異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
431 / 1,352

430 城内突入

しおりを挟む
10月30日 午前5時50分。城内突入10分前。

「よぉ、時間通りだな」

クインズベリー城から少し離れた高い樹の影に馬車を止めると、先に着いていたヴァンとフェンテスがこちらに近づいて来た。

治安部隊のアーマーを着用し、腰にはやや大振りのナイフを携えている。

「・・・ヴァン、フェンテス」

レイチェルが手を差し出すと、ヴァンがその手を握り視線を交わした。
お互いにこの戦いに対する決意を確かめ合うように。


「城門前にはアンリエール様の用意した番兵と、そしてエリザベート様がお待ちだ。合流次第、一気に城へ入るぞ。最速最短で偽国王の首を獲る。途中騎士団や四勇士と事を構える事になれば、打合せ通りに行動する事。アラタは止むを得ない場合を除き、アンリエール様の元にたどり着く事だけを考えろ。いいな?」

ヴァンが俺達に顔を向け、あらためて今日の動きを口にし伝える。
やはり治安部隊隊長だ。レイチェルにも目くばせしつつ、自然と指揮を執っている。こういうリーダーシップは天性のものもあるのだろう。

俺はもう意思を固めている。しっかりとヴァンの目を見て頷くと、ヴァンもそれを受けて頷き返した。


「よし・・・じゃあレイチェル、頼む」

ヴァンはレイチェルに目を向けると、一歩後ろに下がった。
突入前の最後の号令をレイチェルに譲ったと言う事だろう。

ほとんどレイジェスのメンバーで構成されているからだろう、指揮をとっても最後はレイチェルに任せるようだ。


「みんな、店長が不在のこの半年余り、至らない私によく付いて来てくれたな。ありがとう」

前に立ったレイチェルは、開口一番お礼の言葉をのべた。

「おいおい、なんだよ急に?」

ジャレットさんが肩をすくめ、少しの笑いを含んだ声をレイチェルに向けた。


「・・・本当に感謝してるんだ。私が引っ張って行くつもりで頑張ってみたが、いつもみんながフォローしてくれていた事を知っている。ジャレットは私が指示を出しやすいように、いつも隣から言葉を添えてくれていたし、ミゼルは細かい事務仕事を引き受けてくれた。ジーンはよくレジ当番を変わってくれた。ケイトは私がやるべきクレーム対応を代わってくれた。シルヴィアはみんなから不満がでないよう、いつも私の代わりにシフトを調整してまとめてきてくれた。カチュアはいつも私の体調を気にかけてくれたし、話しを聞いてもらった。ユーリはよく事務所を掃除してくれたね、おかげで気持ちよく仕事ができた・・・」

レイチェルがみんなに伝える感謝の想いには、一言一言気持ちがこもっていた。

名前を呼ばれると、それぞれがレイチェルに優しい目を向け微笑んでいる。
レイジェスの絆の強さがひしひしと感じられる。

「アラタ・・・キミはレイジェスに入ってまだ日が浅い。だけど、キミが来て防具の担当も二人体制になったし、店にも活気が出たよ。ありがとう」

「いや、そんな俺なんて助けてもらってばっかで・・・」

「フッ・・・そう言えばキミは、そういう謙虚なヤツだったな」

面と向かって褒められるのは、どうも恥ずかしくなってしまう。
下を向いて頭を掻くと、そんな俺にレイチェルが小さく笑った。


「・・・おい、レイチェル。俺は?」


リカルドが手を上げると、みんなの視線が一斉に集まった。
そう言えば・・・リカルドだけ何も言われていなかった。


「・・・・・リカルド、キミは・・・いつも気持ち良い食べっぷりだよな!」
「おい!ふざけてんじゃねぇぞ!俺に感謝はねぇのかよ!?」


困ったような笑みを浮かべて、思いついたように両手を打ち合わせて話すレイチェルに、リカルドが掴みかからんと詰め寄る。

「ははは、ごめんごめん!悪ふざけが過ぎたね、緊張を解そうとおもってさ。リカルドはたまに私にお菓子くれる時あるよね?あれ、私が疲れてるなって思ったんでしょ?ほらよって感じで一方的に渡してくるけど、私はキミのぶっきらぼうな言い方の中にある優しさをちゃんと見てるよ。リカルド、ありがとう」

「なっ!お、おまえ・・・ち、ちげぇよ!腹いっぱいだったから・・・」

ふいにリカルドの目をしっかりと見て、感謝の気持ちを口にするレイチェル。
純粋な謝意をストレートに向けられ、リカルドは予想外だったのかしどろもどろになってしまう。

「リカルドが・・・お腹いっぱい?」

腹いっぱいと言うリカルドの言葉に、ユーリが目を丸くする。

「う、うっせぇよ!ったく、調子狂うな・・・あぁ、ほら、もう時間だろ?ぼけっとしてていいのかよ?」

頭をガシガシと乱暴に掻いてリカルドが背中を向けると、レイチェルはクスリと笑って、俺達一人一人の顔を見た。


「みんな・・・私は明日も明後日も、来年も・・・これからもずっとみんなと一緒に働きたい。だから、全員で生きて帰ろう」



「おう!もちろんだぜ!」
ジャレット・キャンベル。25歳、体力型。

「私も同じ気持ちよ。レイチェル」
シルヴィア・メルウィー。24歳、黒魔法使い。

「僕もみんなと一緒じゃないと嫌だ。だからみんな、気をつけて」
ジーン・ハワード。22歳、青魔法使い。

「アタシも誰か欠けるなんて嫌だね。みんなちゃんと帰ってくんだよ」
ケイト・サランディ。20歳、青魔法使い。

「まさか俺達がこんな戦いをする事になるなんてな。分からねぇもんだな」
ミゼル・アルバラード。25歳、黒魔法使い。

「・・・負けない」
ユーリ・ロサリオ。18歳、白魔法使い。

「私達全員で帰って、また一緒にお仕事しようね」
カチュア・バレンタイン。18歳、白魔法使い。

「へいへい、まぁ俺も死にたくはねぇしな。しっかり生き残ってやんよ」
リカルド・ガルシア。16歳、体力型。


「レイチェルも生き残るんだぞ?」
坂木 新。22歳、体力型。


「フッ・・・あぁ、もちろんだ。では、行くか」
レイチェル・エリオット。19歳、体力型。レイジェス副店長。



「隊長・・・良いチームですね」
モルグ・フェンテス。29歳、体力型。治安部隊。

「クックック、あぁ、よくまとまってる。俺達も治安部隊をこうしていかねぇとな。フェンテス、気合入れていこうぜ」
ヴァン・エストラーダ。32歳、体力型。治安部隊隊長。



6時00分。クインズベリー城、突入。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...