異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
419 / 1,370

418 クリスの宿屋で ③

しおりを挟む
「あ!ユーリお姉ちゃん!皆さんこんばんは!」

クリスさんに通された部屋に入ると、先にテーブル席に着いていたエルちゃんが、弾んだ声を上げて駆け寄ってきた。
やっぱりユーリに一番なついていて、ユーリの体にぶつかるように飛びついた。

「ん、エルお待たせ」

エルちゃんはいつも通り、金色の髪を青のリボンでポニーテールに結んでいる。
金茶色の瞳は嬉しそうにユーリを見ている。

「みなさん、本日は私達までお誘いいただいて、ありがとうございます」

エルちゃんの後ろに立ったご両親が、お礼の言葉を口にしてくる。
二人ともとても雰囲気が柔らかい。両親ともに金色の髪で、エルちゃんはお母さんによく似ている。

レイチェルが前に出て、エルちゃんのご両親に簡単に挨拶をすると、後はそれぞれが勝手に席についた。

日本の掘りごたつのような席だった。
テーブルの下の床が抜けていて、腰を下すと足をそのまま床下にだらりと伸ばす事ができる。
席も革張りのソファになっていて、背もたれはないけれど座り心地が良い。

壁は板張りだけれど黒く塗られていて、なんとなく高そうな樹を使っているように見える。
どうやらこの宿はけっこう高級な宿のようだ。

「それじゃあごゆっくりどうぞ。私は仕事上がったらおじゃましますね」

みんなが席に着いたのを見ると、クリスさんは扉を閉めて仕事へ戻って行った。





「・・・なぁ、兄ちゃんよぉ~、レバニラ炒めとニラレバ炒めってよぉ~、何が違うんだ?」

とりあえす飲み物でも頼もうとメニューを見ていると、俺の右隣りに座ったリカルドが難しい顔をしながら、メニュー表を指でトントンと叩いている。

「ん?レバニラ?・・・どっちも同じなんじゃねぇの?言い方が違うだけで」

てきとうに言ったのが気に入らなかったのか、リカルドは少し強くメニュー表を指で叩き、眉間にシワを寄せて俺を睨んできた。

「兄ちゃんよぉ~、もうちょっと考えて言えよ?なにてきとーに答えてんだよ?どっか違うから名前も違うんじゃねぇのか!?調理方法とかよ?」

「お、おぅ、そりゃ悪かったな。でも俺は目玉焼き程度の料理しかやらないから、そんなの分からねぇぞ?えっと・・・」

リカルドに気圧されて左隣のカチュアに聞こうとすると、ふいに右斜め前、リカルドの正面に座るミゼルさんが口を挟んで来た。

「それってよぉ、レバーを先に炒めて後からニラを入れるからレバニラなんじゃねのか?そんでニラレバはニラを先に入れる」

自分の考えに自信を持っているようだ。右肘をテーブルに着いて、人差し指はリカルド向けている。

「おぉ~!さすがミゼル!物知りじゃねぇか!なるほどだぜ!」

リカルドは納得がいったように左手の平に右拳を打ち、表情を輝かせている。
ミゼルさんも得意気に鼻を鳴らし、どうだ!と言わんばかりに俺にも指を向けてきた。

「待て待て、それってなんか変わんのか?レバーが先かニラが先かでよ?なんか変わんの?」

まとまりかけたその時、俺の正面に座るジャレットさんが、手を前に出して待ったをかける。

「あん?どういう事だよジャレット?」

自分の推理に水を差されたミゼルさんが、不満そうに口を曲げてジャレットさんに顔を向ける。

「だからよ、どっちを先に炒めても結局混ぜんだろ?出来上がりは一緒なんじゃねぇの?」

「あぁ?何言ってんだよ?炒める時間が変わってくんだろ?レバーを先に入れりゃそれだけレバーを長く炒めるだろ?焼き加減が変わってくんだろ?」



「・・・一度取り出すとすれば・・・どうだい?」


ミゼルさんとジャレットさんが睨み合い、少しピリピリした空気が流れた時、緊張状態を破るようにジーンが言葉を発した。

「ジーン・・・どういう事だ?」

俺の左斜め前の席で、目を閉じてグラスの水に口をつけるジーン。
とても落ち着いてリラックスした様子だ。


「・・・なに、言葉通りの意味さ。レバーを先に焼く・・・その後、みんな当たり前のようにニラを投入する事で話しているけど、ニラを入れる前に焼いた肉を取り出すのさ。そしてニラだけ炒めた後に、あらためて焼いたレバーを入れる。こうすればミゼルの主張は意味をなさなくなると思ってね」

「なるほど・・・さすがジーンだ。そんな考え思いもつかなかったぜ」

ジーンの隣に座るジャレットさんが、感心したように頷く。
リカルドも、おぉ~!と声を上げている。

「くっ・・・」

ミゼルさんは悔しそうに表情を歪めるが、反論の言葉が出てこないようだ。


「ジーン、それでそのやり方だと、レバニラとニラレバはどこが違うんだよ?」

ジーンによって、ミゼルさんの主張は取り消されたため、リカルドはジーンに意見を求めた。

「え?いや、うん・・・結局どっちも同じなんじゃ・・・」

「おい!ふざけんなよ!お前も兄ちゃんと同じかよ!?名前が違うんだぞ!?どっか違いがあるに決まってんだろ!?お前がミゼルのレバニラを却下したんだから、お前が違いを証明してみッうぐぁッツ!」


「・・・リカルド、うるさい」

テーブルに身を乗り出して、今にもジーンに掴みかかりそうなリカルドの脇腹に、いつの間にか傍に来ていたユーリの拳が突き刺さっていた。リカルドの顔が痛みに歪む。

「おーい、リカルドー!レバニラもニラレバも同じ料理で何も違いはないぞー」

そして端の方に座るケイトが軽く手を振りながら、俺とジーンの推理と全く同じ答えを告げる。

「なん・・・だと・・・そんな・・・ばか、な・・・」

ユーリの拳と、ケイトから伝えられた衝撃の事実にリカルドが崩れ落ちたところで、注文取りの店員さんが、お決まりですかー?と、笑顔で部屋に入ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...