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427 誰を相手に ②
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四勇士の相手も、自分達が戦いやすいと思われる相手に、それぞれが話し合い手を挙げていった。
「それじゃあ、僕とユーリが組ませてもらうよ」
「ん、ジーンとなら安心」
ジーンとユーリは四勇士黒魔法使いを。
「俺とケイトか、お手柔らかに頼むぜ」
「ジーンがいいんだけど、青魔法使い同士では組めないか」
ミゼルさんとケイトは四勇士白魔法使いを。
「おいおいカチュア、俺の足引っ張んなよ?」
「頑張るよ、リカルド君」
リカルドとカチュアは四勇士青魔使いを。
「んじゃ、俺とシーちゃんでペアか」
「ジャレット、ちゃんと護ってよ?」
ジャレットさんとシルヴィアさんは、四勇士唯一の体力型、レオ・アフマダリエフを。
あくまで暫定的な取り決めだ。実際こちらで決めた通りの相手と戦えるという保障は無い。
だけどこうして決めておけば、いざその場面になった時に迷わず動く事ができるのは大きい。
そしてエリザ様だが、俺達と一緒に行動するようにという王妃様の命令通り、クインズベリー城の中へ連れて行くという事で決まった。
実際城の外で待たせるほうが危険だろう。
偽国王の手の者に狙われる可能性を考えれば、一緒の方がいい。
そして玉座の間で、王妃様の護衛リーザ・アコスタと合流し、そのまま偽国王の寝室まで向かう。
この流れを全員が把握したところで、ヴァンが確認を入れた。
「俺達が王妃様と合流したら、一気に偽国王の寝室に乗り込み、真実の花の薬を使い正体を暴く。これでいいんだな?」
「その通りだ。あくまで全てスムーズにいった場合だがな。不測の事態が起きた場合、今回はゴールド騎士と四勇士だな、ヤツらが立ちふさがるのならば、決めた通り戦うんだ」
レイチェルはそこまで話すと俺に体を向け、その黒い瞳で俺をじっと見つめてきた。
睨まれているわけではないが、決して逆らう事ができないような強い力を感じさせられた。
「アラタ・・・いいか、よく聞け。偽国王は闇の力を使う。倒すにはキミの力が絶対に必要だ。だから私達は、キミが王妃様のもとにたどり着けるよう全力でキミを護る。途中の敵は私達が全て引き受ける。光の力は消耗が大きすぎる。だからその力は偽国王を倒す事だけに使うんだ。分かったな?」
「・・・あぁ、分かった」
そう答えるしかなかった。ブロンズやシルバーの騎士、警備の兵士達が現れても俺は一切手を出さず、偽国王まで可能な限り体力を温存するという事になっている。
理屈は分かるが、みんなが戦うのに俺だけそれでいいのだろうか?
俺の表情から、俺が納得しきれていない事を見て取ったのだろう。
レイチェルは表情を緩めると、テーブル越しに俺の前に身を乗り出し、俺の額を指先で突いた。
「まったく・・・キミってヤツは顔に出過ぎだぞ?何を考えているかなんて一目で丸わかりだ。私達が心配なのだろう?自分だけ最後まで護ってもらいながら進んでいいのかと?そんな事を考えているんじゃないのかい?」
図星だった。
俺が言葉に詰まってしまうと、レイチェルは声を上げて笑い出した。
「アッハハハ!おい、ジャレット、何か言ってやりなよ?アラタは私達じゃ頼りないと思ってるようだぞ?」
「あ~?おいアラやん!そうなのかよ?」
ジャレットさんは俺を睨み、少し怒気をはらんだ声色で身を乗り出してきた。
「い、いや!そんな事はないですよ!」
「おいおいアラタ、俺らも店長に鍛えられてっから、それなりにやるんだぜ?」
しどろもどろになる俺に、ミゼルさんも少し呆れた様子で言葉を挟んで来た。
「そうよ、アラタ君。私達だってけっこう強いのよ?それに何もしないわけじゃなくて、アラタ君の出番が最後ってだけなのよ?だからアラタ君は自分の戦いに集中する事!いい?」
シルヴィアさんは俺を諭すように顔の前に指を立てて見せた。
その有無を言わせぬ迫力に俺が、はい、と頷くと、みんながクスクスと笑い出した。
「そうよアラタ君、それでいいの。私達をもっと頼って任せてみなさいね?」
「そうだぜアラやん、お前が俺を心配するなんざ10年早いんだよ」
「アラタ、そういうこった、お前の性格は分かったつもりだけどよ、お前は俺ら先輩に護られてりゃいいんだよ」
みんなの言葉に俺は何と返していいか分からず、ポリポリ頭を掻いて俯いてしまった。
ジーンやケイト、ユーリとカチュアは口を挟んでこなかったが、なにやら微笑ましいものを見る目を俺に向けていた。
「さてみんな、このくらいで勘弁してやろうか。アラタ、この前も言ったが、キミは自分の事より人のために力を使える男だ。でもね、なんでもかんでもやらなきゃとは考えなくていい。それぞれに役割があるという事だよ。いいね?」
「・・・あぁ、ごめん。レイチェルの言う通りだ。そうだな・・・俺は俺のやるべき事をやる。俺は偽国王を倒す事に全力をつくすよ」
本当にすごいな。
まだ19歳、日本では成人前だ。それなのに俺なんかよりずっと大人で、みんなを引っ張っていく力を持っている。
それにジャレットさん達も、こうして俺の固まった考え方を解(ほぐ)してくれる。優しい先輩だ。
集中しよう。
偽国王の闇の力に対抗するには、やはり俺の光の力が必要なんだ。
俺にしかできない。
それならば、俺はできる限り力を温存しなければならない。
決意を表すように、俺は拳を握り締めて前に出した。
レイチェルはまた俺の顔を少し見つめると、今度は納得したようにニコリと笑って、俺の拳に自分の拳を合わせた。
「期待してるよ。アラタ」
「それじゃあ、僕とユーリが組ませてもらうよ」
「ん、ジーンとなら安心」
ジーンとユーリは四勇士黒魔法使いを。
「俺とケイトか、お手柔らかに頼むぜ」
「ジーンがいいんだけど、青魔法使い同士では組めないか」
ミゼルさんとケイトは四勇士白魔法使いを。
「おいおいカチュア、俺の足引っ張んなよ?」
「頑張るよ、リカルド君」
リカルドとカチュアは四勇士青魔使いを。
「んじゃ、俺とシーちゃんでペアか」
「ジャレット、ちゃんと護ってよ?」
ジャレットさんとシルヴィアさんは、四勇士唯一の体力型、レオ・アフマダリエフを。
あくまで暫定的な取り決めだ。実際こちらで決めた通りの相手と戦えるという保障は無い。
だけどこうして決めておけば、いざその場面になった時に迷わず動く事ができるのは大きい。
そしてエリザ様だが、俺達と一緒に行動するようにという王妃様の命令通り、クインズベリー城の中へ連れて行くという事で決まった。
実際城の外で待たせるほうが危険だろう。
偽国王の手の者に狙われる可能性を考えれば、一緒の方がいい。
そして玉座の間で、王妃様の護衛リーザ・アコスタと合流し、そのまま偽国王の寝室まで向かう。
この流れを全員が把握したところで、ヴァンが確認を入れた。
「俺達が王妃様と合流したら、一気に偽国王の寝室に乗り込み、真実の花の薬を使い正体を暴く。これでいいんだな?」
「その通りだ。あくまで全てスムーズにいった場合だがな。不測の事態が起きた場合、今回はゴールド騎士と四勇士だな、ヤツらが立ちふさがるのならば、決めた通り戦うんだ」
レイチェルはそこまで話すと俺に体を向け、その黒い瞳で俺をじっと見つめてきた。
睨まれているわけではないが、決して逆らう事ができないような強い力を感じさせられた。
「アラタ・・・いいか、よく聞け。偽国王は闇の力を使う。倒すにはキミの力が絶対に必要だ。だから私達は、キミが王妃様のもとにたどり着けるよう全力でキミを護る。途中の敵は私達が全て引き受ける。光の力は消耗が大きすぎる。だからその力は偽国王を倒す事だけに使うんだ。分かったな?」
「・・・あぁ、分かった」
そう答えるしかなかった。ブロンズやシルバーの騎士、警備の兵士達が現れても俺は一切手を出さず、偽国王まで可能な限り体力を温存するという事になっている。
理屈は分かるが、みんなが戦うのに俺だけそれでいいのだろうか?
俺の表情から、俺が納得しきれていない事を見て取ったのだろう。
レイチェルは表情を緩めると、テーブル越しに俺の前に身を乗り出し、俺の額を指先で突いた。
「まったく・・・キミってヤツは顔に出過ぎだぞ?何を考えているかなんて一目で丸わかりだ。私達が心配なのだろう?自分だけ最後まで護ってもらいながら進んでいいのかと?そんな事を考えているんじゃないのかい?」
図星だった。
俺が言葉に詰まってしまうと、レイチェルは声を上げて笑い出した。
「アッハハハ!おい、ジャレット、何か言ってやりなよ?アラタは私達じゃ頼りないと思ってるようだぞ?」
「あ~?おいアラやん!そうなのかよ?」
ジャレットさんは俺を睨み、少し怒気をはらんだ声色で身を乗り出してきた。
「い、いや!そんな事はないですよ!」
「おいおいアラタ、俺らも店長に鍛えられてっから、それなりにやるんだぜ?」
しどろもどろになる俺に、ミゼルさんも少し呆れた様子で言葉を挟んで来た。
「そうよ、アラタ君。私達だってけっこう強いのよ?それに何もしないわけじゃなくて、アラタ君の出番が最後ってだけなのよ?だからアラタ君は自分の戦いに集中する事!いい?」
シルヴィアさんは俺を諭すように顔の前に指を立てて見せた。
その有無を言わせぬ迫力に俺が、はい、と頷くと、みんながクスクスと笑い出した。
「そうよアラタ君、それでいいの。私達をもっと頼って任せてみなさいね?」
「そうだぜアラやん、お前が俺を心配するなんざ10年早いんだよ」
「アラタ、そういうこった、お前の性格は分かったつもりだけどよ、お前は俺ら先輩に護られてりゃいいんだよ」
みんなの言葉に俺は何と返していいか分からず、ポリポリ頭を掻いて俯いてしまった。
ジーンやケイト、ユーリとカチュアは口を挟んでこなかったが、なにやら微笑ましいものを見る目を俺に向けていた。
「さてみんな、このくらいで勘弁してやろうか。アラタ、この前も言ったが、キミは自分の事より人のために力を使える男だ。でもね、なんでもかんでもやらなきゃとは考えなくていい。それぞれに役割があるという事だよ。いいね?」
「・・・あぁ、ごめん。レイチェルの言う通りだ。そうだな・・・俺は俺のやるべき事をやる。俺は偽国王を倒す事に全力をつくすよ」
本当にすごいな。
まだ19歳、日本では成人前だ。それなのに俺なんかよりずっと大人で、みんなを引っ張っていく力を持っている。
それにジャレットさん達も、こうして俺の固まった考え方を解(ほぐ)してくれる。優しい先輩だ。
集中しよう。
偽国王の闇の力に対抗するには、やはり俺の光の力が必要なんだ。
俺にしかできない。
それならば、俺はできる限り力を温存しなければならない。
決意を表すように、俺は拳を握り締めて前に出した。
レイチェルはまた俺の顔を少し見つめると、今度は納得したようにニコリと笑って、俺の拳に自分の拳を合わせた。
「期待してるよ。アラタ」
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