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【389 優しい風に包まれる時】

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ねぇアラタ・・・キミは今どこにいるのかな?
元気にしてる?修一も一緒なのかな?

私ね、二人にもう一度だけ会いたかった
だって、私達三人はいつも一緒だったもんね

私、この世界でもリサイクルショップを始めたんだよ
毎日忙しいけど、すごく楽しい
沢山お友達もできたし、街の人も親切で優しいの

結婚もしたし、子供二人いるの。とっても可愛いんだよ
・・・二人に紹介したかったな

いつか・・・また会えるといいなってずっと思ってた

だけど・・・私はもう・・・・・・・




「・・・ジャニスさん、泣かないで」

「うっ・・・うぅ、うぁぁ・・・ヤ、ヤヨ、イ・・・さん・・・」

しゃがんで泣いているジャニスさんの背中に手を回して、そっと抱きしめた。

「・・・懐かしい・・・孤児院で一緒に暮らしてた頃、よく二人でこうして寝てたよね」

寂しくなると私の部屋に来るジャニスさん。
私達はよく二人で抱き合って寝ていた。

ジャニスさんの温もりに、あの頃の楽しかった毎日を思い出す。


「ど、どう、して・・・どうして・・・こ、んな・・・う、うぅ・・・」

嗚咽を漏らすジャニスさんの頭を優しく撫でる。
私をお姉ちゃんと言って慕ってくれるジャニスさん・・・私は、この異世界でできた大切な妹が大好きだ。

「ジャニスさん・・・私のお願いを聞いてくれる?」

「うぅ・・・ぐすっ・・・ヤヨイさん・・・・」

泣きながら私の顔を見て頷くジャニスさんに、私は優しく微笑みかける。


「あのね・・・もし・・・もしもこの先、坂木新と村戸修一、この二人の男性に会う事があったら、伝えて欲しい言葉があるの」

「・・・それって・・・前に、ヤヨイさんが話してた・・・」

ジャニスさんは、二人の顔も分からないから難しいかもしれない。
だけど・・・私はもう会えないから・・・せめて二人に言葉だけでも伝えたい。


・・・・・私は幸せだったよ。アラタも幸せだといいな・・・・


そして修一には・・・・・


私は二人への遺言を残した

ジャニスさんは涙で顔がくしゃくしゃだ・・・可愛い顔が台無しだよ

指先で涙を拭うけど、次々へと溢れ出て止まらない

ジャニスさんの泣き顔に胸が痛んだ・・・
大好きなジャニスさんをこんなに悲しませてしまって・・・
できればもっと一緒にいたかった


「うん・・・分かった・・・私、絶対、絶対に届けるよ・・・・・うぅ・・・ぐすっ、だから・・・安心、して・・・ヤヨイお姉ちゃん」


ありがとう・・・・・


そしてもう一つ、私の最後のお願い・・・
風の精霊さん、この世界の大切なみんなに、どうか私の想いを伝えて・・・


ヤヨイの願いに応えるかのように、優しい風が頬を撫で、冬の夜とは思えない穏やかで温かい風に包まれた。


テリー、アンナ・・・大好きだよ・・・ずっと見守っているからね

パトリック・・・あなたの妻になれて嬉しかった・・・

モニカさん・・・お義母さんの娘になれて幸せでした・・・

大切な家族への感謝の想い

お世話になった大好きな孤児院のみんな



私・・・この世界が大好き









「・・・ヤヨイさん?・・・・・ヤ、ヨイ・・さん?・・・・・・う・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁー!お姉ちゃん!お姉ちゃん!」


まるで母親に抱かれる子供のように安らかな顔で眠るヤヨイは、それきり目を開ける事はなかった
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