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420 クリスの宿屋で ⑤
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男部屋は雑魚寝だった。
ベットのある部屋もあるが、みんな安くていいと枕と毛布だけを借りて床に転がっている。
畳にして八畳分くらいはあるだろうが、レイジェスの男5人で寝ころべばあまりスペースに余裕はない。
ちなみにエルちゃん一家は別に個室を取ってある。
レイチェルが、まだ子供のエルちゃんは、家族そろって一部屋の方が安心だろうと配慮したからだ。
宿代は自分達で出すと言われたらしいが、経費で落とすからと言って話しをつけたそうだ。
「アラタ、起きてるか?」
酒が入っているからか、多少窮屈でも横になるとすぐに瞼が落ちそうになる。
これはすんなり寝れそうだと思ったところで、隣で横になっていたジーンが小声で話しかけて来た。
「ん・・・あぁ・・・ジーン、どう、したんだ?」
無理やり意識を繋ぎ留め、体を反転させてジーンに顔を向けると、ジーンは少しすまなそうな声を出した。
「あ、寝る寸前だったかな?邪魔してごめんよ」
「いや・・・いい・・・んで、どうした?」
「・・・うん、あのさ・・・結婚おめでとう」
「・・・おいおい、店でも飲み会の時も、みんな何度もお祝いの言葉くれたじゃないか?そう何回も言われると俺も困るぞ」
眠気が飛んでだんだん頭が冴えてきた。
発光石も消してあるから部屋は真っ暗闇だが、時間と共に暗さに目も慣れてくる。
ジーンにも何回もお祝いの言葉をもらった。
俺は少し冗談めかして言ったのだが、ジーンは俺に顔を向けず、天井を見つめたまま言葉を続けた。
「・・・あのさ、僕もケイトにプロポーズするよ」
「・・・え!?」
予期せぬ言葉に、思わず声が大きくなった。
慌てて回りを見るが、幸いみんなぐっすり寝てて誰も起きた様子はない。
「・・・ふぅ~、いや・・・しかし、そっか。とうとう気持ちが固まったんだな?」
ひそひそと小声で話しかけると、ジーンは小さく笑って俺に顔を向けた。
「うん・・・本当についさっきなんだけどね。今日、アラタとカチュアを見てたら、羨ましくなってさ。カチュアは本当に幸せそうだ。アラタ・・・僕もね、ケイトをあんなふうに喜ばせてあげたいって思ったんだ。以前話した僕とケイトの関係を覚えているかな?ケイトが僕に依存してるって・・・」
俺が黙って頷くと、ジーンは言葉を続けた。
「僕はケイトには自分の事ももっと考えて欲しいって、そう思うから結婚にはなかなか進めないでいたんだ。でも、難しく考え過ぎていたのかもしれない。僕もケイトを支えたい、その気持ちがあるのなら結婚して二人で同じ幸せを持てばいいじゃないか・・・そう思ったんだ」
「ジーン・・・そっか。うん、良かったよ。俺、ジーンとケイトにも絶対幸せになってほしいからさ」
俺はジーンがケイトとの結婚を決めた事がとても嬉しかった。
ジーンは俺がこの世界に来て、初めてできた同い年の男友達だ。
ケイトとの関係で悩んでいるのは知っていたから、話しを聞くくらいしかできないけど、なんとか前向きな気持ちになってくれればと思っていたけ。
だからこの決断は本当に嬉しく思う。
「あはは、僕の決心がついたのは、アラタ・・・キミとカチュアのおかげだよ。本当にありがとう」
「なんか、そう言われると照れるな。ケイト、きっとすごい喜ぶぞ」
ジーンは、うん、と笑って頷いてくれた。
前にパスタ屋に行った時も、ケイトはとにかくジーンと結婚したいと言っていた。
いつジーンがプロポーズするか分からないけど、ケイトの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
それから最近の俺とカチュアの事や、ジーンとケイトが家だとどんな感じなのかとか、仕事以外でのそれぞれの話しをひとしきりして、そろそろ寝るかという空気になった時、ジーンはふいに真顔になって俺を見た。
「・・・アラタ、みんなそうだけど、僕はケイトを、アラタはカチュアを護らないといけない。だから、僕達も生き残って勝つんだ」
「・・・ジーン・・・・あぁ、そうだな・・・」
きっとジーンは、これが言いたかったんだろう。
俺ももう一人の体ではない。カチュアを護っていくんだ。
前にカチュアに、自分の事も大事にしてと言われた事がある。
「俺もジーンも・・・レイジェス全員が生き残るんだ」
俺の返事にジーンは満足そうに笑うと、そろそろ寝よう・・・そう言って目を閉じた。
ベットのある部屋もあるが、みんな安くていいと枕と毛布だけを借りて床に転がっている。
畳にして八畳分くらいはあるだろうが、レイジェスの男5人で寝ころべばあまりスペースに余裕はない。
ちなみにエルちゃん一家は別に個室を取ってある。
レイチェルが、まだ子供のエルちゃんは、家族そろって一部屋の方が安心だろうと配慮したからだ。
宿代は自分達で出すと言われたらしいが、経費で落とすからと言って話しをつけたそうだ。
「アラタ、起きてるか?」
酒が入っているからか、多少窮屈でも横になるとすぐに瞼が落ちそうになる。
これはすんなり寝れそうだと思ったところで、隣で横になっていたジーンが小声で話しかけて来た。
「ん・・・あぁ・・・ジーン、どう、したんだ?」
無理やり意識を繋ぎ留め、体を反転させてジーンに顔を向けると、ジーンは少しすまなそうな声を出した。
「あ、寝る寸前だったかな?邪魔してごめんよ」
「いや・・・いい・・・んで、どうした?」
「・・・うん、あのさ・・・結婚おめでとう」
「・・・おいおい、店でも飲み会の時も、みんな何度もお祝いの言葉くれたじゃないか?そう何回も言われると俺も困るぞ」
眠気が飛んでだんだん頭が冴えてきた。
発光石も消してあるから部屋は真っ暗闇だが、時間と共に暗さに目も慣れてくる。
ジーンにも何回もお祝いの言葉をもらった。
俺は少し冗談めかして言ったのだが、ジーンは俺に顔を向けず、天井を見つめたまま言葉を続けた。
「・・・あのさ、僕もケイトにプロポーズするよ」
「・・・え!?」
予期せぬ言葉に、思わず声が大きくなった。
慌てて回りを見るが、幸いみんなぐっすり寝てて誰も起きた様子はない。
「・・・ふぅ~、いや・・・しかし、そっか。とうとう気持ちが固まったんだな?」
ひそひそと小声で話しかけると、ジーンは小さく笑って俺に顔を向けた。
「うん・・・本当についさっきなんだけどね。今日、アラタとカチュアを見てたら、羨ましくなってさ。カチュアは本当に幸せそうだ。アラタ・・・僕もね、ケイトをあんなふうに喜ばせてあげたいって思ったんだ。以前話した僕とケイトの関係を覚えているかな?ケイトが僕に依存してるって・・・」
俺が黙って頷くと、ジーンは言葉を続けた。
「僕はケイトには自分の事ももっと考えて欲しいって、そう思うから結婚にはなかなか進めないでいたんだ。でも、難しく考え過ぎていたのかもしれない。僕もケイトを支えたい、その気持ちがあるのなら結婚して二人で同じ幸せを持てばいいじゃないか・・・そう思ったんだ」
「ジーン・・・そっか。うん、良かったよ。俺、ジーンとケイトにも絶対幸せになってほしいからさ」
俺はジーンがケイトとの結婚を決めた事がとても嬉しかった。
ジーンは俺がこの世界に来て、初めてできた同い年の男友達だ。
ケイトとの関係で悩んでいるのは知っていたから、話しを聞くくらいしかできないけど、なんとか前向きな気持ちになってくれればと思っていたけ。
だからこの決断は本当に嬉しく思う。
「あはは、僕の決心がついたのは、アラタ・・・キミとカチュアのおかげだよ。本当にありがとう」
「なんか、そう言われると照れるな。ケイト、きっとすごい喜ぶぞ」
ジーンは、うん、と笑って頷いてくれた。
前にパスタ屋に行った時も、ケイトはとにかくジーンと結婚したいと言っていた。
いつジーンがプロポーズするか分からないけど、ケイトの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
それから最近の俺とカチュアの事や、ジーンとケイトが家だとどんな感じなのかとか、仕事以外でのそれぞれの話しをひとしきりして、そろそろ寝るかという空気になった時、ジーンはふいに真顔になって俺を見た。
「・・・アラタ、みんなそうだけど、僕はケイトを、アラタはカチュアを護らないといけない。だから、僕達も生き残って勝つんだ」
「・・・ジーン・・・・あぁ、そうだな・・・」
きっとジーンは、これが言いたかったんだろう。
俺ももう一人の体ではない。カチュアを護っていくんだ。
前にカチュアに、自分の事も大事にしてと言われた事がある。
「俺もジーンも・・・レイジェス全員が生き残るんだ」
俺の返事にジーンは満足そうに笑うと、そろそろ寝よう・・・そう言って目を閉じた。
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