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426 誰を相手に ①
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王妃様との話し合いが終わると。あらためて今後の事を話し合うために、それぞれが事務所のテーブル席に腰を下した。
「お前達、フェリックスとジョシュアは知ってるよな?」
ヴァンがみんなに目を向け、ゴールド騎士二人の名前を確認するように口にした。
「あぁ、ゴールド騎士なら五人全員知っているぞ。フェリックス・ダラキアンとアルベルト・ジョシュア。特にこの二人は有名人だからな」
レイチェルが二人のフルネームを答えると、席についていた他のみんなも同意するように頷いた。
どうやら国民全員が知っているくらいの騎士のようだ。
「まぁ、そうだよな。あの二人は貴族って事を鼻にかけないから平民にも人気がある。実力も確かなものだし、知らないヤツなんていねぇよな。騎士団の模擬戦であいつらの戦いを見た事があるが、シルバーの騎士じゃまるで相手になってなかった。本物のゴールドは強さの底が見えねぇよ」
「ヴァン、お前がそこまで言う程なのか?」
マルゴンには及ばないが、ヴァンは治安部隊の隊長を務める程の男だ。
しかし、ゴールド騎士を語るその口ぶりからは、自分では到底及ばないと言っているように聞こえた。
「・・・クックック、あぁ・・・ハッキリ言って俺よりはるかに強い。強いが・・・勝負で勝てるかどうかってのは、また別の話しだよな?もし俺がゴールドのどっちかと戦う事になったら、なんとでもしてみせるぜ」
そう言ってヴァンは不敵に笑う。
自分よりはるかに強いと言葉にしているが、その目には負ける事なんてまるで考えていない自信が見えた。
「それにしても、四勇士の事がけっこう分かってきたな。体力型に、白、黒、青の魔法使いが一人づつか、実にバランスの良い連中じゃねぇか」
ジャレットさんが腕を組んで、全員に話しかけるように口を開いた。
「まぁ、そうだな。これまでほとんど情報のなかった連中だけど、さすが王妃様だ。これで対策も立てられる」
ミゼルさんもジャレットさんの言葉を拾い、話をつなげて来た。
「単純な計算だけど、ゴールド騎士が二人と四勇士で、向こうの主力は六人でしょ?私達はヴァンとフェンテスを入れれば12人、数の上では倍いるから有利じゃない?あ、みんなお腹空いてるでしょ?遠慮しないで食べてね」
シルヴィアさんが手作りパンをテーブルの上に置きながら、会話に入って来た。
大きなバスケットをから次々に取り出している。軽く20~30個はありそうだ。
チョコパンにシュガートースト、マヨコーンパンにレーズンパン、ハムとトマトのサンドイッチもある。
そう言えば昼休憩の時、レイチェルとなにか話していて長めに外出していたな。その時に作ってきたのだろう。
「ありがとうございます。いただきます」
俺はホットドックを手に取った。前にも食べた事があるが、シルヴィアさんのホットドックはウインナーがめちゃくちゃ美味いのだ。日本で食べたあらびきウインナーは何だったんだろう?というレベルの差だ。
「ん~!やっぱり美味い!シルヴィアさんのホットドックは最高ですね!」
心からの感想を言葉にすると、シルヴィアさんはニッコリと笑って、嬉しさを表すように両手を合わせた。
「アラタ君、嬉しい事言ってくれるわね!作り甲斐があるわ!ね、リカルド?」
「え?なんでそこで俺にふるの?」
リカルドもコロッケパンを持っている。夕飯はまだなんだし、いくら飽きたと言っても。リカルドだって腹が減ればパンは食べるのだ。
パンを包装していた紙が3~4枚置いてあるという事は、この僅かな時間でそれだけ食べたという事だろう。リカルド、そんなに食べたのなら、シルヴィアさんも感想を求めて当然じゃないか?
「アラタ君は、美味しいって言ってくれるのよ?」
「まぁ、兄ちゃんだからな」
「アラタ君は言ってくれるのよ?」
「お、おう、だから、なんだって・・・」
「ねぇ?」
「・・・う、うまい・・・よ?」
「あら、ありがとう!リカルドも美味しいって言ってくれるのね!」
満面の笑みを浮かべるシルヴィアさんに反して、引きつった顔のリカルドがとても印象的だった。
みんなでシルヴィアさんのパンを食べた後は、再び話し合いが再開された。
治安部隊との連携や、戦闘になった場合誰が誰を相手にするか、エリザ様の安全の確保や、偽国王の寝室に着いてからの事だ。
まず、治安部隊との連携だが、今回の件を知っているのはヴァン達隊長クラスだけらしい。
この街の治安部隊隊員は全部で300人だが、どこで情報が洩れるか分からないから、限られた一部の人間だけにしか話さない事にしたそうだ。
昼間レイチェルが協会に行った時、ヴァンと相談してそう決めたらしい。
ただし、レイジェスとの連絡係になっている見習い隊員のエルウィン・レブロンだけは別のようだ。
レイチェルが直接事情を説明して、口留めしてあると言っていた。
現在治安部隊はヴァンとフェンテスがここに来て不在なため、今はカリウスさんが仕切っている。
カリウスさんと他数名の事情を知っている隊長クラスと、何も知らない隊員達、もしそれで何かがあった場合には、間に入りうまく取り持つ事がエルウィンの役目だ。
「カリウスは今回の戦いには来れないだろう。俺とフェンテスがいないのに、カリウスまでってなると、隊のまとまりが効かなくなる」
しかたない事だがヴァンからそう言われ、カリウスさんは戦力としては数えられなくなった。
先頭になった時のそれぞれの相手だが、これについてはハッキリとは決める事ができなかった。
戦う事になるとしても、どういう状況でそうなるか予想ができないからだ。
ただ、基本的行動という形で、暫定的な相手を決める事はできた。
まず、ゴールド騎士の二人だが、ヴァンがどちらでもいいから一人は自分に任せて欲しいと手を挙げた。そしてフェンテスもヴァンと一緒に戦うと続いたのだ。
つまり、二対一だ。
二対一という事だが、丁度俺達の人数が敵の倍あるため、自然と二人一組で戦うという事になった。
これはレイチェルの一言が大きい。
敵の六人は全員格上だと考えておけ。そう言ったのだ。
いつも憎まれ口を叩くリカルドでさえ、そうかもしれねぇな。と言って頷いたので、反対する者は誰もいなかった。
そしてもう一人のゴールド騎士だが、これはレイチェルが一人で相手をする事になった。
俺も一緒に戦うと言ったのだが、レイチェルは俺の光の力は偽国王打倒のために残しておくべきだと言い、もし本当にゴールド騎士と戦う場面になったら、自分が一人でやると宣言した。
二人一組だろう?と言っても、自分だけは例外だと言い切る。
そんなわけにはいかないと反論するが、最優先は偽国王の打倒だと諭されると、何も言い返せなくなってしまう。
「安心しろ。私は強いんだよ?相手が騎士の頂点ゴールドだったとしても、負けはしないさ」
そう言ってレイチェルは俺の顔に右拳を寸止めして見せた。
「・・・速いな」
ボクサーの俺が反応できない程の速さだった。
ボクシングのパンチとは質が違うものだったけど、こう力を見せつけられては何も反論できない。
「状況によるところはあるよ。だけど、基本的には私に任せてくれないかい?」
「・・・レイチェルには敵わないな・・・分かった。レイチェルの指示に従うよ」
レイチェルだけが、ゴールド騎士と一対一になる。
正直なところ心配だ。だけどレイチェルが任せろというのなら任せよう。
俺達のリーダー、レイチェルならきっと大丈夫だ。
「お前達、フェリックスとジョシュアは知ってるよな?」
ヴァンがみんなに目を向け、ゴールド騎士二人の名前を確認するように口にした。
「あぁ、ゴールド騎士なら五人全員知っているぞ。フェリックス・ダラキアンとアルベルト・ジョシュア。特にこの二人は有名人だからな」
レイチェルが二人のフルネームを答えると、席についていた他のみんなも同意するように頷いた。
どうやら国民全員が知っているくらいの騎士のようだ。
「まぁ、そうだよな。あの二人は貴族って事を鼻にかけないから平民にも人気がある。実力も確かなものだし、知らないヤツなんていねぇよな。騎士団の模擬戦であいつらの戦いを見た事があるが、シルバーの騎士じゃまるで相手になってなかった。本物のゴールドは強さの底が見えねぇよ」
「ヴァン、お前がそこまで言う程なのか?」
マルゴンには及ばないが、ヴァンは治安部隊の隊長を務める程の男だ。
しかし、ゴールド騎士を語るその口ぶりからは、自分では到底及ばないと言っているように聞こえた。
「・・・クックック、あぁ・・・ハッキリ言って俺よりはるかに強い。強いが・・・勝負で勝てるかどうかってのは、また別の話しだよな?もし俺がゴールドのどっちかと戦う事になったら、なんとでもしてみせるぜ」
そう言ってヴァンは不敵に笑う。
自分よりはるかに強いと言葉にしているが、その目には負ける事なんてまるで考えていない自信が見えた。
「それにしても、四勇士の事がけっこう分かってきたな。体力型に、白、黒、青の魔法使いが一人づつか、実にバランスの良い連中じゃねぇか」
ジャレットさんが腕を組んで、全員に話しかけるように口を開いた。
「まぁ、そうだな。これまでほとんど情報のなかった連中だけど、さすが王妃様だ。これで対策も立てられる」
ミゼルさんもジャレットさんの言葉を拾い、話をつなげて来た。
「単純な計算だけど、ゴールド騎士が二人と四勇士で、向こうの主力は六人でしょ?私達はヴァンとフェンテスを入れれば12人、数の上では倍いるから有利じゃない?あ、みんなお腹空いてるでしょ?遠慮しないで食べてね」
シルヴィアさんが手作りパンをテーブルの上に置きながら、会話に入って来た。
大きなバスケットをから次々に取り出している。軽く20~30個はありそうだ。
チョコパンにシュガートースト、マヨコーンパンにレーズンパン、ハムとトマトのサンドイッチもある。
そう言えば昼休憩の時、レイチェルとなにか話していて長めに外出していたな。その時に作ってきたのだろう。
「ありがとうございます。いただきます」
俺はホットドックを手に取った。前にも食べた事があるが、シルヴィアさんのホットドックはウインナーがめちゃくちゃ美味いのだ。日本で食べたあらびきウインナーは何だったんだろう?というレベルの差だ。
「ん~!やっぱり美味い!シルヴィアさんのホットドックは最高ですね!」
心からの感想を言葉にすると、シルヴィアさんはニッコリと笑って、嬉しさを表すように両手を合わせた。
「アラタ君、嬉しい事言ってくれるわね!作り甲斐があるわ!ね、リカルド?」
「え?なんでそこで俺にふるの?」
リカルドもコロッケパンを持っている。夕飯はまだなんだし、いくら飽きたと言っても。リカルドだって腹が減ればパンは食べるのだ。
パンを包装していた紙が3~4枚置いてあるという事は、この僅かな時間でそれだけ食べたという事だろう。リカルド、そんなに食べたのなら、シルヴィアさんも感想を求めて当然じゃないか?
「アラタ君は、美味しいって言ってくれるのよ?」
「まぁ、兄ちゃんだからな」
「アラタ君は言ってくれるのよ?」
「お、おう、だから、なんだって・・・」
「ねぇ?」
「・・・う、うまい・・・よ?」
「あら、ありがとう!リカルドも美味しいって言ってくれるのね!」
満面の笑みを浮かべるシルヴィアさんに反して、引きつった顔のリカルドがとても印象的だった。
みんなでシルヴィアさんのパンを食べた後は、再び話し合いが再開された。
治安部隊との連携や、戦闘になった場合誰が誰を相手にするか、エリザ様の安全の確保や、偽国王の寝室に着いてからの事だ。
まず、治安部隊との連携だが、今回の件を知っているのはヴァン達隊長クラスだけらしい。
この街の治安部隊隊員は全部で300人だが、どこで情報が洩れるか分からないから、限られた一部の人間だけにしか話さない事にしたそうだ。
昼間レイチェルが協会に行った時、ヴァンと相談してそう決めたらしい。
ただし、レイジェスとの連絡係になっている見習い隊員のエルウィン・レブロンだけは別のようだ。
レイチェルが直接事情を説明して、口留めしてあると言っていた。
現在治安部隊はヴァンとフェンテスがここに来て不在なため、今はカリウスさんが仕切っている。
カリウスさんと他数名の事情を知っている隊長クラスと、何も知らない隊員達、もしそれで何かがあった場合には、間に入りうまく取り持つ事がエルウィンの役目だ。
「カリウスは今回の戦いには来れないだろう。俺とフェンテスがいないのに、カリウスまでってなると、隊のまとまりが効かなくなる」
しかたない事だがヴァンからそう言われ、カリウスさんは戦力としては数えられなくなった。
先頭になった時のそれぞれの相手だが、これについてはハッキリとは決める事ができなかった。
戦う事になるとしても、どういう状況でそうなるか予想ができないからだ。
ただ、基本的行動という形で、暫定的な相手を決める事はできた。
まず、ゴールド騎士の二人だが、ヴァンがどちらでもいいから一人は自分に任せて欲しいと手を挙げた。そしてフェンテスもヴァンと一緒に戦うと続いたのだ。
つまり、二対一だ。
二対一という事だが、丁度俺達の人数が敵の倍あるため、自然と二人一組で戦うという事になった。
これはレイチェルの一言が大きい。
敵の六人は全員格上だと考えておけ。そう言ったのだ。
いつも憎まれ口を叩くリカルドでさえ、そうかもしれねぇな。と言って頷いたので、反対する者は誰もいなかった。
そしてもう一人のゴールド騎士だが、これはレイチェルが一人で相手をする事になった。
俺も一緒に戦うと言ったのだが、レイチェルは俺の光の力は偽国王打倒のために残しておくべきだと言い、もし本当にゴールド騎士と戦う場面になったら、自分が一人でやると宣言した。
二人一組だろう?と言っても、自分だけは例外だと言い切る。
そんなわけにはいかないと反論するが、最優先は偽国王の打倒だと諭されると、何も言い返せなくなってしまう。
「安心しろ。私は強いんだよ?相手が騎士の頂点ゴールドだったとしても、負けはしないさ」
そう言ってレイチェルは俺の顔に右拳を寸止めして見せた。
「・・・速いな」
ボクサーの俺が反応できない程の速さだった。
ボクシングのパンチとは質が違うものだったけど、こう力を見せつけられては何も反論できない。
「状況によるところはあるよ。だけど、基本的には私に任せてくれないかい?」
「・・・レイチェルには敵わないな・・・分かった。レイチェルの指示に従うよ」
レイチェルだけが、ゴールド騎士と一対一になる。
正直なところ心配だ。だけどレイチェルが任せろというのなら任せよう。
俺達のリーダー、レイチェルならきっと大丈夫だ。
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