷はどれだけ時間がかかるか予想が付かない。いや、そもそもこの傷を薬で対処できるのか?
・・・・・実際見えていなかったのだろう・・・ケイトの目は、目の前ではなくもう少し先を見ていた
治す事ができるのであれば、一時間でも二時間でも、いや何日かかってもかまわない。
だが、最悪のケースは治せずケイトが死んでしまう事だ。
それだけは駄目だ!
なにがなんでもケイトは生かしてみせる!
俺はどうかケイトが助かるようにと祈りながら、ケイトの腹部の傷に薬を塗った。
「やはりな・・・あっけなさ過ぎると思ったぜ。てめぇ、わざとくらったな?」
・・・・・音もなく後ろに立って声を・・・・・なるほど、そういう事か
「へぇ、よく気付いたな?仲間の治療に集中してると思ったら、しっかり周りへの警戒もしてんだ?お前けっこう冷静だな?」
ケイトに傷薬を塗りながら、俺は背後に立ったクアルトに振り返らずに言葉を発した。
「・・・ナイフを下ろせ、俺には通用しないぞ」
「そうかな?俺に気付いたのはほめてやるけど、その姿勢で躱せるの?このままお前の頭に振り下ろす方が速そうだけど」
「そっちじゃない、俺はこっちに言ったんだ」
「なに!?」
俺は自分の胸に伸びたナイフを持った手を、右手でしっかりと掴んで押さえた。
正面に現れたクアルトは、俺に押さえられるなんて考えもしなかったようで、驚きに目を剥いている。
「お、お前、なんで分かっ・・・」
間髪入れず、握ったクアルトの右手に向けそのまま風魔法ウインドカッターを放つ。
「う・・・わぁぁぁぁぁぁぁーッツ!」
クアルトの肘の先から、真っ赤な血しぶきが宙に撒き散らされた。
「うるせぇな、耳元で叫ぶなよ」
握っているクアルトの切断した右手を放り投げ、目の前でうずくまるクアルトの顔をそのまま殴り飛ばした。
重厚な鉄の扉を開けると、色白で小柄な、少年と言ってもいいくらいの幼顔の男が、部屋中央でイスに腰をかけて、湯気の立つカップに口を付けていた。
「・・・いきなり言ってくれんじゃない。てか、あんたが四勇士?何歳?四勇士は全員二十代って聞いてたけど・・・」
少し長めの赤茶色の髪。小顔で、丸みのある目元にはあどけなさも見える。生地の厚そうな白の長袖パーカーに、白のロングパンツを穿いている。
ハッキリ言って街にいる普通の若者にしか見えない。城を護る守護神なんて威厳はどこにも見当たらない。
「質問には答えようか。僕は四勇士、白魔法使いのエステバン・クアルト。今年で21歳だ。あまり良い気持ちはしないけど、僕は若く見られがちでね」
カップを机に置くと、やれやれとでも言うように肩をすくめて見せる。
「・・・若くじゃなくて、幼くの間違いでしょ?お坊ちゃん」
幻覚で遊ばれた上に、初っ端から子馬鹿された事で、アタシもけっこう頭に来ていた。
おそらく気にしているだろう事をぶつけてやると、どうやらドンピシャだったようだ。
「・・・言ってくれるじゃないか・・・取るに足らない平民なんて、少し遊んで帰してやろうと思ったけど止めだ。僕にそんな口を利いた事を後悔させてやろう」
クアルトはイスから立ち上がると、アタシを睨み付けてきた。
余裕のつもりか、パーカーのお腹のポケットに両手を入れている。
「平民?・・・へぇ、あんた貴族なんだ?クアルトなんて家、聞いた事ないけどどこの没落貴族なんだい?お坊ちゃん」
その一言でクアルトの目に強い殺気が宿り、体から強烈な魔力を吹き出させた。
くる!
こいつは白魔法使い、攻撃はなんらかの魔道具によるものだ!
まずはこいつの攻撃を結界で防ぎ、ミゼルの黒魔法で援護をしてもらいながら詰めていく。
「ミゼル!まずはアタシが結界で防ぐから、フォローお願い!」
「ケイト!なにしている!?結界だ!」
ミゼルに声をかけた直後、アタシはお腹にこれまで経験の無い強烈な痛み受け、顔を下に向けた。
「・・・・・え?」
「・・・どうだ?痛いだろ?」
いつの間にか目の前に立っていたクアルトが、アタシのお腹にナイフを突き刺していた。
「ケイトーッツ!」
耳に届くミゼルの声がやけに遠く感じる。
喉の奥からせりあがってきたなにかが、口の中に広がり、アタシはたまらずそれを吐いた。
「ふん、なめた口をたたいた割には一瞬じゃないか?この程度でよく僕の前に立てた・・・」
ケイトの腹に刺したナイフに力を込め、さらに奥深く突き刺そうとしたクアルトに、鋭く尖った氷が何十発も撃ち込まれ、反応できなかったクアルトは全身を突き刺され、勢いのままその体を飛ばされた。
クアルトを刺氷弾で刺し貫き、吹き飛ばした俺は、あまりにあっけないと思いながら、まず倒れているケイトに駆け寄った。
・・・・・なぜ、ケイトは無防備に接近を許した?
「・・・くそっ、深いな・・・早く血を止めないと」
うつ伏せに倒れているケイトの体を慎重に起こすと、腹部は真っ赤に染まり、血が溢れるように流れ出ていた。
すでに意識を失っているようで、ケイトの首はだらりと力なく後ろに折れる。
・・・・・まるで見えていないようだった
刺された箇所の服を引き破り、俺は腰に付けていたポーチから傷薬を取り出した。
店でも販売しているカチュアの作った傷薬だ。
縫う必要がある傷でもこれを塗れば治す事ができる。
だが、瞬間的に治るような便利な物ではない。塗れば薬が血を止め傷口を塞いでいくが当然時間はかかる。
少し切れた程度であれば、数分で治癒できるが、これほど深く刺された傷はどれだけ時間がかかるか予想が付かない。いや、そもそもこの傷を薬で対処できるのか?
・・・・・実際見えていなかったのだろう・・・ケイトの目は、目の前ではなくもう少し先を見ていた
治す事ができるのであれば、一時間でも二時間でも、いや何日かかってもかまわない。
だが、最悪のケースは治せずケイトが死んでしまう事だ。
それだけは駄目だ!
なにがなんでもケイトは生かしてみせる!
俺はどうかケイトが助かるようにと祈りながら、ケイトの腹部の傷に薬を塗った。
「やはりな・・・あっけなさ過ぎると思ったぜ。てめぇ、わざとくらったな?」
・・・・・音もなく後ろに立って声を・・・・・なるほど、そういう事か
「へぇ、よく気付いたな?仲間の治療に集中してると思ったら、しっかり周りへの警戒もしてんだ?お前けっこう冷静だな?」
ケイトに傷薬を塗りながら、俺は背後に立ったクアルトに振り返らずに言葉を発した。
「・・・ナイフを下ろせ、俺には通用しないぞ」
「そうかな?俺に気付いたのはほめてやるけど、その姿勢で躱せるの?このままお前の頭に振り下ろす方が速そうだけど」
「そっちじゃない、俺はこっちに言ったんだ」
「なに!?」
俺は自分の胸に伸びたナイフを持った手を、右手でしっかりと掴んで押さえた。
正面に現れたクアルトは、俺に押さえられるなんて考えもしなかったようで、驚きに目を剥いている。
「お、お前、なんで分かっ・・・」
間髪入れず、握ったクアルトの右手に向けそのまま風魔法ウインドカッターを放つ。
「う・・・わぁぁぁぁぁぁぁーッツ!」
クアルトの肘の先から、真っ赤な血しぶきが宙に撒き散らされた。
「うるせぇな、耳元で叫ぶなよ」
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