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【382 ジョルジュ 対 セシリア ②】
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さっきより速い!?
体を捻りセシリアの刺突を回避するが、躱しきれず左胸を僅かに剣先が抉っていく。
鮮血がセシリアの剣の軌道を辿るように後ろへ飛び散らされる。
「くっ!」
鋭い痛みと共に熱さを感じる。傷口に目を向けると、斬られた箇所に火が付いていた。
セシリアの深紅の片手剣は、斬りながら焼いてくる。
「よく避けたわわね!でも、まだまだこんなものじゃないわよ!」
一呼吸の間に数えきれない程の突きを打ち込んで来るセシリアに、ジョルジュは大きく飛び退いて距離を取った。
紙一重で躱して反撃とも考えたが、セシリアのスピードは反撃を許さなかった。
「逃がさないわよ!」
後退したジョルジュだが、セシリアは開いた距離を一瞬で埋めて追いすがる。並外れた脚力だった。
速い!
想定を大きく上回るセシリアのスピードに、ジョルジュは防戦一方に追い込まれた。
致命傷は避けているが、矢継ぎ早に繰り出されるセシリアの刺突に、頬を、肩を、腕を切り刻まれていく。
これがセシリア・シールズか・・・同じ師団長でも、俺が戦ったルシアンとは段違いだ。
だが!
「なっ!?」
連続して繰り出されるセシリアの突きの一つを、ジョルジュの右の掌打が打ち払った。
風を纏った手の平は、深紅の片手剣の炎さえ通す事は無い。
「ぐふっ!」
下から突き上げるようなジョルジュの左の掌打が、セシリアの腹にめり込みその体を持ち上げる。うめき声が漏れ、苦しそうに顔を歪める。
「何度も見せられれば速さにも慣れるしリズムも覚える」
掌に集め纏った風を放出しながら掌打で撃ち抜くと、セシリアの体が高く宙に飛ばされた。
「五指の風ではお前の炎を貫く事はできなかった・・・だが、これならどうだ? 」
ジョルジュはセシリア向けて左手で拳を握る。風が拳に集中し集まり出した。
右手で左拳なぞるように触ると、そのまま右手を後ろに引いて構えた。
「貫通力は無いが一点集中なら破壊力は別物だぞ」
指先から放った時とは比べ物にならない高密度の風。
右手を離すと目に見える程にハッキリと拳に集まった風が、強いうねりを持ってセシリアに撃ち放たれた。
「くっ!」
これは躱せない。空中に飛ばされたことで満足に体を動かせず、受けるしかない事を瞬時に悟ったセシリアは、歯を食いしばり両腕を交差させ防御の体勢を取る。
だが命中するかと思われた時、横から飛び出した何者かがセシリアの体を抱え、直撃を寸前で回避された。
「・・・苦戦してるようじゃねぇか?」
深紅のローブをなびかせ着地した黒い肌の少年は、セシリアを雑に手放すと一瞥だけしてすぐにジョルジュに顔を向けた。
「ジャミールじゃない・・・あらら、思ったより早く着たのね。まぁ、助かったわ。ありがと。素直にお礼を言ってあげる」
「・・・ジョルジュ・ワーリントン・・・おいセシリア、俺がやるぞ。文句は無いな?」
セシリアの言葉に感心をしめさず、ジャミールはジョルジュに向いたまま言葉を口にする。
「・・・残念だけど、約束だから仕方ないわね。私はヤヨイが来るまで数を減らしておくわ」
セシリアはジャミールを挟んで立つジョルジュに目を向ける。
僅かな間視線が交差するが、すぐに身を翻すと、カエストゥスと帝国の両軍が交戦している中へ駆けて行った。
行かせるべきではない。今この場でセシリアを抑え込めるのは自分しかいない。
遠くなるセシリアの背中を黙って見送るジョルジュは、すぐにでも追いかけなければという焦りを感じていた。
だが、目の前に立つ深紅のローブを羽織った肌の黒い少年の魔力が、そうさせてはくれなかった。
この俺が抑え込まれている・・・
その現実に、ジョルジュの頬を一滴の汗が伝い落ちる。
「ジョルジュ・ワーリントン・・・俺が誰だか分かるか?」
その漆黒の目にギラギラとした殺意の炎が宿る。
ビリビリと突き刺さるような鋭い殺気は、それだけでジョルジュにダメージを与える程に研ぎ澄まされていた。
「ディーロとか言う殺し屋の子供だな?三人の内、誰の子かまでは分からんがな」
「てめぇに頭を撃たれて死んだジャーガル・ディーロだ。復讐の理由はこれで十分だろ?」
ジャミール・ディーロの体から溢れる魔力が、殺意と敵意に満ちて高まっていく。
膨れ上がる強大な魔力は、かつて戦ったディーロ兄弟をはるかに上回っており、ジョルジュの記憶にあるディーロ兄弟とはもはや全くの別ものであった。
「・・・その年でこれほどとは・・・大したものだ」
「てめぇを殺す事だけを考えて生き抜いて来た。親父たちの恨みは俺がはらす!」
ジャミールの体から、その心の内を見せるようなドス黒い復讐の魔力が放たれた。
体を捻りセシリアの刺突を回避するが、躱しきれず左胸を僅かに剣先が抉っていく。
鮮血がセシリアの剣の軌道を辿るように後ろへ飛び散らされる。
「くっ!」
鋭い痛みと共に熱さを感じる。傷口に目を向けると、斬られた箇所に火が付いていた。
セシリアの深紅の片手剣は、斬りながら焼いてくる。
「よく避けたわわね!でも、まだまだこんなものじゃないわよ!」
一呼吸の間に数えきれない程の突きを打ち込んで来るセシリアに、ジョルジュは大きく飛び退いて距離を取った。
紙一重で躱して反撃とも考えたが、セシリアのスピードは反撃を許さなかった。
「逃がさないわよ!」
後退したジョルジュだが、セシリアは開いた距離を一瞬で埋めて追いすがる。並外れた脚力だった。
速い!
想定を大きく上回るセシリアのスピードに、ジョルジュは防戦一方に追い込まれた。
致命傷は避けているが、矢継ぎ早に繰り出されるセシリアの刺突に、頬を、肩を、腕を切り刻まれていく。
これがセシリア・シールズか・・・同じ師団長でも、俺が戦ったルシアンとは段違いだ。
だが!
「なっ!?」
連続して繰り出されるセシリアの突きの一つを、ジョルジュの右の掌打が打ち払った。
風を纏った手の平は、深紅の片手剣の炎さえ通す事は無い。
「ぐふっ!」
下から突き上げるようなジョルジュの左の掌打が、セシリアの腹にめり込みその体を持ち上げる。うめき声が漏れ、苦しそうに顔を歪める。
「何度も見せられれば速さにも慣れるしリズムも覚える」
掌に集め纏った風を放出しながら掌打で撃ち抜くと、セシリアの体が高く宙に飛ばされた。
「五指の風ではお前の炎を貫く事はできなかった・・・だが、これならどうだ? 」
ジョルジュはセシリア向けて左手で拳を握る。風が拳に集中し集まり出した。
右手で左拳なぞるように触ると、そのまま右手を後ろに引いて構えた。
「貫通力は無いが一点集中なら破壊力は別物だぞ」
指先から放った時とは比べ物にならない高密度の風。
右手を離すと目に見える程にハッキリと拳に集まった風が、強いうねりを持ってセシリアに撃ち放たれた。
「くっ!」
これは躱せない。空中に飛ばされたことで満足に体を動かせず、受けるしかない事を瞬時に悟ったセシリアは、歯を食いしばり両腕を交差させ防御の体勢を取る。
だが命中するかと思われた時、横から飛び出した何者かがセシリアの体を抱え、直撃を寸前で回避された。
「・・・苦戦してるようじゃねぇか?」
深紅のローブをなびかせ着地した黒い肌の少年は、セシリアを雑に手放すと一瞥だけしてすぐにジョルジュに顔を向けた。
「ジャミールじゃない・・・あらら、思ったより早く着たのね。まぁ、助かったわ。ありがと。素直にお礼を言ってあげる」
「・・・ジョルジュ・ワーリントン・・・おいセシリア、俺がやるぞ。文句は無いな?」
セシリアの言葉に感心をしめさず、ジャミールはジョルジュに向いたまま言葉を口にする。
「・・・残念だけど、約束だから仕方ないわね。私はヤヨイが来るまで数を減らしておくわ」
セシリアはジャミールを挟んで立つジョルジュに目を向ける。
僅かな間視線が交差するが、すぐに身を翻すと、カエストゥスと帝国の両軍が交戦している中へ駆けて行った。
行かせるべきではない。今この場でセシリアを抑え込めるのは自分しかいない。
遠くなるセシリアの背中を黙って見送るジョルジュは、すぐにでも追いかけなければという焦りを感じていた。
だが、目の前に立つ深紅のローブを羽織った肌の黒い少年の魔力が、そうさせてはくれなかった。
この俺が抑え込まれている・・・
その現実に、ジョルジュの頬を一滴の汗が伝い落ちる。
「ジョルジュ・ワーリントン・・・俺が誰だか分かるか?」
その漆黒の目にギラギラとした殺意の炎が宿る。
ビリビリと突き刺さるような鋭い殺気は、それだけでジョルジュにダメージを与える程に研ぎ澄まされていた。
「ディーロとか言う殺し屋の子供だな?三人の内、誰の子かまでは分からんがな」
「てめぇに頭を撃たれて死んだジャーガル・ディーロだ。復讐の理由はこれで十分だろ?」
ジャミール・ディーロの体から溢れる魔力が、殺意と敵意に満ちて高まっていく。
膨れ上がる強大な魔力は、かつて戦ったディーロ兄弟をはるかに上回っており、ジョルジュの記憶にあるディーロ兄弟とはもはや全くの別ものであった。
「・・・その年でこれほどとは・・・大したものだ」
「てめぇを殺す事だけを考えて生き抜いて来た。親父たちの恨みは俺がはらす!」
ジャミールの体から、その心の内を見せるようなドス黒い復讐の魔力が放たれた。
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